くらしの現場レポート 2015 年 5 月 いつまでも健康的に若々しく、人生を楽しむために 50∼60代男性のおしゃれ・身だしなみの実態と 「おもい」 生活者研究センター 主任研究員 青木 基 生活者研究センターでは、2014年5月と9月の「くらしの現場レポート」で、20代男性のスキンケア行動 の意識と実態を調査・報告しています。さらに調査年代の幅を広げ、10∼60代男性の「おしゃれ・身だしなみ 意識と実態」 について調査を行ったところ、50∼60代ではその年代ならではの生活背景や実情から、おしゃ れや身だしなみへの関心が再び高まる傾向にあることがわかりました。本レポートでは、50代後半∼60代 男性にスポットを当て、美容・身だしなみ意識とその実態について報告します。 トピックス ●自分を見つめ直す定年前後が転機。身だしなみに目覚めるとき ●いつまでも若々しく見られたい!肌への意識は高い ●前向きミドル・シニアたちの身だしなみ行動の実際 ●健康的で若々しくいるために、スキンケアという新習慣 【調査概要】 「10∼60代男性のおしゃれ・身だしなみ意識と実態」 調査期間:2012年4∼6月 調査期間:2012年11月 調査方法:家庭訪問/会場インタビュー調査 調査対象:首都圏在住10∼60代男性 調査方法:インターネット調査 (おしゃれ・身だしなみに関心がある人) 対象者数:31人 調査対象:首都圏在住15∼69歳男性 回答者数:1,100人 「50∼60代男性の美容商品使用のきっかけに関する調査」 調査期間:2013年4∼5月 調査方法:家庭訪問インタビュー調査 調査対象:首都圏在住50∼60代男性 (おしゃれ・身だしなみに関心がある人) 対象者数:13人 -1- くらしの現場レポート 自分を見つめ直す定年前後が転機。 身だしなみに目覚めるとき おしゃれや身だしなみに関心のある10∼60代男性を対象に、身だしなみは 「何のためにするのか」 を尋ね たところ、どの年代にも共通して、 「 マイナス」→「ゼロ」→「プラス」の3つの構造があることがわかりました。 初めに 「不快に思われたくない/清潔にしたい」 というマイナスからゼロへのおもいがあり、次に 「印象よく 見られたい」 というゼロからプラスへのおもいがありました。さらに、男性ならではの「一目置かれたい」 とい うおもいも見られました。いずれの背景にも、 「 他者との関係性の充実感」 ( 他者への印象) と 「自己完結の充 実感」 ( 自己満足)があり、それらが「幸せや楽しい人生」の実現に結びついていると考えられます。 特に50代後半∼60代男性には、定年を機に自分自身を見つめ直し、仕事一筋の生活からこれからは自分 や自分たち夫婦のために楽しみたいというおもいがあり、 「 今までやれなかったことをやってみたい」 「コミュ ニティを広げたい」 「 若々しくいたい」 という前向きな言葉が多く聞かれました (図1)。新たな「他者との関係 性」 を作るときに、印象よく見られたいおもいから、おしゃれや身だしなみは、定年後の「第2の人生」 を謳歌し 新しいチャレンジをするための重要なツールの一つになっていることが見受けられました。 幸せ/楽しい人生/成功・自己実現 (仕事・夢・足跡) + 美 容・身 だ し な み に 対 す る 意 識 ●一目置かれたい ● 他者との関係性の充実感 コミュニティーを 広げたい ●自己完結の充実感 生涯、社会的に 現役でいたい 今までやれなかった 事をやってみたい 若々しくいたい ●印象よく見られたい 人間関係・仕事を 円滑に進めたい 孫・娘夫婦といい 関係を築きたい 気持ちのハリを 保ちたい 第一印象を良くしたい ゼロ ●不快に思われたくない ●清潔にしたい 外へ出ようと 思える気分にしたい 老け込んだと 思われたくない 不潔でいたくない (花王 生活者研究センター調べ) (図1)男性のおしゃれ・身だしなみのニーズ構造 50代後半∼60代の場合 -2- くらしの現場レポート いつまでも若々しく見られたい! 肌への意識は高い 10∼60代男性への「肌への意識・こだわり」 についての調査では、8割前後が「きれいな肌のほうが印象 が良い」 と回答。また、 「 いつまでも若々しく見られたい」は約6割、 「 肌で見た目年齢が変わる」も6∼7割と、 「肌への意識」 はどの年代でも共通していることが明らかになりました。 一方で「お肌のお手入れ・スキンケアをしていきたい」 「 肌のお手入れ・スキンケアで自分の肌はきれいに なると思う」 という問いに対しては、15∼34歳の半数以上が「あてはまる」 と回答しているのに対して、55 ∼69歳では約3割に留まり、差が見られました。このことから、肌への意識は高いものの、相対的に見ると 実際のスキンケア行動への結びつきはまだ弱いというのが現状です(図2)。 15 - 34才(400) 0% きれいな肌の方が 印象が良い いつまでも若々しく 見られたい 肌がきれいかどうかで 見た目の年齢が変わる 若々しく見られるために、肌のお手入れ ・スキンケアをしていきたい 肌のお手入れ・スキンケアで 自分の肌はきれいになると思う 35 - 54才(400) 50% 27 15 31 19 20 14 11 15 28 29 21 15 100% 0% 25 30 23 28 23 31 34 12 2 12 82 10 20 51 12 19 11 34 82 28 6 10 4 10 55 - 69才(300) 50% 100% 0% 36 33 28 36 26 24 21 26 1 8 52 7 42 9 50% 29 21 21 100% 43 36 36 17 11 30 31 29 21 42 11 24 29 22 47 12 35 50 7 34 29 19 50 11 45 非常にあてはまる あてはまる ややあてはまる どちらともいえない あまりあてはまらない あてはまらない 全くあてはまらない 15∼69歳男性 1,100人(花王 生活者研究センター調べ) (図2)肌への意識・こだわりについて -3- くらしの現場レポート 前向きミドル・シニアたちの 身だしなみ行動の実際 50代後半∼60代男性がおしゃれ・身だしなみに関心を持ったきっかけやおもいについて、 2つの事例を紹 介します。 事例 1 名刺がなくなったら自分がすべて。印象を良くして仲間作り 定年になって名刺がなくなった今、自分がすべて。 退職を機に自分自身を見つめ直し、 これからは地域で新しい仲間作りもしたい! Sさん(64歳) 妻(59歳)、子ども3人は独立/初孫が生まれる おもいと行動 きっかけ ●60歳。ずっと仕事一筋だったけど、再雇 ●地域での仲間作りのために、若々しく 用でやっと自分のことに目を向けるよう 元気に見られたい! になった。 ●これまではゴルフ帽しかかぶったこと ●64歳。サラリーマンを辞めた。今までや がなかったけれど、平日に行ったデ れなかったことや仲間作りがしたいから パートで、ハンチング帽を買ってきた。 市の講座に入学。 ● 服 装 が がらっと変 わってGパ ン 中 心 になり、ヒゲも伸ばし始めた。 ● 抜 け 毛 を 防ぐた めに 育 毛トニックを 使っていたが、シミを防ぎたいから化 粧水も使い始めた。 若 い 頃 は 人との 競 争 ば かり だったけど、今 は仲 間 作りが 大切。やっと余裕が出てきて、 服装を妻からもほめられてう れしい 。仕 事 一 筋でが んばっ てきた分 、これからは夫 婦 の 生活をエンジョイしたい。 -4- くらしの現場レポート 事例 2 加齢・老化の危機感からスキンケア意識がアップ ある時ふと鏡を見て薄毛に気づき、愕然とした。 65歳までは働きたい。年齢通りに見られたくない。 0さん(59歳) 妻(54歳)、子ども2人 きっかけ おもいと行動 ●56歳、髪の分け目から地肌が見えて、 ●ハゲるんじゃないかと恐怖を感じて、 体が震えるほど愕然とした。風呂場で抜 育毛トニックを使い始めた。 け毛を数えたら、150本もあった! ●顔を洗うとき、摩擦でガサッとなる。 乾燥肌に変わった? ●家族で出掛けたときに娘から、 「 お父さ んダサい!」 と言われた。 ● 顔 の 肌 の 老 化 も 気になり、できるだけ 肌に栄 養を与 えたほうがよい かと思っ た。アフターシェーブローションから化 粧水に変えた。 ● 乳 液 も 追 加 、肌 荒 れを防ぐために亜 鉛 外見もまだまだ若い人には負 など栄養補給も行うようになった。 けていない。若者のだらしない ●娘のひと言で、服装に目を向けるように 格好より、 きっちりとした服装で なった。 いた方がかっこいい! -5- くらしの現場レポート 家庭訪問インタビューの中で、 この年代の美容・身だしなみの感度には、 年齢や時代の流れによる浮き沈 みが見られ、 典型的なヒストリーが浮かび上がってきました。 学生時代の1960∼1970年代に、 アメカジ、 ヒッピー、 ニュートラディショナルなどのアメリカ文化に触れ、 外見に高い意識を持っていたものの、 就職が決まって髪の毛を短く切り、 その後は仕事に追われて、 おしゃれ への関心は下がっていました。けれども、 40代以降は昇格・転職や、 加齢・老化意識、 そして定年などいくつか の転機をきっかけに、 再びおしゃれ意識が高まって、 前向きに取り組む様子が聞かれました (図3) 。 高い 美 容・身 だ し な み に 対 す る 意 識 定年(60代) ・アメリカ文化に触れる ・異性が気になる 転機(50代) 加齢・老化意識 ・服装 服装や髪型が ・髪型が 転機(40代) 気になり始める 普通 ・髪をバッサリ切り、心を入れ替えた ・仕事に追われ、気にする余裕はなかった ・ 「外見を気にする男は仕事も出来ませんよ」 と上司に言われていた 再( 雇 用・転 職 退( 職 ) 定年 加齢意識 年 齢の節 目 昇( 格・転 職 転機 子供誕生 結婚 就職 大学生 高校生 中学生 小学生 低い ) ) (花王 生活者研究センター調べ) (図3)50∼60代男性の典型的な人生行路と美容・身だしなみ意識の変化 健康的で若々しくいるために、 スキンケアという新習慣 一連の調査から、 50代後半∼60代男性が身だしなみに気を遣い、 スキンケ アを始めるきっかけとして、 「自身の加齢・老化意識」 「妻や娘の視線」 、 「昇格 、 ・転 職などの職場環境の変化」 「定年退職による第2の人生 、 ・青春の始まり」 などが キーワードとして挙がってきました。 「化粧水なんて男が使うものではない」 と思っていたのが、 かさつきや湿疹な どの肌トラブルを経験し、 「薬を塗る」 ような 「医療」 に近いイメージで、 予防意識 からスキンケアを始めたというケースもありました。その際に、 若い頃から習慣 的に使ってきたアフターシェーブローションから、 より刺激の少ない化粧水に替 えるなど、 新しいスキンケア習慣に変化していく兆しも見られました。 きっかけは人それぞれでも、 「男でも見た目は大事」 と考える人たちから、 スキ ンケア行動が始まっているようです。 -6- くらしの現場レポート 【男性の肌も保湿して健やかに】 男性の肌の皮脂の分泌量は、思春期の頃から増加し、女性と比べて約2倍に。女性の場合は、年齢ととも に皮脂の分泌量は減っていきますが、男性はほとんど減らないため、べたつきやすい傾向があります。 し かし、ひげそりの方法によっては、角層の最表面や皮脂などを不必要に落とす可能性があるので、ほお からあごにかけて乾燥しやすくなります。ローションや乳液で肌の保湿を試してみてはいかがですか。 ▶ニベアフォーメン フェイスケア http://www.nivea.co.jp/Products/Mens-Care/product-type/フェイスケア 【紫外線対策をして肌への影響を防ぐ】 紫外線は、日やけやシミ・そばかすの原因となるほか、 ハリの 低 下やシワなど、肌 の 老 化にも影 響を与えま す。男性の日常生活での日焼け止め使用率は年齢が あがるほど減少傾向にありますが、健やかな肌を保つ ためには、 レジャーのときだけでなく、日頃からの紫外 線対策が大切です。 日常生活での日焼け止め使用率 15 ー 34才(400) 11% 35 ー 54才(400) 7% 55 ー 69才(300) 5% 0 5 10 15(%) 15∼69歳男性 1,100人(花王 生活者研究センター調べ) ▶ニベアフォーメン 日焼け止め http://www.nivea.co.jp/Products/Mens-Care/product-type/日やけ止め ●お問い合わせ・ご意見は 花王株式会社 生活者研究センター 〒131-8501 東京都墨田区文花 2-1-3 TEL. 03-5630-9963( 月∼ 金 9:00 ∼17:00) FAX. 03-5630-9584 くらしの研究 http://www.kao.co.jp/lifei/ ※掲載の記事・写真の無断掲載・複写を禁じます。 -7-
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