年 間 紀 要 - 全国連合退職校長会

平成26年度
年間
紀要
全国連合退職校長会
全国連合退職校長会 会旗
全国連合退職校長会教育憲章
われわれは、教育基本法の精神を踏まえ、日本の教育推進の指針として、
この憲章を定める。
日本の教育は、個人の尊厳、生命に対する畏敬の念を重んじ、日本人と
しての自覚と誇りをもち、世界の平和と豊かな文化の創造、人類の福祉に
貢献できる心身ともに健康で主体性のある国民の育成を期するものである。
そのために、われわれは、以下に具体的な目標を掲げ、人間育成の具現
化に努める。
1
人間尊重の精神にのっとり、一人一人が自他を大切にし、心身ともに
たくましく生きる力をもつ。
2
日本の自然を愛護し、豊かな情操を培うとともに、地球環境の保全に
尽くす。
3
わが国がはぐくんできた文化や伝統を尊重し、他国の文化への理解を
深め、 豊かな文化を創造する。
4
日本の美しいことばを大切にし、礼節を重んじ、豊かな人間性を培う。
5
誠実さや勤勉さを大切にし、勤労の意義と奉仕の尊さを知り、共に生
きる喜びをもつ。
6
生涯にわたり、向学心に燃え、真理を求め、創造性豊かに主体的に生
きぬく力をもつ。
7
和の精神と思いやりの心をもち、温かな家庭と心の通い合う地域社会
の形成に努める。
8
善悪の判断を正しく行い、公共の精神と社会の一員としての自覚と責
任をもって社会の発展に尽くす。
9
民主的な社会及び国家の形成に努め、国と郷土を愛するとともに、他
国と協調して世界の平和と発展に尽くす。
平成22年2月23日制定
はじめに
会長 戸張 敦雄
さきが
早春に、魁けて開花する白梅と競うように平成26年度「年間紀
要」が発行できました。嬉しいことです。
昨年度、小誌の名称、内容の構成を見直して発行したところ、
全国の会員諸氏から好意をもって迎えられました。嬉しいことで
した。
今年度も、本部の部長・委員長は、部員・委員の協力・支援を
得ながら、心構えを正して一年間の活動、調査・研究の成果や会
員の生活の安定・安心に係る記事をはじめ、各地の優れた実践事
例等を選んで編集しました。嬉しいことです。
全国の会員各位からの好意に満ちた、嬉しさが倍加する建設的
な熟読後の感想が寄せられることを期待しております。
末筆ながら、小誌の編集責任者として尽カされた、白石 裕一、
野口 玲子両氏の労に感謝いたします。
年間紀要
目 次
はじめに
会長 戸張 敦雄
Part Ⅰ
全国連合退職校長会本部の年間活動
1
① 平成26年度の組織・役員… ……………………… ② 平成26年度 要望活動の展開… ………………… ③ 設立50周年記念事業の概要紹介… ……………… ④ 教育課題答申委員会の活動… …………………… 2
3
5
6
Part Ⅱ
全国連合退職校長会の調査・研究のまとめ
15
① 教育振興部の活動… ……………………………… 16
② 社会保障改革と安心生活の展望… ……………… 27
③ 第6回全連退
設立50周年記念教育図書の刊行… ……… 32
Part Ⅲ
各都道府県のニュース紹介
33
事例1 地方の会報誌より
⑴ 「ふれあい」に感謝… …………………… 34
⑵ 6年ぶりの再会… ……………………… 34
⑶ 心も体もいきいきと……………………… 35
事例2 鳥の飼育と研究30余年… …………………… 36
事例3 「地域を活かせる学校支援ボランティア」…… 37
編集後記
編集委員
38
編集後記… ……………………………………………… 38
編集委員… ……………………………………………… 38
組織はいつも風通しがよくなくては
ならない。
― 石原 俊
若い者も美しい。しかし老いたる者は
若い者よりさらに美しい。
―ホイットマン
全国連合退職校長会本部の年間活動
Part
1
総務部
部 長 入子 祐三
野口 玲子
大野 幸男
木山 髙美
白石 裕一
全国連合退職校長会本部の年間活動
❶ 平成26年度の組織・役員
平成26年度は、役員改選期でなく、副会長2
名(東海北陸・九州地区連絡協議会会長)常任
理事1名(山梨県会長)の交代のみであった。
多数の役員が留任し一層充実した会議がもたれ
成果をあげた。
安定した運営がなされ流れに身を任せるとき
に綻びが生じるという戒めを踏まえ、本会の存
在感の一層の高揚をめざすための諸会議等の在
り方を見直し、提言し、その具体化を図る中心
として、会長と部長会の間に小委員会(H26新
平成26年度 役員
戸張 敦雄
〈会 長〉
設)を設置し、円滑かつ効率的な諸会議の運営
を行うことにした。
本年度は、設立50周年記念事業の諸準備との
二本立てになった。役員一同、次の意義を再確
認し合い協力し推進することにした。
◦ 全連退の歩みを振り返りその歴史に敬意を
表し、継承事項を峻別する。
◦全連退の使命を認識し、設立 100 年を目指し
て 創意を失わず組織力を高め 決意を新た
に出発する。
代議員
〈総 会〉
〈副会長〉
〈理事会〉 ・ 〈事務局長会〉
(地区連絡協議会会長)
(各都道府県〈団体〉会長)
(各都道府県〈団体〉事務局長)
東 京
片岡 敦子(東 京)
北海道
森 剛(北海道)
… …………(北海道)
東 北
鈴木 信光(福 島)
… …………(青森)(岩手)(宮城)(秋田)(山形)(福島)
関東甲信越
清水 章夫(埼 玉)
… …………(茨城)(栃木)(群馬)(埼玉)(千葉)
東海北陸
江端 雅司(岐 阜)
… …………(富山)
(石川)
(福井)
(岐阜)
(静岡)
(愛知)
(三重)
近 畿
松重 享蔵(大 阪)
… …………(滋賀)(京都)(大阪)(兵庫)(奈良)(和歌山)
中 国
山田 忠男(島 根)
… …………(鳥取)(島根)(岡山)(広島)(山口)
四 国
横山 和雄(高 知)
… …………(徳島)(香川)(愛媛)(高知)
九 州
城後 武史(福 岡)
… …………(福岡)(佐賀)(長崎)(熊本)(大分)(宮崎)
(東京)(神奈川)(山梨)(長野)(新潟)
(鹿児島)(沖縄)
(各退職校長会会長・事務局長)
〈常任理事会〉 (都・県会長)
副会長
片岡 敦子(東 京)
〈小委員会〉大野 幸男・木山 髙美・入子 祐三
副会長
清水 章夫(埼 玉)
〈部長会〉 (部長・委員長)
理 事
(生涯) 大泊 信雄(茨 城)
理 事
(出版) 石塚 二郎(栃 木)
理 事
青木 忠(群 馬)
理 事
(生涯) 板垣 正順(千 葉)
理 事
(教課) 渡部 博正(神奈川)
理 事
(会計) 山岸 宏(新 潟)
理 事
(教振) 高橋 基(長 野)
理 事 山縣 永良(山 梨)
総 務 部
入子 祐三・野口 玲子
教 育 振 興 部
大野 幸男(総)
生 涯 福 祉 部
岡野 仁司
広 報 部
村山 忠幸
会 計 部
白石 裕一(総)
教育課題答申委員会
田中 昭光
出 版 事 業 委 員 会
木山 髙美(総)
※(総) 総務部兼務
〈監 事〉 千葉 勝(宮 城) 岩佐 喜一(千 葉) 加賀 昭一(愛 知)
〈事務局〉 徳永 裕人(局 長) 中原 慎三(次 長) 佐々木多美子
2
全国連合退職校長会本部の年間活動 ❷ 平成26年度 要望活動の展開
文部科学・厚生労働・総務大臣へ
「要望書」を提出
◯全連退戸張敦雄会長は副会長8名と本部役員
7名を伴って各省を訪問し「要望書」を提出し
た。
Ⅰ 教育の振興に関する要望活動
平成27年度の概算要求の時期に当たり本会と
して、国の根幹を作る教育財源は「未来への投
資」としての認識から、教育予算の一層の拡充
を期して、国会議員に対して陳情を行った。
(平成26年10月15日)
◯衆議院文部科学委員会の委員長以下全員(約
総務部
部 長 入子 祐三
野口 玲子
大野 幸男
木山 髙美
白石 裕一
(平成26年8月5日)
◦下村博文 文部科学大臣への要望書内容
(会報第193号2頁掲載を参照)
◦田村憲久 厚生労働大臣への要望内容
(会報第193号3頁掲載を参照)
◦新藤義孝 総務大臣への要望内容
(会報第193号4頁掲載を参照)
60 名)、文部科学大臣経験者、副大臣、政務官
等に対しては、本部役員が訪問面談し陳情した。
委員に対しては、地元選挙区で、都道府県退職
校長会会長が陳情した。
文部科学省大臣官房伯井美徳審議官を囲んで
《教育の振興に関する要望書》
次代を担う子どもたちの健やかな成長は、すべての大人たちの願いであり、子どもたちが全国
どこに生まれ育ったとしても、等しく良質な学校教育を受けられるようにすることは、我々大人、
そして国の責務です。教育再生は子どもたちの多様な個性・能力を開花させ人生を豊かにすると
ともに、社会全体の今後一層の発展を実現する基盤です。
そのために、教育を「未来への投資」として重視し、社会総がかりで子どもを支え育てていか
なくてはなりません。
ここに、全国連合退職校長会は、全国各都道府県退職校長会の会員9万5千人の総意として、
下記事項を強く要望いたします。
特段のご高配をお願い申し上げます。
要 望 事 項
1 国の存立基盤である人材の質と量を将来にわたって充実・確保していくために、公財政教育
支出を、他の先進国並みにGDP比5% を実現して頂きたい。
2 義務教育は国の責任として行うべきであり、義務教育費全額国庫負担の実現を目指し、当面、
国庫負担の割合を2分の1に復元して頂きたい。
3 義務教育標準法改正による計面的な教職員定数の改善を行い、少人数教育など、子ども一人
一人に目が行き届くきめ細かな指導体制の整備を図って頂きたい。
4 優秀な教員を登用するための人材確保法を堅持するとともに、教員の服務の特殊性に見合う
給与の維持・改善を図って頂きたい。
5 教育尊重の気運を高めるため、本会が提唱・推進してきた「教育の日」が、既に、全国 35 都
道県、165 市町村に制定されたことに鑑み、国民の祝日として「教育の日」を制定して頂きたい。
3
Ⅱ 国民の祝日として「教育の日」の制定につ
いて関係国会議員へ陳情
◦文部科学大臣経験者
◦現文部科学大臣政務官
◦現文部科学大臣
◦文部科学副大臣経験者
◦現文部科学副大臣
◦文部科学大臣政務官経験者
※直接面談を申し入れ、お願い文書をお渡し要望した。
(平成26年10月15日)
陳情
《国民の祝日「教育の日」制定に関するお願い》
私ども全国連合退職校長会は、来年度50周
高め、国民がこぞって教育の振輿を期する
年を迎える組織で全国47都道府県の幼稚園長、
日」として「教育の日」を制定するよう、各
小学校長、中学校長、高等学校長、特別支援
都道府県退職校長会に対し、それぞれの都道
学校長等の退職者約9万5千名が加入し、校
府県自治体に働きかけを依頼してまいりまし
園長のOBとして教育関係機関・団体と連携
た。その結果、平成12年の栃木県の制定から
協力して教育の振興に寄与するとともに会員
平成25年5月現在、全国35都道県、165市町
及び後進の生活の安定・安心に資する活動を
村で制定されました。
行っております。
また、同時に文部科学大臣にも全国連合退
さて、国は経済再生と並んで教育再生を掲
職校長会として、国民の祝日としての「教育
げ鋭意政策を推進され教育改革も実を上げつ
の日」制定をお願いしてまいりました。今日
つあります。しかしながら、国家百年の計と
の学校・家庭・地域社会の一部でみられる異
言われる教育の重要性について各界・各層の
常な現象は、教育関係者のみならず国民の心
認識が残念ながら不十分であり、OECDの
を震憾させております。これらを正すには国
統計では国のGDPに占める公財政教育支出
民一人一人が“教育の在り方を真剣に考え
の割合が31カ国中5年連続で最下位に甘んじ
る”機会を設けて解決へ向かうしかありませ
ております。今後、これら予算については強
ん。
力な財政出動に期待するとともに、教育立国
そのため、国民の祝日「山の日」に次いで、
日本の意識を国民全体に浸透していくことが
教育振興を期する象徴日として、また、文化
重要と考えます。
国家として、世界に誇れる「教育の日」を新
そこで、全国連合退職校長会として平成10
年以降、広く国民の間に「教育尊重の気運を
たに国民の祝日として制定されるようご推進
下さいますようお願い申し上げます。
Ⅲ 少人数学級の更なる推進などきめ細かな教
育のための教職員定数改善計画等を求める全
国集会
~法律改正による確実な定数改善を目指して~
(平成26年11月17日)
※教育関係23団体主催に参加、アピールを
採択した。
全連退情報128号参照
文部科学委員への陳情(H26.10.15)
4
全国連合退職校長会本部の年間活動
総務部
部 長 入子 祐三
❸ 設立50周年記念事業の概要紹介
全連退設立 50 周年記念事業の意義
1 退職校長の先達が設立された全国連合退職
校長会の来し方を振り返り、その歴史(沿
革)に敬意と謝意を表し、継承事項を峻別す
るときである。
2 全国連合退職校長会の使命を認識し、設立
100 年の時を目指して創意を失わず、組織力
を高め、決意を新たに出発するときである。
(H26.11.14)常任理事会 確認
設立50周年 式典・祝賀会 開催日・会場決定
平成27年10月15日(木)
アルカディア市ヶ谷(私学会館)におい
て全連退50年の歩みを振り返り、100年に
向けての新たな決意をする機会として開催
する。
文部科学大臣をはじめ、関係省庁及び教
育関係団体の代表者の臨席を戴いて盛大に
行う。
全連退功労者に表彰状
理事・常任理事・監事等の役職を4年以
上にわたり務め 本会の発展に多大の功績
を残された方に、設立50周年を記念して表
彰状並びに記念品を贈る
記念式典・祝賀会の当日に招待し、祝意
並びに謝意を表する。
各都道府県退職校長会(団体)における貢献者
の特別顕彰事業
各 退職校長会(団体)会長の推薦者(別
紙推薦書による)を表彰する。
設立50周年を記念し、感謝状並びに記念
品を贈る。
受賞者は式典参加を求めず文書で公表す
る。賞状・記念品を、県代表に委託する。
各委員会の事業進行状況
⑴ 経理・庶務委員会
予算案(第5次案)を第5回常任理事会・
第2回副会長会で承認。
功労者選考基準により候補者一覧及び連
絡先等を調査し作成。各退職校長会の検証
を経た後に 正式招待者にする。
来賓予定者一覧 作成。
⑵ 式典・祝賀委員会
アトラクション決定、予約
当日の流れ、式典次第、祝賀会次第、要
項の作成等 検討中
参加予想数 約180名で、式場・宴会場等
の設営案を検討する。
⑶ 記念事業委員会
「教育図書」の編集出版
<書名>『未来を拓く学校の力
―地域と学校の心触れ合う教育活動―』
<出版社>東洋館出版社
設立50周年記念出版図書として決定。
記念品として献本する。<買取400部>
教育図書の執筆者は、全県からの推薦者
の協力により作成したもの
希望者への販売を促進する予定。
「家庭教育の指針」リーフレット
設立50周年記念事業として作成
当日配布予定。
ホームページのリニューアル 完了
⑷ 記念誌委員会
記念誌プロット決定 印刷業者より見積
もりを取り 東洋館出版に決定。
各都道府県退職校長会担当頁の執筆を事
務局長会で依頼(H27. 2月末締め切り)
記念誌原稿 印刷所送付(H27.4)
記念誌の印刷部数 2,000部予定
式典当日に 贈呈する。
「 記念会報」をH28. 1月号発行の会報と
合併号として編集発行する。
⑸ 記念品委員会
式典・祝賀会参加 案内数(検討中)
・来賓 20名 ・功労者 110名
・理事監事 60名 ・委員 20名
表彰状・感謝状の文案検討後 発注
記念品 選定発注 引出物 内容検討中
5
全国連合退職校長会本部の年間活動
❹ 教育課題答申委員会の活動
全国連合退職校長会
教育課題答申委員会
委員長 田中 昭光
委 員 渡部 博正
(神奈川県)
梅村 勝
橋本 誠司
堀内 比佐子
平成 26 年 10 月 31 日
会長 戸張 敦雄 様
教育課題答申委員会
委員長 田中 昭光
諮問事項Ⅰ 「義務教育諸学校の教育職員の処遇の経緯や現状と、
いわゆる人材確保法堅持に関する見解」について(答申)
本委員会は、教職員の処遇の経過を検討し、教育再生を進める国の施策を踏まえ人材確保法の
堅持について各都道府県退職校長会長から提出された意見(自由記述)をもとに討議し、諮問事
項Ⅰについて答申する。
社会から信頼される学校教育体制を充実するためには、それを支える教員を手厚く処遇するこ
とが喫緊の課題である。
そのため、人材確保法成立時の理念に基づき教員の処遇を見直し、教員が使命感・矜持や熱意
をもって職務に専念できるよう諸施策を講ずることが肝要である。
具体的施策として
① 教員の職務を明確にし、教育目標・目的の達成に専念することができる環境整備を図る。
② いわゆる義務教育学校標準法を改正し、「チーム学校」の実現等を図る。
特に、小学校における専科教員(英語、理科)の配置を図る必要がある。
③ 勤務の専門性・特殊性に見合った給与・教職調整額、諸手当等の改善を図る新たな給与制
度の制定を図る。具体的には
◦勤務成績等に応じた特別昇給制度
◦諸手当の充実(管理職、部活動指導、主任教諭、特別支援教育関係者等の手当)
◦超過勤務への対応
諮問事項Iについての報告事項
はじめに
近年、我が国は知識基盤社会、グローバル化、
求められている。一方、社会の価値観の多様化、
地域・家庭の教育力の低下や教員の職務の多忙
化など、学校教育は多くの複雑で困難な課題を
抱ている。
情報化、少子化、高齢化など、社会構造の大き
「教育は人なり」といわれるように、教員が一
な変革期を迎えており、これから社会を担う人
人一人の児童生徒に向き合って活動することが
材の育成が重要な課題である。学校教育に対し
できる環境整備をすることが重要である。
使命・役割を果たすことができる教員の育成が
6
これらの現状を踏まえ、人材確保法の理念を
再確認し、教員の職務の見直しや処遇の改善を
非公務員となる。その結果、教特法の規定
図り、教員が使命感や誇り、熱意をもって児童
が削除され公立学校教員の給与は、各都道
生徒の指導に専念できるようにすることが喫緊
府県が主体的に定めることとなる。
の課題である。
⑴ 教育職員の処遇の経緯(戦後から)
昭和 24 年「教育公務員特例法」(任免、給与、
分限、懲戒、服務、研修等の規定)
平成 19 年「今後の教員給与の在り方について」
(中教審答申)
※特 に、「国立学校準拠制」廃止の法改正に
より、人事院への勧告義務づけが削除され、
※教員の給与は職務の責任の特殊性に基づき
人材確保法はもはや理念のみの法律となっ
条例で規定。義務教育等教員特別手当(教
て教員の給与が一般公務員より下回らない
職調整額)の創設。
ようにするための最小限の歯止めとしての
昭和 25 年「地方公務員法」
※公立学校の教員は国立学校の教育公務員給
与の種類及びその額を基準とする。
昭和 27 年「義務教育費国庫負担法」(職員給与
費の国庫負担)
※国が義務教育諸学校に要する経費のうち二
分の一を負担することとする。
昭和 28 年「一般職職員給与法改正」
※大学、高校、小中の三本立給与とする。
昭和 46 年「公立の義務教育諸学校等の教育職
員の給与等に関する特別措置法」(教特法)
※公立の義務教育諸学校等の教育職員の職務
と勤務態様の特殊性に基づき、その給与そ
の他の勤務条件についての特例を定める。
※給料月額の4%に相当する額を基準として
教職調整額を支給すると規定。
昭和 49 年「学校教育の水準の維持向上のため
の義務教育諸学校の教育職員の人材確保に
関する特別措置法」(人材確保法)
※「人材確保法」は、教員の給与を一般の公
務員より優遇することを定め、教員に優れ
た人材を確保し、もって義務教育水準の維
役割を果たしているにすぎないといえる。
仮にこの法律を廃止すれば教員の給与水準
は一般の公務員並よりも低くなってしまう
恐れがある。その結果、教職に優秀な人材
が集まらなくなることが懸念される。学校
が抱える課題がますます多様化、複雑化す
る現在こそ教員に優れた人材を確保するこ
とが求められる。
※以上のことから、教員に優れた人材を確保
し、学校教育の維持向上のためには、人材
確保法を堅持しなければならない。
平成 20 年「義務教育費国庫負担法」の改正
(教職員給与費の国庫負担)
※市町村が小・中学校を設置・運営
※都道府県が教職員を任命し、給与を負担
※国が義務教育諸学校に要する経費のうち三
分の一を負担する。
平成 20 年〜23 年「教員給与の縮減」
※義務教育等教員特別手当の縮減
(給料の3.8%→給料の1.5%)
※給料の調整額の縮減
(基本額×2%→基本額×1.25%)
持向上を図ることを目的とした。
優遇措置として、義務教育諸学校の教育職
員の給与については、一般の公務員の給与
水準に比較して必要な優遇措置が講じられ
なければならないと規定されている。
平成 15 年「国立大学法人法」
※国立学校が法人化され、国立学校の教員は
7
⑵ 教員の給与の推移について
●小中学校教員の初任給の推移(東京都)
(単位:円)
平成 13 年
平成 16 年
平成 19 年
平成 22〜25 年
202,500
198,000
195,600
195,600
小中学校
●小中学校教員の給与の推移(全日本中学校長会給与対策部平成25年調査資料)
<初任給>
(単位:円)
190,000〜
195,000〜
200,000〜205,200
16
24
7
都道府県数
<勤続10年>
(単位:万円)
都道府県数
27.0〜
27.5〜
28.0〜
28.5〜
29.0〜
29.5〜30.0
5
7
11
12
9
3
<勤続20年>
(単位:万円)
都道府県数
35.0〜
35.5〜
36.0〜
36.5〜
37.0〜
37.5〜
38.0〜38.5
1
0
11
19
13
2
1
●人材確保法と公立学校教員の給与水準の推移(文部科学省資料)
人材確保法により、昭和55年度では一般行政職に比較して7.42%優遇されていたが、その後
年々減額され平成13年〜17年度では2.76%、平成24年度には0.32%まで減額されている。
公立学校教員の給与水準の推移について
8
6
4
2
0
▲2
7.42%
2.76%
一般行政職給与水準
0.32%
▲5.74%
▲4
▲6
昭和49年度
(人材確保法前)
昭和55年度
(人材確保法後)
平成13~17年度
の5年間平均
平成24年度
⑶ 平成 18 年以後の国の方針
国は「骨太の方針2006(平成18年)」におい
員に優秀な人材を確保するという人材確保法の
て「人材確保法に基づく優遇措置を縮減する」
精神を踏まえ、人材確保法における教員給与の
ことにより、教員給与月額が一般行政職給与月
優遇措置について、今後、教員勤務実態調査の
額を上回る部分(2.76%)は縮減を図りつつ教
結果を踏まえて対応する。
8
教員給与制度については、メリハリを付けた
教員給与の見直しを進める方針である。
臣、大臣政務官、衆議院文部科学委員会委員
長・委員・理事等へ「要望書」を提出している。
具体的には
(全連退情報114号、125号参照)
① 年功型の給与体系の見直し
② 4級制(校長、教頭・副校長、教諭、助
教諭等)の給料表の改正(主幹、指導教諭
の処遇改善)
③ 一律支給されている教職調整額の在り方
の見直し
④ 勤務成績や職務負担等に応じた手当の検
討
⑤ 特別支援教育関係者に支給される給与の
調整額の見直し
<参考資料>
●「学校教育の水準の維持向上のための義務教
育諸学校の教職員の人材確保に関する特別措
置法」(昭和 49 年2月 25 日制定 )
<抜粋>
第一条(目的)この法律は、学校教育が次代を
になう青少年の人間形成の基本をなすもので
あることにかんがみ、義務教育諸学校の教育
職員の給与について特別の措置を定めること
⑥ 部活動指導手当の充実
により、すぐれた人材を確保し、もって学校
⑦ 教育業務連絡指導手当(主任手当)の検
教育の水準の維持向上に資することを目的と
討
⑧ 管理職手当の充実
その他、教員の職務の特殊性に配慮した
評価制度の検討も重要である。
する。
第二条(義務教育諸学校と教育職員の定義)
(略)
第三条(優遇措置)義務教育諸学校の教育職員
給与以外の優遇措置としては
の給与については、一般の公務員の給与水準
① 優れた教員を表彰し、教員に対する信頼
に比較して必要な優遇措置が講じられなけれ
感と尊敬の念を醸成される環境を培う。
ばならない。
② 教員の事務作業の軽減を図り、子どもと
第四条(人事院の勧告)人事院は、国会及び内
向き合う時間の確保ができる環境整備をす
閣に対し、国家公務員である前条の教育職員
る。
の給与について、同条の趣旨にのっとり、必
③ 校内研修や任命権者等による体系的研修
要な勧告を行わなければならない。
と教員の自主性を重視した自己研修の充実
●「学校教育の水準の維持向上のための義務教
を図り、自らの専門知識や指導能力を高め
育諸学校の教職員の人材確保に関する特別措
る機会を確保できるようにする。
置法」改正(平成 19 年)
④ 幅広い視野と高い専門知識を備えた教員
第四条 削除(国立大学法人法に伴うもの)
を育成するため、大学院修学休業制度を活
用し、より多くの教員が大学院修学の機会
を得られるようにする。
などを通じて、教員の職を魅力あるものにし
ていくことが必要であることとする。
⑸ 諮問事項Iに対する各都道府県退職校長会
からの主な意見
諮問事項Iについて、各都道府県退職校長会
長に意見(自由記述)等の提出を依頼したとこ
ろ、45都道府県から貴重な回答をいただいた。
⑷ 全連退の要望活動
例年、「教育尊重の気運を高め、教育の振興
に寄与する」ことを目的に活動している全国連
合退職校長会は、文部科学大臣、文部科学副大
その概要は次のとおりである。
●処遇(給与)の最新の実態について
教員の「初任給」
「平均月額給与」について、
それぞれ、最近4〜5年の状況や一般行政職と
9
の比較データなど提供いただいた。多くの都道
減少や他府県に転出したりする事例もある
府県も、この数年は給与の抑制、減額があり、
との回答もあった。
退職金の引き下げも実施されている。
① 教特法の規定が削除されて以後(平成15
④ 勤務状況の改善策として、学校経営の工
夫・改善(諸会議の精選、協働体制づくり、
年)公立学校教員の給与は減額され、人材
相互研修など)はもちろん、教職員の定数
確保法に規定されている優遇措置が形骸化
増、特別支援等の加配補助員、変形労働時
している。教員の職務の特殊性に見合う給
間制(長期休業期に短縮、リフレッシュ)
与の維持・改善が必要である。
の導入、勤務に見合う待遇改善・手当等の
② 最近の状況によれば、初任給は一部を除
見直しなどが挙げられた。
いて減額してないが給料表号給の上昇率が
鈍化している。また、退職金の支給率が激
減している。
③ 時間外勤務時間の増加に見合う処遇の見
直しが必要である。
④ 管理職の職務が厳しくなっている反面、
管理職手当のカットが進行し、精神的負担
増や意欲の低下等による影響が懸念される。
近年管理職志望者が減少している。また、
教員志願者が減少し優秀な教員の人材確保
に悪影響を及ぼしている。
⑤ 「義務教育国庫負担法改正」
(平成20年)
による財政上の影響から、教員給与の格差
が生じている。特に、市町村の教員人材確
保が懸念される。
●勤務状況の実態(特に配慮すべきことなど)
※ 残業時間の実態(全日本中学校長会
給与対策部、平成 19 年)
勤務日 1日平均 残業時間2時間 53 分
(文部科学省調査 2時間 25 分)
※職種別残業時間
校長
2時間 47 分
教頭・副校長
4時間2分
教諭
2時間 53 分
教務主任
3時間1分
生徒指導主任
3時間1分
進路主任
2時間 14 分
学年主任
3時間 10 分
について
通常期における教員の勤務内容は以下のとお
りで時間的に超過勤務が常態化している。
① 生徒指導、保護者対応、教材研究、指導
事務(評価、反省等)、諸会議、調査報告、
について
人材確保法は、教員に優れた人材を確保し義
部活動等により超過勤務を余儀なくされて
務教育水準の維持向上を図ることを目的とする
いる。
法律であり、学校が抱える課題がますます多様
② 児童生徒と触れ合う時間だけでなく、休
息、休憩時間さえも十分に取れず多忙の毎
化・複雑化する現在にあっては絶対に必要な法
律であり堅持すべきである。
日であり、疲れや病気などにより休職・退
具体的には
職者数が増加しており、メンタルヘルスが
① 「教育は人なり」と言われるように、教
課題となっている。
③ OECDの調査結果にみられるように、
日本の教員の勤務時間は世界で最多である。
また、給与等の減額により教員志願者数の
10
●人材確保法(教職員の優遇措置など)の堅持
員に優秀な人材を確保することは次代を担
う子どもたちを育成する学校教育にとって
最も重要なことである。
② 義務教育の水準維持のためには、優れた
具体的には
教員の安定的な確保、人材確保法の意義・
趣旨の実効が必要である。
◦超過勤務に見合う手当の改善(部活動指導、
特殊勤務、研修、出張等)
③ 人材確保法を堅持するとともに、教員の
職務の専門性・特殊性や超過勤務の実態に
◦管理職手当の改善(校長、副校長・教頭、主
幹)
見合う給与、優遇措置が必要である。
④ 教員の職務の特殊性に見合う処遇・諸手
◦退職金の改善
当の改善が必要である。
全国連合退職校長会
平成 26 年 12 月 22 日
会長 戸張 敦雄 様
教育課題答申委員会
委員長 田中 昭光
諮問事項Ⅱ 「全国学力・学習状況調査」の結果の公表等に関する
見解について(答申)
本委員会は、「全国学力・学習状況調査」の実施状況や公表について、各都道府県退職校長会
長から提出された意見(自由記述)等をもとに討議し答申する。
平成26年度の文部科学省の実施要領によれば都道府県教委・市町村教委は学校別成績など条件
を付けて公表できることが可能となった。しかし、調査結果の公表が各都道府県・市町村により
異なり、点数主義、成績偏重、序列化、過度の競争意識など懸念される課題が生じている。
① 文部科学省・教育委員会は調査結果を踏まえ、成果や課題を検証し改善すべき施策を明ら
かにし、教育活動に必要な環境整備を図ること。
さらに、都道府県教委・市町村教委は公表に当っては文部科学省の平成26年度全国学力・
学習状況調査に関する実施要領(H25.11.29)を厳守すること。
(首長の独断による公表はルール違反と考える)
② 各学校は調査結果を踏まえ、教育指導を検証し取り組むべき課題が把握されたときは、新
たに改善すべき施策を検討し教育活動に生かすとともに、家庭・地域に課題や施策を公表し
学校教育に関心・理解の醸成を図ること。
諮問事項Ⅱについての報告事項
はじめに(文部科学省の実施要領)
全国的な学力調査(全国学力・学習状況調
査)は、平成19年~21年悉皆調査として、平成
22年度・24年度 抽出調査及び希望利用方式で
実施、その後、平成25年度より小学校6学年、
中学校3学年の全児童生徒を対象にきめ細かい
11
調査(悉皆調査)が実施された。
ことが重要であることに留意し、適切に取り
扱うものとする。
その目的は
◦調査結果の公表に関しては、教育委員会や学
◦義務教育の機会均等とその水準維持向上の観
校が、保護者や地域住民に対して説明責任を
点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況
果たすことが重要である。一方、調査により
を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検
測定できるのは学力の一部分であることなど
証し、その改善を図る。
を踏まえるとともに、序列化や過度な競争が
◦学校における児童生徒への教育指導の充実や
学習状況の改善等に役立てる。
◦以上のような取組を通じて、教育に関する継
続的な検証改善サイクルを確立する。
生じないようにするなど教育上の効果や影響
等に十分配慮することが重要である。
このことを踏まえ、以下の取り扱いとした。
● 市町村教育委員会(学校の設置管理者)に
一方、調査結果の公表が各都道府県・市町村
おいて、それぞれの判断で、実施要領に定め
により異なり、点数主義、成績主義、序列化、
る配慮事項に基づき、個々の学校名を明らか
過度の競争意識など懸念される課題が生じてい
にした調査結果の公表を行うことは可能であ
る。
る。
● 都道府県教育委員会において、市町村教育
⑴ 平成 25 年度調査(きめ細かい調査の復活)
委員会の同意を得た場合、実施要領に定める
対象学年(小6、中3)の全児童生徒を対象
配慮事項に基づき、当該市町村名又は当該市
とした本体調査(悉皆調査、対象教科は国語、
町村教育委員会が設置管理する学校名を明ら
算数・数学)
、追加調査(経年変化分析のため
かにした調査結果の公表を行うことは可能で
の調査、保護者アンケート抽出調査、教育委員
あるとした。
会に対する調査)を実施することにより、すべ
ての市町村・学校等の状況を把握するとともに
① 経年変化分析
② 経済的な面も含めた家庭状況と学力等の
状況把握・分析
③ 少人数学級等の教育施策の検証・改善に
資する追加調査を新たに実施
これにより、教育施策の結果と課題に関する
検証改善、児童生徒に対する教育指導の改善等
をきめ細かに行う。
● 教育委員会等において調査結果を公表する
場合の配慮事項として、
◦公表内容・方法等は、教育上の効果や影響等
を配慮して適切なものとなるよう判断する。
◦単に平均正答率等の数値のみの公表は行わず、
分析結果を併せて公表する。
また、分析結果を踏まえた改善方策について
も公表する。
◦市町村教育委員会において個々の学校名を明
らかにした結果の公表を行う場合は、当該学
校と公表内容・方法等について十分相談する。
⑵ 平成 26 年度全国学力・学習状況調査に関
する実施要領
~25年度実施要領からの主な変更点~
なお、平均正答率等の数値を一覧にしての公
表や各学校の順位付けは行わない。
◦児童生徒の個人情報の保護や学校・地域の実
状に応じた必要な配慮を行う。
◦調査結果については、調査の目的を達成する
ため、自らの教育及び教育施策の改善、各児
童生徒の全般的な学習状況の改善につなげる
12
⑶ 平成 26 年度 全国学力・学習状況調査(国立教育政策研究所)
●調査を実施した学校・児童数
【小学校】
【中学校】
対象学校数 学校数(実施率) 児童数
対象学校数 学校数(実施率) 生徒数
公立
20,217
20,177(99.8%) 1,080,663
9,813
9,742(99.8%) 1,018,365
国立
45
75(100%)
7,126
81
78(96.3%)
10,397
私立
218
100(45.9%)
6,017
755
353(46.8%)
31,248
合計
20,510
20,352(99.2%) 1,093,806
10,649
10,173(95.5%) 1,060,010
●平均正答数・正答率
【小学校】
【中学校】
教科
平均正答数
平均正答率
教科
平均正答数
平均正答率
国語 A
11.0 問 /15 問
73.1%
国語 A
25.5 問 /32 問
79.8%
国語 B
5.6 問 /10 問
55.6%
国語 B
4.6 問 /09 問
51.6%
算数 A
13.3 問 /17 問
78.2%
数学 A
24.5 問 /36 問
67.9%
算数 B
7.6 問 /13 問
58.4%
数学 B
9.1 問 /15 問
60.5%
【調査問題の趣旨】
*国語、算数・数学A
基礎的・基本的知識・技能が身に付いているかどうかをみる問題
*国語、算数・数学B
基礎的・基本的知識・技能を活用することができるかをみる問題
●調査結果の評価
◦社会に対する興味・関心がある。
① 正答率の低い都道府県の平均を見ると、
◦自尊意識・規範意識が高い。
全国平均との差が縮小した。
② 小学校調査において顕著な改善がみら
れる。特に、指導方法・学習規律、発展
●課題と今後の方向性
① 知識・技能に関する課題
的な学習指導、言語活動、総合的学習に
改善傾向にあるが、立ち戻る指導や繰り
おける探求活動、家庭学習等の改善によ
返し学習することで、確実に定着を図る必
る効果がみられる。
要がある。
③ 児童生徒質問調査から、次の児童生徒
方向性
ほど教科の正答率が高い傾向が見られる。
◦子供の目標となる具体的な問題の提示
◦教科に対する関心・意欲・態度が高い。
◦学年を超えて立ち戻る指導を実施
◦家庭学習や読書時間が多い。
◦基本的生活習慣がよい。
◦家庭でのコミュニケーションが豊か。
② 思考力や活用力に関する課題
依然として正答率が低い。授業改善を図
ることで、思考力・活用力を育む必要がある。
◦携帯電話、スマートフォン、ゲーム等
の時間が短い。
13
●方向性
力に影響していることから、平均正答率に
◦子供の目標となるめあての提示
よる地域の順位づけは市町村・学校の序列
◦子供の思考・表現する時間の確保
化や過度の競争意識を生み、学校教育に対
する家庭・地域からの不信感を募らせる。
⑷ 公表されることによる利点や懸念される課
また、2教科の調査結果により学校全体
題等について(提出された主な意見)
の教育活動の評価がなされる恐れが懸念さ
本委員会においては、会長からの諮問を受け
れること。
各都道府県退職校長会長に「学力調査・学習状
況調査」についての意見(自由記述)を求めた。
③ 序列化により児童生徒への心理的影響
(優越感・劣等感、不信感など)から学習
多くのご意見を寄せていただいたことにお礼申
や生活に影響を及ぼすことや、児童生徒の
し上げる。
学習目標が点数主義になることが懸念され
結果の公表については、市町村の的確な判断
を望むことや学校別成績の公表には否定的考え
が多かった。
以下に本調査の利点と懸念される課題をまと
めてみた。
ること。
④ 学力調査対策による平均点アップへと逸
脱すること。
学力の向上を図ることは重要な課題であ
るが、関心が成績や順位、ランク付けに集
中し、学ぶ力をどう向上させるかの視点が
●利点
希薄になり、新たな学力としての興味、関
① 調査結果の分析により、児童生徒の学
心、意欲など数値で評価できない学力が軽
力や学習状況を把握し、地教委の教育施
策に生かすことができる。
② 各学校は自校の調査結果を分析し、学
校経営や児童生徒指導の改善、授業の改
善、研修の充実等に生かすことができる。
③ 調査結果から把握した課題や改善策を
公表し、説明責任を果たすとともに、学
校教育に対し保護者や地域の理解を醸成
し教育力を高めることができる。
●懸念される課題
① 日本の学校教育の本来の目的が揺らぐ
こと。
教育は知・徳・体のバランスのとれた人
格の形成を期しているが、点数主義、成績
偏重に偏った調査結果の公表は、序列化に
より過度の競争を生み、知識偏重の教育活
動に偏る恐れがある。
② 市町村や学校の序列化により過度の競
争を生むこと。
家庭や地域環境等の状況が児童生徒の学
14
視される恐れがある。
⑤ 学校、教師のランク付けが生じ、教師の
精神的負担の過重や勤務意欲の減退を生じ
させる恐れがあること。
人生は何事もなさぬにはあまりに長いが、
何事かをなすにはあまりにも短い。
―中島 敦
いかに長く生きたかではなく、
いかに良く生きたかが問題である。
―セネカ
全国連合退職校長会の調査・研究のまとめ
Part
Ⅱ
全国連合退職校長会の調査・研究のまとめ
❶ 教育振興部の活動
教育振興部
部 長 大野 幸男
部 員 高橋 基(長野県)
荻原 武雄
河原 敏子
滝澤 利夫
袰岩 正子
柳瀬 修
Ⅰ 家庭教育の指針
1 今年度の研究
次代を担う子供たちの心豊かな成長のために、
応じてバランスよくはたらくことが肝要であり、
そして、乳幼児期から情緒の安定、善悪の判断
家庭、地域そして学校が各々の教育面での特質
の基礎、健康や安全のための基本的生活習慣を
を生かし、また、確かな連携に努めることが大
身に付けるようにすることが大切である。
切なことは論を待たない。
また、教育基本法に「父母その他の保護者は
●家族が集団を形成し、維持し、発展する場と
子の教育について第一義的責任を有するもので
しての機能
あって、生活のために必要な習慣を身に付けさ
すべての家庭には、独自の伝統、家族構成、
せるとともに自立心を育成し、心身の調和の取
親の職業や勤務の状況、生活信条、趣味・嗜好
れた発達を図るように努めるものとする」と示
の傾向など、それぞれの特性(家風)がある。
されているように、家庭のもつ役割は極めて重
それをまず親が自覚し、十分に生かして、心豊
要である。
かな家庭集団をつくることが望まれる。
そこで、教育振興部では、社会の変化に伴う
また、家族の成員一人一人の生活は、自分だ
家庭教育の難しさや家庭教育の機能の低下を憂
けではなく家族全員にかかわる。各自の生活領
慮し、過去の「家庭の教育力」や「地域の教育
域を保ちつつ家族の凝集性を大切にすることか
力」の研究の上に立って、平成25、26年度は
ら、自立心、自律心、役割の自覚、思いやりと
「家庭教育の指針」を成文化し、家庭における
いった特性が養われる。そして、このことは家
教育の望ましい在り方を探ることとした。
庭以外とのかかわりへも拡がっていく。
2 研究の内容
●個人が生涯に所属する集団の基礎的集団とし
⑴ 家庭の教育機能について
ての機能
〜全連退平成 21 年度「年間活動・研究報告」
人は一生の間に家庭、保育所、幼稚園、学校、
より〜
職場あるいは諸々のサークルなど、数多くの集
●親が子を生み育てる場としての機能
団に所属しつつ人間として成長していくが、常
子供の生命を創り出し、家庭内の教育によっ
てよりよき大人になるよう育てるのが親である。
この営みは“命のバトン”として過去から未来
にその中における在り方、生き方の基本となっ
ているのは家庭(家族集団)である。
愛情と信頼に満ち、基本的生活習慣が確立し、
へ連綿として続く。このことが、親に“子供の
役割意識の明確な家庭から、まず、縦や横の人
教育に関する第一義的責任”があるとする所為
間関係の基礎が培われ、さらには礼儀、正義感、
である。
協調性といった社会性の基礎が育っていくとい
「親が子を生み育てる場としての機能」が、家
える。
庭教育の原点であり、父性原理(訓育)と母性
原理(愛育)が、家族構成等その家庭の特性に
16
自明の理であるが“確かな家庭”から“確か
な社会人”が育つ。
【家庭の教育機能について】
A
個人が生涯に
について
C
⑵ 「家庭教育の指針」の内容(具体的な項目)
所属する集団の
基礎的集団
としての機能
子どもの成長
家族が集団を
形成し、維持、
発展する場としての
機能
《基本的事項》 《教育上おさえるべき内容》
●愛情、信頼
○心の安定
●家族の伝統
○家風
○家族の凝集性 ●家族愛(思いやり)
●善悪の判断
○豊かな情操
●自立心、自律心
●役割意識(秩序)
親が子を
B
生み育てる
場としての
機能
《基本的事項》
《教育上おさえるべき内容》
○命のバトン(種の保存) ●愛情、信頼
○生命の維持、生活の安定 ●基本的生活習慣の確立(生命、健康、安全)
○父性原理と母性原理
●情緒の安定
●善悪の判断
《教育上おさえるべき内容》
《基本的事情》
○他者とのかかわり ●愛情、信頼
●礼儀
○社会性の基礎
●尊敬、感謝
○勤労への意欲
●人間関係(思いやり)
●豊かな情操
(自然や伝統、文化とのかかわり)
●規範意識と責任感
●人の役に立つ喜び(家事への参加)
であろう。親・保護者の“認める、励ます
態度”が、大切な鍵となる。
〜小・中学校学習指導要領第3章道徳教育の
善悪を判断する力と自分に嘘をつかない心を
「内容」をベースにして〜
育てること
“目立たない誠”“小さな嘘”を見のがさな
【自分自身のこと】
いことが大切である。親・保護者は、「ほめ
生活のために必要な習慣を身に付けるように
るべき時にほめる」「叱るべき時に叱る」努
すること
力を怠ってはならない。
◦歯磨き、洗面、入浴等から食事、睡眠など、
健全な「生活習慣(リズム)をもつように
【他者とのかかわり】
することは、なんといっても家庭の役割で
時と場に応じた挨拶ができるようにすること
ある。
◦挨拶は、相手と心を結ぶための最も大切な
自分で出来ることは自分でやり、責任をもつ
手だてである。基本は、家族の間で挨拶を
ようにすること。
交わす習慣ができていることである。
◦子供自身の“繰返しのチャレンジ”が必要
17
相手のことを思いやる気持ちを育てること
える。「ほめられること」「叱られること」
◦「思いやりのモデルが身近にあること」
の大切さはここでも生きてくる。
「自分が思いやりを受けているのに気付く
こと」が大切である。家庭における大人の
“さりげない”心遣いが鍵になる。
家庭の中で自分の役割をもち、その遂行に努
めるようにすること
◦子供が自分の役割をもつことは、家族の大
お世話になっている人に、感謝や尊敬の心を
切な一員として認められることであり、充
もつようにすること
足感と意欲を生む。このことが「集団の一
◦まずは家庭内や近隣といった身近で具体的
員としての生き方」の基本となる。ここに
なかかわりの中で、さらには公共の仕事に
おいても親・保護者の“認める、励ます態
携わる人々への思いといった発展が考えら
度”が極めて大切である。
れる。親・保護者の言動の影響が大きい。
近隣や地域社会との関連をもつようにするこ
【自然や崇高なものとのかかわり】
親子で身近な自然に接する機会をもつこと
と
◦親・保護者が“向こう三軒両隣”とのかか
◦風、雲、月、そして花、鳥、虫・・・その
わりを大切にしていれば、それは必ず子供
つもりになれば、日常生活にも沢山の自然
に通じていく。子供たちの近隣や地域社会
との触れ合いがある。親・保護者の“心の
への関心、かかわりの心を高めるのは、大
ゆとり”が鍵である。
人たちの心と行為にかかっている。
常に、生命の大切さを感得するようにするこ
と
◦“命の大切さ”は、折に触れ、生活のあら
ゆる場面で意識することが肝要であり、子
供に“かけがえのない命”“生きる喜び”
を感じ取らせるのは大人の責務である。
美しいものや気高いものに感動する心をもつ
ようにすること
◦例えば夕日の美しさに打たれる心、話の主
人公の気持ちや行為に感動する心などが育
つ に は“ 育 て 手 ” の 存 在 が 大 切 で あ る。
親・保護者がその最たる者であることは言
うまでもない。
【集団や社会とのかかわり】
家庭の約束ごとや社会のきまりを守るように
すること
◦約束やきまりを守る心は、他律から自律へ
と育っていく。家庭での約束を守る心や行
為の成長は、そのプロセスの基本形とも言
18
ほめるべき時にほめることを、叱
るべき時に叱ることを大切にしよう。
「子供は叱られる権利があり、親は
又之を叱る権利があるのである。善
いことも悪いことも勝手で、少しも
叱られることも正されることもない
子供は、決して大切にされている子
供ではなくて、寧ろ虐待されている
子供である。」
(「賀川豊彦氏大講演集」より)
Ⅱ 公立小・中学校における「学制
改革」に関するアンケート調査
現在、多様化したグローバル時代に対応する
教育制度をどのようにすべきか大変重要な課題
◦中・高の3・3制は課題。(短期すぎる。受
験制度とのかかわりで。
(5)
◦社会構造の変化により課題が出てきた。
(3)
以下少数意見(主なもの)
◦幼児教育の検討。
となっている。中央教育審議会において6・3
制や義務教育期間など「学制改革」について論
議されているところである。
全連退として、この問題について各退職校長
会の意見を集約して今後の教育行政に資するた
めに本調査を実施した。
問2 現行の6・3・3制についてどうお
考えですか。(いずれかに○印)
① 現行の6・3・3制を維持すべきで
ある( )
② 現行の6・3・3制を変更すべきで
ある( )
調査結果(44 都道府県・48 団体)
問1 現行の6・3・3制について、次の
視点からお答えください。
(14)
◦子どもの発達段階に即応し、日本社会の中で
(7)
◦教育の機会均等の理念、共通な単一の過程、
(5)
◦個に応じた指導、人間形成が十分にできる。
◦国際的にも優れている。
の課題解決ができれば。
(9)
方による。
◦制度改革を急ぐ理由が不明。
(2)
(2)
◦改革するなら長期の研究と準備が必要。
(2)
◦現行制度の良さをもっと認識すべき。諸問題
は、手立てを講じる方途で。
(3)
以下少数意見(主なもの)
(2)
◦学校現場での議論が成熟していない。
② 変更すべき理由
◦社会経済の発展に貢献し、教育水準が向上。
◦発達段階の変化・多様化。
◦我が国の学校教育の発展に大きな役割を果た
以下少数意見(主なもの)
した。
(2)
◦制度上の問題ではなく、校種間の接続の在り
以下少数意見(主なもの)
(2)
(4)
◦身体的成長が著しく早まっているので、見直
② 問題となる点
◦特になし
(2)4.2%
◦単線型学校体系は維持すべき。中1ギャップ
◦長年にわたって社会に認知され、定着してい
(17)35.4%
どちらともいえない
大きな問題点はない。
① 優れている点
6年間ゆっくり学べる。
変更すべき
◦長年馴染んできた。歴史と実績が国民に定着。
② 問題となる点
慣れ親しんできた制度である。
(29)60.4%
① 維持すべき理由
① 優れている点
る。
維持すべき
す時期に来ている。
(9)
◦学習不適応・不登校など指導上の問題。英
語・理科教育の充実の必要性。学力の差。小
1プロブレム、中1ギャップの問題。 (12)
◦国の教育の根幹にかかわる重要な課題。十分
な国民的議論を。
◦小6は、幅が大きすぎる。中3は、義務教育
の仕上げ時期として短い。
◦心身の発達に即しないことが多くなった。
(5)
19
問3 次のことについてご意見をお聞かせ
ください。
いて。
*賛成・反対には「どちらかというと賛成」「どちら
かというと反対」というご意見も含みます。以下
同じ。
賛成という意見 31%
◦現行でよい。小学校文化と中学校文化の相違
(4)
◦定着した6・3制を変えることによる混乱を
懸念。など。
〈他の区切り支持〉
(5)
42%
◦心身の発達段階から5・4・3制の教育制度
を提案。義務教育の充実・深化。
(6)
(4)
りを変える。
の発達は進んでおり、就学年齢を引き下げる
(2)
◦幼児教育の発展と捉え、現行の小学校教育に
つないでいくのなら可。など。
(3)
反対という意見 69%
速化、不登校、問題行動などに対応する。
(3)
(6)
◦「小学校教育とは何か」について明確にし、
教育内容を検討して実施する。
(6)
◦必要を感じない。幼児期に必要な遊び、体験
を重視する。など。
◦4・5・3制度。小学校前期(1~4年)小
学校後期(5・6年)と中学校教育期間を統
合する5年間及び高等学校3年間の枠組みに
する。
(4)
どもの発達状態から考えて妥当。
(2)
◦4・4・4制支持。中1ギャップ解消。
(2)
◦5・4・4制に賛成。5歳就学。など多数。
(2)
③ 小 中一貫の義務教育学校を設置して、
6・3制以外に5・4制など柔軟に学校
◦就学年齢を下げるのではなく、幼児教育や家
庭教育の充実を図ることが重要。
(2)
◦5歳児教育を含めて6・4・3制。現在の子
◦保育園、子ども園などの一本化を図り、幼児
教育の充実を図ることが優先。
(4)
◦区切りを変え、中一ギャップ、身体発達の加
◦体力的にも知能的にも幼・保・年長の子ども
ことに賛成。
(5)
◦生徒数減少傾向。活気が失われている。区切
◦無償教育期間の拡充と幼児教育の大切さの観
点から。
(9)
は簡単に融合しない。など。
① 就学年齢を5歳に引き下げることにつ
◦基礎学力が早期に身に付けられる。
充実・深化。
段階を区切れるような方式について
(3)
◦幼稚園教育の質の向上を図ることが必要。
◦小中一貫は6・3制がよい。
◦義務教育小・中 10 年間、5歳就学にして充
(3)
◦幼児の発達から考えると義務教育5歳からは
無理。5歳までは幼児教育がよい、など多数。
(11)
② 現 行 の 6・ 3・ 3 制 の 区 切 り を 4・
4・4制とか、5・4・3制とかいろい
ろ言われていますが、どんな区切りがよ
いか理由も含めてお書きください。
◦特色ある学校づくりの一環として柔軟に学校
段階を区切れることはよい。
(4)
◦新たな公立小・中・高一貫校を設置して4・
4・4制を導入するのがよい。
(3)
◦安易な一貫校の設置にはあまり賛成できない。
(3)
ャップは減少するが、小学校高学年にリーダ
◦現行制度はバランスが取れている。継続・進
(10)
◦現行の6・3・3制を堅持、後期義務教育の
20
(5)
◦学びの連続性という点で、5・4制は中1ギ
6・3・3制を支持する 58%
化が大切。
実した教育にあたる。
(18)
ーシップが育ちにくくなる。
(3)
◦小・中一貫校を設置して5・4制など柔軟に
区切れるようにする。
(2)
◦5・4・3制度がよい。・小学校で語学教育
も含む。・応用力・適応力育成。・専門学校選
択も含む。・普通高校に進学せず専門技術を
身に付ける。など。
(10)
問4 我が国の義務教育期間の延長、ある
いは高校までも含めるべきか議論されて
います。仮に高校まで義務教育と考えた
場合は中高一貫校も考えられますが、そ
れも含めて義務教育期間についてご意見
をお聞かせください。
①義務教育期間 歳~ 歳までの 年間
②高校まで義務教育にする
(いずれかに○印)
・賛成 ・反対
反対の理由
◦高校の学費無償化が実現すれば義務教育にす
る必要はない。
◦高校を義務化することにより特色が失われる。
(5)
◦義務教育年齢 14 歳の延長は、生徒の身体的、
精神的発達からまた、個性に即した教育内容
や進路指導を図る視点から適切ではない。
(5)
◦子どもの貧困率が高まっているのに高校の義
務化は貧困を一層厳しくさせる。
(4)
◦高校は充実したキャリア教育の学校にし、少
人数教育なども含めユニークな学校を設置す
る。義務教育には含めない。
① 義務教育期間
(9)
(3)
◦本人の希望、能力に合った選択ができ、多種
5歳~14 歳まで 10 年間
(2)
6歳~14 歳までの9年間(現行)
(22)
6歳~17 歳までの 12 年間
(4)
まとめ
6歳~18 歳までの 13 年間
(2)
国の学制改革の動きが早い。平成26年11月20
7歳~15 歳までの9年間
(2)
日、中教審は小中一貫教育制度答申案を示した。
※その他の区切りはそれぞれ選択数が(1)だ
な能力に合った高校が必要。など。
(2)
それによると、1人校長による施設一体型の
「小中一貫教育学校」と学校毎に校長を置く施
ったので略す。
② 高校まで義務教育にする
設分離型の「小中一貫型小学校・中学校」の二
◦賛成する
(12)
つの類型が示された。いずれの場合も6・3の
◦反対する
(29)
区分を確保しつつ9年間の教育目標と教育課程
◦無償化(選択肢外)
(7)
の編成が条件となる。
賛成の理由
本調査でも、小中一貫校についてはいろいろ
◦高校進学率は全国的に見て 97%~98%、以
上になっている。
(4)
意見があったが、施設一体型で小学校高学年の
自主性や指導力は育つのか、中一に新たな出発
◦人間として成長するためには高校まで義務教
としての自立心や誇りが育つのか疑義が出てい
育にすることが大事、人間として成長するた
た。いずれにしても、検証が足りないままに大
めにも必要。
きな制度変更が進行していくことに不安を感じ
(4)
◦中高一貫教育は推進すべきである。前期課程
を義務教育中等教育の基礎を培い、後期課程
は実業的課程を含め、多様な中等教育を行う
べきである。
(2)
◦現在のように中学校までが義務教育であれば、
著しく発達する世の中には対応できない。
(2)
ざるを得ない。
また、義務教育期間については、9年間の現
行是認の意見が多く続行は妥当と考える。
やがて法改正となれば、学校設置者としての
地教委に委ねられる部分が多いが、少子化で統
廃合が進む中、施設や人件費軽減のために学制
が安易な方向にいかないよう十分な論議に期待
したい。
21
Ⅲ 「教育の日」の制定状況と事業
の充実についての調査
都道府県退職校長会のご協力によるアンケー
ト調査集計結果の概略。
₁ 未制定府県(13府県 回答11)の平成25年
12 月以降の現状
A . 平成 26 年4月1日、沖縄県で制定された。
B . 制定の見込みが出てきたと回答が2県。
C . 制定の見込みがない 10 府県の府県教委等
へ要請の状況。
要請等していないのは1県のみ、要請の方
法等に差が感じられる。また、要請を受ける
府県教委の反応にも差が感じられる。
₂ 新たに制定された市町村
3市・3町・2村で新たに制定された。
₃ 制定されている都道府県に関しての調査
⑴ 知 事部局や都道府県教委が「教育の日」
を主管している場合、中央大会やPRを担
当している部局(25 都道府県より回答)
教育庁総務部〈10〉
、企画室〈3〉、生涯学習
課〈3〉、教育政策課〈3〉、社会教育課〈2〉、
学校支援課・児童生徒支援課・地域教育支援
部・家庭地域連携部〈各1〉
⑵ 教育団体によるいわゆる「教育の日」設
立宣言などで設立した場合、中央大会やP
Rを担当する実行組織
◦「教育の日」推進協議会の事務局(3団体)
と幹事会(構成団体)を主に運営
◦「教育の日」実行委員会(50 数団体)
◦「教育の日」推進委員会、教育関係5団体
(退職校長会・県青少年育成協議会・県公
民館連合会・県子ども会育成連合会・県老
人クラブ連合会)で組織
◦「教育の日」実行委員会、会長・事務局の
中核は4団体(教育会・退職校長会・教育
県民会議・県PTA連絡協議会)、参画 45
団体から 16 団体が幹事団体。
◦「教育の日」推進会議、県内教育関係団体・
県教委・市長教委等で構成。
22
◦「教育の日」推進県民協議会
⑶ 都道県民の「教育の日」に対する意識・
それを高める方策(回答数 26)
①意識の高まり(回答数 26)
一般都道県民の「教育の日」に対する意識
の高まりについて。
◦意識が高まった。
〈8〉
◦高まりつつある。
〈2〉
◦意識の高まりはあまり感じられない。
〈16〉
②意識を高める方策(回答数 18)
◦県教委のHP・広報誌、各学校の学校だよ
り等による広報活動。
〈9〉
◦「教育の日」大会の地区持ち回りの開催に
よる全県的な理解と意識の向上。 〈4〉
◦「教育の日」ロゴマーク・標語・図案・ポ
スター等の公募。
〈2〉
◦マスコミに取り上げてもらう。
〈2〉
◦一般県民の意識を高めるには、国を挙げて
の「教育の日」の制定が望ましい。 〈1〉
⑷ 各市町村に独自の「教育の日」制定を呼
びかけているか(回答数 24)
◦特にしていない。
〈14〉
◦市町村教育委員会や教育長に対して呼びか
けを行っている。
〈7〉
◦退職校長会の会報に呼びかけを掲載。
〈2〉
◦「教育の日」実践記録を配布。
〈1〉
⑸ 今後の「教育の日」アンケート調査で尋
ねたいこと
◦「教育の日」に対しての退職校長会の取組
み。
◦県民に対しての「教育の日」の周知及び教
育に対する意識高揚の方策。
◦市町村に対しての「教育の日」制定の効果
ある呼びかけの方法。
◦「教育の日」の事業の効果と課題について
その他、過去にアンケート調査をしたこと
のある項目。
◦「教育の日」の事業・行事について。〈5〉
◦「教育の日」の予算・財源確保について。
〈4〉
―「教育の日」実践事例 ―
「上越市教育の日」制定への取組
新潟県公立学校退職校長会
1 制定への歩み
上越市教育の日制定に向けた取組は、平成17
年に退職校長会員の呼びかけで勉強会から始ま
った。その願いは、①市民が協力して子どもた
ちの成長を支える教育のまち ②歴史や風土、
芸術、伝統が生活に溶け込んだ薫り高い文化の
まち ③あたたかみのある人と人とのふれあい
のある人情深いまち に象徴される「教育・文
化都市上越」である。
平成18年には、この願いを市民の手でつくり
たいとの思いから「上越市教育の日制定に向け
た推進委員会」を立ち上げた。推進委員会は、
PTA、子ども会、高田文化協会、青年会議所、
青少年育成協議会、退職校長会などの代表が参
加し、教育への思いや子どもが育つ環境などを
語り合った。また、教育の日推進フォーラムを
5年にわたり開催し、市民に会の趣旨や子ども
の教育について学校、家庭、地域社会みんなで
考える機会を設けた。
平成23年には、市長、市議会、教育委員会に
「上越市教育の日を定める条例制定に関する陳
情書」を提出した。
平成24年には、推進委員会委員が市議会議員、
教育委員会職員らとともに、教育の日の先進地
前橋市を視察研修した。この視察結果を踏まえ、
「上越市教育の日制定を定める規則制定に関す
るお願い」を市教育委員会に提出。平成25年度、
教育委員会は教育の日制定検討委員会を開催し、
規則の内容や教育の日の取組について検討を行
った。同年12月市議会文教経済委員会は「11月
1日を教育の日に、11月を上越市教育を考える
市民月間」とする「上越市教育の日に関する規
則」を承認。規則は、平成26年4月1日施行さ
れた。
₂ 制定を祝う会の開催
推進委員会では、平成26年5月11日「上越市
教育の日」制定を祝う会を開催した。記念講演
には、下村博文文部科学大臣が来越し「日本の
これからの教育ビジョン」と題してその思いを
市民に語りかけた。
₃「上越市教育の日」記念式典・事業
平成26年11月1日 上越市教育の日制定の記
念式典には市民1500人余が集まった。市長、県
教育委員会委員長などのあいさつに続き、教育
長が「上越市教育の日」を宣言。併せて「義の
心」につながる五つの合言葉を発表した。
また、教育の日のシンボルマークも発表され、
多くの中から小学生の作品が最優秀賞として採
用、紹介された。桜の5つの花弁は「学校・家
庭・地域・行政・企業」
「幼稚園と保育園・小
学校・中学校・高校・大学」
「5つの合言葉」
を表し、みんなで支え合い、助け合って教育に
取り組む願いが込められている。文化講演会で
は、教育評論家の尾木直樹氏が子育ての課題を
熱く語った。
上越市では、数年前から11月に「学び愛フェ
スタ」を開催している。学校の教育活動のほか、
青年会議所や地域の団体が主催する青少年活動
などが市民に公開されている。
上越市教育の日は、全連退をはじめ多くの市
民や教育関係団体の支援を得て実現したが、今
後は「教育の日」の真意が市民に浸透し子ども
が健やかに育っていくことを願っている。
記念式典
23
―「教育の日」実践事例 ― ちゅ
しま
「美ら島おきなわ教育の日」制定について
1「美ら島おきなわ教育の日」制定される
県教育委員会は、平成26年4月26日「美ら島
おきなわ教育の日」を制定し、その日を毎年11
月1日とすることを定めました。
制定を記念して、同年10月31日には関係者
130人を集め記念式典を開催しました。
式典には、小・中・高生の代表が学校生活で
の目標や将来の夢を力強く宣言しています。
同時に、教育委員会から学力向上、国際性に
富む人材育成、家庭教育力の育成、食育教育の
充実の力点の報告がありましたが、そのことは、
県教育の喫緊の課題といえましょう。
₂ これまでの県退職校長会の取り組み
平成15年度全退連の活動方針の中に「教育の
日制定に向けて努力する」の事項があり、当時、
すでに制定されている都道府県もあるというこ
とで、本県でも「重点努力事項」に掲げました。
早速、役員が県教育長に面談し趣意や状況を申
し上げますと、「市町村段階から盛り上げる活
動から始めたらどうか」という助言があり、ボ
トムアップ方式も1方法だと考えその方向で運
動を展開することにしました。
早速、地方公共団体の首長へ要請行動を展開
することにし、まず、那覇市の市長、教育長と
面談しました。続いて、沖縄市、糸満市、主要
市町村を精力的に訪問し要請行動を行いました。
それが実を結び、那覇市では翌年の平成19年に
「なは教育の日」を制定しています。
その後、他の市町村も続き現在は17市町村
(県全体41%)で「教育の日」が定められてい
ます。県が「美ら島おきなわ教育の日」を制定
したことから、今後、未制定の市町村も制定を
急ぐものと思われます。
県退職校長会では、現在も「教育の日制定」
を重点活動目標とし首長訪問を続けています。
また、本退職校長会の特筆すべき活動として、
24
沖縄県退職校長会
「児童生徒善行表彰事業」があります。県内5
教育区から、学校、地域のボランティア等で積
極的に取り組んだ個人、団体を推薦してもらい
表彰する事業ですが、今回16回目を迎え関係者
から大変喜ばれています。
₃「なは教育の日」の実践
平成19年に告示として定められた「なは教育
の日」について報告します。県内では2番目の
制定ですが、学校、地域、企業、行政が連携し
て大変活発に行われている事例といえます。
「なは教育の日」は毎年12月9日に始まり、翌
年の1月末日までが活動期間です。その期間に
21の事業を教育委員会の各課の主催事業として
開催します。その期間外でも関連行事が行われ
ます。事業内容は教育功労者表彰、善行児童生
徒の表彰、高齢者大学講演会、フォーラム等あ
りますが、ここでは、「やる気・元気・旗頭フ
ェスタinなは」について紹介します。
この行事は、関連行事として毎年10月に行わ
れます。那覇市の青少年育成課が主催し、市内
54校の児童生徒が一堂に会し、旗を掲げ、「協
力と団結」をモットーに自校をアピールする行
事です。地域住民、父母も駆けつけ和やかに盛
大に行われます。
那覇市 真和志小学校の旗頭
「教育の日」の制定状況 (平成26年12月現在)
○北海道地区制定
◦制定市町村
― 35 都道府県、98 市、59 町、9村、1区 ―
北海道
(北海道) 石狩市 岩見沢市 小樽市 帯広市 苫小牧市 函館市 砂川市
稚内市 滝川市 赤平市 旭川市 白老町 豊頃町 本別町 幕別町 月形町 今金町
陸別町 大樹町 池田町 浦幌町 上砂川町 音更町 中札内村
○東北地区制定県
◦制定市町村
青森県 岩手県 宮城県 秋田県 福島県 山形県
(青森県) 野辺地町 (秋田県) 大館市 男鹿市 (山形県) 上山市
新庄市 天童市 山形市 山辺町 朝日町 (福島県) 浅川町
○関東甲信越地区制定都県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 東京都 長野県
◦制定市町村
(茨城県) ひたちなか市 土浦市 守谷市 稲敷市 牛久市 龍ケ崎市
筑西市 結城市 阿見町 河内町 利根町 茨城町 大洗町 城里町 東海村 美浦村
(群馬県) 前橋市 渋川市 藤岡市 沼田市 明和町 (埼玉県) 白岡市 (千葉県) 佐倉市 銚子市 野田市 南房総市 鋸南町 (東京都)
あきる野市 葛飾区
(山梨県) 甲府市 中央市 (新潟県) 上越市
○東海北陸地区制定県 石川県 岐阜県 静岡県
◦制定市町村
○近畿地区制定県
◦制定市町村
(静岡県) 掛川市 (福井県) 福井市 敦賀市 (三重県) 名張市
滋賀県 兵庫県 奈良県 和歌山県
(滋賀県) 栗東市 (奈良県) 奈良市 (和歌山県) 和歌山市 海南市
橋本市 有田市 田辺市 新宮市 岩出市 紀の川市 紀美野町 かつらぎ町 九度山町 高野町 広川町 由良町 有田川町 美浜町 日高町 みなべ町 印南町 白浜町
上富田町 すさみ町 串本町 那智勝浦町 太地町 古座川町 湯浅町 日高川町 北山村
○中国地区制定県
◦制定市町村
島根県 岡山県 広島県 山口県 鳥取県
(鳥取県) 鳥取市 南部町 (広島県) 三原市 (山口県) 美祢市 荻市
宇部市 和木町
○四国地区制定県
◦制定市町村
○九州地区制定県
◦制定市町村
徳島県 香川県 愛媛県 高知県
(徳島県) 美馬市 三好市 鳴門市 つるぎ町 (高知県) 安芸市 三原村
長崎県 熊本県 大分県 鹿児島県 宮崎県 沖縄県
(福岡県) 筑後市 宗像市 八女市 糸島市 (佐賀県) 嬉野市 唐津市
多久市 神崎市 小城市 佐賀市 伊万里市 武雄市 玄海町 (熊本県) 八代市
荒尾市 宇土市 宇城市 合志市 大津町 美里町 和水町 氷川町 (大分県) 宇佐市
国東市 佐伯市 津久見市 日田市 豊後高田市 別府市 玖珠町 九重町 姫島村
(宮崎県) 串間市 日向市 日南市 宮崎市 都城市 宮崎市高岡町 三股町
(沖縄県) 浦添市 宮古島市 那覇市 石垣市 糸満市 南城市 名護市 うるま市 南風原町 西原町 八重瀬町 金武町 伊是名村 恩納村 中城村
※上記中、岐阜県は「教育週間」、静岡県は「家庭教育の日」、兵庫県は「兵庫の教育推進月間」、
長崎県は「長崎っ子の心をみつめる教育週間」、鹿児島県は「地域が育む“かごしまの教育”県
民週間」、宮崎県は「みやざきこども教育週間」と呼ぶ。
25
26
35
98
59
9
26
全国連合退職校長会の調査・研究のまとめ
❷ 社会保障改革と安心生活の展望
生涯福祉部
部 長 岡野 仁司
部 員 大泊 信雄(茨城県)
板垣 正順(千葉県)
鴻田 好道
緑川 曜子
荒井 忠夫
日本は経験したことのない超高齢化社会に入
② 現在、長期保険料(掛け金)を納付し
っており、年金、医療・介護等の社会保障給付
ている者は、平成 27 年9月分までの期
費用は年ごとに増加の一途をたどっている。こ
間については、職域部分も年金額の計算
の実情を直視し、深刻な課題を乗り越えていく
に入れる。
ためには、年金給付を懸命に支えてくれている
③ 平成 27 年 10 月で職域部分は廃止され
現役世代と高齢世代が一体となって、社会保障
るが、廃止と同時に民間の企業年金と同
制度を持続可能にする立場から、互助・互譲の
じ「年金払い退職給付制度」が設けられ
考え方で臨む以外にないのではなかろうか。
る。
社会保障改革が進む中、全連退会員の暮らし
はどう変わっていくのか、年金、医療・介護の
各分野で今後の動向をまとめた。
④ 現在受給している年金は引き続き公立
学校共済組合から支給される。
平成27年度には、年金額の特例水準解
消措置(2.5%減額)も完了する。
1.年金に関わる情報と今後の課題
⑵ マクロ経済スライド制でどうかわるか
平成24年度に年金一元化等の新年金関連法が
公的年金の支給金額の伸びを抑える「マク
制定され、平成26年4月から年金の0.7%減額、
ロ経済スライド」制度が4月から実施される。
3%の消費税の増税などにより、年金受給者に
少子高齢化が進んでも将来の年金支給に支障
とっても厳しい年となった。全連退は毎年、年
が出ないように2004年度の年金制度改革でで
金等に関わる要望を関係省庁へ提出しているが、
きた仕組みだが、今春初めて適用される。
要望の内容については会報189号・全連退情報・
公的年金は、賃金や物価が上昇すると、そ
ホームページに掲載されているので参照された
の分がスライドして増額するのが基本となっ
い。
ているが、4月以降は、賃金や物価が上昇す
平成26年度の消費税増収分5兆円は、まず、
るほどには増えなくなる。つまり、賃金や物
基礎年金国庫負担割合1/ 2の安定財源として
価の上昇率から「調整率」という数値で差し
2.95兆円が充てられることになる。残りの増収
引かれる仕組みになっているためである。
分は、社会保障充実等の経費に向けられること
この調整率は年金保険料(掛け金)を納め
になっているが、今後、年金制度の安定・持続
る現役世代の減少や平均寿命の延びを勘案し
にも注視が必要である。
た数値である。1月30日に0.9%に決まった。
⑴ 被用者年金制度の一元化に伴って、共済
これとは別に、4月から年金支給額が0.5
年金はどう変わるのか?
%減額される。過去、物価が下がったのに年
平成24年、被用者年金制度の一元化法が成
金支給額を引き下げなかった時期があり、い
立したのをうけて、同年に地方公務員共済年
わゆる「払い過ぎ」が生じていたのを適正額
金制度改革が行われ、平成27年10月には厚生
に戻すことになった。どのくらい年金額が抑
年金に統一されるので、共済年金の名称は消
えられるかは、人によって異なる。仮に物価
滅する。改正のポイントを挙げると、
上昇率が2.8%で月額約22.7万円の年金を受給
① 現在、共済年金受給者は引き続き、職
域部分(加算)を含む年金が支給される。
している元会社員と専業主婦の世帯をモデル
としたケースでは、年金額の伸びは約3,400
27
円抑えられ約23万円になる。
人などを補助の対象から外す。また、相部屋
⑶ 年金資産(年金積立金)の運用状況
の利用者から、新たに月額1万4,000〜1万
(平成26年4月現在)
今、年金積立金運用独立行政法人(GPIF)
が約129兆円の年金積立金を運用している。
5,000円程度の室料を徴収する。
介護サービスを提供する仕組みも変る。介
護の必要性が低い「要支援」の人の訪問サー
内訳は、国内債券60%、国内株式12%、外
ビスなどについては、市町村がボランティア
国債券11%、外国株式12%、短期資金5%。
やNPOなどを活用しながら提供するように
◦平成24年 収益額11兆2,000億円
収益率10.23%
なる。
政府は1月11日、介護保険サービスの公定
◦平成25年 収益額10兆2,000億円
価格である介護報酬の改定について、今年度
収益率8.64%
から全体で2.27%引き下げることを正式に決
また11月25日、7〜9月にかけ、国内外の株
定した。
価 上 昇 な ど で3兆6,222億 円 の 収 益( 収 益 率
介護保険の総費用は、制度が始まった2000
2.87%)を上げ、運用資産額が過去最大の
年度に3.3兆円だったが、2014年度には10兆
130兆8,846億円となったと発表。
円までに増える。このままでいくと2025年度
現政権の経済成長戦略の中で、株式投資の
には約20兆円にまで達する見込みである。
比率を高め、債券の比率を下げるべきとの議
介護サービスの値段にあたる介護報酬が下
論がある。ただ、年金積立金は将来の年金給
がれば、総費用の伸びが抑えられるだけでな
付の貴重な財源であり、被保険者の立場に立
く1割分を払う利用者の負担も軽くなる。ま
って中長期的な視野から安全で効率的な運用
た65歳以上の高齢者の介護保険料(全国平均
を行う必要がある。
月額4,972円)の伸びも抑えられるという。
またある程度の運用益を確保していないと
財務省の試算では、2015年度に月5,800円
年金財政が苦しくなるので、どう判断するか
程度上がるところ、2.27%の報酬引き下げな
という議論が行われている。
どで、5,550円程度に抑えられる。
参考資料:日本退職公務員連盟新聞(第753号)
⑵ 75歳以上の半数が軽減特例の段階廃止で
保険料が上昇!
₂.医療・介護に関わる情報
厚労省は2014年10月15日、高齢化で増大が
⑴ 介護保険では、8月から一定以上の所得
避けられない医療費に関して、2016年度から
がある人が介護サービス使った時の自己負担
の実施を目指す医療費の負担増や年金の抑制
割合を、現行の1割から2割に引き上げる。
策の全体像を社会保障審議会医療保険部会に
この対象になるのは、年金収入が 280 万円以
示した。所得が少ない後期高齢者の保険料を
上の人などで、高齢者の 20%程度にあたる
安くする特例措置を、段階的に廃止すること
という。ただ、世帯ごとの負担に上限(月
が柱である。
3万 7,200 円、高所得者は月額4万 4,400 円)
同省が示した負担増の全体像は、後期高齢
が設けられているため、それを超えた分のお
者医療制度の見直し案が核で、低所得の高齢
金は支払う必要はない。
者を中心に全加入者約1,600万人の半数にあ
特別養護老人ホーム(特養)では、低所得
たる約865万人が負担増となる。
者を対象とした室料や食費の補助制度が見直
この制度の保険料には、加入者全員が負担
される。8月から預貯金が1千万円を超える
する「均等割」
(自治体で異なるが全国平均
28
月3,750円)と、年金などで153万円を超える
の役割分担などの議論を進め、今春の通常国
年収がある人だけが払う「所得割」がある。
会に関連法案の提出を目指している。
均等割に関しては現在、年収80万円超〜168
懸案だった国保運営の広域化は、国保財政
万円以下は、8.5割を軽減する特例措置があ
を安定させる方策の1つとして、規模を広げ
る。同省案では、特例措置を段階的に廃止し、
てリスクを分散させるのが狙い。移管の条件
本来の7割減に戻す方針だ。
とされる年間約3,500億円の赤字解消が最大
均等割の見直しで、負担増となる高齢者は
の焦点となる。政府は、消費税の3%増で得
約311万人に上る。
られる財源から2,200億円を国保の財源支援
「所得割」についても、年収153万円超〜211
に 充 て る こ と に し て い る。 そ れ で も ま だ
万円以下の約145万人に対して、保険料を本
1.300億円不足する費用をカバーするため、
来より5割軽減していた特例をなくす方針だ。
健保組合や共済組合などの負担を増やす方向
因みに、今年度予算では特例措置に対して、
で検討している。具体的には、健保組合や共
計811億円の国費が投入されている。一方、
済組合などが支払う後期高齢者医療制度への
現役世代の高所得者も負担増となる。健康保
支援金の計算方法を変更することで最大
険は、月収に相当する「標準報酬月額」を基
2,400億円を捻出できると見込んでいる。つ
に保険料を決めている。現在、同月額の上限
まり、それを国保の赤字解消にまわすという
は121万円で、それ以上の収入(年収1,452万
ことである。
円超)がある高額所得者でも保険料は変わら
これに対して、健保組合側は「制度全体の
ない。同省は上限を、145万円まで引き上げ
見直しを後回しにして『取り易いところから
る方針だ。例えば、月収145万円相当の人は
取る』という考え方は受けられない」と強く
保険料を10%と想定すると、毎月の保険料が
反発している。(読売新聞 社会保障欄から)
1万2,000円増の7万2,500円となり、対象の
⑶ 待機高齢者が増大傾向
高所得者は約30万人である。
自営業や退職者らが加入する国民健康保険
待機高齢者とは、特別養護老人ホーム(特
養)への入所希望者で直ぐ入所できずに順番
についても、高所得者を対象に保険料の上限
待ちしている高齢者のこと。東京都の例だと、
額を引き上げる方向である。
4万3,000人いるという。
同省は、2016年の通常国会に関連法案の提
物価の高い都市部の特養ホームは深刻な状
出を目指すが、与党を中心に高齢者の負担増
況にある。ある都内の特養施設長は、「賃金
などへの慎重論が根強く、見直し案の取りま
水準が高い都内でホームの職員を確保するた
とめは難航が予想される。
めに、賃金を高めに設定してきたが、それで
(参考:厚労省HP、読売新聞記事から)
国民健康保険(以下国保)の立て直し策を
も人手不足が続き、2014年11月に高齢者を短
期で預かるショートステイを休止した。今回
巡り、国の審議会で議論が続いている。国民
の介護報酬引き下げで施設の収入が減ると、
の高齢化や非正規雇用の増加で悪化する国保
非正規職員を増やすなどして、人件費を削ら
財政(年間約3,500億円の赤字)を立て直す
ざるを得なくなり、サービスの質がさらに低
にはどうするかの議論が正念場を迎えている。
下する」という。
一昨年の夏、社会保障制度改革国民会議が国
保の運営を市町村から都道府県に移管するこ
とを提言した。国は今後、都道府県と市町村
29
表Ⅰ 平成25年春秋叙勲 各都道府県校種別受章者数一覧
校種別
受章者
幼
小
高
平成26年9月調査
特支
小計
受賞者 前 年 度
瑞宝
瑞宝
瑞宝
瑞宝
瑞宝
瑞宝
旭日
瑞宝
瑞宝
瑞宝
瑞宝
瑞宝
旭日 総 数 との比較
単光章 双光章 双光章 双光章 双光章 小綬章 小綬章 双光章 小綬章 単光章 双光章 小綬章 小綬章
北海道
青 森
岩 手
中
1
1
宮 城
秋 田
15
10
4
5
2
5
7
6
5
5
4
4
4
1
1
1
18
46
− 02
5
15
− 01
11
5
17
0
8
4
12
− 01
3
5
3
9
3
12
− 01
4
3
4
8
4
12
02
福 島
4
6
6
10
6
16
0
茨 城
5
8
6
1
13
7
20
1
栃 木
6
4
2
1
0
群 馬
6
4
3
埼 玉
12
7
9
山 形
1
1
1
28
10
1
千 葉
36
30
1
14
2
東 京
13
13
2
7
1
2
神奈川
11
11
2
4
山 梨
3
3
1
1
長 野
7
3
新 潟
1
4
1
1
1
3
14
3
13
1
20
9
29
− 04
69
15
84
6
29
7
36
− 08
26
4
30
− 02
7
1
8
0
10
4
15
02
1
8
4
7
15
7
22
01
富 山
2
3
3
5
3
8
− 01
石 川
4
4
4
8
4
12
0
福 井
2
2
4
4
4
8
0
岐 阜
2
5
6
8
6
14
0
静 岡
2
9
11
8
19
0
愛 知
10
14
5
25
5
30
01
三 重
3
4
4
7
4
11
− 02
8
2
10
− 03
5
− 05
滋 賀
7
1
2
11
10
7
1
1
1
2
京 都
2
3
5
大 阪
38
7
2
6
兵 庫
5
10
1
10
2
8
57
18
10
26
− 03
奈 良
2
3
3
6
3
9
− 06
和歌山
6
3
2
9
2
11
00
鳥 取
1
5
1
7
1
8
0
5
5
5
5
10
0
5
4
9
10
9
20
2
3
4
3
9
3
12
0
4
5
3
10
3
13
− 01
徳 島
2
4
2
6
2
8
00
香 川
1
3
4
4
4
8
00
4
4
2
1
1
6
4
10
0
31
10
41
24
5
2
7
0 − 01
0
島 根
岡 山
1
広 島
山 口
1
1
2
愛 媛
福 岡
2
4
1
4
10
15
10
佐 賀
2
3
2
長 崎
5
5
1
3
熊 本
6
5
1
2
大 分
2
2
2
3
9
2
宮 崎
鹿児島
1
沖 縄
30
1
4
高 知
合 計
1
49
16
7
291
2
1
6
2
3
2
8
2
4
5
2
260
25
224
1
26
6
2
11
3
14
14
3
17
1
4
6
10
− 02
− 01
7
3
10
17
2
19
1
8
2
10
4
609
230
842
21
1
表Ⅱ 平成27年度 米寿者・上寿者人数
県 名
県 名
道
99
1
青
森
41
1
岩
手
54
2
春
宮
城
61
2
兵
秋
田
46
0
和
山
形
48
1
福
島
63
茨
城
栃
米寿者
人 数
上寿者
人数
な に わ 会
29
0
みおつくし会
64
2
会
5
1
庫
69
1
山
44
1
鳥
取
16
0
6
島
根
39
0
72
3
岡
山
69
2
木
72
3
広 島(県)
61
4
群
馬
47
0
広 島(市)
18
0
埼
玉
69
2
広 島(高)
11
0
千
葉
98
3
山
口
40
2
東
京
150
12
徳
島
37
0
川
129
1
香
川
33
0
新
潟
65
2
愛
媛
5
1
山
梨
0
0
高
知
4
0
長
野
79
4
福 岡(小)
65
4
富
山
45
0
福 岡(中)
21
1
石
川
43
3
佐
賀
41
1
福
井
24
1
長
崎
44
2
岐
阜
38
2
熊
本
65
1
静
岡
70
1
大
分
94
2
愛
知
0
0
宮
崎
57
4
三
重
65
1
鹿
島
74
0
滋
賀
32
1
沖
縄
12
0
京
都
62
3
奈
良
36
1
2625
85
神
海
上寿者
人 数
奈
大阪
北
米寿者
人 数
平成26年7月調査
秋
歌
児
合 計
31
全国連合退職校長会の調査・研究のまとめ
出版事業委員会
委員長 木山 髙美
委 員 石塚 二郎(栃木県)
西倉 正
鈴木 博子
齊藤とも子
❸ 第6回 全連退 設立50周年記念 教育図書の刊行
₁ 編集のねらい
地域に根差した各地の特色ある教育活動を収録編
集したものである。
2 書 名「未来を拓く学校のカ」
──地域と学校の心触れあう教育活動──
3 内 容
1章 郷土の偉人・歴史・文化に学ぶ
第1節 郷土の偉人・歴史に学ぶ
第2節 郷土の伝統文化に学ぶ
2章 地域の特色を生かした教育活動
第1節 地域の自然を生かして
第2節 地域への貢献をめざして
3章 災害からの学びと復興・防災教育
4章 当面する教育課題への取組
5章 世界につながる・世界に羽ばたく
各県から頂いた、地域の特色ある教育活動の事例
を5章に分類し編集した。
内容は郷土色豊かで実に多様である。俳句学習を
通して地域の自然や歴史・文化を学ぶ伝統の継承、
郷土の生んだ偉人の生き方に学ぶ学習、地域の伝統
礼申し上げます。
なお、本書を広く会員の皆様から現職の先生方に
お勧めいただいたり、会員の皆様から現職の先生方
への激励本として贈呈していただくなど、PRにも
ご協力ください。
出版は平成27年1月 全国の書店で
編著者 全国連合退職校長会
A5判 216 頁 横書き
出版社 株式会社 東洋館出版社
(東京都文京区本駒込5− 16 −7)
書店での購入価格は1冊2,400円+192円(税)
5冊以上まとめて、ハガキで全連退事務局
に申し込まれると税・送料込みで1冊 2,200 円
全連退事務局
〒 141-0022 東京都品川区東五反田
5-21-13-308
全国連合退職校長会 出版事業委員会 宛
電話・FAX 03-3441-8768
行事の継承を通して街の活性化に一役、あるいは失
われつつある故郷や人間らしさを求めての漁村留学
東洋館出版社 の 新 刊 案 内
等々……地域文化を育んでいる「学校の力」をつく
づく感じさせる教育ドキュメンタリーともいえる一
4 執筆者の特色
本書の執筆者(多くは本会会員)の特色は全都道
府県に及んでいることである。その執筆者は各都道
府県退職校長会長の推薦による方々で、北海道から
るが、地域と学校の心触れあう教育活動を通して地
ている。
5 お礼とお願い
この度の出版に際しては、各都道府県退職校長会
域に誇りを持ち、自分に自信の持てる教育を推進し
の全面的なご理解とご協力をいただき、次図の表紙
(内容目次は会報194号参照)の新刊図書を刊行する
ことができました。
各都道府県の会長をはじめ執筆者の皆様に厚く御
32
教育の振興を
沖縄まで全国に及んでおり、書きっぷりも多様であ
会員にご購入いただき現職へ贈り
書である。
全国連合退職校長会設立50周年記念出版
学校現場に勇気と新たな意欲を喚起する
珠玉の実践が満載!
全国の書店にて
好評発売中!
!
!
本体価格 2,400 円 + 税
自分の経験は、どんなに小さくても、
百万の他人の経験より値打ちのある
財産である。
―レッシング
春風をもって人に接し、
秋霜をもって自らつつしむ。
―佐藤一斎
各都道府県のニュース紹介(数団体)
Part
Ⅲ
広報部・生涯福祉部
各都道府県のニュース紹介(数団体)
・地方の会報誌より ・鳥の飼育と研究30余年
・「地域を活かせる学校支援ボランティア」
事 例 1 地方の会報誌より
⑴ 「ふれあい」に感謝
表し合う楽しい催しである。
ここで私も、かつて奉職した洞戸小学校校歌
をハーモニカで演奏することになった。その校
関市支部 野村武宏
歌はあまり例を見ない三拍子の曲で、「向かい
(岐阜県退職校長会会報「彩雲」第176号)
の山に登ったら、天はまだまだ、高かった」と
児童みんなが分かりやすく、歌いやすいもので
さまざまな「ふれあい」を思わぬ時に思い
出し、振り返ることがある。
あった。この校歌がなんと、野村芳兵衛、上野
忠平両先生の作詞作曲であった。「やってみて、
国道256号線を、関市洞戸事務所から板取方
かんがえて・・」の歌詞があり、体験を重視す
面へ5分ほど車を走らせると、道路沿いに「芳
る教育思想をもみることができる。当時の生徒
兵衛パーク飛瀬」と名付けられた、しゃれた休
は、立派に地域を背負うリーダーになっている。
憩用公園がある。夏になると山や水の自然を求
今はそれぞれ、子の親である当時の生徒と半世
め、ドライブする家族には大変喜ばれる場所に
紀の昔の出来事を、懐かしく思い出すことにな
なる。わが洞戸地域が誇る野村芳兵衛先生を顕
った。お陰で自分が何か誇らしい気持ちを持つ
彰したものである。
ことになった。(中略)
芳兵衛先生には、今から50年ほど昔、岐阜大
洞戸地域でも、住人の高齢化、少子化現象は
学附属中学校での教育実習の研究会の時、「理
課題である。そんな中、ふれあいセンターでは
科の授業だといって、たくさんの生きた蛙を解
「洞戸夏祭り」をはじめ諸活動が計画されてお
剖していいのかね」と問われたことがあった。
り、きっと意義深い「ふれあい」が生まれるこ
既に昭和32年、自分が中学生の時、解剖実験と
とになると思う。
して興味を持ち経験していたこともあったので、
「そう言われても」と友達と議論したが、その
問われたことが意味深く重いものだったと、今
住人の一人一人が持ち合わせる力を、自信や
誇りとし、暮らしを豊かにする大きなエネルギ
ーになるととを願っている。
になってまた思い出す。
その大先輩を生んだわが洞戸地域に、この6
月1日、立派な「洞戸ふれあいセンター」が新
築された。指定管理を受け、地域活動推進のお
手伝いをする役目からも、改めて「ふれあい」
⑵ ₆年ぶりの再会
由利本荘・にかほ 工藤ミネ子
(秋田県退職校長会会報第83号)
を意識する毎日である。
センターの企画による事業の一つに、地域の
退職して4年目の今春、初任者研修教科指導
中学校の合唱活動から発展した交流事業「ピー
員の依頼を受けた。中学校の家庭科である。小
スベルフェスティバル」がある。平和活動を推
学校だけの勤務37年でしたから、「えつ、中学
進するプロのライブ演奏者も加わり、幼・小・
校は自信がない」と一度はお断りした。だが、
中学校の幼児や児童生徒による合唱をはじめ、
10年前に勤めた象潟と聞いて気持ちは変わった。
舞踊・太鼓・大正琴演奏など、日頃の成果を発
象潟小に4年間お世話になった。象潟最後の年
34
に、1、2、3年生だった子どもたちがあれか
指導士習得後は、市の指導士会に所属し、ボ
ら6年経って、この春象潟中の1年生、2年生、
ランティア活動として少しでも地域の方々のた
3年生になっているのだ。決めました。
「やっ
めにと思い、積極的に普及に努めることとしま
てみよう!」と。
した。現在、近くの3町内・3会場の方々と楽
逸る心を抑えながら、6年前の学級写真を持
って初出勤した時は、期待9割、不安1割。校
長先生から赴任の紹介をしていただいた時、
「おお!」という声が上がった。思春期を迎え
た生徒たちですからそっぽを向かれたら・・・
しく体操をしています。
ちなみに、シルバーリハビリ体操とは「いつ
でも、どこでも、ひとりでも」できる寝たきり
予防、身体機能回復に効果的な体操です。
この体操は、リハビリテーションの第一人者、
という一抹の不安は消し飛んだ。廊下ですれ違
県立健康プラザ管理者大田仁史先生が考案され
いざま、名前を呼んで話しかけると、素直に応
た体操で、関節の動く範囲を広げることで、日
じてくれる。「大きくなったこと」
「6年前の面
常生活を自分らしく過ごせるようにすることを
影あるよ」
「部活は何?」と話は尽きない。
目的としています。
最初の中2の授業の教室に行くと、6年前に
特別な道具を使わずに「誰にでもできる」
「ど
とても気がかりだった男子が手を差し伸べて飛
んな姿勢でもできる」体操ですので、健常者だ
びついてきた。すっかり落ち着いていた。
けでなく、要介護者にも有効な体操となってい
どの子も真剣に、楽しげに授業に取り組み、
ます。
「私を見て!」
「僕、がんばってるよ」というサ
シルバーリハビリという言葉には「最後まで
インを送っている。私も「いいぞ、いいぞ」と
身体として人間らしくある」という願いが込め
エールを送っている。やはり学校は楽しい。
られています。
体操の構成は、いきいきヘルス体操(寝て)
(床で)
(椅子で)
(立って)どの姿勢でも行える
⑶ 心も体もいきいきと
常陸太田支部 西野孝一
(茨城県退職校長会報第98号)
もの、いきいきヘルスいっぱつ体操は、筋力を
重点的に鍛えるための体操で、嚥下体操、顔面
体操、失禁予防体操などがあります。
教室は、老人会の中の自主グループとして発
退職後は、米つくりに精出し、蕎麦打ちを覚
え、安全ボランティア、ウォーキングやゴルフ
足し、各町会の集会所等で月1回から2回のペ
ースで行っていて、約6年になります。
練習等々を日課としていて、結構健康に過ごし
内容は、体操が中心ですが、体を動かすだけ
ていました。ある年の検診の結果、約2週間の
でなく、季節や身近な話題の提供や日本の童謡
入院生活を経験しました。入院による体力の低
を歌うなど、楽しい雰囲気づくりに心掛けてい
下は著しく、ゴルフができる体力を回復するの
ます。幸い皆さんが楽しみに通ってきてくれて
に、3ヶ月かかりました。
いるのが励みになっています。
たまたまそんなとき、市報にシルバーリハビ
これからも、地域の方々と共に、心も体もい
リ体操指導士の養成講座があることを知り、先
きいきと、楽しい健康づくりの場になるよう努
ずは自分のためにとの思いで応募し、受講しま
めていきたいと思います。
した。(3級指導士)。その後、この体操の良さ
を実感し、2級指導士を習得しました。
35
事 例 2 鳥の飼育と研究 30 余年
富山県退職校長会 大田 保文
私は子どものころから鳥と関わり続け、これ
が退職後に実りつつある。小学4年生の時、作
の中でも可能であると思った。このことから、
まず、2つの番(つがい)用の籠で飼育したと
ころ、2番とも繁殖できたのである。
日本鳥学会での発表を機に鳥の研究者と出会
えて、学会発表6回の契機となった。
文に「将来の夢は上野動物園の飼育係」と書き、
大学2年生の時には同動物園へ手紙を出した。
「欠員が出るまで採用の予定はない」との返信
を受けたので、当面の課題を「卒論作成と卒業
後に絶滅危惧種の雉(キジ)を繁殖し、原産地
で放鳥する」と決めた。卒論は「光照射と鶉
(ウズラ)の若鳥の成熟」とし、他大学大学院
で指導を受けたりして問題解決の過程を体験し
た。これにより卒業後、・動物の放し飼い・ツ
バメの夜間行動・イワツバメの営巣能力・土佐
竹の穴を調べるスズメ
オナガドリの飼育法改善等ができた。また、日
また、この成果が、・スズメの球形造巣能
本雉水鳥協会を通して自宅で繁殖した山鶏(サ
力、・スズメミルク、・桜花を食べるのは生得的
ンケイ)を原産地の台湾で放鳥するという活動
などの発見へと発展した。
により同協会から表彰を受けた。その折、古賀
退職後、富山教育会会誌への「鳥に関する
上野動物園長と懇談できたこともあって、自宅
文」の連載依頼を受けてから、現職中の調査・
繁殖した虹雉(ニジキジ)を同動物園に寄贈し
研究のまとめを加速させた。研究では、京都大
た。
学大学院の山岸教授から提供された資料を基に
教員になって2年目の10月、1羽の雀が稲架
スズメの巣の進化の視点で、スズメは人里で造
(はさ)の竹の穴をまず上から覗いてからその
巣を省力化しているとの仮説を立て、飼育実験
穴に体を押し入れようとしたのを観察した。
で解明できた。次に、スズメが人里だけに棲む
背景を、国の資料(大正12年)を分析し、スズ
メが餌にする植物の種は人間が耕起した土地に
生育している植物だとの説を学会で発表した。
この研究結果について、樋口東大名誉教授から
「スズメの存在のあり方がまた1つ明らかにな
った」と評価された。
昨今、「スズメをあまり見かけなくなった」
と話したが、以前ケージ内繁殖していた時の環
ゲージでの飼育
10年後これを雀(以下、スズメ)の造巣場の
境条件データと高度成長期の前と後に分けて比
較することができた。様々な環境汚染によるも
のだ。今後も、スズメのほか、ツバメ、トキ、
探索行動と規定し、採取した巣を観察してスズ
カラスなどに関する講演、これまでの研究資料
メには、「桁はずれの造巣能力」があることが
の整理、「動物の放し飼い」写真集を出版して
わかった。これまでスズメの人工繁殖は不可能
みたい。現在、スズメの人間への接近行動、逃
とされてきたが、条件を整えれば籠(ケージ)
避行動の研究を執筆中である。
36
事 例 3 「地域を活かせる学校支援
ボランティア」
まづき易いところ、指導上の配慮点等が十分認
識されており、これまで培ってきた知恵や経験
を活かし、地域ボランティアや学生ボランティ
福岡県退職中学校長会 關 敏文
アに対して指導の仕方や配慮事項などをアドバ
子供の健やかな育成には、学校・保護者・地
イスしながら進めていった。子供たちの学習面
域の連携・協力が何よりも必要であり、この働
での指導展開では、子供一人ひとりのニーズに
きかけは学校が中心となるべきだと考える。
応じたきめ細かな指導がなされ、即戦力として
いまや、連携・協力の1つの形として学校支
援ボランティア活動が拡大・充実してきている。
大変好評であった。
退職校長・教員を中核とした指導体制は重要
その中で特に授業などの教育活動の支援をは
な存在となったのである。地域ボランティアは
じめ、地域の歴史や伝統等に関する講話会へ退
地域の歴史等の内容には詳しいが、子供たちへ
職校長・教員や地域の人が講師として参加する
の話し方や資料の提示、問いかけの仕方には不
ことには、大きな意義がある。
慣れなので、教員OBとして参考意見を述べさ
子供たちの学力向上は永遠の命題であるが、
せた。こうした協議や活動を通して退職校長・
実態は高学年になるに従って、学力格差が大き
教員も地域の歴史や伝統等を知るよい機会とな
くなることや学習意欲が低減している。この背
り、理解・関心が深まったように思う。
景には、家庭学習の不足、基本的生活習慣の未
定着など学習環境が整えにくい状況にあると指
摘されている。いわゆる学力形成の「負のサイ
クル」に陥りがちな子供の姿が眼前にある。
私は退職校長会等で、子供の学力向上の重要
性を説き、「退職校長・教員の知恵や経験を学
校支援ボランティアで活かそう!」と訴えた。
また、市の校長会では、学力向上のために算
数・数学、国語などの教科個別指導、教育諸活
動の指導にあたり学校支援ボランティアの必要
性を説いてきた。
地域ボランティアが学校の歴史を説明
ボランティア活動以外に、退職校長が学校評
価委員や地域運営学校(コミュニティスクー
学校支援ボランティアはじめ、様々なボラン
ル)委員として参画し、学校の現状や課題、経
ティア活動に退職校長をはじめとする教員OB、
営方針等を保護者や地域に伝えるとともに、保
地域の人たちの参加が多くなるとともに、やり
護者や地域の要望などの取りまとめやギャップ
甲斐を実感して活動しているのがよくわかる。
の調整をするなど、学校と一体となってコーデ
このように地域を活かせるボランティア活動
ィネートすることに寄与している。成果を目の
は、保護者や地域による「学校評価」において、
当たりにすると胸が熱くなってくる。
地域・保護者の地元学校への信頼度の向上や感
退職校長がコーディネーターとして、学校と
ボランティアの仲立ちをして学力向上支援活動。
謝の声に表れている。
今後も退職校長・教員、特に若手の人材を学
学級担任とボランティア、ボランティア同士の
校支援ボランティアとして積極的に参加しても
打ち合わせの調整。何といっても、教職経験者
らうよう呼び掛けていく。
は教材の構造や指導の順序性、子供が学習でつ
37
編集後記
古語になった言葉ですが、我々日本人は「武士道」と聞けば、何かし
ら共通のイメージを思い浮かべることができます。
一言で言えば、武士道とは、名誉主義ということに尽きるのかも知れ
ません。どんな困難な状況でも、最後まで矜持を保ち、諦めることなく
頑張る姿勢は、私たちの「生きざま」として一人ひとりが持ち続けてき
たような気がします。
私たちが教育に傾けた誇りや愛情は、退職した今でも、脈々と心の中
に生き続けているのではないでしょうか。
お届けする『平成26年度年間紀要』は、昨年度の大改訂を継続して作
成致しました。幸い多くの皆様から、「読みやすくなった」
「中味が一読
してとらえられる」
「本部の活動、調査研究のまとめ、都道府県ニュー
スの3本立てで内容がわかりやすい」など、ありがたい返信を多くいた
だくことができました。今年度の年間紀要も、更にご期待に添えるよう
努力致しました。
国の教育改革に関する情報は、次から次へと目まぐるしく発信され、
子どもたちの確かな変容を見定める暇もないぐらいです。これでは、次
代を担う真の日本人としての力量形成がなされるのかが心配になります。
地域に根差す教育の先達としての役割を担う私たちは、学校の応援団
として、学校や子どもたち、地域の確かな育ちを見守り続けることが、
自己実現の最たるものだと念じます。
編集委員
入子
祐三
大野
幸男
岡野
仁司
木山
髙美
白石
裕一
田中
昭光
最近、学校の統廃合が新たに話題にされています。地域の伝統と絆を
徳永
裕人
培ってきたものの良さを今一度しっかりと見つめ直すことが、今私たち
野口
玲子
村山
忠幸
その意味で、この小冊子が皆様方の自己実現への手引きとして、少し
でもお役に立てれば、こんな嬉しいことはありません。
帝政ローマ時代のストア派の哲学者セネカ(BC4年〜AD65年)は、
『いかに長く生きたかではなく、いかに良く生きたかが問題である』と
いう言葉を残しています。たくさんの事象が山積されるなかで、私たち
の営みがいかに役立つことができるかが問われているのだと思います。
に問われているのかも知れません。
(50音順)
38
35
98
59
9
26
平成26年度 年間紀要
発 行 平成27年3月31日
発行所 東京都品川区東五反田5-21-13-308
〒141-0022 全国連合退職校長会
電話・FAX 03
(3441)
8768
http://www.zenrentai.org/
代 表 戸張 敦雄
印刷/株式会社 信行社 電話/03
(3833)
3621