名古屋大学地球水循環研究センター 共同研究報告書

別紙様式2
名古屋大学地球水循環研究センター
共同研究報告書
平成27年3月31日
名古屋大学地球水循環研究センター長 殿
申請者(研究代表者)
所属機関 富山大学理学部地球科学科____
職
_教授____________
氏名
_安永 数明_________
e-mail
[email protected]
下記の共同研究について、別紙の通り報告します。
1 研究課題
国土交通省 MP レーダデータを用いた北陸地方の降雨・降雪システムに関する研究
2 研究組織
氏名
代表者
安永 数明
センター対応教員
篠田太郎
3 研究内容 (別紙)
所属
職
富山大学理学部地球 教授
科学科
分担研究課題
国土交通省 MP レーダデータを用い
た北陸地方の降雨・降雪システムに
関する研究
1.はじめに
国土交通省 X バンド MP レーダは,従来のレーダより時間,空間解像
度が細かく,降雨による河川の増水研究などで使用されている。気象
庁レーダアメダス解析雨量よりも高解像という特徴を生かして,本研
究では降雨の地域的な特性の違いを詳細に調べた。解析の対象範囲は
富 山 県富山市水橋に設置されているレーダから半径約 30km 以内で,
対象期間は 2010 年 9 月 1 日~2013 年 12 月 31 日とした。
2.富山市西部の丘陵地を挟んだ降水分布の違いについて
富山市西部には呉羽山とよばれる丘陵地が拡がっている(図1)。観測
データを用いて,降水システムの盛衰を一つ一つ確認したところ,西
から移動してきたシステムが,呉羽山を越える際に強化される様子が
幾つかの例で見られた。このことから冬季を除いた 4-11 月について,
対象範囲の平均降雨分布に関して月別・ 年別に調べた。その結果,対
象期間のうち半分以上の月で,富山県射水市周辺で平均降雨強度が周
囲より低くなっていた(例えば図2)。この結果は,降水強度別頻度に
おいて,呉羽山の西側で弱雨(1mm・h-1 以下)の頻度が増える一方
で,強雨(10mm・h-1 以上)の頻度が減る事を反映したものであっ
た(東部では逆)。呉羽山は,標高 80m 程度の低い地形であるが,こ
のような低い地形でも降水分布に影響を与えることは興味深い。
3.富山平野の降水の日周期について
ここでは,富山県の降水量の日周期に関して,月別に陸域と海域の違
いに注目しながら調べた(図3)。陸域においては,夏季である7月と
8月に日周期が顕著であり,海域については,7月のみで日周期が顕
著であった(図4)。夏季の陸上の日周期をもたらす降水システムの盛
衰を一つ一つ確認したところ,夏季の午後に山岳域の麓付近から降水
システムが発達し始めて,それが併合しながら平野に向かうパターン
が多いことが分かった(例えば図5)。
4.研究成果
仲 香織,「X バンド MP レーダを用いた富山県の降雨特性」,2014 年
度富山大学理学部地球科学科卒業論文
図1:富山市西部の地形(Yahoo!地図より引用)。
図2:富山市西部における平均降雨強度の領域平均からの偏差(単位:
mm・h-1)。2011 年の10月と8月の例。
図3:富山県の地形(Yahoo!地図より引用)。赤枠は,解析範囲を示す。
図4:富山平野における7月の日周期。縦軸が時間(下から上),横軸が
緯度を示す。黒枠は,陸域と海域の境界を示す。
図5:富山平野において降水の顕著な日周期を示した 2011 年 8 月 5 日
14 時(平均降水のピーク時刻)の降水分布。