平成26年度 共同海外進出支援事業 「東西経済回廊周辺諸国ベトナム・ラオス農業機械等 プロモーション事業」報告 事業事務局 一般財団法人旭川産業創造プラザ 企業支援グループ 中川 敏史 <事業の概要・目的> 北海道で培った経験を有している、農業生産に関わる機械及び資材等の製造を行っている中小企業が、海外進出を目指すため、各 企業が持つ技術力やノウハウを活かして共同グループを構築し、リスク・コストを低減し、幅広い顧客ニーズに対応した形で行う共同 海外現地進出が可能となるよう、現地視察及び市場調査を行いながら、販路開拓のための関連機関等へプロモーションを行う。 <進出を目指す国及び地域> 「東西経済回廊」が2015年春にベトナム南部のダナン港からラオス、タイを通り、ミャンマーの首都ヤンゴンをつなぐ約1500kmが 全通する予定であり、この回廊により東南アジアの物流が大きく変わることが予想されるため、周辺諸国であるベトナム社会主義共和 国及びラオス人民民主共和国の高原地域で、農業生産地及び生産地となりえるダラット高原及びボーラウェン高原を対象地域とする。 【共同グループ】 JETRO 旭川産業創造プラザ JICA 北海道経産局 農業関連メーカー 旭川機械工業 アトム農機 エフ・イー オサダ農機 アドバイス 表鉄工所 日成工機 村井鉄工所 農業機械メーカー 北海道農業 機械工業会 プロモーション実施 ラオス ボーラウェン高原 農業生産法人 日系企業 ベトナム ダラット高原 農業生産法人 日系企業 参画企業一覧 農業機械メーカー 旭川機械工業株式会社 当社はトウモロコシや筍の皮むき機の開発など農産加工に 必要は皮剥き機械を開発している金属機械製造業である。2 011年度には新機械振興賞も受賞し、高度な基盤技術を有 していると評価が高い企業である。本事業での役割は収穫し た農産物の一次加工に必要な機械をPRする。 株式会社アトム農機 当社は農業作用に重要な農機具の油圧バケットを主力に全 国展開しており、耕うん作業製品においても非常に高い評価 を得ており、平成25年度にはものづくり日本大賞も受賞した 企業である。本事業では畑等の整地や耕うん及び収穫に必 要な機械等のPRを行う。 株式会社エフ・イー 当社は野菜洗浄機を主力とし全国展開している。近年は根 菜類皮むき機がものづくり日本大賞及び新機械振興賞を受 賞するなど業界でもトップクラの技術を有した企業である。本 事業では農産加工には必要な洗浄機などの一次加工機機械 のPRを行う。 農業関連資材メーカー 株式会社表鉄工所 当者は水門、橋梁、樋門、開閉装置など農業に欠かせない 水路等に必要な各種鋼構造物の設計製作施工を行っている 企業である。道内はもとより道外にもいち早く進出し数多くの 成功事例を有している。本事業では、農地開拓や水路確保に 必要な水門樋門等のPRを行う。 日成工機株式会社 当社はコンクリート2次製品用型枠の設計製造を行っている 企業である。コンクリート背品の成形部材である型枠は複雑 な構造を要し且つ寸法精度と組み立て易さが要求されるが、 その評価が非常に高い技術を有している。本事業では農業に 必要な水路のU字溝等の型枠をPRする。 有限会社村井鉄工所 当社はレーザー加工機を使用した鉄骨材および付随する部 品等の製作行っている企業である。主力品はユニットハウス の制作・販売で大手リース業者にも卸しておりその技術の評 価は高い。本事業では農作地に必要なユニットハウスのPRを 行う。 オサダ農機株式会社 当社は人参収穫機、大根収穫機等、農業生産の高度化を 促進する収穫機を開発している企業である。生食スイートコー ン用全自動収穫機はものづくり日本大賞を受賞するなど、そ の技術の高さは業界でも高評価を得ている。本事業では、農 業機械である収穫機等のPRを行う。 一般財団法人旭川産業創造プラザ 本事業の幹事役となり、交付先との調整及び当該事業が遂 行されるようコーディネート等も行い、実績報告の作成業務を 担当する ●参考1:メンバーの主要製品 旭川機械工業(株)(旭川市) (株)アトム農機 (美瑛町) 資本金1,000万円、従業員12人 食品農産物加工機、堆肥製造プラント 資本金1,000万円、従業員40人 耕うん作業製品、油圧関連製品 (株)エフ・イー (旭川市) オサダ農機(株)(富良野市) 資本金2,500万円、従業員30人 野菜洗浄機・選別機 資本金3,800万円、従業員17人 にんじん収穫機、スィートコーン収穫機 10 (株)表鉄工所 (旭川市) 日成工機(株) (当麻町) 資本金8,000万円、従業員81人 水門、橋梁、樋門 資本金2,700万円、従業員22人 コンクリート2次製品用型枠 (有)村井鉄工所 (当麻町) 資本金1,000万円、従業員13人 ユニットハウス 一般財団法人旭川産業創造プラザ 事務局 11 ベトナム ダラット ベトナム ダラット ラオス ボーラウェン 共同海外進出支援事業の申請について 補助金基 全国商工会連合会 申請条件 ・中小企業概ね10者以上 最低7社以上 参画者それぞれの経営資源を有効に組み合わせて行う取組 ・以下の①~③の取り組みを実施するもの ①共同拠点型 海外現地に共同グループで設置する生産工場や営業拠点等において、 共同による事業活動を実施するもの。 ②共同団地型 海外現地の工業団地等へ共同グループに参画する中小企業者がそれぞれ 入居して、共同による事業活動を実施するもの。 ③現地提携型 海外現地企業を販売代理店とする提携等を通じて、海外市場進出の 事業活動を実施するもの。 ・事業完了後に共同海外展開の取り組みが見込まれる事業 検討会議 第1回 第2回 第3回 第4回 5月13日(火) 7月17日(火) 10月3日(金) 11月11日(火) ●目的 ベトナムとラオスは、東西経済回廊沿いの国で、ベトナムのダラット高原地域(標高800~1800 m)及びラオスのボーラウェン高原地域(標高1000~1350m)には野菜の生産地がある。両地域 とも耕作面積、作物の品種、栽培方法、野菜などの食味の感性が日本と似ており、北海道の農 業機械等に大きな改造を加えないで、市場に参入できる可能性は大きい。 このため、北海道企業に強みのある農業機械や農業関連施設の販路拡大に向けたプロモー ション事業のため、旭川市近郊の機械金属製造業7社を派遣し、現地企業、商社、政府機関と意 見交換等を実施する。 ●スケジュール ※平成25年度補正予算 共同海外現地進出支援補助金にて支援。 1 ●プロモーションメンバー(13名) ・旭川機械工業(株) 常務取締役 関山真教 ・(株)アトム農機 代表取締役社長 寺崎雅史 ・(株)エフ・イー 代表取締役社長 佐々木通彦、SE課係長 佐々木雄大 ・オサダ農機(株) 常務取締役 鎌田和晃 ・(株)表鉄工所 取締役会長 表 豊 、営業課係長 橋本利彦 ・日成工機(株) 代表取締役 森本茂廣 、専務取締役 森本千晶 ・(有)村井鉄工所 代表取締役 村井 誠 ・(一社)北海道農業機械工業会 専務理事 原 令幸 ・(一財)旭川産業創造プラザ 企業支援グループ主幹 中川敏史 ・北海道経済産業局 地域経済部 製造産業課課長補佐 布目光宏 2 農業農村開発省 農業機械技術局(12/5) ☆北海道からの訪問団は初。北海道農業の技術を取り入れたい。 ☆同局は、農業機械の研究部門とビジネス部門を展開。 ☆ベトナム農業労働人口の構成が、10年で70%から60%に減少。特 に米の機械化を重要視、米収穫機も3000台から1万台に増加。中国 製は品質とメンテナンス体制が悪いため、日本製に置き換わった。 ☆クボタの農機は人気高。南部の農民は買えるが。中部・北部の農 民には高価。 ☆2014年8月、ベトナム政府は2020年までの越日協力枠組みにおけ るベトナム工業化戦略及び2030年までのビジョンを実施する農業機 械の産業発展行動計画を取りまとめた。2020年までの目標では農 業機械率を2010年比で、整地段階で70%→95%。栽培段階25% →70%。加工段階で30%→80%としている。 ☆野菜輸出は、2013年に11億ドルを超えたが、機械化が進んでいな い。プロモーション参加メンバーの得意分野なので、技術局と共同プ ロジェクトできる案件があれば、ODA援助等を活用し取り組める。 ☆2015年末にはAFTA自由貿易協定で関税ゼロになる。ベトナムは1 年中豊富な野菜を輸出できるが、輸出規制をクリアするには、野菜 洗浄機等、日本の技術が必要。 ☆日本の農業機械のコストダウンするには、ベトナムで製造できる 部品で機械を作り、ラオス、カンボジア等へ売ること。韓国等も製造 パートナー探しているので、スピードアップが必要。 ダラットジャパンフード(株)(12/2) ☆1999年に設立。京果食品、豊田通商出資会社で、ダラッ ト高原で栽培されるさつまいも、かぼちゃ、にんじんなどの 野菜を原料にした業務用冷凍野菜を年間3,000トン製造。 ☆労働集約型から機械化を検討しており、野菜のカット機 械にも関心。 ☆ミャンマー進出も検討中。 ☆オサダ農機のキャベツ、大根収穫機は、100ha規模の 外資系企業に売れる可能性がある。 ☆ダラット高原では1~3月にカボチャが収穫されるので、 かぼちゃの加工機械も可能性がある。 5 イシダベトナム社(12/5) ☆イシダ(京都市)は1893年の創業以来、民間初のハカリ メーカーとして発展。近年は、計量のみならず包装、検査、表 示などの分野に事業領域を拡げ、世界80カ国以上で事業を 展開。2012年、「イシダベトナム」を設立。 ☆主要取引先の大手食品メーカーが相次いで工場をベトナ ムに新設。拡大する市場への対応を背景に販売・サービス体 制の一段の強化を図り、本格的な事業展開に乗り出した。 ☆従業員は日本人3名、ベトナム人10名。これまで保守点検 はマレーシアからスタッフを派遣していたが、迅速な対応が可 能となった。2015年にはハノイ支店を開設予定。 ☆30代~マネージャー級以上の人材確保が困難。 ☆エフ・イーの野菜洗浄機の納入実績がある。今回本事業の 主旨を理解していただき、各企業のPRを担っていただけるこ とや、案件が出れば現地代理店として活動できるとお話を頂 けた。 ホープランド・ベトナム(株)(12/2) ☆同社は「北海道ホープランド」(幕別町)が、2012年 に設立した現地法人。ダラットに18haと2haの農地を取得。 ☆北海道ホープランドは、2002年にベトナム国立フエ大 学と協力し、農業支援活動を開始。2006年にベトナム農 場職員の研修受け入れた。 ☆社員9名。社長は日本に留学経験のあるベトナム人。 ☆2haの農場では、ハウス栽培でトマト、イチゴ、ナス、 小松菜、キャベツなどを栽培。しかし、土が硬く、病気 や害虫等で収穫量は日本の1/3。土を柔らかくし、品 質と収穫量を上げるのが課題。 ☆コーヒーの精製時のかす等で堆肥を製造。 ☆ベトナムの農家の人達が見に来てくれるよう成功させ たい。ODAの援助が欲しい。 コーヒー精製かす 堆肥づくり 農産地分野のラインイメージ イシダのハカリ 6 ●ラオス出張概要 クボタ・ジャルンサイ・ジャンバサ支店(12/3) ☆クボタは、タイの合弁子会社を通じて、ラオスのディーラ にトラクタ、コンバイン、耕うん機等を販売。同社はダラット 地区の販売・サービス拠点。 ☆タイの賃金上昇に伴いラオスからタイへの出稼ぎが増加、 農村部の労働力不足で、農業の機械化需要が急速に増大。 ☆95馬力のトラクタが300万円程度(排土板、プラウ2種付 き)で、年間180台を販売。日本では本体のみで700~900 万円。 ☆キャッサバは人参に形状が似ているため、オサダ農機の 人参収穫機に興味を示す。 ラオ・ツムラ社(12/4) ☆2010年に設立。桂皮や乾姜を700haの圃場で栽培、本 年初収穫。社員は54名(日本人駐在員4名)。栽培数量 は予定の半分の100t、将来1000t/年目標。 ☆ラオスが土地と労働力を提供し、外資が資本、技術、 市場を提供する政策「2+3政策」に合致。 ☆生薬栽培事業のための栽培圃場の安全確保を目的とし た不発弾探査と除去をODAの援助で実施。 ☆輸送はタイから横浜港を経由し、石岡センターへ輸送。 港での滞留時間が長いことから、ダナン港も検討中。 ☆大卒程度の管理職を担える地元人材が不足。 桂皮(シナモン) 乾姜(しょうが) 乾姜洗浄機(タイ製) 7 パクソンハイランド社(12/4) ☆タイの大企業「チャーン・ビール社」の子会社。大規模なプラ ンテーション農場でコーヒー事業を2007年より実施。敷地面積 3000ha、従業員はタイ人20名、ラオス人40名、収穫期は300名。 トラクターを40台所有。自社でメンテナンス、機械加工部門を 所有。 ☆コーヒ収穫量は700~800トン/年。コーヒ飲料用等に日本、 欧州にも販売。 ☆ラオスで機械を売るには、メンテナンス等の技術者が必要。 ☆フランスのハーベスターを入れ、とうもろこしを試験栽培した が台数が少なく良い結果は出なかった。 ☆パクソンは、キャベツの生産量が一番多い。次いでアスパ ラガス、おくら等。(オサダ農機のコーン・キャベツハーベスタ、 旭川機械 コーン皮むき機紹介。) ☆同社では今後はバナナ、チューリップ、野菜事業も計画中。 コーヒ農園 自社製農機 副社長 ラオス中国農業センター(12/4) ☆2004年設立。中国の資金援助で運営。職員は15名。ハ ウス栽培等の技術指導と研修業務(有料)、中国製ハウ スの販売を行っている。栽培面積20ha。 ☆ハウスは、雨期対策が主目的。ビニール屋根のみでサ イドはネット。雪がないのでできる構造。 30m×6mの中国製ビニールハウスで9万円、木製で5万円 (日本では50万円程度。) ☆なす、きゅうり、トマト、キャベツ、白菜等を栽培。 堆肥と化学肥料はわずか使用。 ☆一部日本国内メーカの部品を模倣していることから、 日本人の農業者でも建設は可能と思われる。 金属製ハウス(9万円) 木製ハウス(5万円) トラクター 8 ジャンパーホーアグロー社 ラオス支店(12/3) アダムス・エンタープライズ・インターナショナル社(12/4) ☆同社はChin Joo Heng 社(タイの農業関連会社)のグ ループ会社。タイから輸入した肥料を生産者の目的に あった栄養素(N-P-K等)に分けて販売。 ☆同社は1980年代後半にタイで設立。 輸出用のハイブリッド野菜 の種子(F1種)生産企業。当農場の従業員はタイ人3名、ラオス人 47名。50haの農地。地下水(帯水層50m)を利用。 ☆トマト自動収穫機等、クボタ製、タイ製農業機械を使用。当日は タイの機械メーカー4社も同行。 ☆米国、オランダ、イタリア、ドイツ向けの種子を実験栽培。日本 向けにトマトの種子を実験栽培中。 ダオファン市場視察(12/3) 山本農園(12/4) ☆ベトナム系企業が経営するラオスで最も大きな市場。 野菜、フルーツ、魚、肉、雑貨などの商品を販売。 ☆野菜はキャベツ、人参、白菜、トマト、きゅうり、 じゃがいも等で北海道と似た品種。 ☆国際協力事業のコンサル業務会社アイ・シー・ネット(株) 経営顧問。北大農業機械卒59歳。農場は畜産試験場跡地37ha、 従業員4名。住居兼作業場は700万円。 ☆55歳からスタートし、準備に1年、会社登録に1年かかった。 コーヒー栽培と肉牛70頭を飼育。まだ軌道には乗っていない。 ☆労賃が上がっているので機械化が必要。 山本郁夫 氏 9 ●参考2:ASEAN諸国経済概況等比較表 ASEAN諸国、中国、韓国、日本経済力比較(2013年) 賃金動向~基本給・月額(2013年度) 出所:ジェトロ「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査(2013年度調査)」 12 ~結 果 概 要~ 【プロモーション事業】 ●ラオス農業関連企業等7社、ベトナム農業関連企業2社を訪問してプロモーション。産地・食品分野を得意とするベトナムの 日系商社からは、各企業のPR及び案件が出た際、現地代理店として活動できる事業提携についてお話しを頂けた。 ●ベトナムのJICA、JETRO。ラオスパクセ地区で、日本人が唯一ホテルを経営し、日系企業及び商社等が現地進出する上 でのコーディネーターを行うPTP社「フォレストホテル」に、プロモショーン用パンフを配置。 【ベトナム農業農村開発省 農業機械技術局との意見交換】 ●農業従事者の割合が70%から60%に減り、農業の機械化を重要視。野菜輸出は、2013年に11億ドルを超えたが、機械化 が進んでいない。北海道企業のポテンシャルの高い分野とODA援助等を活用し、共同プロジェクトでの協力。 ●2015年末にはAFTA自由貿易協定で関税ゼロになる。生鮮野菜の輸出規制をクリアするには、野菜の洗浄等で日本の技術 が必要。 【今後の展開】 ●プロモーション参加企業の優れた技術や製品を途上国の開発に活用することで、途上国の開発と企業の生き残りや地域の再 生にも通じる。(ODAの活用) ●今回の訪問で築いた人脈を活用し、販路拡大を目指す。 ●メンテナンス体制及び現地生産体制についての検討 ・ベトナム技能実習生を受入、帰国生が習得した技術が活用できる環境整備等 ・中小企業・小規模事業者海外人材対策事業(全国中央会)、新興市場開拓人材育成支援事業(海外産業人材育成協会 HIDA)等の活用 ●一般農家向けには小型、廉価、耐久性、機能が簡素化された製品開発(草刈機等)。収穫機等は、外資系プランテーショ ン農場(ラオス)や農家に代わり刈り取りや耕作を請け負う業者(ベトナム)へのプロモショーン。 ●当事業の報告会を2月頃に旭川で開催。 当局では、北海道農業機械工業会、旭川産業創造プラザ、ジェトロ北海道と情報共有しながら、当省・外務省・JICA等の支 援メニューにより、これらの動きを後押ししていく 3
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