指導書セット ◉ 指導資料「学習指導の研究」 (予価23,100円)の構成 ◎ 指導書「学習指導の研究」 ……………………………………………………………… A5判 4分冊 ◎ 複写用・書き込み式別冊集 新 標準問題集(教科書の教材を利用した問題) …………………………………………………………… B4判 発展問題集(教科書の教材に関連した文章を利用した問題) …………………………………… B4判 小テスト問題集(漢字・語句問題) ……………………………………………………………………… B5判 新 ダイジェスト版 現 B 315 ◎ 付属CD-ROM 新 新 教科書本文・別冊集(一太郎・ワード・PDF) 授業用プリント集(一太郎・ワード) /復習用プリント集(一太郎・ワード) / 課題ノートデータ集(一太郎・ワード) /教科書全ページ画像(PDF) 新 新 新 ◉ 別売 学習指導の研究PDFファイル版 ……………………………………… 予価5,250円 ◉ 別売 朗読CD 新 *指導書「学習指導の研究」全分冊のPDFを収録。 …………………………………………………………………………………… 予価5,250円 (『精選現代文B』 『 現代文B』共通版。一部の教材のプロによる朗読を収録) (生徒用)……………………………………… B5判・160ページ (予定) ◉ 準拠問題集「課題ノート」 別冊解答付 予価720円 *表示はすべて定価(5%税込) 教科書調査の観点(発行者 調 査 の 観 点 教科書名 精選現代文B (現B315) 143筑摩) (1)内 容 (2)構成・分量 ①随想・評論の古典が適 ①随 想・評論を中心とし 宜配され、基礎的学習 た散 文 教 材の収 録 本 への配慮が行き届いて 数が多く、選択の幅が いる。 広い。 ②現 代的な視点をもち、 ②小 説教材が長/短、定 しかも論理的思考を育 番/意欲作という組み合 む評論教材が充実して わせで選択しやすい。 いる。 ③表 現活動への具体的 ③小説は古典的な教材と な手順を示した手引き 新鮮な教材がバランス は指導しやすい構成に よく配置されている。 なっている。 (3) 表記・表現及び使用上の便宜 ①脚 注や地図などが適宜 掲げられていて学習の便 宜になっている。 ②手引きや脚問によって読 解を深められるよう配慮 されている。 ③学習を補助するカラー図 版が必要かつ十分な量 で掲載されている。 (4) その他 ①第一部・第二部に分けら れた形式が使用学年とリ ンクしていて使いやすい。 ②意 欲的に発掘された新 教材が数多く掲載され ていて清新な印象を受 けた。 ③骨のある文章が多く収録 されており、論理的思考 を涵養するのにすぐれて いる。 *このダイジェスト版は、筑摩書房版『精選 現代文B』 (現B315)から、特徴のあるページ を抜き出して編集したものです。 ちく ま しょ ぼう 筑摩書房 〒111- 8755 東京都台東区蔵前2 - 5 - 3〈営業局〉tel.03(5687)2680〈編集部〉tel.03(5687)2674 「ちくまの教科書」サイト http://www.chikumashobo.co.jp/kyoukasho …シラバス資料などをダウンロードできます。 編集委員のことば 東京大学教授 安藤 宏 「ゆとり教育」の弊害が指摘されるようになって久しい。こうした中で、この教科 書はあえて「硬派」をもって任じている。生徒の学力の現状がたとえいかなるもの であっても、それにおもねることなく、高校卒業後に大学生や社会人として求めら れる国語的思考力を、本来のあるべき姿として徹底的に追求していこうというのが その基本姿勢である。その結果、一冊に評論文が三十本以上収録されるという、ま 精 [ 選 現代文B 編集委員 岩間輝生 國學院大学講師 東京都立戸山高等学校教諭 牛山睦子 坂口浩一 さに空前にして絶後のボリュームとなった。その内容も情報論・言語論・文化論・ 国際関係論・文学論など、社会科学から自然科学に至るまで、現在の日本の「知」 東京都立小山台高等学校教諭 *大幅増ページ(当社現行版比)→ 96ページ増 *教材本数増(当社現行版比)→ 評論14本・随想2本増 雲雀丘学園中学校・高等学校教諭 守本 進 本増えて 本に。 一部は「評論六」、二部は「評論五」まで設けた充実の評論単元。 大学入試を意識した字数に厳選。 原則として各単元内の教材配列は易→難へ。 ② 高校生として読んでおきたい 小説は精読に堪えるオーソドックスな定番教材を軸に、 定番小説を厳選しました。 ③ 二年間履修に対応した二部構成。 新旧バランス良く収録。 ] 筑波大学附属駒場中・高等学校教諭 関口隆一 の縮図ともいうべき多彩なものになっている。内容的にすぐれた文章を集めるのは ある意味では容易だが、問題意識をコンパクトに、高校生にもわかりやすく理解で きる言葉で述べてあるものは数少ない。ここに選ばれた文章は数百の候補の中から 長い時間をかけ、徹底した討論の中から選び抜かれたもので、まさに他の追随を許 さぬ教材発掘力の成果でもある。内容もこれまでの定評ある定番教材と新しい世界 観とがミックスした、筑摩書房のDNAを着実に受け継いだものになっている。 おそらく「現代文」という教科の魅力は、文章を通してまったく想像もつかなかっ た「世界の見方」があるのだということを知る、驚きや喜びにこそあるのだろう。教 員の素朴な感動を出発点に、生徒の世界観を伐り拓いていくための起爆剤として、 ハイグレードな教材群、現代文Bの最高峰 「教科書の質・量の充実」を図り、豊富な教材を用意 この教科書を送り出したいと思う。 ★ 新学習指導要領版のポイント ① 評論重視、教材を大幅増補。 現行版から評論教材が 定番評論から最先端の分野までを網羅。 31 バラエティ豊かな最新のトピックと筆者。 14 現B315 精選 現代文B 評論一 情報の彫刻 山月記 ―― ラップトップ抱えた﹁石器人﹂ アイオワの玉葱 小説一 思考バイアス 新釈諸国噺 ―― 原 研哉 長谷川眞理子 長田 弘 中島 敦 池内 了 大竹伸朗 内田 樹 太宰 治 川上弘美 若桑みどり 加藤周一 安田 登 文学の仕事 リービ英雄 今福龍太 空と風と星と詩 ファンタジー・ワールドの誕生 鷲田清一 定番 科学・技術と生活空間 こころ 参考 現代日本の開化 夏目漱石 ノスタルジアと﹁かわいい﹂ 坂口安吾 四方田犬彦 夏目漱石 日本 文 化 私 観 野矢茂樹 夏目漱石と﹁こころ﹂ ……… 言語が見せる世界 渡辺一夫 丸山眞男 斎藤茂吉 吉野 弘 中原中也 羅針盤 1 村上陽一郎 ふわふわ 木のり子 路地の奥の家 神話する身体 異時代人の目 水かまきり 貧の意地 物語るという欲望 トースト絵画 定番 評論二 小説二 評論三 随想 評論四 小説三 評論五 詩歌 I was born サーカス 宮澤賢治 定番 永訣の朝 短歌 死にたまふ母 ﹁である﹂ことと﹁する﹂こと 寛容は自らを守るために不寛容に対して 不寛容になるべきか 手紙 ★メディア論 ★科学技術論 8 ★言語論 14 20 ★科学論 28 ★芸術論 42 ★物語論 48 56 64 ★歴史論 76 ★身体論 84 ★文学論 90 ★科学論 ★身体論 ★文化人類学 134 124 110 104 96 目次 評論は、6単元17教材 随想は、高校生の感性に響く厳選2教材 ★社会論 ★文化論 ★言語論 ★政治思想論 ★社会論 一部 小説は二年生の定番教材を配置 第二部 評論三 ◎ 無常ということ ⋮⋮ 2 (現文044)に掲載の教材。 *印を付けた教材は、旧課程版『精選現代文 改訂版』 (現文028)に掲載の教材。 *印を付けた教材は、旧課程版『展望現代文』 3 評論六 実用の文章 報告 252 250 228 224 222 217 215 212 203 195 186 185 182 152 142 243 * * * * * * * * 第 部 一 一部 第 二部 付録 評論一 小説一 評論二 随想 絵画の二十世紀 ﹁自然を守る﹂ということ 定番 虚ろなまなざし 藤野先生 教科書初登場 前田英樹 森岡正博 岡 真理 北田暁大 家 つながりと秩序 小池昌代 魯迅 竹内 好 訳 アゴタ・クリストフ 堀 茂樹 訳 道について 辺見 庸 小林秀雄 谷崎潤一郎 中沢新一 Not I, not I... 声の諸相 大江健三郎 定番 チャンピオンの定義 陰翳礼讃 定番 三島由紀夫 舞姫 熊野純彦 柳田國男 ことばへの問い 清水哲郎 評論三 無常ということ 小説とは何か 参考 遠野物語 死と向き合う 岩井克人 羅針盤 2 ⋮⋮⋮ ﹁舞姫﹂と近代小説の誕生 村上春樹 森 鷗外 小説二 貨 幣 共同 体 石垣りん 定番 評論四 表札 石原吉郎 沈黙 阪本俊生 詩歌 夜がやって来る 小説三 ポスト・プライバシー 大澤真幸 俳句 評論五 リスク社会とその希望 ★芸術論 ★環境論 ★ヒューマニズム ★現代社会論 ★身体論 ★文化人類学 ★美学 ★古典文学論 ★文学論 ★言語論 ★生命倫理 ★貨幣論 ★現代社会論 ★現代社会論 二部 小説は「舞姫」 と、安定教材を配置 第二部 評論三 ◎ 無常ということ ⋮⋮ 4 (現文044)に掲載の教材。 *印を付けた教材は、旧課程版『精選現代文 改訂版』 (現文028)に掲載の教材。 *印を付けた教材は、旧課程版『展望現代文』 5 羅針盤 3 ⋮⋮⋮小 論 文の書 き 方 近現代文学史 474 399 368 366 360 354 346 333 328 318 310 302 293 282 273 266 256 472 464 456 432 427 424 422 413 406 400 * * * * * * * 部 評論は、5単元14教材 原 研哉 二〇〇〇字 科学・技術と生活空間 村上陽一郎〈 科学論 〉 四五〇〇字 科学・技術の発展が、社会の様相を一変させ、人間性をも変化さ せた。科学史家による鮮やかな分析。 ふわふわ 鷲田清一〈 身体論 〉 三三〇〇字 コミュニケーションの道具としてではなく、身体の深みから立ち あがることばの重みを、オノマトペを通して探る。 ファンタジー・ワールドの誕生 今福龍太〈 文化人類学 〉三七〇〇字 「観光」とは幻想を確認する旅であり、幻想とは差別を生みだす装 置であるということを、まざまざと照らし出す評論。 原則として、各単元内、単元順に、易→難へと配列。 ジャンルと難易度を考慮して、教材を自由に選択できます。 情報の彫刻 原 研哉〈メディア論 〉 二四〇〇字 情報テクノロジーが世界を覆う現代において、 「紙」の文化の新た な役割を提示する。 ラップトップ抱えた「石器人」 長谷川真理子〈 科学技術論 〉 科学の発達により予測できない「リスク」が生じるようになった 現代、人間の、また社会の賢さとは何かを問いかける。 アイオワの玉葱 長田 弘 〈 言語論 〉 三一〇〇字 ことばは単なる道具ではなく、認識や感情を作り出す枠組みでも ある。母語と外国語を比較する中で見えてくるものとは。 思考バイアス 池内 了〈 科学論 〉 二四〇〇字 私たちは、世界をクリアーに理解したいという欲望のあまり、誤 った推論・論証に陥る。その仕組みを分析する。 トースト絵画 大竹伸朗〈 芸術論 〉 三〇〇〇字 芸術は、既成概念を破壊することで視野を広げてきた。「トースト は絵画だ」というひらめきから広がる芸術論。 物語るという欲望 内田 樹〈 物語論 〉 三三〇〇字 ある出来事と出来事の間に脈絡がないとき、私たちは「物語」を作 る。「物語」が生まれる状況を鮮やかにあぶり出す。 異時代人の目 若桑みどり〈 歴史論 〉 一七〇〇字 同時代人は真理を見誤るかもしれないが、いつか異時代人の目が それを正すだろう。未来を見据え、歴史学の役割を説く。 神話する身体 安田 登〈 身体論 〉 一九〇〇字 身体も精神と同じように、感じ、考え、記憶する。身体は文化の湛 えられる容器である。能楽師による身体論。 文学の仕事 加藤周一〈 文学論 〉 三四〇〇字 文学は何の役に立つのか。時代経験の最も深い場所から若い人々 へ、加藤周一が答える。 『 風聞の身体 』東北大・名古屋大 『ここではない場所 』お茶の水女子大 『 羊の歌 』青山学院大 『 手のひらのなかの宇宙 』上智大 『 身体としての書物 』早稲田大 ノスタルジアと「かわいい」 四方田犬彦〈 社会論 〉 三七〇〇字 今、世界中で「かわいい」という語が日本文化の特色の表現として 使われている。「かわいい」に込められた社会の意識を読み解く。 日本文化私観 坂口安吾〈 文化論 〉 三二〇〇字 文化とは、いま、人間が生き存在しているところにある。坂口安吾 による痛快な日本文化論。 言語が見せる世界 野矢茂樹〈 言語論 〉 四一〇〇字 世界があって言語があるのではない、言語があって世界が立ち現 われる。新たな視野をひらく言語論。 「である」ことと「する」こと 丸山真男〈 政治思想論 〉六七〇〇字 現 代 日 本 に お い て な お、喫 緊 の 課 題 で あ り 続 け て い る 二 つ の 論 理・価値。戦後政治学の牽引車による定番評論。 丸山真男 野矢茂樹 坂口安吾 寛 容は自 ら を 守るた めに不 寛 容に対して 不 寛 容になるべ きか 渡辺一夫〈 社会論 〉 三一〇〇字 対立した者をひたすら「敵」「悪」と考える言説が横行する現代、寛 容を説くこの評論は時代を超えて新鮮にすら感じられる。 四方田犬彦 村上陽一郎 鷲田清一 『 ある自由主義者への手紙 』大阪大 『 現代政治の思想と行動 』早稲田大 『 幕末における視座の変革 』 一橋大 『 忠誠と反逆 』東京経済大・西南学院大・中央大 『日本の思想 』関東学院大 『 人間と政治 』大阪市立大 東京都市大・滋賀県立大・立教大・大阪経法大 『 感覚の幽い風景 』弘前大 『「聴く」ことの力 』北海学園大・首都大・白百合女子大 『 安全学 』東洋大 『 科学者とは何か』関東学院大・椙山女学大 『 自然・人為・時間 』佐賀大 『 知識の不幸と知識人について 』鹿児島大 『 漫画原論 』近畿大 『「かわいい」論 』龍谷大 『 茶番に寄せて 』早稲田大 『 娯楽奉仕の心構え 』島根大 『 傲慢な眼 』大阪府立大 『 文学のふるさと 』近畿大 『 語りえぬものを語る』神戸大 『 語りえぬものを語る』名古屋市立大 『 哲学・航海日誌Ⅱ』上智大 『 他者の声 実在の声 』 明治大・青山学院大・成蹊大・筑波大・中央大 『 わかりやすいはわかりにくい?』信州大・琉球大・ *青字は、教科書本文と同一箇所、緑字は、教科書本文と同一出典。 同志社大・中部大・日本大・多摩美術大・甲南大・滋賀大・ 東北大・東京経済大・山口大・大阪府立大 『 進歩的人間考 』名古屋市立大 『 失われた時代 』京都大 『 本という不思議 』麗澤大 『 物理学と神 』新潟大・早稲田大・フェリス女子大 『 本の棲み分け 』福井大 『 疑似科学入門 』中央大・摂南大・大谷大・桜美林大 『 見えない音、聴こえない絵 』近畿大 『 寝ながら学べる構造主義 』九州大 『 戦中派と科学について 』埼玉大 『日本辺境論 』東洋英和女学院大・東海大・大阪大 『 下流志向 』成蹊大・京都産大・名古屋外大 『 態度が悪くて済みません』立命館大・学習院女子大・専修大 『レット・イット・ビー』立教大 『 神話する身体 』京都大 『日本文化における時間と空間 』明治大・中央大・立命館大・ 『大量発話時代と本の幸せについて』立命館大・高崎経済大・龍谷大 『白』東京大・学習院大・早稲田大 『 デザインのデザイン』拓殖大・信州大 『 シンプルはいつ生まれたのか』明治大 『精選現代文B(一部) 』収録の評論教材筆者の大学入試出典一覧(一部)*二〇〇八〜二〇一二年度 長谷川真理子 長田 弘 池内 了 大竹伸朗 内田 樹 若桑みどり 安田 登 加藤周一 今福龍太 『 音の襞、ことばの隈 』早稲田大 6 7 標準レベル 発展レベル 易 難 易 難 易 難 易 難 評論四 評論五 評論六 評論一 評論二 評論三 易 難 易 難 評論教材 基礎レベル 標準レベル 評論筆者 入試出題 状 況 一部 一部 前田英樹 森岡正博 岡 真理 北田暁大 小池昌代 中沢新一 (参考) 遠野物語 柳田國男 一二〇〇字 民俗学者・柳田國男の名著より、ことばのもつ根源的な力を放つ 三編を収録。 小説とは何か 三島由紀夫〈 文学論 〉 二四〇〇字 「遠野物語」を例に、現実から虚構が立ちあがってくる瞬間をみご とにおさえる。小説の名手による文学論。 無常ということ 小林秀雄〈 古典文学論 〉 二四〇〇字 自分の存在を超えた大きな時の流れをどのように捉えたらよい のか。戦時中に書かれ、今なお不変の輝きを放つ定番評論。 陰翳礼讃 谷崎潤一郎〈 美学 〉 三三〇〇字 日本を代表する作家が、具体的感覚に根ざしつつ、変容していく 日本文化を鋭く見つめた定番日本文化論。 原則として、各単元内、単元順に、易→難へと配列。 ジャンルと難易度を考慮して、教材を自由に選択できます。 絵画の二十世紀 前田英樹〈 芸術論 〉 四一〇〇字 写真の発明が絵画にもたらしたものは何か。写真が生まれたこと で逆にあらわになった絵画の特徴を分析する。 「自然を守る」ということ 森岡正博〈 環境論 〉 二九〇〇字 人間は、自然と分離しているのではなく、自然に組みこまれた存 在である。新たな気付きから広がる環境論。 虚ろなまなざし 岡 真理〈ヒューマニズム〉 三七〇〇字 訴える力もない難民の少女の痛みを「理解する」とはどのような ことか。他者の痛みに到達する一筋の道を考察する。 つながりと秩序 北田暁大〈 現代社会論 〉 三六〇〇字 ケータイは、社会の空間の性質をどのように変えたのか。新進気 鋭の社会学者が放つ現代社会論。 道について 小池昌代〈 身体論 〉 三六〇〇字 日々の何気ない実感や思いからふと気付く身体の不思議。詩人が 論じる空間と身体の関係。 Not I,not I...中沢新一〈 文化人類学 〉 四六〇〇字 文化人類学者たちが見出だした人類の「贈与」という習慣を通し て、貨幣経済に生きる私たちの社会の問題点を照らし出す。 『 小説とは何か』青山学院大 『 葉隠入門 』神戸学院大 『 絵画の二十世紀 』亜細亜大・近畿大 『三十三個目の石 』九州産業大 『「文化が違う」とは何を意味するのか』 一橋大 『 棗椰子の木陰で 』亜細亜大 『 記憶/物語 』桃山学院大 『 彼女の「正しい」名前とは何か』摂南大 『 嗤う日本の「ナショナリズム」』西南学院大 『 タタド』関東学院大 『 僕の叔父さん 網野善彦 』龍谷大 『 愛と経済のロゴス』大阪経済大 『 緑の資本論 』関東学院大 『 ゲーテの耳 』摂南大 『 森のバロック』早稲田大 『 文章読本 』宇都宮大 『 旅のいろいろ 』早稲田大 『 骨董 』明治学院大 『 無常ということ 』國學院大 『 楽屋で書かれた演劇論 』金沢大 産業能率大・恵泉女学園大・青山学院大 『日本人の信仰心 』上智大 『 なぜ〈日本刀〉は生まれたのか』早稲田大 『 独学の精神 』大阪大・学習院大・中京大・法政大・ 大澤真幸 阪本俊生 岩井克人 清水哲郎 熊野純彦 ことばへの問い 熊野純彦〈 言語論 〉 二五〇〇字 「ことばにならない」思いを、人はすくいとることができるだろう か。柔らかな日本語で考察する言語の可能性。 死と向き合う 清水哲郎〈 生命倫理 〉 二六〇〇字 死に直面している人に、私たちはどのような態度であるべきなの か。粘り強く思考する、生命倫理への優れた考察。 貨幣共同体 岩井克人〈 貨幣論 〉 四一〇〇字 貨幣で商品を買うということは、実はとても不安定で不可思議な 現象でないか。貨幣で成り立つ社会の根源をあぶり出す。 ポスト・プライバシー 阪本俊生〈 現代社会論 〉 三四〇〇字 従 来「 プ ラ イ バ シ ー」と 呼 ば れ て き た 概 念 が、大 き く 変 化 し て い る。「ポスト・プライバシー」時代をどう生きるかを問う。 リスク社会とその希望 大澤真幸〈 現代社会論 〉 三六〇〇字 個人が想像でき、理解できる範囲をはるかに超える現代のリスク 社会にどう立ち向かうか。今、何よりも切実な問題提起。 『 資本主義のパラドックス』関西学院大 『 ナショナリズムの由来 』神奈川大 『〈現在〉を読む 』北星学園大 『 美はなぜ乱調にあるのか』拓殖大 『 文明の内なる衝突 』早稲田大 『 文明の外的かつ内的な衝撃 』麗澤大 『 恋愛の不可能性について 』上智大 近畿大・甲南大・上智大・中央大・明治大・立命館大・法政大・ 弘前大・成蹊大 『 知と行動の「外部化」が意味するもの』広島大 『 差異と隔たり』関西学院大 『 医療・看護現場の臨床倫理 』東京医科歯科大 『 経済危機の行方 』九州産業大 『 資本主義と「人間」』センター試験 『二十一世紀の資本主義論 』二松学舎大 『 未来世代への責任 』南山大 『 ヴェニスの商人の資本論 』中央大・関西学院大 『ポスト・プライバシー』東京大・立命館大 『 社会は絶えず夢を見ている』埼玉大 『 不可能性の時代 』静岡大・東京経済大・亜細亜大・関西大・ *緑字は、教科書本文と同一出典。 『精選現代文B(二部) 』収録の評論教材筆者の大学入試出典一覧(一部)*二〇〇八〜二〇一二年度 谷崎潤一郎 三島由紀夫 小林秀雄 標準レベル 発展レベル 易 難 易 難 易 難 評論三 評論四 評論五 評論一 評論二 易 難 易 難 評論教材 基礎レベル 評論筆者 入試出題 状 況 8 9 二部 二部 日本文化 絵画の二十世紀 前田英樹 情報の彫刻 評論…… 情報・ メディア 芸 術 現代社会 ヒューマニズム・ 倫理 近 代 文学・ 物語・ 歴史 三島由紀夫 身 体 コミュニ ケーション 言語・ 文化人類学 科学・ 技術 巻頭教材 さまざまなメディアを用いて斬新なデザインを提供し続けるグラ フィック・デザイナーが、情報化社会の今、素材としての「紙」の魅 力を語る。紙の教科書を手に、身体で実感したい新教材。 大竹伸朗 ノスタルジアと 「かわいい」 四方田犬彦 貨幣共同体 岩井克人 リスク社会とその希望 大澤真幸 はら けんや 原 研 哉 事物の激しい変化は、 古いものを廃棄する。だ が、古いものにとって新 たな意味を放つ機会でも ある。情報化が世界をお おうなかで、いま、紙の 文化が新たに浮上する。 各教材の冒頭に 学習の指針を掲載。 1 テ クノロジー 科学技術。 [英語] technology 文章を読解する上で 必要な情報を掲載。 [英語] material 2 マ テリアル 素材。材料。 3 ニ ュートラル 偏らない。 ▼教科書8ページ〜 冷静に眺めてみると、紙という素材はメディアとして随分と重い責任を担わされてき た。特に情報の流通速度がどんどん加速していく時代においては、紙はマテリアルであ ンを続けていくのはいかにも時代認識が甘いように感じるのである。 うことを再確認する必要があるだろう。それをしないまま、従来の方法で書籍のデザイ 去ったとも考えにくい。おそらくは、このあたりで一度、僕らは「書籍とは何か」とい と電子メディアでは既に比較にならない。しかし一方で、書籍の役割そのものがついえ べきかもしれない。情報を流通させる速度や密度、そしてその量などに関しては、書籍 た。そんな状況にあっては、書籍はもはやメディアとしての主役を降りたのだと考える 僕は書籍のデザインを手がけることが多く、物事をそういう形にまとめることが好き †† でもある。しかし今日、情報テクノロジーは加速度的に進化し、情報の形も様々になっ 阪本俊生 10 11 視点 脚注 物語るという欲望 内田 樹 異時代人の目 若桑みどり 文学の仕事 加藤周一 小説とは何か アイオワの玉葱 長田 弘 言語が見せる世界 野矢茂樹 ことばへの問い 熊野純彦 トースト絵画 ―― 現代評論の重要テーマを網羅 ―― 2 新 「である」ことと 「する」こと 「自然を守る」 ということ 森岡正博 丸山真男 寛容は自らを守る 虚ろなまなざし ために不寛容に対して 岡 真理 不寛容になるべきか 死と向き合う 渡辺一夫 情報の彫刻 原 研哉 清水哲郎 日本文化私観 坂口安吾 つながりと秩序 北田暁大 陰翳礼讃 谷崎潤一郎 ポスト・プライバシー 無常ということ 小林秀雄 充実の評論教材 全31本 1 評 論(一) 一 ラップトップ抱えた 「石器人」長谷川真理子 神話する身体 安田 登 思考バイアス 池内 了 ふわふわ 鷲田清一 科学・技術と生活空間 フ ァ ン タ ジ ー ・ ワ ール ド 道について 小池昌代 村上陽一郎 の誕生 今福龍太 Not I,not I... 中沢新一 5 10 一部 小説…… ばなし │ 新釈諸国 噺 だ ざい 新規収録 太宰治の語りの魅力が遺憾なく発揮された珠玉の名品。古典文学に 材を取りながら、語彙の選び方、文章のリズム、会話の呼吸に、小説 家としての技が光る。小説を読む楽しみを存分に味わえる。 貧の意地│ おさむ 太宰 治 けいれん こ 太宰治は、天性の語 りの名手。奔放な語りの なかで、侍たちの意地の 滑稽さが容赦なく描かれ ていくが、その滑稽さは やがて崇高さに反転する。 文学の奇跡である。 てんてん ばかり食べさせられて胃痙攣を起こして輾転し、論語をひ 家へ持って帰って女房に𠮟𠮟𠮟𠮟𠮟𠮟𠮟𠮟𠮟𠮟𠮟𠮟𠮟𠮟𠮟𠮟 むかし江戸品川、藤茶屋のあたり、見るかげも無き草の いおり はらだ ないすけ ひげ 庵に、原田内助というおそろしく鬚の濃い、眼の血走った らいて、学而第一、と読むと必ず睡魔に襲われるところと いばらぎ 茨 木のり子 * 中年の大男が住んでいた。容貌おそろしげなる人は、その なり、毛虫がきらいで、それを見ると、きゃっと悲鳴を挙 つ 腹の真似などして掛け取りをしりぞけ、草の庵も風流の心 て金を作ってごちそうし、みそかには朝から酒を飲んで切 狐にでも憑かれたみたいにおろおろして質屋へ走って行つ きつね げて両手の指をひらいてのけぞり、人のおだてに乗って、 がくじ 自身の顔の威厳にみずから恐縮して、かえって、へんに弱 気になっているものであるが、この原田内助も、眉は太く 眼はぎょろりとして、ただものでないような立派な顔をし ていながら、いっこうに駄目な男で、剣術の折には眼を固 * くつぶって奇妙な声をあげながらあらぬ方に向かって突進 うそ し、壁につきあたって、まいった、と言い、いたずらに壁 しじみ 破りの異名を高め、蜆売りのずるい少年から、噓の身上話 を聞いて、おいおい声を放って泣き、蜆を全部買いしめて、 じ 2 ぐ ず からではなく、ただおのずから、そのように落ちぶれたと いうだけの事で、花も実も無い愚図の貧、親戚の持てあま 老教授の講義を聴きに行く。 ▼教科書 ぶきごう ページ〜 い (伊吹郷訳) 訳。 本文中の詩はすべて伊吹 伊 吹郷 一九四〇年─。 朝鮮文学研究者。以下の 大浪 学ノ ーで トを 小っ 脇にた。さいわい、親戚に富裕の者が二三あ し者の 人 あ かえりみれば 幼友達を ひとり、ふたり、とみな失い わたしはなにを願い ただひとり思いしずむのか? ひ と 六畳部屋は他人の国 窓辺に夜の雨がささやいているが、 わなに陥って殺された例 優れた抒情詩人がそ の純粋さゆえに、政治の は、珍しくない。だが、 加害者がかつての日本で あったことが、私たちに 痛苦を与え続ける。 尹 東柱 一九一七─四五 年。韓国の詩人。 生きとし生けるものをいとおしまねば そしてわたしに与えられた道を 歩みゆかねば。 こ よい さ 今宵も星が風に吹き晒らされる。 「 夭折の特権」とはどの 立 教大学 東京都にある ようなことか。 大学。 同 志社大学 京都府にあ る大学。 独 立運動 朝鮮の独立を 求める運動。一九一〇年 から一九四五年まで、朝 鮮は日本に併合され、朝 鮮語の使用が禁止された。 *さかのぼることわずか 〈獄死〉 〈嫌疑〉 第一部 随想 ◎ 空と風と星と詩 ︙︙ 111 平和教材 ユンドンジュ 生は 生・ きが た木 いもの のなのに 戦時中、日本で夭折した韓国人詩人・尹東柱を、日本の人詩 人 茨 詩がれ こう すくた 書けるのは り子が語った名随想。その美しい詩と残酷な運命は、こ か らや新 た 恥ずかしいことだ。 な国際関係を切り開いていく高校生たちに、ぜひ読んで ほしい。 随想 空と風と星と詩 という答えが返ってくることが多い。 韓国で「好きな詩人は?」と尋ねると、 ユンドンジュ 「尹東柱」 序 詩 は 死ぬ日まで空を仰ぎ 一点の恥辱なきことを、 葉あいにそよぐ風にも わたしは心痛んだ。 星をうたう心で せいれつ 冽な詩風は、若者をとらえるに十分な内容を 二十代でなければ絶対に書けないその清 持っている。 長生きするほど恥多き人生となり、こんなふうにはとても書けなくなってくる。 ◆◆ようせつ 折の特権ともいうべきものがあって、若さや純潔をそのまま凍結してしま 詩人には夭 ったような清らかさは、後世の読者をもひきつけずにはおかないし、ひらけば常に水仙 のようないい匂いが薫り立つ。 夭折と書いたが、尹東柱は事故や病気で逝ったのではない。 * かのぼることわずか半年前に、満二十七歳の若さで福岡刑 一九四五年、敗戦の日をさ 務所で獄死した人である。 最初は立教大学英文科に留学、やがて同志社大学英文科に移り、独立運動の嫌疑によ 5 4 110 5 二 1 第一部 随想 ◎ 空と 〈鮮烈〉 〈小脇 64 12 13 2 3 4 5 5 10 ページ〜 尹東柱 小説(二) 随 想 3 ▼教科書 4 5 1 64 5 110 10 2 10 3 1 10 5 一部 一部 評論…… きただ あきひろ 北田暁大 現代社会論 高校生にとって、日常的なツールの一つであるケータイ。この小さ な道具が社会をどのように変質させたのかを社会学的に論じた文 章。自分の身近なものを、大きな視野で捉えるよい手本となる。 つながりと秩序 ドイツの社会学者ニクラス・ルーマンによれば、コミュニケーションとは、①ある情 報の選択、②その情報の伝達のあり方についての選択、③受け手による①と②の差異の 貨幣論 『精選現代文B』の終盤では、より抽象度の高い評論文を。経済への 関心が欠かせない現代社会を生きて行く中で、 「貨幣」とはどのよう な認識のもとに成り立っているのか、必要不可欠な視点を養う。 にもはいらないモノを貨幣として使うとしたならば、それはそのものの数にもはいらな いモノを貨幣として受けとってくれる人間が自分のほかに多数存在しているからである。 貨幣を手にしている人間を、貨幣を貨幣として受けとってくれる人間の集団から切りは ◆ なしてしまったならば、その瞬間にその手にある貨幣は貨幣であることをやめて、ほん ページ〜 ここで、同一の貨幣を共有することによってむすばれる人間の集団のことを「貨幣共 同体」とよんでみよう。貨幣共同体──それは、なにかを共有することによって形成さ とうにものの数にもはいらないモノになってしまうのである。 5 ケータイは、いつい かなるところでも双方向 の通信を可能にする。遠 いところが近くなり、近 いところが遠くなる。ケ ータイは空間の性質を変 えるのだ。 ニ ク ラ ス・ ル ー マ ン Niklas Luhmann 一九 二七─九八年。社会学者。 著書に『社会システム理 論』などがある。 プ ロセス 手順。過程。 [英語] process 果があるか。 第二部 評論四 ◎ 貨幣共同体 …… り返しにはどのような効 いモノ」という語句の繰 「 ものの数にもはいらな pulse パ ルス 通信用語。電磁 気 に よ る 信 号。[ 英 語 ] れは空虚な仮定ではない。 うに崩されるだろう。こ 会は、トランプの城のよ をもって存在していた社 たら……。確かな現実感 つ分の紙幣が必要となっ ー たとえば一杯のかコ ばん ヒ ー を 飲 む の に、 鞄 一 ページ〜 いわい かつひと 岩井克人 なパルスといった、ものの数にもはいらないモノでしかない。ひとびとがそのものの数 貨幣とは、言語や法と同様に、純粋に「共同体」的な存在である。モノとしての貨幣 とは、みすぼらしい金属のかけらや薄よごれた紙の切れはしや眼にも見えない電磁気的 貨幣共同体 評論…… ▼教科書 厚かましいBはAの意図を読み切れず、素直に「いやぁ、それほどでも。」などと返 が、ルーマンが言うところのコミュニケーションである。 取って、Aの発言を理解(特定の理解を選択)する③。この三つの選択プロセスの総体 では褒め言葉である言語的情報①と、褒めているとは思えない伝達様式②の差異を読み るような語り方(伝達様式)を選択している。そして、受け手Bは、字義どおりの意味 * といった内容を持つ情報を提示(選択)し、②その情報が皮肉であるということがわか は天才だねぇ。」という発言を皮肉気な口調で述べるとき、Aは①「君は天才である。」 観察、という三つの選択の不可分の統一体であるという。たとえば、ある人Aが、「君 1 302 14 15 413 302 1 二 四 10 評論(二) 評論(四) 1 2 1 2 ▼教科書 413 5 10 二部 二部 予習 そうせき 教材に即した参考資料を随時掲載しました。 現代文学習に必要な知識をコラムにまとめました。 なつめ 夏目漱石 予習・構成・読解・表現の四項目に 分けて、本文の理解を補助します。 はなぜか、説明しなさい。 重要な漢字は、 教材ごとに整理。 隙(空隙) パ ラドックス 逆説。矛 盾した事柄のようだが、 よく考えると真理である paradox 夏目漱石と「こころ」 にこの場合、「先生」と「私」という二つの世代の対比は重 な伏線が張り巡らされていることに気がつくことだろう。特 深く読み進めてみると、あたかも推理小説のようにさまざま 「先生」との不思議な交流が前半の中心を占めている。注意 だった。それまでは教壇に立つかたわら英文学を研究し、イ 要な意味を持っている。「先生」は「お嬢さん」と結婚した 三十九歳の時のことで、小説家としては、はなはだ遅い出発 ギリスに留学する中で、日本の皮相な近代化や、西洋化のあ あと世をはばかって生活し、ついに自殺を決意するのだが、 編を通読してみたい。友人を死に追いやったエゴイズムを赤 ているのは「先生と遺書」の一部。これをきっかけにぜひ全 私」「先生と遺書」の三部から成り、教科書に採り上げられ 衝撃を読者に与え続けている。小説は「先生と私」 「両親と 「こころ」は死の二年前に書かれた作品で、今日なお大きな である。漱石はその晩年、芥川龍之介ら一世代下の若者たち 代の板挟みを生きるこうした感覚と別のものではなかったの の殉死をきっかけに「先生」が自殺したその動機も、実は時 こうした悲劇に自覚的であった。明治天皇の崩御と乃木希典 指摘しているが、明治の年号と共に生きた漱石は、誰よりも 漱石はその著名な講演「現代日本の開化」において、急速 な西洋化に伴い、物質的な進歩に精神が追いつかない矛盾を 「私」を選んだのはなぜだったのだろうか。 近現代文学史 小説神髄(坪内逍遙) 浮雲(二葉亭四迷) 明治1 一八六八 *明治維新 ふくざわゆ きち 学問のすゝめ(福沢諭吉) 一八七二 一八八五 一八八七 わた いい こうやひじり いずみきょうか は、自らの生きてきた「明治」への感慨と、来るべき新たな 第一部 羅針盤1 ◎ 夏目漱石と「こころ」 ︙︙ 世代へのメッセージが託されていたのではないだろうか。 ページ〜 近現代文学史を概観できるよう コンパクトにまとめました。 に、たとえ物質面で追いつくことはできても、そのゆがみは必ず精神 面にあらわれてくる。当時の文学が追求したのは、まさにこうした矛 盾や落差のもたらすさまざまな問題だったのである。 もりおうがい 文学における個人主義 西洋の思潮で文学に最も影響を与えたのは、 個人主義と写実主義である。個人主義に関しては、さまざまな作品で 自我(ほかの誰とも違う自分)が模索されながらも、たとえば森鷗外 主義」(一九一四)を講演した漱石も、同時に「こころ」(一九一四) 「行 それを明確に自覚することの絶望的な困難なのであった。 「私の個人 の「舞姫」(一八九〇)に象徴されるように、実際に明らかになるのは しらかばは 生じる、さまざまな悲劇を問題にしている。漱石、鷗外らの世代と、 人」(一九一二)などの作品では、自己に忠実であろうとするがゆえに 白樺派などそれに続く世代の作家との間には、こうした「個」の捉え 方に大きな開きがあったと言ってよいだろう。白樺派は自己に忠実で むし ゃの こう じ さねあつ し が なおや あることが同時に他者のためにもなる、という主張をストレートに展 開し、武者小路実篤の「友情」(一九一九)や志賀直哉の「和解」(一九 近現代文学の名作を 年表形式で紹介しました。 高 野聖( 泉 鏡花) みだれ髪(与謝野晶子) 墨 汁一滴(正岡子規) 185 日本近代文学の幕開け 近代の文学は新たな西洋文明の衝撃と共に始 なつめ そうせき まった。夏目漱石が「現代日本の開化」(一九一一)で述べているよう 概説 あひゞき(ツルゲーネフ、四迷訳) 一八八八 一八八九 *大日本帝国憲法発布 舞姫(森鷗外) 一八九〇 五重塔(幸田露伴) 一八九一 人生に相渉るとは何の謂ぞ(北村透谷) 一八九三 一八九四 *日清戦争 たけくらべ(樋口一葉) 一八九五 い か きりすと か うちむらかんぞう 若 菜集(島崎藤村) 歌よみに与ふる書(正岡子規) む さ しの くに き だ どっ ぽ 武 蔵野(国木田独歩) 余は如何にして基督信徒となりし乎(内村 鑑 三) トトギス」創刊 一八九七 「 ホ こんじきや しゃ 金 色夜叉(尾崎紅葉) 一八九八 一九〇〇 一九〇一 年表 ぎ まれすけ 裸々に告白していく筆致はきわめて印象的だが、そもそもこ との交流を深めていたが、先生と「私」との世代的な対比に 第一部 評論一 ◎ アイオワの玉葱 ︙︙ 24 の のような「遺書」を書き残した「先生」とはどのような人物 う け た 言 葉 で あ り 」( 二 五・7)と は ど の よ う な こ と か、 説 3. 「一つの母語とは一つの限界を、一つの限界の経験を引き 明しなさい。 4. 「言葉は、他者への想像力によって、言葉なのだ。 」(二六・ 表現 重要漢字 23 あくたがわりゅうのすけ だったのだろうか。「先生」の生き方についてどのような点 ▼教科書 小説全体のナレーターは学生の「私」で、偶然知り合った ためて考えてみたい。 に共感し、またどのような点に批判や疑問を感じるか、あら 暗 い 過 去 を 背 負 い 続 け た「 先 生 」 が、 遺 書 を 託 す 相 手 に り方への独自の批判をあたためていたのである。以後、亡く い やしくも 仮にも。 小説を書き上げていく、壮絶な日々でもあった。 上編 代 古代。はるか昔。 なるまでの十二年足らずの期間は、病と闘いながら数々の長 吾 人 我々。 語 ] 夏目漱石が『吾輩は猫である』で文壇にデビューしたのは と い う よ う な こ と。 [英 新 182 474 ● ● 現代日本の開化 【参考】 さくそう ようするに二つの入り乱れたる経路、すなわちできるだけ労力を節約したいという願望から 出て来る種々の発明とか器械力とかいう方面と、できるだけ気ままに勢力を費やしたいという 娯楽の方面、これが経となり緯となり千変万化錯綜して現今のように混乱した開化という不可 こんにち 1 思議な現象ができるのであります。 そこでそういうものを開化とすると、ここに一種妙なパラドックスとでもいいましょうか、 ちょっと聞くとおかしいが、実は誰しも認めなければならない現象が起こります。元来なぜ人 じん 間が開化の流れに沿うて、以上二種の活力を発現しつつ今日に及んだかといえば生まれながら ご そういう傾向をもっていると答えるよりほかに仕方がない。これを逆に申せば吾人の今日ある は全くこの本来の傾向あるがためにほかならんのであります。なお進んでいうと元のままで懐 手をしていては生存上どうしてもやりきれぬから、それからそれへと順々に押され押されてか く発展を遂げたと言わなければならないのです。してみれば古来何千年の労力と歳月を挙げて ようやくのこと現代の位置まで進んで来たのであるからして、いやしくもこの二種類の活力が 上代から今に至る長い時間に工夫し得た結果として昔よりも生活が楽になっていなければなら ないはずであります。けれども実際はどうか? 打ち明けて申せばお互いの生活ははなはだ苦 しい。昔の人に対して一歩も譲らざる苦痛の下に生活しているのだという自覚がお互いにある。 新 27 ●本文理解の助けとなる 「手引き」が充実。 「 ● 近現代文学史」 は、年表と概説でわかりやすくコンパクトにまとめました。 手引き ⓑイメージ (二一・7) (二一・7) 1.次の語句の意味を調べておこう。 ⓒニュアンス (二一・7) ⓓ相対化 (二五・ ) 2.今まで習ってきた英語の単語の中で、日本語と概念の違い 2)とはどのようなことか、説明しなさい。 1. 「玉葱は玉葱でもちがう玉葱」(二六・4)には、言語と文化 やずれを感じたものがないか考え、書き出しておこう。 構成 」 country. The earth lay white under the night sky. 』 ) (サイデンステッカー訳『 SnowCountry 「 ⓑ Thetraincameoutofthelongtunnelintothesnow 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底 ⓐ が白くなった。 」 (川端康成『雪国』 ) について、どのような考えが表れているか、考えてみよう。 」 の 例 は、 ど の よ う な こ と を 述 べ る た 1.「 玉 葱 」 と「 Onion めに挙げられているか、説明しなさい。 2.次の文章を読んで、印象の違いを話し合ってみよう。 )とはどのようなことか、説 うなことを考えたのか、まとめなさい。 2.「アイオワ」での体験から、筆者はことばについてどのよ 読解 1.「しんに厄介な困難」(二〇・ 明しなさい。 2.「わたしはおもわずかんがえこんでしまった」(二五・2)の 母語 人が身につけた最初の言語。人間は言語による社会的動物である。ゆえに、言語の違いが政治的な差別と結びつく場合が あるが、国家の制定した言語が「私」の言語ではない。母親から伝えられ、基本的な感情と思考を養い、 「私」を「私」たらし 幾(幾何) 喩(暗喩) 概(概要) 妙(妙案) 厄(災厄) 微(微量) 俗(俗説) 茎(球茎) 鬱(鬱憤) 培(培養) 憂(憂国) 栽(盆栽) 突(唐突) めている言語が「私」の言語だ。他言語との交通、 「私」と他者との交通の可能性、すなわち交通の多様性が言語の本質である。 重要漢字 趣(趣味) 郊(近郊) 22 23 28 27 26 24 23 22 21 20 18 5 ⓐ概念 5 21 23 16 17 1 21 評論教材には、 重要語解説を掲載。 474 2 20 キーワード ▼教科書 ・ ページ 27 10 15 20 23 新 182 3 2 3 4 羅針盤 4 年表・概説 10 15 1 20 23 30 5 12 20 23 31 34 33 10 20 22 参考 手引き
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