詳細 - 稲盛財団

The Inamori
Foundation
稲盛財団ニュース
No.
86 May 2015
2015年度研究助成金贈呈式を開催
2015年度稲盛財団研究助成金贈呈式が4月25日、グランドプリンスホテル京都で行われました。当日は贈呈式に引き続き、
これ
までの研究助成対象者で構成される「盛和スカラーズソサエティ」の総会も併せて開催されました。
国内の若手研究者を対象に、独創的で優れた研究活動に対して助成する本研究助成は、昨年5月下旬に全国の主要大学139校と国立大学
共 同 利 用 機 関 1 0 機 関に応 募 要 項を送 付した結 果 、4 6 2 件 の 応 募 が あり、各 分 野を代 表する選 考 委 員による厳 正な審 査を経て、
自然科学系40件、人文・社会科学系10件に、昨年度に2年連続助成(伯楽制度)対象となった自然科学系1件を加えた合計51件が選ばれ
ました。自然科学系においては、第31回(2015)京都賞先端技術部門および基礎科学部門の授賞対象分野である
「材料科学」、
「 地球
科学・宇宙科学」
を優先分野として選考がなされました。
贈呈式では、稲盛和夫理事長から助成対象者の一人ひとりに助成金の贈呈書が手渡され、総額5,100万円(100万円/件)が贈られました。
稲盛理事長より贈呈書を贈られる対象者
-1-
The Inamori Foundation News
挨 拶
(要旨)
稲盛財団の研究助成は、1985年に開始し、本年で31回目となります。当財団の研究助成を受けられた方は、今回を
含めて延べ1,431名、助成金額は総額14億2,060万円となりました。
さて本日は、私が常々考えております「思い」の大切さについて、お話させていただきます。
人は誰でも、
何かをしたいという欲求が動機となって
「思い」
を抱きます。
この
「思う」
ということは簡単なようですが、
実はこれほど大事なものはないと私は考えております。それはこの「思う」ということが全ての出発点であり、行動
の原動力でもあるからです。
皆さんは、学問への知的欲求という「思い」が出発点となって、日々研究に邁進しておられます。それらを実現する
稲盛財団 理事長
稲盛 和夫
ためには、まずは「なんとしてもやり遂げる」という強い信念を伴った「思い」を持ち、それらを成功させるために誰
にも負けない努力を重ねることが必要です。しかし、実はそれだけではまだ十分ではありません。
「思い」というのは
強ければ強いほど実現に近づくものであると同時に、
自分のためだけでなく
「世のため人のために」
と願う
「善き思い」
であればあるほど、実現する確率は高くなっていくのです。この宇宙には、生きとし生けるもの全てが順調に発展
するように後押しする意志が存在し、
それが全てを幸福へと導く
「他力の風」
を生み出していると私は考えています。
人生という大海原を航海する時、他に善かれかしというきれいな思いで上げた帆は、周りの協力という「他力の風」
を満帆に受けて、
「思い」
を実現する方向へと船を進め、
想像を超えた素晴らしい人生を歩むことができるのです。
この
ことは、私自身何度も経験してきましたし、今もそうあらねばならないと、常に自分に言い聞かせ努力しています。
そしてそうした「善き思い」を心に描くために、私たちは高い倫理観を持ち、心を磨き続けなければいけません。
皆さんが、
人類や地球の未来に対して果たすべき役割は、
大変大きいと私は考えています。
そのためには、
ぜひ専門性
を磨くとともに、ご自身の精神性も高める努力をしていただき、素晴らしい研究者として成長してくださるようお
願いしたいと思います。
選 考 報 告 (要旨)
2015年度研究助成につきましては、自然科学系で41件、人文・社会科学系で10件の合計51件を選ばせていただ
きました。これは自然科学系で9.6倍、人文・社会科学系7.7倍という競争率でした。今回の選考は、2015年の京都賞
授賞対象分野である「材料科学」、
「地球科学・宇宙科学」に重点を置きながら、できるだけ独創性に富んだ研究、かつ
若手研究者に優先的に助成するという配慮もいたしました。また、本助成には「伯楽制度」という、特に今後の展開に
大きな期待が持てる研究に対し、2年にわたって助成を行う制度があります。昨年は筑波大学医学医療系教授の
松本正幸さんが選ばれ、本年2年目の助成を受けられます。こうした制度はまさしく稲盛財団独自のものと言えます。
この研究助成も31回目を数え、これまでの助成対象者には、大学や各種研究機関のトップとして後進を育成し、
研究助成選考委員会 委員長
豊田工業大学 学長
榊 裕之
研究者を推薦する立場におられる方、そして本研究助成選考委員会の委員や京都賞審査機関の委員として、審査・
選考する立場におられる方も数多くおられます。また、京都賞の有力候補に挙がる方や京都大学の山中伸弥博士
のように、京都賞やノーベル賞の受賞者となられた方もおられます。
この研究助成の趣旨と、皆さんに対する私たちの熱い期待をご理解いただき、将来、幅広く活躍され、さらには
京都賞受賞者として栄誉を受けられる素晴らしい研究者になられることを心より願っております。
来 賓 祝 辞 (要旨)
ここ京都は千年の都として、
我が国の叡智と革新、
今風に言えばイノベーションの源泉としての働きをしてきました。
それを現代に具現化しているのが稲盛理事長であり稲盛財団であると認識しております。すなわち、有能な若手
研究者のモチベーションを上げるとともに十分に能力を発揮できる研究環境を整えることは、我が国のイノベー
ションの原点となる人材育成にとって極めて重要ですが、それをまさに実現しているのは本研究助成と言っても
過言ではありません。
東日本大震災から4年がたち、
震災からの復興も進みつつあり、
我が国の経済も回復基調となっております。
こうした
経済再生を確実なものにするためには、
我が国の高い科学技術を新しい産業に発展させ、
国内外に展開することが
大阪大学大学院 工学研究科
研究科長
掛下 知行
極めて重要であることは言うまでもありません。
そのためには若い方々の自由な発想によるイノベーションが重要な
鍵を握っています。
しかしながら、
そのような新産業の創成は、
現代においては科学技術単独で出来ることではなく、
それを受け入れる社会システムの形成があって初めて可能であり、そのためには自然科学と人文・社会科学の
交錯と協力が不可欠と考えられます。私ども大学人にとりましても文理交錯による人材育成と研究は、
これまで
以上に重要な課題として取り組んでおり、
今後の大学改革の最重点項目の一つとなっています。
本助成が自然科学
分野のみならず、
人文・社会科学も対象とされていることは極めて高い見識に基づくものと敬服しております。
現在の若い研究者の方々は非常に厳しい競争にさらされ、研究環境も決して十分とは言えない状況ですが、その
中にあって、皆様のように将来性のある素晴らしい研究を手がけられていることは非常に頼もしい限りです。今回
の助成を機に皆様がより一層飛躍されることを祈念しております。
-2-
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謝 辞
(要旨)
稲盛財団の研究助成は、これまでも多くの研究者の優れた研究を支えてきたものであり、そのような助成の
対象として私どもの研究テーマを採択していただいたことは研究者として大変光栄に存じます。
研究助成の対象である「科学」は、どのような分野であれ人類の生活や知的好奇心から発生したものであり、
各研究の発展は必ずや人類の生活を豊かにすると確信しております。また、若手研究者を対象としていること
から、各個人の研究を発展させていく中で、いろいろな人と出会い、交流し、見識を広めていくことで、自分自身を
絶えず成長させていくことも必要であると強く感じております。そのような個々人の成長や今後何十年かに
わたる活躍も、この助成に対する大きな恩返しになると考えております。
和歌山大学 システム工学部
助教
新 史紀
私が助成していただく研究テーマは、
「生体由来物質がもつ相互作用を利用した新規な接着機構の開発」という
もので、身の回りに当たり前のようにある接着という現象を今一度深く考え、先人たちが築いてきた知識を
ベースとした科学のちからを使ってさらに発展させようというものです。この研究が材料科学の発展につながり、
ささやかながらも力強く社会に貢献していけるよう精一杯やってまいります。
2015年度研究助成対象者ならびに研究題目
[100万円/件]
(肩書は2015年4月1日現在) 氏 名
所属先
研究課題
自然科学系
新 史 紀
和歌山大学 システム工学部 助教
糖鎖が形成する多点相互作用を利用した新規接着機構の開発
伊王野 大 介
自然科学研究機構 国立天文台 准教授
ALMA望遠鏡を用いた遠方サブミリ波銀河の高分解能観測
石 川 篤
岡山大学
大学院自然科学研究科 助教
音響メタマテリアルを用いた開口部遮音材料の開発
石 本 卓 也
大阪大学 大学院工学研究科 講師
三次元積層造形技術を基軸とする、骨力学機能を模倣した骨インプラント材料開発
石 元 広 志
名古屋大学 大学院理学研究科 特任助教
性的モチベーションを高める求愛歌の脳内統合処理機構:高次脳神経回路の同定と動作機序の解明
井 上 靖 道
名古屋市立大学 大学院薬学研究科 准教授
メチルトランスフェラーゼSET8によるTGF-βシグナル制御を介したがん悪性化メカニズムの解明
岩 森 督 子
九州大学 大学院医学研究院 助教
体外培養系による精子形成を目指した生殖細胞間架橋関連因子の同定および細胞連結増殖の機能解析
生 方 俊
横浜国立大学 大学院工学研究院 准教授
導電性高分子材料の動的光パターニング法の開発
岡 田 佳 憲
東北大学
原子分子材料科学高等研究機構 助教
結晶対称性の破れによるトポロジカル結晶絶縁体のDiracギャップ形成メカニズムの解明
小 沼 健
大阪大学 大学院理学研究科 助教
脊索動物胚の左右割球および表皮細胞の動きから器官形成の全容を見る
川ノ上 帆
京都大学 数理解析研究所 助教
代数多様体の特異点解消
北 川 宗 典
理化学研究所 環境資源科学研究センター 基礎科学特別研究員
原形質連絡を介した細胞間情報伝達の制御メカニズムの解明
倉 橋 拓 也
京都大学 大学院工学研究科 准教授
複素環高分子半導体材料の開発に基づく高効率有機薄膜太陽電池の構築
黒 澤 俊 介
東北大学 金属材料研究所 助教
資源探査、医療、宇宙観測にむけた高機能放射線検出素子の開発
癸生川 陽 子
横浜国立大学 大学院工学研究院 准教授
隕石有機物を用いた小惑星の熱履歴の研究
河 野 裕 介
自然科学研究機構 国立天文台 助教
ブラックホール直接撮像のための気球VLBI搭載気密計算機の開発
齊 藤 恭 介
東北大学 大学院工学研究科 助教
GaSe単分子層ナノ薄膜における巨大非線形光学効果とテラヘルツ電磁波発生への適用
笹 原 和 俊
名古屋大学 大学院情報科学研究科 助教
生物の行動系列データのモデリング手法の研究
對比地 孝 亘
東京大学 大学院理学系研究科 講師
恐竜類における頸部可動範囲の機能形態学的解析
束 田 裕 一
九州大学
稲盛フロンティア研究センター 教授
哺乳類着床前初期胚における細胞外分泌タンパク質の役割
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氏 名
所属先
研究課題
自然科学系
辻 村 清 也
筑波大学 数理物質系 准教授
ソフト界面と階層空間が制御された炭素材料での酵素の超活性
中 裕美子
東京理科大学 理学部第二部 講師
スルホニル基含有星型高分子を用いた規則的ポーラス構造形成
二階堂 雅 人
東京工業大学 大学院生命理工学研究科 准教授
収斂進化の遺伝的基盤とそのプロセスの解明
橋 本 悟
大分大学 医学部 助教
早老症におけるゲノム不安定性と転写調節異常の解明
福 田 弘 和
大阪府立大学 大学院工学研究科 准教授
体内時計のトポロジカルチャージによる植物の脱分化現象の解明
藤 本 裕
東北大学 大学院工学研究科 助教
環境放射線の線量計測が可能な珪酸塩系ガラスの創生
Alison Jane Hobro
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 特任助教
無標識ラマン分光法によるインターロイキン-6 mRNA制御領域の構造解析
松 島 永 佳
北海道大学
大学院工学研究院 准教授
微小重力環境を利用した電極材料創製による水素同位体分離電解法への展開
松 田 一 希
京都大学 霊長類研究所 特定助教
性的二型の進化要因の解明:テングザルの鼻はなぜ長いのか?
松 田 靖 弘
静岡大学 学術院工学領域 助教
高い生体、環境親和性を持つ高分子の簡便なゲル形成手法の確立と材料展開
松 田 佑
名古屋大学 エコトピア科学研究所 准教授
ハイドロゲル球体の衝突により粉粒体層上に形成されるクレーター形状に関する研究
松 永 哲 也
物質・材料研究機構 環境・エネルギー材料部門 研究員
粒界組織制御による高クロムフェライト系耐熱鋼の溶接組織安定化
松 本 正 幸
筑波大学 医学医療系 教授
前頭前野機能への局在性ドーパミン入力の役割
三 井 雄 太
静岡大学
学術院理学領域 助教
スロースリップイベントの繰り返し間隔変化から探る地震の準備過程
牟 田 浩 明
大阪大学 大学院工学研究科 助教
変調ドーピングによる高移動度熱電材料の性能向上
森 寛 敏
お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系 准教授
劣化耐性をもつ白色有機EL材料開発のための励起状態分子間相互作用の理論的制御指針の探索
八丈野 孝
愛媛大学 農学部 准教授
植物の免疫システムを破綻させる病原糸状菌エフェクターの同定とその分子機構の解明
矢 嶋 赳 彬
東京大学 大学院工学系研究科 助教
セラミックス強誘電体薄膜の転写技術の確立と超高圧用圧力分布型センサシートへの応用
保 田 諭
北海道大学 大学院理学研究院 准教授
高活性触媒能をもつ二次元ヘテロ材料のボトムアップ合成
栁 澤 実 穂
東京農工大学 大学院工学研究院 特任准教授
微小空間での密度揺らぎと濡れの物理的解明によるミクロゲルの形状制御法の確立
渡 部 美 穂
浜松医科大学
医学部 助教
細胞内クロライド恒常性維持機構の破綻による精神疾患病態の解明
(2014年度伯楽制度対象者)
小計41件
人 文・社 会 科 学 系
伊 東 信 宏
大阪大学 大学院文学研究科 教授
バルカンとアジアにおける「演歌型」大衆音楽の国際比較
井 上 宜 裕
九州大学 大学院法学研究院 教授
年齢が刑事責任に及ぼす影響−少年犯罪及び高齢者犯罪の合理的解決に向けて−
大 野 智 彦
金沢大学 人間社会研究域 准教授
ダム建設をめぐる「専門性」と「民主制」
:大規模ダムと田んぼダムの比較
菊 池 敏 正
東京大学 総合研究博物館 特任助教
ミュージアムにおけるレプリカを用いた包括的な学術標本の活用について
岸 泰 子
九州大学 大学院芸術工学研究院 准教授
近世公家社会における婚礼の都市史的研究
左 近 幸 村
新潟大学 研究推進機構 准教授
20世紀初頭の環日本海と環黒海の比較研究:ロシア帝国論の視点から
竹 内 晋 平
奈良教育大学 教育学部 准教授
京都府画学校関係者による図画教科書(毛筆)のアーカイビングに関する基礎的研究
中 嶋 智 之
京都大学 経済研究所 教授
財政危機に関するマクロ経済分析
端 野 晋 平
徳島大学 埋蔵文化財調査室 准教授
朝鮮無文土器人は環境に対していかにして適応したのか?−集落分析による水稲農耕伝播メカニズムの解明−
保 城 広 至
東京大学 社会科学研究所 准教授
政府開発援助(ODA)は被援助国との政治経済関係にどのような影響を与えるのか−パネル・データによる実証分析−
小計10件
合計51件
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研究助成選考委員会名簿
2015年度研究助成対象者は、次の先生方によりご選考いただきました。
委員長
榊 裕 之
(肩書は2015年4月1日現在) 豊田工業大学 学長
自然科学系
委 員
甘 利 俊 一
理化学研究所 脳科学総合研究センター 特別顧問
委 員
成 宮 周
京都大学 大学院医学研究科 メディカルイノベーションセンター センター長
〃
巌 佐 庸
九州大学 大学院理学研究院 教授
〃
本 庶 佑
静岡県公立大学法人 理事長
〃
梶 山 千 里
福岡女子大学 理事長・学長
〃
村 上 正 紀
立命館大学 理事補佐 〃
佐 藤 文 京都大学 名誉教授
〃
森 重 文
京都大学 数理解析研究所 教授
〃
中 西 重 忠
京都大学 名誉教授
〃
横 山 直 樹
産業技術総合研究所 研究顧問
人文・社会科学系
委 員
佐 和 隆 光
滋賀大学 学長
委 員
横 山 俊 夫
滋賀大学 理事・副学長
〃
田 中 成 明
京都大学 名誉教授 〃
鷲 田 清 一
京都市立芸術大学 理事長・学長
〃
山 室 信 一
京都大学 人文科学研究所 教授
2015年度盛和スカラーズソサエティ総会を開催
盛和スカラーズソサエティ
(通称:3S)
は、
稲盛財団の研究助成を縁として、
お互いの分野を超えての交流と親睦を深めることにより、
新しい発想が芽生え、
研究がさらに発展することを願って発足したもので、
会員数は本年の対象者を含め、
1,383名に達しています。
当日は、
研究助成金贈呈式に引き続き、
2015年度の総会が開催され、
巌佐庸 盛和スカラーズソサエティ会長の挨拶の後、
田畑泰彦
京都大学再生医科学研究所教授による講演が行われました。
盛和スカラーズソサエティ会長挨拶
(要旨)
本日は、
2つのことをお願いしたいと思います。
1つは、
ご自分の研究の面白さを話してほしい、
分かりやすく説明してほしいということです。
研究の意義や成果
のインパクトが専門家に伝わるように論文を書き、
学会で講演することは研究者として大事な能力です。
これに
対して、
分野の違う人たち、
さらには一般の人たちにも分かってもらえるように話すことは、
随分面倒なことです
が、
実際にはプラスになることがあります。
大きなプロジェクトで研究費をとろうとすれば、
専門家ではない方々
の前で話をし、
重要な面白い研究であると認めてもらわなければなりません。
他方で、
自分の研究の面白さについ
てよく考える機会を与えてくれます。
学術は、
究極的には社会のサポートを得て行っている面があり、
日本の社会
盛和スカラーズソサエティ会長
九州大学大学院理学研究院
教授
巌佐 庸
に学術は
「面白いもの」
「
、サポートをするに値する大事な活動」
だと思ってもらえなくなると廃れていきます。
2つ目は、同じ分野の後輩に対して、皆さんがモデルであることを意識してほしいということです。学術は、
「憧れ」で進む面があり、
「 あの人のようになりたい」という気持ちや憧れがあるからこそ、成果がすぐに見え
なくても努力を続けようとするのです。若手の人たち、大学院生や博士研究員から見ると、皆さんこそが後輩の
「モデル」であり、
「憧れの対象」です。
「かっこいい先輩」、
「目標になる先輩」であることを意識し、意欲を持って
研究に取り組んでいる姿を見せてほしいと思います。
以上の2つを皆さんにお願いし、
盛和スカラーズソサエティ入会の祝辞としたいと思います。
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The Inamori Foundation News
講演会
田 畑 泰 彦 京 都 大 学 再 生 医 科 学 研 究 所 教 授による講 演「 自 然 治 癒 力を高 めて 病 気を治 す−再 生 医 療における医 工 薬 融 合 領 域
バイオマテリアル の 重 要 性−」が 行われました。
講演内容は、後日、稲盛財団ホームページ
(http://www.inamori-f.or.jp/)
でご紹介いたします。
懇親パーティー
講演会に引き続き行われた懇親パーティーでは、冒頭、井村裕夫 稲盛財団会長が「専門を深く掘り下げるのは
もちろんのこと、時として専門以外のことにも関心を持っていただきたい。本日も様々な分野の専門家が
集まっておられるので、そういった方々との会話を楽しみ、少しでも視野を広げていただくのに、
この総会は
非常に良い場になると思います」
と挨拶されました。本年度の助成対象の方からは、
「地味な研究でなかなか
助成対象にならなかった研究が今回採択されたことで勇気づけられた」、
「研究でいかに社会貢献できるかを
考えることも重要だと感じた」、
「助成はもちろんありがたいが、研究アイデアが審査の先生方に認めていた
だけたことが自信になる」
といったお声をいただきました。
会場では、
選考委員の先生方や各分野でご活躍中の
3S会員との専門や世代を超えた交流が行われ、盛会のうちに閉会しました。
佐藤文
委員(左)
との交流
挨拶をする井村会長
稲盛理事長を囲んで
本年の助成対象者(左)
と3S会員(右)
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The Inamori Foundation News
京都賞シンポジウム 米国サンディエゴで開催
2015年京都賞シンポジウム(Kyoto Prize Symposium:略称 KPS)が、第30回(2014)京都賞受賞者の3名を迎えて、3月17日から
19日の3日間にわたって、米国カリフォルニア州サンディエゴ市で開催されました。本シンポジウムは、海外における京都賞関連行事
として第17回(2001)京都賞より毎年行われ、当地の京都賞シンポジウム組織(略称KSO)
と4大学(サンディエゴ大学、
カリフォルニア大学
サンディエゴ校、
サンディエゴ州立大学、
ポイント・ロマ・ナザレン大学)
の共催で、
地元市民の協力により運営・実施されています。
ロバート・サミュエル・ランガー博士(先端技術部門:生体医工学者)
はサンディエゴ州立大学で、
エドワード・ウィッテン博士(基礎科学部門:
理論物理学者)はカリフォルニア大学サンディエゴ校で、志村ふくみ氏(思想・芸術部門:染織家)はサンディエゴ大学でそれぞれ講演を
行いました。一般市民や大学関係者の他、高校生や大学生らが来場し、3会場合わせて1,700名の聴衆が各講演に熱心に耳を傾けました。
シンポジウムに先立ち、17日にはサンディエゴ市内のホテルで開会式を兼ねた受賞者歓迎の慈善晩餐会(通称 ゲーラ)が行われました。
会の冒頭、稲盛理事長は「私どもの活動に共鳴いただいたサンディエゴの皆様の協力を得て、
この地での京都賞シンポジウムも14年目を
迎えますが、毎年盛り上がりが大きくなっていることを実感しています。サンディエゴの皆様が、毎年この時期の恒例行事として楽しみに
してくださっていることを心からうれしく思います」
と挨拶しました。受賞者3名による挨拶の後、サンディエゴ市および隣接するメキシコ
ティファナ市の高校生6名に大学進学の資金として奨学金(一人1万米ドル)も贈呈され、ゲーラは盛況のうちに幕を閉じました。
講演に立つランガー博士
ウィッテン博士の講演会場の様子(カリフォルニア大学サンディエゴ校)
熱心に聴き入る聴衆
染織や着物について語る志村氏
受賞者を歓迎する慈善晩餐会(ゲーラ)
志村氏の講演会場外観(サンディエゴ大学)
稲盛理事長の挨拶
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稲盛理事長と奨学金を受ける高校生との交流
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TOPICS
京都大学
「京都こころ会議」
に関する寄附同意書を締結
稲盛財団は、京都大学こころの未来研究センターが新たに実施する「京都こころ会議
(Kokoro Initiative)」の趣旨に賛同し、その活動を支援することになりました。
「 京都
こころ会議」は国内外の研究者などが参加する研究会で、
「人のこころ」
がいかに大切なもの
であるかについて議論を深め、その理解と実践を促進するための提言を世界に向けて発
信するものです。今年9月には
「こころとその歴史性」などをテーマにした第1回「京都こころ
会議」が京都で開催されます。取り組みの成果は日本語と英語で出版される予定です。
会議の発足にあたり、4月14日に調印式が行われ、山極壽一 京都大学総長と稲盛理事長
が同意書を交わしました。
握手を交わす稲盛理事長(左)
と山極総長(右)
イナモリフェロー研修終える
2014年度イナモリフェローである伊奈憲彦氏、藤村慎也氏、宮崎雄一郎氏の3名は4月
27日∼5月1日、米国ワシントンD.C.のCSIS(戦略国際問題研究所)内のアブシャイア・
イナモリ リーダーシップアカデミー(通称AILA)が実施する後期研修に参加しました。
研修では、日米関係や倫理・リーダーシップをテーマに専門家と活発な議論が交わされ、
充実した5日間を送りました。
ジョン・ハムレCSIS所長と研修参加者
歴代受賞者情報
大隅 良典 博士
ロバート・サミュエル・ランガー博士
(第28回(2012)京都賞受賞者、分子細胞生物学者)
(第30回(2014)京都賞受賞者、生体医工学者)
■ 2015年3月
■ 2015年2月
ガードナー国際賞の受賞者に決定
クイーンエリザベス工学賞の受賞者に決定
第31回
(2015)
京都賞受賞者発表について
来る6月19日、第31回(2015)京都賞受賞者の発表をいたします。本年の授賞対象分野は、材料科学(先端技術部門)、地球科学・宇宙
科学(基礎科学部門)、映画・演劇(思想・芸術部門)です。受賞者情報については、発表当日夕方以降、稲盛財団ホームページ
(http://www.inamori-f.or.jp/)
に随時アップいたしますので、ぜひご覧ください。
INFORMATION
志村ふくみ氏(第30回(2014)京都賞受賞者、染織家)の世界観を美しく表現した映像・
サウンドインスタレーションを、稲盛財団ホームページ(http://www.inamori-f.or.jp/)の
「京都賞 on YouTube」で公開しました。
この映像は、第30回京都賞記念ワークショップ
のために制作されたものです。ぜひご覧ください。
稲盛財団ニュース
No.
86
May 2015
発行日:2015年5月31日 編集・発行 公益財団法人 稲盛財団
〒600-8411 京都市下京区烏丸通四条下ル水銀屋町620番地 TEL 075-353-7272 FAX 075-353-7270 E-mail [email protected]
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