ADM Selection

No.17
2004年 5月
ADM Selection
Contents
エー・ディ・エムからのお知らせ エー・ディ・エム セミナーのご案内 ‥‥‥‥2
マッチィ先生と生徒2人の楽しい勉強会 ‥‥3
センサー用回路について考える
DSPとヒトゲノム ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥11
第四回 ノンパラメトリック連鎖解析
取扱製品 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥16
エー・ディ・エム セミナーのご案内
分かりやすく実用的と、毎回ご好評をいただいているエー・ディ・エム技術セミナー
第8回目の今回も例年同様、大阪と東京の2会場で開催致します。
6月8日
(火)
大阪会場
6月18日(金)
東京会場
サンマリオンNBFタワー
3階「Aホール」
:アナログ技術セミナー
3階「Bホール」
:DSP技術セミナー
全共連ビル 本館
地下1階 第19会議室:DSP技術セミナー
半
蔵
門
駅
新宿通り
麹町駅
四谷・新宿方面
地下鉄
No1出口
麹町館
モス
バーガー
文芸春秋
麹町会館
ホテル
ニューオータニ
貝
坂
通
り
都市センター
ホテル
内
堀
通
り
全共連ビル
渋谷方面
都道府
県会館
赤
坂
見
附
駅
国立劇場
本
館
P
赤坂
プリンスホテル
四谷方面
皇
居
砂防会館
マクド
ナルド
永田町駅
地下鉄
No4出口
最高
裁判所
青山通り
全共連ビル 本館 東京都千代田区平河町2-7-9
TEL:03-5215-9501
地下鉄有楽町線・半蔵門線・南北線 永田町駅下車 徒歩2分 地下鉄銀座線・丸の内線 赤坂見附駅下車 徒歩7分
サンマリオン大阪NBFタワー 大阪市中央区南本町2-6-12
TEL:Aホール 06-6282-0531 Bホール 06-6282-0532
地下鉄御堂筋線・中央線 本町駅下車 徒歩4分
地下鉄堺筋線・中央線 堺筋本町駅下車 徒歩3分
※両会場とも駐車場はございません。公共の交通機関をご利用ください。
内 容
アナログ技術セミナー
¡センサー・シグナル・コンディショニング
¡アナログ・デバイセズ社新製品のご紹介
¡マッチィ先生のアナログ実践講座
∼ちゃんと動くアナログ回路を設計するための基礎知識、
センサー用アンプ回路の設計例題、S/N比改善のテクニック紹介∼
プログラム時間詳細は弊社WEB
サイトに掲載します。
下記URLをご参照ください。
http://www.adm.co.jp/new/
(5/14更新予定)
DSP技術セミナー
¡B
l
ack
f
i
nプロダクト
(デバイス&ソリューションズ)のご紹介
¡リアルタイムOS ThreadXのご紹介
¡Visual DSP実践説明・プログラミング手法
¡最適化プログラミング手法
※両セミナーとも途中休憩、昼食休憩有り
DSPセミナーに用意して頂く物
IBM AT互換機 Note-PC
(インストール用にCD-ROMドライブまたはUSBポートが必要)
お申し込みは、FAX、電子メールにて受け付けます。
5月28日
(金)必着 同封のお申し込み用紙へ
推奬OS:Windows2000/XP
必要項目をご記入の上、下記宛先までお申し込みください。
CPU:Pentium 500MHz以上
エー・ディ・エム株式会社 本社企画室
メモリ:32MB以上
FAX:06-6244-2750
E-Mail:[email protected]
※ 実習に使用するPC上にVisual DSPをインストールされている
場合は削除願います。ただしVisual DSP++がインストールされて
いる場合はそのままでも結構です。
尚、使用するPCは万が一のディスク内の破損に備えて、バック
アップを取っておいてください。
2
お問い合わせ・お申し込み
ADM SELECTION No.17
TEL:06-6244-2704
セミナーは東京と大阪の2会場で開催され、日程も異なります。
お申し込みとご参加の際には、お間違えのないように、ご注意ください。
マッチィ先生と生徒2人の
楽しい勉強会
16
センサー用回路について考える
作:松井邦彦
昨年のクリスマスの話です。我が家の上の子3人はすでにサンタクロー
まく滑ることができて驚いています。
スの正体を知ってしまい、一昨年まで「サンタさんがくる、サンタさん
しかし良く見てみると、ローラースケートでは一番うまかった次男坊よ
がくる」と言っていた次女も「サンタさんはお父さん」と言うようになっ
りは次女のほうがうまく滑っています。あとで気が付いたのですが、次
てしまいました。残るは小学1年の次男坊だけです。
男坊のローラースケートの滑りは良くなく、スピードも出ないようにな
「サンタさんは今年もくるかな」と聞くので、意地悪して「今年はサンタ
っていました。小さい子の遊び道具はけがをしないようになっているん
さんは風邪引いたので、日本には来られないみたいだよ」と言うと寂し
ですね。
そうな顔をするので、
「でもサンタさんの弟のヨンタさんがくることに
先日湯布院に用事があって、
運転代行を家内に頼み家族で出かけました。
なったよ」と安心させました。
いろいろあって、けっこう遅く着いてしまいました。泊まる予定はなか
それから、サンタさんのお母さんがニタさんで、お父さんがイッタさん、
ったのですが、さすがに疲れてしまい安宿を探すことに。
弟がヨンタさんで、その後にゴタさん、ロクタさん、ナナタさん、ハッ
何件か安価な順に電話をかけると、
「夕食なしで格安でよし」というとこ
タさん、キュウタさん、ジュッタさんと続くのだと話すと、
「ヨンタさん
ろが見つかりました。大部屋三つ程度の小さな宿でしたが、次男坊に
でも来てくれるといいな」とすっかり信じ込んでしまいました。
「おねしょしないように寝る前におしっこに行って」と言うと、気になっ
朝がたおもちゃを置いとくと、
「お父さん、ヨンタさんが来たよ。でも○
たのか10回ほど行ったり来たりして寝付きました。さすがに朝はおね
○デパートで買ったみたいだよ」と言われたときは、来年は気づいてし
しょはありませんでした。
まうかなと寂しい気持ちでいっぱいになりました。
ところが大きな長男のふとんが半分濡れているではありませんか。なん
4人の子にはローラースケートをプレゼント(バーゲンで買った)し、近
とも大きな世界地図です。体がでかいだけに半端な量ではありません。
くの空き地で練習させたところ、意外に下の子2人がうまく滑れます。
帰るとき謝りましたが、気の毒なのは宿屋さんです。
これならと、アイス・スケートに2人を連れていくと、転びながらもけ
災難は思いも着かない所から出ることを、改めて思いしらされた出来事
っこう滑れます。私も30年ぶりのアイス・スケートでしたが、意外にう
でした。
マッチィ先生:サーミスタは図1のように温度−抵抗特性が直線
センサー用回路について考える
ではないので、通常はリニアライズ(直線化)して使用します。
アラン:マッチィ先生、サーミスタを使った温度測定回路を考え
ているんですが、リニアライズについて教えてください。
リニアライズは簡単で、抵抗1本で簡単に済みます。
アラン:どうするのですか。
マッチィ先生:図2のように、サーミスタと直列に抵抗R1をつ
抵
抗
RT
〔Ω〕
1
1
RT=RO・expB( ― − ― )
TO
T
なぎます。アランさん、この回路の出力電圧はどうなりますか?
アラン:サーミスタの抵抗値をRTとすると出力電圧Voutは、
Vout=Vref*R1/(R1+RT)
RO
…(1)です。
マッチィ先生:そのとおりです。ここで使用する上限温度をTH
(そのときの出力をVoutTH)、下限温度をTL(そのときの
TO
温度T〔K〕
図1 サーミスタの抵抗−温度特性
TH + TL
RTM:― でのサーミスタ抵抗値 とすると、
2
サーミスタ
RTL:使用温度下限TLでのサーミスタ抵抗値
_t
VOUT
RI
VoutTM)とすると、
RTH:使用温度上限THでのサーミスタ抵抗値
VREF = 1V
RT
出力をVoutTL)、そしてその中間をTM(そのときの出力を
RI
= ― VREF
RI + RT
RI
RI
RI
RI
― VREF − ― VREF = ― VREF − ― VREF
RI + RTH
RI + RTM
RI + RTM
RI + RTL
になるようにRIを選べばよい。これより、
2RTL・RTH − RTM(RTL + RTH)
RI = ―
2RTM −(RTL + RTH)
(例)RTH = 0.974kΩ(100℃)
RTM = 4.16kΩ(50℃) より、RI = 3.23kΩ
RTL = 27.3kΩ(0℃)
図2 RIの選び方
ADM SELECTION No.17
3
マッチィ先生と生徒2人の
楽しい勉強会
16
センサー用回路について考える
VoutTH−VoutTM=VoutTM−VoutTL
高精度サーミスタを使うとよいでしょう。
…(2)
アラン:分かりました。
になるようにすればよいわけですから、
ドリー:マッチィ先生、高速のトランスインピーダンス・アンプを作
Vref*R1/(R1+RTH)-Vref*R1/(R1+RTM)
=Vref*R1/(R1+RTM)-Vref*R1/(R1+RTL
…(3)
となります。ドリーさん、これからR1を求めてください。
ドリー:はい、(3)式よりR1を求めると、次のようになります。
R1={2RTL・RTH−RTM(RTL+RTH)}/{ 2RTM− りたいのですが、なかなかうまくいきません。S/Nも必要なんです。
マッチィ先生:トランスインピーダンス・アンプ(電流−電圧変換回
路)は光センサーのように、電流出力のセンサーではなくてはな
らない回路ですね。以前(セレクションNo.6)にも紹介しました
が、ここではもう一工夫した回路を考えてみましょうか。でもそ
の前に、電流−電圧変換回路について復習してみましょう。
アランさん、電流−電圧変換回路にはどういうものがありますか。
(RTL+RTM)} …(4)
アランさん:図4が一番簡単な抵抗を使った電流−電圧変換回路です。
マッチィ先生:そうですね。たとえば、図2のような特性のサーミス
タを使おうとすると、
マッチィ先生:この回路の特徴は何ですか、ドリーさん。
ドリー:抵抗1本ですむので大変簡単な回路ですが、S/Nと応答性
を両立できません。
RTH=0.974kΩ(100℃)
RTM=4.16kΩ(50℃)
カットオフ周波数を計算する
RTL=27.3kΩ(0℃)
PD
① R=50Ω、CS=5PF(CSはセンサーの容量)の場合
1
fc= ― = 640MHz
2π・CS・R
ですから、
(4)式よりR1=3.23kΩが求められます。ドリーさん、
IS
図2の特性を計算してみてください。
ドリー:はい、図3のようになります。
VOUT = IS・R
② R=50kΩ、CS=5PFの場合
I
(fc = ― )
2π・CS・R
fc=640kHz
R
Rが大きいと、fcが小さくなってしまう。
S/Nと高連性の両立が難しい
出
力 1.0
電
圧
(V)
3.23
VOUT = ― × 1V
3.23+0.974
= 0.769V
6.66mV/℃
図4 抵抗を使った電流−電圧変換回路
マッチィ先生:そのとおりですね。図4のように、抵抗R=50Ωの
ときの電流感度は、1mA当たり50Ω*1mA=50mV/mAです
0.5
が、このときのカットオフ周波数fCはセンサーの容量をCSとす
3.23
VOUT = ― × 1V
3.23+4.16
= 0.436V
6.58mV/℃
ると、
fC=1//2π・CS・R …(5)
3.23
VOUT = ― × 1V
3.23+27.3
= 0.107V
0
50
=640MHz
100
温度(℃)
図3 図2の温度特性
になります。ところがセンサーの出力電流が小さいので、R=
50kΩと大きくしたとします。このときの電流感度は50V/mA
と先ほどの1000倍になります。もちろんS/Nもそれだけ改善さ
マッチィ先生:図3を見るときれいに直線化ができていることが分
かります。0∼50℃と50∼100℃の感度はそれぞれ、
0∼50℃の感度=6.58mV/℃
50∼100℃の感度=6.66mV/℃
ドリーさん、この場合のカットオフ周波数を計算してみてください。
ドリー:はい、(5)式に代入し
て、fC=640kHzになります。
マッチィ先生:あれあれ、S/N
と若干違いますから、0∼100℃では±4℃程度の直線化誤差に
は1000倍良くなったのに、
なります。
応答性は逆に1000倍悪くな
ドリー:誤差を小さくするにはどうするんですか?
マッチィ先生:リニアライズする温度範囲を小さくすることが一番で
す。たとえば100℃の温度スパンを0∼50℃にします。こうす
ることで、直線化誤差を±1℃程度にすることが可能です。
4
れます。しかし応答特性が問題です。
CD
ってしまったのですね。この
CS=CD+CST
VOUT
回路ではS/Nと応答性との両
立は難しいようですね。
アラン:そのためにオペアンプ
CST
R
を使った電流−電圧変換回
ただしこの誤差は直線化したことによる誤差ですから、実際には
路、いわゆるトランスインピ
サーミスタのバラツキによる誤差が追加されます。最近では高精
ーダンス・アンプ回路がある
度サーミスタが簡単に入手できますから、精度が必要な用途では
んですね。
ADM SELECTION No.17
PD
図5 センサー周辺の浮遊容量
になります。この回路のカットオフ周波数Fuは、使用するオペ
アンプのユニティ・ゲイン周波数をfuとすると、
CF
Fu=(1/2)√fu/2π・C1・RF
PD
=1/2π・CF・RF
RF
…(6)
になります。
また、回路が発振しないように位相余裕60°を確保するための
IS
−
CI
+
AI
帰還容量CFの値は、
VOUT = IS・RF
CF=2√C1/2π・RF・fu …(7)
になります。
マッチィ先生:そのとおりです。(7)式から分かることは、CFを小
オペアンプのユニティ・ゲイン周波数をfuとすると、
さくするためには、
I
fu/2π・CI・RF = ― …(1)
Fu ≒(1/2)√ ̄
2πCF・RF
1 容量の小さなセンサーを使用する
このとき位相余裕60°を確保するために必要なCFは、
CF ≒ 2
2 RFを小さくする
√ ̄
CI/2π・RF・fu …(2)
3 fuの大きなオペアンプを使用する
となる。
ことです。3は非常に重要なことで、高速オペアンプを使用する
ことで大きなRF(S/N改善)でも高速応答が可能になります。
(2)より、CFの値はfuの大きなオペアンプを使うことで
コントロールできるため、S/Nと高連性の両立が可能。
フォト・ダイオードを利用した高速光通信分野ではトランスイン
ピーダンス・アンプが広く使われています。また、このための専
図6 S/Nと高連性を両立できるトランスインピーダンス・アンプ回路
用アンプも市販されています。セレクションNo.7ではトランス
インピーダンス・アンプICのAD8015を紹介していますので参
考にしてください。
マッチィ先生:そのとおりです。図4の回路では応答性を良くするに
ところで、大きな電流感度が必要な場合は電流が小さいわけです
は、センサーの容量(周囲の浮遊容量も含む)を小さくする以外
から、当然ながら帰還抵抗RFが大きくなってしまいます。その
にこれだという方法がありません。図5のようにセンサー容量CD
ようなときは、オペアンプに入力バイアス電流が小さなFET入力
以外に抵抗Rにも容量がありますから、なかなかCSを小さくす
型のオペアンプを使用します。表1にFET入力型オペアンプの仕
ることはたいへんですね。
様例を示しておきます。
ところがトランスインピーダンス・アンプはなかなかおもしろい
回路で、S/Nと高速性の両立が可能ですので覚えておいて損はあ
りません。アランさん、トランスインピーダンス・アンプについ
て教えてください。
ドリー:でも先生、FET入力型オペアンプに適当なものがないとき
はどうすればよいですか。
マッチィ先生:それでドリーさんは困っていたんですね。そんなとき
はFET素子+オペアンプ構成を考えてみましょう。
アラン:トランスインピーダンス・アンプの基本回路は図6のよう
ドリー、アラン:???
−3dB周波数 スルーレート 0.1%セトリング 入力オフセット ドリフト 入力バイアス 入力雑音電圧 入力雑音電流 電源電圧/電流
(MHz) (V/μs)
Hz)(fA/√ ̄
Hz) (V/mA)
時間(ns)
電圧(mV) (μV/℃) 電流(pA) (nV/√ ̄
0.4
1
(1.5max) (17max)
2
7
0.6
5∼24/6.4
2回路入りは
AD8066
1
4
(2max) (27max)
1.5
11
0.7
5∼24/3.3
2回路入りは
AD8034
0.2
1
(1max) (15max)
0.6
6.6
0.6
5∼24/6.5 G=2.8以上で使用
0.045
0.8
350
(0.01%) (0.1max)(3.5max)
20
6
5
0.1
1.7
(0.9max) (10max)
21
8
0.25
17.5
AD8065 145/G=1 180/G=2 55/G=2
AD8033 80/G=1
80/G=2
95/G=2
AD8067 54/G=10 640/G=10 27/G=10
AD8610A
25
(GB積)
50
AD8512A 8(GB積)
20
AD8627 5(GB積)
5
備 考
400
0.05
(0.5max)
2.5
0.4
±5∼
±13/2.5
高精度
±5∼
±15/1.8
高精度
5∼
26/0.63
レールtoレール出力、
2回路はAD8626、
3回路はAD8625
表1 高速オペアンプ(FET入力)の仕様
ADM SELECTION No.17
5
マッチィ先生と生徒2人の
楽しい勉強会
16
センサー用回路について考える
ゲート・ドレイン
間電圧(V)
許容損失
(mW)
2SK192A
18
100
3∼24
3SK103
15
200
10
gm
(mS)
Ciss
(pF)
−3
(−1.2min)
7
3.5
−1
15
2
ドレイン電流 ゲート・ソース間
遮断電圧(V)
(mA)
Crss
(pF)
備 考
(0.65max) JFET
0.02
デュアルゲートMOS FET
表2 実験に使用したFET
−3dB周波数 スルーレート 0.1%セトリング 入力オフセット ドリフト 入力バイアス 入力雑音電圧 入力雑音電流 電源電圧/電流
(MHz) (V/μs)
Hz )(pA/√ ̄
Hz ) (V/mA)
時間(ns)
電圧(mV) (μV/℃) 電流(μA) (nV/√ ̄
AD8099 510/G=5
1350/
G=10
18/G=2
AD8021 490/G=1 120/G=1 23/G=2
0.1
(0.5max)
2.3
−6
0.95
2.6
±5/15
電圧帰還型、特殊ピン配置、
G=-1、2∼10で使用、
ディスエーブル付き
0.4
(1max)
0.5
7.5
2.1
2.1
±5/7
2回路入りはAD8022、
電圧帰還型
50
1.9
46(+入力)
±5/14
41(−入力)
電流帰還型、超高速
2(+入力)
5∼12/9
22.5(−入力)
電流帰還型、
2回路入りはAD8008
4.2∼15/
6.2
3回路入り、出力電流が大きい、
ビデオ用、電流帰還型
2(+入力) ±3∼±6
18(−入力)
/5
電流帰還型、
2回路入りはAD8002
5500/
G=2
10/G=2
2(5max)
4
AD8007 650/G=1
1000/
G=1
18/G=2
0.5
(4max)
3
2(+入力)
0.2(−入力)
2.7
AD8023A 125/G=3
1200
30
2(5max)
2
5(+入力)
15(−入力)
2
1000/
G=2
10/G=−1
10
3(+入力)
5(−入力)
2
1000/
G=1
AD8009
AD8001
440/G=2
880/G=1
AD8671 10(GB積)
2
(5.5max)
0.3
0.02
(0.075max)(0.5max)
4
備 考
3
2.8
14
0.3
高精度、
±5∼±15
2回路はAD8672、
/3
4回路はAD8674
表3 高速オペアンプ(バイポーラ入力)の仕様
マッチィ先生:そうなんです。図7の回路はQ1のソース電圧が2.5V
+5V
ですから、ゼロ電流出力がゲート電圧VGだけ小さく(2.5V−
10μ
VG)なってしまいます。これで別段問題ない応用も多いのです
CF
が、ここではもう一工夫してみましょう。
RF
IS
図8に一工夫したトランスインピーダンス・アンプ回路を示しま
QI
す。図7ではQ1のゲート電圧が問題でしたので、図8ではオペア
VG
PD
ンプA2でQ1のゲート電圧をモニタしています。オペアンプA1
2.5V
には入力バイアス電流の小さな高精度オペアンプが必要ですので、
−
10k
AI
出力
+
0.1μ
10k
ここではOP97を使用しています。
オペアンプA2には高速応答ということから、AD8055を使用し
2.5V
バイポーラ入力型
オペアンプで良い
図7 FET+オペアンプ構成のトランスインピーダンス・アンプ回路(1)
マッチィ先生:図7に基本回路を紹介します。当然FET素子には、容
量が小さくてノイズが小さいものが必要です。実験に使用したFET
を表2に紹介しておきます。
初段にFETを使用したので、オペアンプA1は通常のバイポーラ
入力型が使用できます。ただしQ1はソース・フォロワですので、
初段でのゲインはほぼ1です。そのため、オペアンプA1のノイ
ズがこの回路のS/Nを決定します。
参考に低ノイズの高速オペアンプの仕様を表3に示しておきます。
ています。
帰還抵抗をRF=100kΩ、容量C1をC1=5pFとすると(6)式
よりカットオフ周波数Fuは、
Fu=(1/2)√300MHz/2π・100kΩ・5pF
=4.9MHz
となります。
図4の回路では、fC=0.32MHzですから、10倍以上の差があります。
同様に、(7)式より帰還容量CFを計算すると、
CF=2√5pF/2π・100kΩ・300MHz
=0.33pF
ドリー:でもマッチィ先生、この回路では出力がゼロ基準にはなり
ませんよ。
6
ADM SELECTION No.17
になります。
念のために、回路のノイズを計算しておきましょう。図9に計算方
法を示しておきますので参考にしてください。図の中で一番大き
なノイズがオペアンプA1のノイズであるのがわかると思います。
なお、回路のカットオフ周波数Fuが4.9MHzですから、トラン
スインピーダンス・アンプの後段にLPFを入れて、少しでもS/N
改善に努めて下さい。
図10は入力容量のより小さなデュアル・ゲートMOSを使用し
た回路です。使い方は図7とほとんど同じです。
ノイズ電圧
(nV√ ̄
Hz )
帯域幅
(MHz)
6
0.3
VN ①
出力ノイズ
(μVRMS)
3.3
② 6√ ̄
4.9/0.3 = 24.2
CIN
③ 6(1+ ― )=97 (18.5-4.9)×1.57=21.4
CF
40
R④
24.2
448
4.9×1.57=7.7
111
合計
462
アラン:回路のゲインをさらに大きくするにはどうするんですか。
マッチィ先生:後段に別のアンプを用意してもよいのですが、図11
のような回路があります。これだとオペアンプの追加なしに、ゲ
出力に適当なLPFを追加することで
S/Nを改善できる
インの増加が可能です。ただし、ゲインを大きくしすぎると応答
性が悪化するので、特性を確認しながら最適のゲインを見つける
ようにしてください。
ところで、図8の回路にはすばらしい特徴が追加されています。
それは何でしょうか。
Fu
100
③
アラン、ドリー:????
マッチィ先生:それは闇電流(リーク電流)が非常に小さいので、
DC特性がばつぐんに良いということです。図12のように、通
常はセンサーには逆バイアス電圧をかけて使用します。それはセ
ンサーの容量が小さくなるからです(応答特性が良くなる)。と
ころが、その代わりに闇電流が増えてしまい、DC特性が悪化し
ノ
イ
ズ
電
圧 50
密
度 40
ク電流が非常に小さく(バイアス電圧が本当にゼロならリーク電
④
(nV/√ ̄
Hz )
てしまいます。
図8の回路はセンサーをゼロ・バイアスで使用するため、リー
②
6
①
fu
fI
0.1 0.3
1
4.9 10 18.5
100
300
周波数(MHz)
流もゼロ)なります。すなわちS/N的には一番すぐれた方法と
言えます。
図9 ノイズ電圧の計算
+5V
QI
0V
CF
0.33p
RF
100k
2SK192A
Copt
+5V
CF
470
VG
フォト・
ダイオード
R3
−
+
R2
R1
1M
IN
−
+
820
AI
OUT
RF
AD8055A
Copt
Q1
3SK103
−5V
470
C2
−
A2
+
1.2k
PD
OP097
AI
Out
AD8055A
−5V
※セレクションNo.6より、
RF = 100kΩ
CI = Cd+Cin≒5pF
とする
1M
In
−
CI
CF = 2 ―
2πRFfu
fu
1
Fu = ― ―
2πRFCI
2
1
200×106
=― ―
2
6.28×105×5×10−12
5×10
= 2 ―
6.28×105×300×106
≒ 4.9MHz
≒ 0.33PF
+
−12
図8 FET+オペアンプ構成のトランスインピーダンス・アンプ回路(2)
OP97
図10 FET+オペアンプ構成のトランスインピーダンス・アンプ回路(3)
ADM SELECTION No.17
7
マッチィ先生と生徒2人の
楽しい勉強会
16
センサー用回路について考える
CF
33P
調整が必要
33P
RF
1M
入力
R5
VOUT = is×RF 1+ ―
R4
(
A1
−
1M
AI
+
(
VOUT
R5
図14 FET入力オペアンプを使用した1MΩ入力プリアンプ回路
R4
+5V
図11
33P
さらにゲインを大きくする
50
1M
0.033μ
1M
入力
+
+5V
33P
ノイズ・フィルタ用
−
Q1
2SK541
A1
VOUT
1k
100
−5V
10μ
1000P
10M
−
A2
+
PD
100
QI
AD8610
図15
図12
フォトダイオードに逆バイアス電圧を加えるとき
1MΩ入力プリアンプの基本回路
ドリー:あれっ、さっきの回路と似ていますね。
マッチィ先生:そうです、基本構成さえ考えつけば応用は無限にあ
ります。基本は同じですので、細かな説明は省きます。
1MΩ入力アンプを設計する
アラン:マッチィ先生、ついでに高速A/Dコンバータ用の入力回路
アラン:マッチィ先生、1MΩ入力のアンプの作り方を教えてください。
マッチィ先生:図13のように、高速回路で必要な50Ω入力アンプ
回路ならバイポーラ入力型高速オペアンプが使用できるので比較
を教えてください。
マッチィ先生:図16に14ビット高速A/Dコンバータの基本回路を
示します。以前も紹介しましたが、高速A/Dコンバータ用の入力
的簡単なのですが、1MΩ入力というとFET入力型になってしま
います。FET入力型高速オペアンプはまだ品種も少なく、高速性
+5V
やノイズ特性などもバイポーラ型に比べると見劣りしてしまいます。
8、9、14、16、18、22、
26、28、30
図14に基本的な1MΩ入力アンプ回路を示します。これは反転
アンプ構成になっていますが、この回路を参考にして応用回路を
AVCC
考えてみましょう。
図15にFET+高速オペアンプ構成の1MΩ入力アンプの基本回路
A1
AD8138A
IP
を示します。
3 ▽REF
22
入力
バイポーラ入力の
オペアンプ
FET入力の
オペアンプ
LPF
560
0.1μ
560
1
4
−O
2 COM
8
+
 ̄
O
5
560
22
入力
+
AI
−
50
VOUT
+
−
IP
AI
VOUT
 ̄
AIN
AIN
11
20
C1
0.1μ
24
0.1μ
C2
GND
1M
R2
R1
12
Copt
R2
DRY 52
DB 51
50
49
48
47
46
45
44
41
40
39
38
37
DQ 36
 ̄
OVR 32
R1
ICI
AD6644
1、33、43
(a)50Ω入力
図13
8
ADM SELECTION No.17
(b)1MΩ入力
50Ω入力と1M入力の違い
+3.3V
図16
14ビットA/Dコンバータ回路
(a) DC特性
(AVCC = 5 V, DVCC = 3.3 V; TMIN = –25 C, T MAX= +85゜
C)
Parameter
Temp
RESOLUTION
ACCURACY
No Missing Codes
Offset Error
Gain Error
Differential Nonlinearity (DNL)
Integral Nonlinearity (INL)
TEMPERATURE DRIFT
Offset Error
Gain Error
POWER SUPPLY REJECTION (PSRR)
REFERENCE OUT (V REF )
ANALOG INPUTS (AIN, AIN )
Differential Input Voltage Range
Differential Input Resistance
Differential Input Capacitance
POWER SUPPLY
Supply Voltage
AVCC
DV CC
Supply Current
IA VCC (AV CC = 5.0 V)
ID VCC (DV CC = 3.3 V)
Rise Time
AVCC
POWER CONSUMPTION
(b)AC特性
Test
Level
Min
AD6644AST-40
Typ
Max
Min
14
Max
14
Bits
II
II
II
II
V
Full
Full
Full
Full
V
V
V
V
10
95
± 1.0
2.4
10
95
± 1.0
2.4
mV/V
V
Full
Full
25゜C
V
V
V
2.2
1
1.5
2.2
1
1.5
V p-p
kW
pF
Full
Full
II
II
Full
Full
Full
Full
4.85
3.0
+10
+10
+1.5
5.0
3.3
5.25
3.6
II
II
245
30
IV
II
1.3
–10
–10
–1.0
4.85
3.0
Guaranteed
3
–6
± 0.25
± 0.50
Unit
Full
Full
Full
Full
Full
–10
–10
–1.0
Guaranteed
3
–6
± 0.25
± 0.50
AD6644AST-65
Typ
+10
+10
+1.5
mV
% FS
LSB
LSB
ppm/ ゜
C
ppm/ ゜
C
5.0
3.3
5.25
3.6
V
V
276
36
245
30
276
36
mA
mA
1.5
1.3
15
1.5
ms
W
(AVCC = 5 V, DV CC = 3.3 V; ENCODE and ENCODE = Maximum Conversion Rate MSPS; TMIN = –25゜
C, TMAX= +85゜
C)
Temp
Test
Level
2.2 MHz
15.5 MHz
30.5 MHz
25゜C
25゜C
25゜C
II
II
II
74.5
74.0
73.5
72
72
72
74.5
74.0
73.5
dB
dB
dB
2.2 MHz
15.5 MHz
30.5 MHz
25゜C
25゜C
25゜C
II
II
V
74.5
74.0
73.0
72
72
74.5
74.0
73.0
dB
dB
dB
WORST HARMONIC (2 ND or 3 RD )
Analog Input
2.2 MHz
@ –1 dBFS
15.5 MHz
30.5 MHz
25゜C
25゜C
25゜C
II
II
V
92
90
85
83
83
92
90
85
dBc
dBc
dBc
WORST HARMONIC (4 TH or Higher)
Analog Input
2.2 MHz
@ –1 dBFS
15.5 MHz
30.5 MHz
25゜C
25゜C
25゜C
II
II
V
93
92
92
85
85
93
92
92
dBc
dBc
dBc
TWO-TONE SFDR
Full
V
100
100
dBFS
TWO -TONE IMD REJECTION
F1, F2 @ –7 dBFS
Full
V
90
90
dBc
ANALOG INPUT BANDWIDTH
25゜C
V
250
250
MHz
Parameter
SNR
Analog Input
@ –1 dBFS
SINAD 2
Analog Input
@ –1 dBFS
Min
AD6644AST-40
Typ
Max
Min
AD6644AST-65
Typ
Max
Unit
表4 AD6644の仕様例
ADM SELECTION No.17
9
マッチィ先生と生徒2人の
楽しい勉強会
16
センサー用回路について考える
アンプとしてはAD8138が非常に使いやすいです。表4
はAD6644の仕様です。
IN OUT
アラン:入力にLPF(ローパス・フィルタ)が付いていま
すね。
マッチィ先生:用途によってはこれが必要になります。周波
数が高いと通常はLCフィルタになりますが、終端型のLC
50Ω
フィルタではゲインが1/2になるので少しもったいない
0.205μ
0.205μ
0.205μ
L
L
Z
R
気がします。しかし終端しないと反射が気になるし・・・。
L
気休めかもしれませんが、帯域制限用LPFとして図17を
R
50Ω
C
82P
R
50Ω
C
82P
R
50Ω
C
82P
紹介しておきます。このフィルタはL=CR2 に選ぶとインピ
ーダンスZが抵抗Rに見えるおもしろいフィルタです。ただ
し減衰特性は良くありませんが、その代わりにベッセル特
性に近いので位相特性が良好です。
入力と出力の終端抵抗が違うときに思い出してください。
なお、ここではR=50Ωにしていますが、これにこだわる
必要はありません。任意の値で設計できます。
ボーデプロッタ
最後に、REF(基準)電圧が内蔵されていないA/Dコンバ
F
0 dB
I −40 dB
を紹介しておくので参考にしてください。
アラン、ドリー:ありがとうございました。
←
→
HORIZONTAL
LIN
図17
許容誤差
(%)
温度係数
(ppm/℃)
ADR420
A
B
2.048
0.15
0.05
2(10max)
1(3max)
ADR421
A
B
2.500
0.12
0.04
2(10max)
1(3max)
長期安定性
(ppm)
MHz
MHz
F 100
I 1
−3.14 dB
20.3 MHz
IN
出力電圧
(V)
SAVE
PHASE
VERTICAL
LIN
ータICではREF ICが必要です。表5に高精度REF ICの一例
OUT
帯域制限用LPF
ノイズ電圧
(0.1=10Hz、μVp-p)
入力電圧電流
(V/mA)
備 考
1.75
4∼18/0.39
低ノイズ、調整用端子付き
1.75
4.5∼18/0.39
50/1000H
ADR423
A
B
3.000
0.13
0.04
2(10max)
1(3max)
2
5∼18/0.39
ADR425
A
B
5.000
0.12
0.04
2(10max)
1(3max)
3.4
7∼18/0.39
REF191
E
F
G
2.048
2mV
5mV
10mV
20
低消費電流、スリープ・モード付き、
この他にREF192/193/194/195/196/
3.3∼15/
0.045(max) 198がある。REF電圧はそれぞれ2.5V/
3.0V/4.5V/5.0V/3.3V/4.096V
2(5max)
1.2mV/1000H
5(10max)
@125℃
10(25max)
表5 高精度リファレンスICの仕様
10
ADM SELECTION No.17
作:田中順治(株式会社米順 代表取締役)
第四回 ノンパラメトリック連鎖解析
前回に続いて、連鎖解析の話をしたいと思います。今回は、ノンパラ
メトリック連鎖解析といわれるメンデル型ではない遺伝形態に応用さ
れる解析方法です。
1/2
3/4
1/2
IBD=0
3/4
IBD=0
(1)
1. 連鎖解析
1/3
(2)
2/4
1/3
3/4
1/2
2/4
1-1ノンパラメトリック連鎖解析
前回説明をしたパラメトリック連鎖解析では、メンデル型の遺伝を仮定
1/2
IBD=0
し、疾患原因遺伝子座位の存在領域を絞り込んでいきました。しかしこ
3/4
IBD=0
(3)
(4)
の方法では、実はありふれた病気のような多因子性疾患を調べることが
できません。また、浸透率が予想できない場合にも使用できません。そ
2/4
のような場合には、ノンパラメトリック連鎖解析が多く用いられます。
1/2
1/3
2/3
3/4
1/2
IBD=1
ここでは、ノンパラメトリック連鎖解析の内よく使われる罹患同胞対解
3/4
IBD=1
(5)
析の説明をします。
この罹患同胞対解析では、罹患した兄弟姉妹(同胞)
とその両親の遺伝
1/4
1/3
(6)
1/4
1/3
3/4
1/2
2/3
情報を多数集めて解析していく方法です。この場合家系内に最低二人の
罹患患者が必要となります。
1/2
IBD=1
まずIBD(Identity by descent)
について考えていきます。IBDとは、
3/4
IBD=1
(7)
(8)
同胞が両親から同じアレルを受け取る状態、幾つの同じアレルを同胞が
遺伝しているかを言います。つまり、ひとつの遺伝子座位について考え
るとIBDは、0、1、2の場合が在りうることとなります。
2/3
1/2
両親のある遺伝子座のアレル情報がそれぞれ1/2、3/4である場合の
2/4
1/4
3/4
1/2
IBD=1
にIBD=0が4種類、IBD=1が8種類、IBD=2が4種類あり、この遺伝子
たくランダムに現れることが期待されます。つまり、
3/4
IBD=1
(9)
すべての遺伝形態とそのIBD値を図1に示します。図1からわかるよう
座が、注目している表現型と関連がないのならば、この16種類はまっ
2/4
1/4
1/2
(10)
1/3
2/3
3/4
1/2
IBD=1
1/3
3/4
IBD=1
(11)
(12)
IBD=0 −> 4/16= 0.25
IBD=1 −> 8/16= 0.5
2/4
IBD=2 −> 4/16= 0.25
1/2
2/3
2/4
3/4
1/2
IBD=2
1/4
3/4
IBD=2
(13)
(14)
これが、一般に期待されるIBDの分布となります。ここで前回同様○
(丸囲み)は女性、□(四角囲み)は男性を表します。
1/3
1/2
1/3
2/4
3/4
1/2
3/4
IBD=2
IBD=2
一方この遺伝子座が表現型(今の場合は特定の疾患)
と関連があるなら
2/4
(15)
(16)
ば、特定のアレルが罹患患者には多く見られると期待されます。これよ
り、罹患患者のIBDの分布を調べると、一般の分布よりずれていること
1/4
1/4
2/3
2/3
が期待される為、罹患同胞対の統計情報より特定のアレルが同定され
ると期待されます。
図1 すべての遺伝形態とIBD
ADM SELECTION No.17
11
第四回 ノンパラメトリック連鎖解析
パラメトリック連鎖解析の場合は、組み換えの割合θの関数とし最大尤
条件を満たすことが知られています。2)
度を計算しましたが、ノンパラメトリック連鎖解析の場合は、IBDの場
合分けに基づいて尤度を計算していきます。その上で、連鎖がない場
合、つまりIBDが0、1、2のそれぞれの尤度が0.25、0.5、0.25の時
0<=z0<=0.25
との比を取り尤度最大となるIBDの割合を求めます。
0<=z1<=0.5
以下に簡単な例でそのアルゴリズムを述べます。
z1>= 2*z0
…(2)
実際に考えるべき尤度は、
この範囲内でL(z)=(1−z0−z1)が最大となるzの組み合わせを求め
N
L(z)=
2
ΠΣ z w
i
ij
ます。
…(1)
j=1 i=0
これは明らかにz0=z1=0の場合です。このときのL
(z)=1.0、L
(0.25、
0.5、0.25)=0.25より、最大尤度は、4となります。
ここで、Nは罹患同胞対の数、w0jはj番目の罹患同胞対のIBD=0の確
率、w1jはIBD=1、w2jはIBD=2の確率をそれぞれ表し、
w0j+w1j+w2j=1
1/2
3/4
1/3
1/4
これを簡単な例で具体的に見ていきたいと思います。
1/2
3/4
図3 罹患同胞例 2
1/3
1/3
図2 罹患同胞例 1
図3、例2の場合は、同胞の1は、どちらも父親の1しかありえず、同胞
の3または4が母親より遺伝した場合しか存在しないため、
w0=0
w1=1
図2の例1の場合を考えます。同胞が二人とも1/3であり、1は、父親
の1、3は、母親の3の場合しかありえないことより、同胞の1/3は、同
じものである場合しかなく、
w2=0
よって
L(例2)= z1
w0=0
w1=0
w2=1
1/2
3/4
1/3
2/4
よって
L(例1)= z2
この場合の尤度L(z)/L(0.25、0.5、0.25)が最大になるzを考えて見
ます。本来複数のサンプル全体の尤度を求める必要があるのですが、求
め方を見るためにこのサンプル単体で求めてみます。
図4 罹患同胞例 3
L(0.25、0.5、0.25)は、固定値であるので、L(z)の最大値を求めれ
ばよいこととなります。
L
(z)= 0*z0+0*z1+1.0*z2= z2=
(1−z0−z1)が、最大となる場合を探す
図4の例3は、同胞の1と2が父親より、3と4が母親より遺伝した場合
こととなります。
しかありえない為、
ここで、z0とz1は、下のホールマンの三角形(Holman's Triangle)の
12
ADM SELECTION No.17
w0=1
w0=1/4
w1=0
w1=1/2
w2=0
w2=1/4
L(例5)=1/4 z0 + 1/2 z1 + 1/4z2
よって
L(例3)= z0
1/1
1/3
1/1
3/4
1/3
1/4
3/4
1/3
図7 罹患同胞例 6
図5 罹患同胞例 4
図7の例6の場合は、同胞の1は父親から遺伝したことは明確ですが、
図5の例4の場合は、同胞の3は、母親よりの遺伝は明確であります。
同祖であるかどうかは明確でなく、ある場合1/2、ない場合1/2とな
一方同胞の1は、父親よりの遺伝は明確ですが、同じ染色体(同祖)で
ります。
あるかはわかりません。この場合は、同祖である確率と、同祖でない確
また、同胞の3と4は、母親よりの遺伝であることは明確であり、しか
率は同じですから、それぞれ1/2であります。
も同祖はありません。よって、
よって、
w0=1/2
w0=0
w1=1/2
w1=1/2
w2=0
w2=1/2
L(例6)=1/2z0 + 1/2 z1
L(例4)=1/2 z1 + 1/2z2
このようにして、罹患同胞家系ごとにIBDの値を求めていきます。
それぞれの家系の事象は、お互いに独立であるから全体の家系の尤度
1/1
3/3
は、各家系で得られた尤度の積、すべての同時確率として表されます。
つまり例1∼6の全体の尤度は、
L(z)= z2*z1*z0(
* 1/2 z1 + 1/2z2)
(
* 1/4 z0 + 1/2 z1 + 1/4z2 )
1/3
1/3
図6 罹患同胞例 5
図6の例5の場合は、同胞の1は父親から、3は母親から遺伝したこと
は明確ですが、同じ染色体であるかどうかは、明確ではありません。同
胞の組み合わせは、4×4で16種です。この時、IBD=2となるのは、同
(
* 1/2z0 + 1/2 z1)
z2=(1- z0 - z1)を代入して、変数z2を消去すると、定数項を除き
L(z)=
* 1- z0)
(1+ z0)
z1*z0(
(
* z0 +z1)
(
* 1-z0 -z1)
となります。
じもの同士の組み合わせで4種類、IBD=0となるのは、違うもの同士
の組み合わせで4種類、他の12種類は、IBD=1となります。よって、
ホールマンの三角形の範囲内でL(z)が最大となるzの組み合わせを求
めます。これは、6次の方程式となりますので簡単には求められません。
ADM SELECTION No.17
13
第四回 ノンパラメトリック連鎖解析
しかし、最尤値を求める様々な方法が考慮されており、それを使って解
いていきます。一般的には、変数z1、z0の高次連立方程式ですので偏
(w01z1+w11z0+w21)
(w02z1+w12z0+w22)
=w01w02z12+w01w02z1z0+w01w12z1
微分をとります。
+ w11w02z1z0+w11w12z02+w11w22z0
+ w21w02z1+ w21w12z0+ w21w22
つまり、
∂L(z)/∂z0=0
これを、単純に計算するとサンプル数Nの時3N回の掛け算となります。
∂L(z)/∂z1=0
このような演算量を表す指標として、O記法といわれるものがよく使
われます。これは、O(N)のような書き方をされ、Nのオーダーで計算
この高次連立方程式をニュートン−ラフソン法、ラグランジェの未定乗
量が増えていくことを意味します。
数法、EMアルゴリズムなど様々な数値計算で求めていきます。
一般に1、LogN、N、NLogN、N2、2N、N!などが使われ、
ここでは罹患同胞対を6組考えましたので、最大zの6次方程式となり
ました。これを実際のサンプル数、数百に適応すると数百次元の方程式
となります。
これは大変な計算量となります、前回少し考えましたように、計算の効
1<LogN<N<NLogN<N2<2N<N!
です。
今の場合は、O(3N)
となります。
たとえばサンプル数を100とすると、
率化が必須となります。
100
3
1-2 計算の効率化
= 5.15×1047
計算の高速化を考えるときに、一般的に考慮されるのは、
1)計算システムの高速化(周波数の高速化)
かなり掛け算の回数が多いので、この計算量の高速化を考えて見ます。
2)並列化
これだけの計算量を、まず掛け算に10サイクルかかるRISCプロセッ
3)高速アルゴリズムの適用
サとして、計算量を見積もってみましょう。
4)命令の効率化
この中で、1)
の周波数の高速化がもっとも一般的になされます。また、2)
の並列化による高速化もいろいろな所で述べられているので、ここで
は、3)
と4)の高速化について考えてみたいと思います。
計算量を考える場合に大切なことは、ノンパラメトリック連鎖解析の計
算量が、サンプルの数が増えるに伴ってどのような割合で増加するかと
いうことです。
N
L(z)=
これだけの掛け算が必要となります。
1 掛け算が10サイクルのプロセッサの場合
5.15x1048サイクル
2 DSPのように掛け算が1サイクルの場合
5.15x1047
そこで、例えばアナログ・デバイス社のDSP、Blackfinの持つベクトル
演算や、同TigerSHARCの並列乗算命令を使用するとどうでしょう。
2
ΠΣ z w
i
ij
…(1)
(再)
j=1 i=0
3 2つの積が1サイクルでできる場合
2.58×1047
4 4つの積が1サイクルでできる場合
尤度を求める式を再度上に示しました。
1.29x1047
一つのΣの計算は、具体的には、
いわゆるSIMDの命令を備えることで、演算数は少なくなりますが全
z0woj+z1w1j+z2w2j
体の演算数から考えるともう少し何とかしたいところです。
1GHzのプロセッサとすると、一秒間に109回演算できますから約1039
秒演算時間がかかることになります。
一般的に考えると三回の積と二回の和の5回の演算(命令)です。
しかし、ここでz0、z1、z2は、いつも共通であるためwoj、w1j、w2につい
てのみ考えればよいことになります。
全体の尤度を求める計算は、各罹患同胞対の尤度を求めた後すべての
画期的な演算時間の短縮には、一般的にアルゴリズムの改良が必要です。
上の演算をもう一度よく見てみると、ニュートン法などで、この計算結
果をzで変微分することを考えると掛け算の実行後zの次数でまとめた
方が効率的です。
積を取ります。
これは、計算としては、基本的に次のようになります。
(w01z1+w11z0+w21)
(w02z1+w12z0+w22)
= w01w02z12
14
ADM SELECTION No.17
度犠牲にすることにより計算の効率は得られます。
+(w01w02+ w11w02)z1z0
+(w01w12+ w21w02)z1
+w11w12z02
1-3 遺伝学的考察
+(w11w22+ w21w12)z0
ノンパラメトリック連鎖解析は、遺伝形態を仮定することなく、疾患原因
+ w21w22
遺伝子座位数にもよらない汎用的な方法として、最尤法を利用するので
すが、前提を設けることによって効率化ができます。
= w01w02z12
まず考えられるのは、罹患同胞対の例でいろいろ見ましたように、親の
+(
(w01w02+ w11w02)z0+w01w12+ w21w02)z1
遺伝情報が共にヘテロ接合(二つのアレルが違う)ならば、IBDの値は、
+w11w12z02+(w11w22+ w21w12)z0+ w21w22
確率的ではなく、明確に各家族で決まります。つまり、そのような家族
のみを集めることができれば、計算はかなり簡略化されます。
上記の計算は、9回の積とz1の次数でまとめ且つz0でまとめる3回の
2
実際この場合、L(z)=z0lz1mz2nなどとなり、式の展開が必要なくなり
和です。単純に考えるとサンプル数NでΣ3(n +3n+2)/2の積と
ます。
Σ(n2+3n+2)/2の和となります。この場合、後にz1で偏微分するこ
また、調べる遺伝子座と疾患と関連があるならば、IBD=0が、1/4よ
とを考えてz1でまとめています。
り増えるとは考えにくく、これより平均値検定が考えられます。
これより、サンプル数Nの場合の全尤度を求める計算量は、
n(n2+6n+11)/2の積とn(n2+6n+11)/6の和となります。
今度の計算量は、O(N3)
となります。これは、3Nに比べかなり少なく
2
1
X=2z′+z′
なりました。実際N=100とすると10601100回の積と3533700
この値が1となる
(連鎖がない場合)帰無仮説での期待値の検定であ
回の和になります。
これは、1.1x108程度の演算量で、5.15×1047と比べるとかなり少
り、実際優性遺伝では、検定力があることが知られています。
ここで、_は、サンプル集計されたものであることを表します。
なくなりました。
また、ホールマンの三角形2)の考えをもう少し進めた最適加重を施し
1 掛け算が10サイクルのCPUの場合
た検定量X(ミニマックス検定)が、次の式で提案されています。1)
106011000+3533700=109544700 ∼1.1x108
2 DSPのように掛け算が1サイクルの場合
X=1.04476(1.58-2.58z0-1.87z1)n1/2
7
10601100+3533700=14134800 ∼1.4x10
3 積和が1サイクルの場合
10601100 ∼1.1x107
この式は、実際z0=1/4、z1=1/2の時(連鎖が無い時)X=0となります。
また、割合検定、
4 2つの積和が1サイクルでできる場合
5300550∼5.3x106
2
(n/3)1/2
X=(4z -1)
5 4つの積和が1サイクルでできる場合
2650275∼2.7x106
これで二桁の計算量減となりました。ここでは、計算量の大まかな見
z2の割合を1/4の帰無化説との検定をする方法が提案されており、劣
性遺伝でよい検定力を示しています。1)
積もりのため実際のデータの転送等本来必要なものはカウントしていま
このように色々なXで示される統計量の検定では、計算量は全サンプ
せん。
ルでz0、z1、z2の数を数え上げ、上のX式に代入することで求まるため
これは、方程式を求めるためだけの計算量です。
実は、これはz1での偏微分のことしか考えておりませんので、できれ
ばz0での偏微分のことも考慮し、z0で同じようにまとめておくと便利
大幅に計算量は削減されます。
一方それゆえに,もともとノンパラメトリック連鎖解析が目指した汎用
性を犠牲としています。
です。そのようにすると、すべて同じことをz0とz1の両方に対して行
う必要があり、計算量は2倍となります。それでも108程度の計算量
付)参考文献
です。
1)Whittemore As, Tu I-P, 1998
しかし、このようにzでまとめるとすると、ほかの方法で解を求めよう
Simple, robust linkage tests for affected sibs. Am J Hum Genet 62:1228-1242
と考えた場合には、再構成が必要となり二度手間です。前のようにただ
単に展開をしておけば後でどのような処理をするにも対処はしやすくな
ります。
2)Holmans P. 1993. Asymptotic properties of affected-sib-pair linkage
analysis. Am J Hum Genet 52: 362-374
最尤法の特徴は、その方法の汎用性にありますが、その汎用性をある程
ADM SELECTION No.17
15
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■
モニター/コントローラ
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