本書の使い方 ①章名(章の名称) ②章番号 3 (章の番号) 障害児者の発達・障害・生活/障害と発達の基礎概念 ⑤項目の通し番号 3章 だといわれる。人間の生活と健康状態を測る国 際的な基準である ICF は、ICIDH から引き継い ⑥ 項 本要 目 項約 問題に焦点があてられるようにな H)である。 た点にある。図1に示したように、 ease)から生じた身体上の機能障 が不自由になるといった能力障害 どの社会的不利(handicap)の3 みである。重要なことは、こうし 、 「問題に対応して適切な政策を 健康状態(health condition) (変調:disorder または病気 disease) 1980年、WHO によって提案された国際障害分類は、それまでの固定的・宿命的障害観の転 だ階層的障害理解についても、図2にみるよう 換を迫ることとなった。以後、国際的な障害者権利保障運動の影響を受けながら、保健・医 に、 「心身機能・身体構造」「 活動」「 参加 」 といっ 心身機能 (body function) ・ 活 動 参 加 療の枠を越えた障害と障害者のとらえ方についての議論が行われ、2001年、人間と障害につ 身体構造 (body structure) (activity) (participation) いての包括的理解に基づく国際生活機能分類(ICF)へと改訂された。ICF は学校教育におけ たニュートラルな用語を使用し、それら人間の 一般的な状態に困難が生じた状態を「機能障害」 る障害理解にも影響を与えている。 「活動制限」「 参加制約」と定義づけ、困難の度 合いをコード化した。 ●国際疾病分類 :ICD 環境因子 environmental factors 個人因子 personal factors 背景因子(contextual factors)) ■ 国際障害分類による障害の階層的理解 第二の特徴は、背景因子を明確に位置づけた International Statistical 図 2 国際生活機能分類(2001) Classification of Diseases ことである。障害を軽減することに環境が作用 世界保健機構(WHO)は発足当初から、世界的な健康・保健領域の発展を and Related Health Problems. ●心身機能 することは ICIDH も指摘していたことではあるが、ICF ではそれを評価すべき 課題として疾病動向を調査し、予防策を提起してきた。調査の基本となるのが、 現在第10版が発行されている。 心理的機能を含めた身体系の だとされた。物理的、人的、制度的環境をはじめとした 「 環境因子」と、性別、 生理的機能、「身体機能」とは、 日本版、厚生労働省大臣官房情 死因や病状、感染症などに関する全世界的な共通認識である。疾病統計を管理 年齢、生活感や職業といった 「することを目的の一つに作成されたのが国際疾病分類(ICD)である。疾病の 個人因子」である。 報部「疾病、傷害及び死因の統 器官、肢体など身体の解剖的部 全体として、人間の生活機能と障害を、各要素固有の問題と要素間の関係、 状態をコード化して診断するという手法をとっている。20世紀も後半になると、 などの機能や構造上で問題をか そして環境との相互作用においてとらえようとしているのが ICF である。この 感染症とともに慢性疾患の増加へと疾病構造が変化する。こうした変化を背景 ●国際障害分類 :ICIDH かえた状態を「機能障害」 という。 考え方に立つことによって、たとえば身体構造上は右手の機能が不全に陥った International Classification に、1970 年前後には、急性期の症状や外傷が治ったけれど通常の社会生活を 計分類」厚生統計協会参照。 分であり、それらが変異や喪失 of Impairments, Disabilities, 状態であっても、右手の機能回復、道具の使用、左手の活性化といった多面的 ●活動 送るには継続的な支援を必要とする人たちの問題に焦点があてられるようにな and Handicaps:A Manual of 課題や行為の個人による遂行 なアプローチを本人の合意のもとにすすめることによって、生活全体の質を向 る。ここで登場したのが国際障害分類(ICIDH)である。 Classification Relating to the のことをさし、個人が活動を行 上させることを取り組みの目標にするのである。 ICIDH の特徴は、障害を階層的にとらえた点にある。図1に示したように、 Consequences of Disease 機 うとき生じる困難を 「 活動制限」 能障害、能力障害、社会的不利 ■ 法制度への影響 の国際分類:疾病の諸帰結の分類 障害を漠としてみるのではなく、疾病(disease)から生じた身体上の機能障 という。 ⑧キーワード 障害を個人の問題 規にも影響を与え、国 能障害を有する者と 作用であって、これ あり、個人が何らかの生活・人 説。学習する際の基本的な知識を得 (能力低下) るための周辺領域や、項目内容の背景、項目に関わ Disease 的に参加することを妨げるものによって生ずる」 とし、第1条 (目的)において、 ビリテーション活動、社会福祉などがそれぞれど or Disorder Impairment Disability Handicap る今日的課題などを紹介しています。 ●環境因子 られやすいようにしています。 「障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、 のような貢献をしうるか明確にすることができる」 人びとが生活し、人生を送っ さまざまな障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全か ( 『80 年版(試案)の序文』 )ことである。 ている物的・社会的・態度的環 つ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む」としている。さら 図 1 国際障害分類(1980) of Functioning, Disability and 害等の障害と 「 社会的障壁」の双方によって日常生活に困難がもたらされてい 障害のとらえ方に関する国際的議論は 20 世紀の終盤、障害者の尊厳の尊重と を評価するには課題が多いとさ Health 生活機能、障害、健康 る人を障害者と定義した。「 社会的障壁 」 とは、「 社会における事物、制度、 慣行、 れてきたが、2007年には児童 平等を実現する議論と一体的にすすみ、 「人間的なニーズを満たすために特別 ●国際生活機能分類 :ICF ■ 国際障害分類から国際生活機能分類へ 体の障害者施策の基本を示した障害者基本法は、2011 年改正において、身体障 International Classification 体の障害者施策の基 害等の障害と 「 社会的 る人を障害者と定義 観念」等であるとさ 境。 しうるか明確にすることができる」 いってよいだろう。 ● ICF 児童青年版 特別支援教育との ICF は発達途上にある子ども 点を導入する試みが の目標設定において の国際分類。 青年版が作成されている(ICF な困難をもつ普通の市民」 (国連「国際障害者年行動計画」 、1980)という表現 観念」等であるとされている。わが国における障害のとらえ方の転換の端緒と いってよいだろう。 国際障害分類から国際生活機能分類へ 紀の終盤、障害者の尊厳の尊重と 間的なニーズを満たすために特別 者年行動計画」、1980)という表現 を肯定的にみる障害観への変革が として公表されたのが、国際生活 を記述するための標準的な言語と概 ─Children & Youth,ICF- CY) 。 をされるような、障害をもちつつ生きる人間を肯定的にみる障害観への変革が とマイナス)を示す概念への転換 ICF の目的は、 「健康状況と健康関連状況を記述するための標準的な言語と概 の目標設定において、「 活動・参加 」 の評価過程に ICF が用いられることがある。 念を提供することにある」。その特徴の第一は、マイナス面をみる 「 障害分類」 (中村尚子) check から人間が 「 生きること」のすべて(プラスとマイナス)を示す概念への転換 ICFの中の「活動・参加」のチェックリストで自分の生活をチェックしてみよう。 156 [参考文献] 特別支援教育 ICF 研究会編『特別支援教育と ICF―ICF は如何に障害児教育の課題を継承し、克服するのか』同研究会、2009年 157 ⑩ check(設問) check 求められていった。その結果、ICIDH の改訂として公表されたのが、 国際生活 特別支援教育との関わりでは、 個別の教育支援計画の作成において ICF の観 ●障害者権利条約 機能分類(ICF)である。 点を導入する試みが広がっている。また教育実践の場面では、とくに 自立活動 ➡18∼25ページ参照 は、マイナス面をみる 「 障害分類」 設問項目の内容について理解をより深め、 問題意識をもってもらえるように、討論 の課題や調査の課題を記しています。 4 ■ 法制度への影響 生 活 / 障 害 と 発 達 の 基 礎 概 念 能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互 た理解に立って、 「問題に対応して適切な政策を つ効果的に参加する 生場面にかかわるときに経験す を簡潔に示しています。また項目をより深く理解す 本文中の重要な事項についての解 疾病または変調 → 機能障害 → 能力障害 → 社会的不利 作用であって、これらの者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果 る困難を 「 参加制約 」 という。 発展させることを容易にし、医療サービスや リハ にわが国においても にわが国においても各種の障害者制度の改革をもたらしており、国や地方自治 )の序文』 )ことである。 障 害 ④ だ階層的障害理解に 特項 「心身機能・身体構 別に、 目 支たニュートラルな用 名 援一般的な状態に困難 教「活動制限」「 参加制 育合いをコード化した と 第二の特徴は、背 障ことである。障害を 害 児することは ICIDH も 教だとされた。物理的 育年齢、生活感や職業 ・ 全体として、人間 福そして環境との相互 祉考え方に立つことに に 関状態であっても、右 連なアプローチを本人 す上させることを取り組 ⑦本文 害(impairment) 的に参加することを 、日常生活上、歩行や書字が不自由になるといった能力障害 ●参加 障害を個人の問題としてだけとらえないというこの間の障害観の変化は、法 項目に関する内容を 1800 字程度で整理していま (disability) 、社会生活上、仕事ができないなどの社会的不利(handicap)の3 「障害者には、長期的 「WHO 国際障害分類」とされた。 生活・人生場面への関わりで 規にも影響を与え、国連・障害者権利条約では、 前文e項において、 障害とは 「機 つの層が積み重なったものとしてとらえる試みである。重要なことは、こうし さまざまな障壁との す。項目に関する基本的な概念を説明し、その内容 マニュアル。厚生省の翻訳版で を容易にし、医療サービスやリハ 活動、社会福祉などがそれぞれど 障 害 児 者 の 発 達 ・ が変化する。こうした変化を背景 が治ったけれど通常の社会生活を 際的な基準である IC る 1 2 8 の 項 目 を 収 載 。 ・ の 目 ︵ 内 の コ 1980年、WHO によって提案された国際障害分類は、それまでの固定的・宿命的障害観の転 容 解 ン 換を迫ることとなった。以後、国際的な障害者権利保障運動の影響を受けながら、保健・医 を 説 テ す の ン 療の枠を越えた障害と障害者のとらえ方についての議論が行われ、2001年、人間と障害につ ば 要 ツ 国際生活機能分類(ICF)へと改訂された。ICF は学校教育におけ や 点 ︶ く と 確 概 認 要 国際障害分類による障害の階層的理解 で に き つ 世界的な健康・保健領域の発展を ま い してきた。調査の基本となるのが、 す て 共通認識である。疾病統計を管理 。 説 疾病分類(ICD)である。疾病の 明 っている。20世紀も後半になると、 。 だといわれる。人間 国際障害分類と 071 国際生活機能分類 第 (1 ∼ 128) ③節名(節の名称) ⑪参考文献・ホームページ 学習をさらに発展させ、本文の理解を深めるために参 考にしてほしい文献やホームページを紹介しています。 発行年の新しい文献をできるだけ紹介していますが、 発行年の古い文献も重要なものは取り上げています。 ICFの中の [参考文献] 巻 末 に 執 筆 者 一 覧 を 掲 載 し て い ま す 。 各 項 目 の 執 筆 者 名 を 記 し て い ま す 。 ⑫ 執 特別支援教育 ICF 研 筆 者 名
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