国語学国文学専修 - 京都大学大学院文学研究科・文学部

国語学国文学専修
教
授
木田
章義
国語学,特に古代・中世
教
授
大谷
雅夫
国文学,特に日本漢文学
准教授
大槻
信
国語学,特に古代・中古
准教授
金光
桂子
国文学,特に中古・中世
〔主要著書・論文等〕 木田「濁音史摘要」(
『日本語・日本文学』1),同「活用形式の成立と上代特殊
仮名遣」(『国語国文』57 - 1)。
大谷『万葉集』新日本古典文学大系
岩波書店 (共著),同『歌と詩のあいだ ―― 和漢比較文学論攷
――』岩波書店。
大槻『明恵上人資料第四』東京大学出版会 (共著),同「古辞書と和訓」(『訓点語と訓点資料』108)。
金光「『風葉和歌集』 の政教性」(『国語国文』 67 - 9・10),
「『有明の別』と九条家」(『国語国文』 77 3)。
授業は,上記の専任教員のほかに,人間・環境学研究科,国際交流センターの国語学国文学の教員と,
数名の非常勤講師によって行われる。他に,学部生対象の授業が開講されているが,自分の研究にとっ
て有益であると思われるものは,単位とは無関係に聴講することを勧める。
本専修では,大学院生の独自性を重んじて,できる限り指導しないように努めている。必要な場合に
は最良,最少限の助言を与えることもある。文献を読むときには注釈的に読むこと,できる限り文献が
書かれた当時の理解に近づくこと,文献の背景の文化史,文学史,国語史の流れを押さえておくこと,
こうした基本的な態度を身につけた上で,各自の問題意識に従って自由に研究を展開することを望んで
いる。
大学院生は,卒業論文を書いたことを契機にして,各自が一応専攻分野を持っているが,あまり早く
から自分の関心の対象を限定せず,国語学国文学の様々な問題に幅広く関心を持つことが望ましい。そ
れが引いては専攻分野での問題意識を鋭く,豊かにもするであろう。
国語学国文学研究室では,研究活動の一環として,月刊誌『国語国文』を刊行している。国語学国文
学関係の専門誌として,東京大学の『国語と国文学』と並んで歴史が古く,権威ある雑誌として学界か
ら認められている。また,近年『京都大学
国文学論叢』という春秋二期の専門誌も大学院生の編集の
下に刊行している。学部の卒業論文のすぐれたものがこれらに掲載されることもある。当然,修士論文
はこれらに掲載されるレベル以上のものでなければならない。そして博士後期課程では,毎年一,二編
の論文を『国語国文』や『京都大学
国文学論叢』に発表し,それらを中心に課程博士の学位論文をま
とめてゆくことが期待される。
― 1 ―
中国語学中国文学専修
教
授
川合
康三
著書 『文選』(興膳
中国古典文学
宏と共著,角川書店,88 年),
『中国の自伝文学』(創文社,96 年),『終南山
の変容』(研文出版,99 年),
『中国のアルバ』(汲古書院,03 年),『中国の文学史観』(編著,創文
社,02 年),『李商隠詩選』(岩波文庫,08 年)
教
授
平田
昌司
中国言語文化史・中国近代学術史
著書 『徽州方言研究』(木津祐子等と共著,好文出版,98 年),『
『孫子』―― 解答のない兵法』
(岩波書店,09 年)
論文 「《切韻》与唐代功令」(02 年),「胡藍党案,靖難之変与《洪武正韻》」(05 年),
「“中原雅音”
与宋元明江南儒学」(07 年)
准教授
木津
祐子
中国語学史
論文 「
『新刻官音彙解釈義音注』 から 『新刻官話彙解』へ」(01 年),「官話の漂着」(03 年),
「琉球
編纂の官話課本に見る「未曾」 「不曾」 「没有」」(04 年),「赤木文庫蔵『官話問答便語』校」(04 年),
「清代琉球の官話課本にみる言語と文献」(07 年),「
『白姓』の成立と伝承」
(08 年)
協力講座
教
授
高田
時雄
中国語史
著書 『敦煌資料による中国語史の研究』(創文社,88 年),『明清時代の音韻学』(編著,01 年),
『草
創期の敦煌学』(編著,知泉書館,02 年),『敦煌・民族・語言』(05 年)
論文 「ウイグル字音考」(85 年),
「チベット文字書写「長巻」の研究 (本文編)」(93 年)
教
授
井波
陵一
中国近世文学
著書 『知の座標』(白帝社,03 年),
『紅楼夢と王国維』(07 年)
訳書
王国維『宋元戯曲考』 (平凡社東洋文庫,97 年)
論文 「康煕辛卯江南科場案について」 (96 年),
「『棟亭五種』の同校者たち」 (97 年),「王国維の国
学―記憶よ,語れ。
」(01 年)
准教授
池田
巧
漢蔵語方言学
著書 『21 世紀後半の世界の言語はどうなるのか』(共著,05 年)
論文
「香港における繁体字の標準字形」(02 年),
「西南中国(川西民族走廊)地域の言語分布」(03 年)
“Exploring the Mu-nya people and their language.”(06 年),
「フランス国立図書館所蔵のナ
ム語文献」(08 年)
漢民族によって築かれてきた中国の言語と文学は,時間的にも空間的にも他に比類がないほど広大な
範囲に及んでいる。三千年を越える長い時期に及び,ヨーロッパに重なるほどの広い地域にわたって,
一つの文化がとぎれることのない伝統を維持してきた。かつてはその中心に詩文などの正統的文学が位
置し,時代の流れの中で戯曲,小説など多彩なジャンルを生み出しながら,今世紀には文語に代わって
口語が文学の言語としてふつうのものになるに至る。そこには多様性と統一性の共存がある。
― 2 ―
本専修では,近代以前と近現代を異種の存在とする態度をとらない。また言語と文学とはそもそも切
り離せないものである以上,中国語学と中国文学とを分離せずに,相補うかたちで学ぶ必要がある。し
たがって,いかなる分野の研究をめざすにせよ,古典文・古典詩・白話文の全般にわたる原典の充分な
読解力,通時的研究・共時的研究のふたつの態度を両立させる視野,語学・文学にまたがる基礎知識を
要求する。その上にたって「なにが書いてあるか」はもとより「いかに表現しているか」を検討するこ
とこそが言語・文学の研究にほかならない。
日本の文化がその当初から中国の言語・文化と深く関わりを持ちつつ形成されてきたことはいうま
でもない。研究の蓄積の最も豊かな国の一つに数えられよう。そうした伝統を生かしつつ,今日の要請
に答えられる新たな研究を切り開くには,広い視野の中で中国の言語・文学を捉える態度が必要であろ
う。中国学の歴史は長いが,今日のこされている問題は限りなく多い。中国の文学が過去の伝統を帯び
ながら時代に応じて変化してきたように,その研究も伝統と現代とをいかに調和させるか,大きな課題
を与えられている。問題点を自力で見いだし,考える意欲をもちつづけることを期待する。
研究を発展させていくにあたっては,海外の研究者と直接に意見交換できるだけの現代中国語・欧米
諸語の運用能力が不可欠となるであろうこともとくに強調しておかねばならない。自国の文化に対する
深い理解と愛着をもつ中国,古典古代以来の人文学の厚みを背景とする欧米,いずれも学ぶべき長所を
あまた有するからである。
― 3 ―
中 国 哲 学 史 専 修
教
授
池田
秀三
中国古代中世思想史,近年の主要研究テーマは漢魏の学術思想
准教授
宇佐美文理
中国近世思想史,特に芸術理論
教
授
麥谷
邦夫 (協力講座)
中国道教思想史
教
授
武田
時昌 (協力講座)
中国科学思想史
〔著書・論文〕 池田『自然宗教の力―儒教を中心に』 (『現代の宗教』 16) 岩波書店
左氏説の謎」(
『日本中国学会報』第 54 集
2002),同「高誘覚書」(『東方学』第 110 輯
宇佐美「宋代絵画理論における「形象」の問題」(『日本中国学会報』第 50 集
考」(『中国思想史研究』第 25 号
ける身体・自然・信仰』東方書店
2005)。
1998),同「雑家類小
2002),同「液化する風景―蘇東坡詩の風景把握」(
『中国思想にお
2004)。
麥谷「唐代封禪議小考」 (『中國文明の形成』朋友書店
研究所
1998,同「消えた
2005),同 『三教交渉論叢』 京都大學人文科學
2005,同「道教類書と教理體系」(
『中國宗教文獻研究』臨川書店
2007)。
武田「江戸初期和算書の情報源 八算見一の珠算算法をめぐって」(『東洋文化』第 85 号
「婦人病の医学思想」(
『中国思想史研究』第 28 号
地伸行博士古稀記念論集』研文出版
2005),同
2006),同「精誠の哲学」(『中国学の十字路
加
2006)
文学部の専修案内に,私どもは「中国哲学史は,中国人の思索の歩みを研究する学問である」,「中国
人が何をどのように考えたかを知ること,中国哲学史研究はこの一事につきる」と記した。中国人の思
想的営みを歴史文化の一環として把握すること,これが中国哲学史に対する私どもの一貫した基本的姿
勢である。従って,学部と大学院において研究教育内容が根本的に異なることはあり得ない。大学院の
研究教育においても,学部におけると同様,
「一切の先入観を捨て,中国人の立場に立ってその思考を跡
づけることがまず必要であり」
,そのために「何よりもまず中国古典,いわゆる漢文が正確に読めること
が必要である」ことに何の変わりもない。大学院生にとっても,やはり「漢文読解力修得が第一の肝要
事である」
。ただし,研究者養成を主要目的とする大学院においては,当然のことながら,学部よりはる
かに高度な学力が要求される。文意の正確な理解はもとよりのこと,その文献の文献学的考証,書かれ
た時代の状況,著者の生い立ちなどを正しくふまえた上で,内容のみならず用語や表現にまで鋭敏に反
応する能力を修得しなければならない。読むことに関しては,修士課程修了の段階で,少なくとも自ら
の専門分野については独立した研究者としての能力を身につけてもらわなければならない。
しかし,学力養成のみが大学院教育の目的でないことは言うまでもない。その最終目的は独創的研究
者としての基盤を確立すること,具体的にいえば学位 (修士・博士) 論文を完成することであって,文
献処理の精確さはその不可欠の前提にすぎない。ただ,この目的は全て院生諸君自身の力によって達成
されなければならない。何を研究題目に選ぼうと,いかなる研究方法をとろうと,それが学術的水準を
満たしている限り,まったく諸君の自由であり,私どもは原則として口出しはしない。というよりむし
ろ,誰の模倣でもない君独自の問題意識と方法でなければ困るのである (念のために注意しておくが,
このことは先人の研究成果への敬意と学習が不要であることを意味するものでは決してない)。むろん
― 4 ―
私どもは,スーパーヴァイザーとして研究計画の策定,執筆項目の設定,参考文献の指示などできる限
りの“指導”は惜しまない。が,それはあくまで技術向上のためのコーチングにすぎないのであり,研
究の遂行は全て君自身の主体的責任と意欲によって果たされるべきものであることを銘記しておいて
もらいたい。
― 5 ―
インド古典学専修
教
授
赤松
明彦
インド哲学
〔著書〕 『古典インドの言語哲学』1. 2,平凡社 (東洋文庫),1998 年。
『バガヴァッド・ギーター』
,岩波書店,2008 年。
准教授
横地
優子
古典サンスクリット文学,プラーナ文献
〔共著〕 小倉泰・横地優子『ヒンドゥー教の聖典二篇:ギータ・ゴーヴィンダ,デーヴィー・マー
ハートミャ』平凡社 (東洋文庫),2000
〔論文〕 The Rise of the Warrior Goddess in ancient India. A Study of the Myth Cycle of KauśikīVindhyavāsinī in the Skandapurāna. Doctoral thesis (University of Groningen), 2005.
̇
http : //irs. ub. rug. nl/ppn270752684)
外国人教師
ディヴァカル・アーチャールヤ
(available at
インド古典学・写本学
〔著書〕 The Little Clay Cart by Ś u¯draka. New York, 2009 年。
本専修は,従来あった「インド哲学史」専修と「サンスクリット語学サンスクリット文学」専修を統
合して,2004 年度より開設されたものである。両専修は,それぞれ京都大学における単独の講座 (
「印
哲」 と 「梵文」) として,すでに 100 年近い歴史をもつものであったが,サンスクリット文献学・インド
学を共通のディシプリンとするものであり,学問としてより強固な連携をはかるために統合されたもの
である。サンスクリットは,厳密には紀元前数世紀に規範化された古代インド・アーリア語を意味する
が,本専修では,この言語で残された文献と並んで,時代的にサンスクリットに先行するヴェーダ語,
サンスクリットの俗語形である「中期インド」諸語,一部の仏教文献に見られる仏教梵語,叙事詩に特
有の叙事詩サンスクリットなど,古代のインド・アーリア系諸言語で編纂された膨大な量の文献も研究
の対象としている。また,サンスクリット文献と密接な関係を持つ古代イラン語文献やタミル語の古典
文献も扱われることがある。本専修の役割は,過去のサンスクリット学の研究成果を継承しつつ,古代
インドの言語,文学,哲学,宗教,文化史等の研究を進展させ,それを次世代に引き継ぐことにある。
専修主任の赤松は,インド古典期における認識論・論理学の展開を主題として研究を続けてきたが,
近年は主に言語哲学に重点を置いて,言語をめぐるインド思想の展開を文法学派と論理学派の両方の原
典から探求しつつ,「思想と言語の問題」についての考察を続けている。准教授の横地は,古典サンス
クリット文学と,ヒンドゥー教の神話・伝説を多く含むプラーナ文献等の研究を専門としており,とり
わけ,ヒンドゥー教女神神話の形成・発展について詳しい。外国人教師アーチャールヤは,サンスク
リット写本の扱いに精通しており,インド古典学全般に詳しい。また碑文に基づくインド文化史研究も
行っている。この他,人文研の藤井教授が,ブラーフマナ,ウパニシャッドなどの文献やヴェーダ祭式
に関する特殊講義を行っている。また,毎年学外から数名の講師を招き,中期インド語,近現代インド
諸語,土着文法学,科学史等の授業を開講している。
― 6 ―
仏
教
教
授
学
御牧
専
修
克己 (平成 22 年 3 月退職予定)
〔著書〕 La réfutation bouddhique de la permanence des choses (sthirasiddhidu¯sana) et la preuve de
̇ ̇
la momentanéité des choses (ksanabhaṅgasiddhi),Paris, 1976 ; Blo gsal grub mtha ʼ,京都大学人文
̇ ̇
科 学 研 究 所,1982;
『ブ ッ ダ チ ャ リ タ』
,講 談 社,1986 (共 著);Three Works of Vasubandhu in
Sanskrit Manuscript, Tokyo, 1989 (共著);Pan
˜ cakrama, Tokyo, 1994 (共著);
『ツォンカパ』,中央
公 論 社,1996 ; Bon sgo gsal byed, Tokyo, 1997 ; Bon sgo gsal byed (Clarification of the Gates of
Bon),A Fourteenth Century Bon po Doxographical Treatise, 京都大学文学研究科,2007.
准教授
宮崎
泉
〔著書〕 『中観優婆提舎開宝篋』 について,『仏教史学研究』 36 - 1,1993 ; 『禅定灯明論』 漸門派章につ
いて,
『日本西蔵学会々報』48,2002;
『中観優婆提舎開宝篋』テキスト・訳注,
『京都大学文学部研究
紀 要』46,2007 ; Atiśa (Dīpamkaraśrījn˜ āna) ―― His Philosophy, Practice and its Sources, The
̇
Memoirs of the Toyo Bunko, 65, 2007.
本専修は,インド及びチベットの仏教思想史の研究と教育を中心としているが,中国仏教については
協力講座である人文科学研究所のスタッフその他学内及び学外の研究者の出講によってこれを補ってい
る。日本仏教は扱わない。
本専修を志望するものは,サンスクリット語 (パーリ語) 及びチベット語の修得を既に終わり,かな
りの程度にオリジナルの文献を読んだ経験のある者が望ましい。漢文仏教文献を扱い得る漢文の素養も
必要であることはいうまでもない。仏教学は国際性の高い学問であり,諸外国の研究者や留学生との交
流や留学の機会も多いため,本格的に研究を進めようと思う学生は英・独・仏のうち少なくとも一つに
ついては作文・会話を含めて十分に習得することが望まれる。
御牧教授は後期インド仏教思想史及びチベット仏教の専門家であり,インド仏教後期の四大学派の教
理並びにインド及びチベットで作成された多数のインド仏教綱要書に詳しい。さらにチベット仏教ばか
りでなくボン教文献についての造詣も深く,諸外国の研究機関より招聘を受け,これまでにアメリカ合
衆国のカリフォルニア大学 (バークレー校:1993 年冬学期),フランスのコレージュ・ド・フランス
(1994 年秋),オーストリアのウィーン大学 (1995 年夏学期,2002 年夏学期),フランスの高等研究院 (E.
P. H. E. ) 宗教学部門 (1997 年夏学期,2005 年夏学期),ハーバード大学 (2000 年夏学期),ハンブルク
大学 (2004 年夏学期) に於いて講義並びに研究に従事した経験がある。
宮崎准教授は後期インド仏教を専門とし,そのチベットへの伝播についても関心を持っている。特
に,インド禅定思想のチベットへの受用の問題,並びにチベット大蔵経の形成過程について研究中であ
る。
本専修のスタッフによる特殊講義,演習,講読のほかに,サンスクリット語,パーリ語,チベット語
の初級,中級の授業も用意され,またインド古典学専修の授業のうちいくつかは本専修と共通となって
いる。
― 7 ―
平成 21 年度には学外から来講している加納和雄講師 (高野山大学助手) が「『宝性論』の展開」(前
期) を,室寺義仁講師 (高野山大学教授) が「『縁起経』解釈史」(後期) を,志賀浄邦講師 (京都産業
大学講師) が「チベット宗義書ジャイナ章」(後期) を,津田明雅講師が「龍樹研究」(集中講義) を講
じ,白館戒雲講師が中級チベット語並びにチベット仏教を,船山徹講師 (人文科学研究所准教授) が中
国仏教を,赤羽律講師がドイツ語講読を担当している。
― 8 ―
西 洋 古 典 学 専 修
教
授
中務
哲郎
古典文化学 (平成 22 年 3 月退職予定)
教
授
高橋
宏幸
西洋古典語学・西洋古典文学
准教授
マルティン・チエシュコ
西洋古典語学・西洋古典文学 (平成 21 年 10 月着任予定)
〔著書・論文〕 中務『イソップ寓話の世界』筑摩書房。『饗のはじまり』岩波書店。
高橋
ウェルギリウス 『アエネーイス』 翻訳,京都大学学術出版会,『ギリシア神話を学ぶ人のために』
世界思想社。M. Ciesko, Menander and the Expectations of his Audience. Oxford DPhil Thesis.
紀元前 8 世紀のホメロスから後 2 世紀のローマの著述家まで,ギリシア語・ラテン語を用い同一の文
化的精神的伝統を共有する世界を古典古代という。そこにおいてギリシア文学は叙事詩・抒情詩・悲
劇・喜劇・歴史・牧歌・小説など,さまざまな文学ジャンルを生み出し,ラテン文学はギリシア文学を
継承しつつ,恋愛詩・風刺詩・弁論など独自の発展を織り込んでルネッサンス以後の再生に連なる古典
の伝統を築き上げた。
本専修は,一方で,これらの文学作品を主要な研究対象とする。さらに,古典古代にギリシア語とラ
テン語で書かれたすべての文献をも研究領域に含めつつ,原典批判を基本に,テクストを精細に読み,
背景にある伝統を踏まえ,文脈に即した解釈を提起すべく研究を進める。
その一方,西洋古典学という学問の特質,および,古典古代以前と以後にも注意と目配りを忘れない。
すなわち,西洋古典学は古代にあっても近代の新たな出発点にあっても,文学,哲学,歴史学など人文
科学分野にとどまらず,数学,物理学,天文学,医学,生物学などの自然科学分野をも含んで,人間に
かかわるすべての学問分野にまたがる形で成立し,その根幹には人間を分割しえない完結した個体とし
て総体的に捉えようとする視点があった。また,ギリシア文化の形成にあたっては,エジプトやメソポ
タミアの先進国から多大な影響が及び,他方,古典文化の伝統はビザンチン文化やカロリング朝文化,
さらにはイスラム文化によって継承されたという,文化史の大きな流れを視野からはずすことはできな
い。
本専修における大学院進学者は,京都大学文学部出身者よりも他大学出身者の方が多い。古典の語
学・文学を研究する学生はもちろん,文化を研究する学生にとっても,もっとも重要なのは第一次資料
となるギリシア語・ラテン語の原典を読みこなす能力である。また,辞書・研究書は外国語のものがほ
とんどであるから,英・独・仏等の近代語にも堪能であることが要求される。古典古代を広い視野から
研究するために,古代哲学史・西洋古代史の授業をも積極的に受講することが望まれる。
― 9 ―
スラブ語学スラブ文学専修
教
授
佐藤
昭裕
スラブ言語学
〔著書・論文〕 『中世スラブ語研究――『過ぎし年月の物語』の言語と古教会スラブ語――』京都大学
大学院文学研究科,2005.“Стиль повествования древнерусской летописи «Повесть временных лет»
и язык Житий Кирилла и Мефодия : опыт сопоставительного исследования.” Japanese Contributions
to the 14th International Congress of Slavists. 2008.
本専修は,平成 7 年度の文学部再編により開設され,平成 8 年度から大学院学生の募集を行っている。
そして平成 16 年度には初めて 2 名の課程博士が出,現在,修士課程・博士課程あわせて 4 名の院生が在
学している。
当専修は,それぞれで固有の特徴を示すものの,一方で多くの共通点をもつスラブ諸民族の言語と文
学を,その多様性と統一性という観点から総合的に研究・教育することを設立の趣旨としている。
専修を担当する佐藤は,スラブ言語学,文献学を専門とし,現在とくにテクスト言語学の立場から古
教会スラブ語,古ロシア語を対象とした研究を行っているが,現代ポーランド語とポーランド文学にも
つよい関心をもっている。同時に,授業については本学の他研究科の教員,ならびに非常勤の先生方の
応援を得て,できる限り広くスラブ諸民族の言語と文学を対象に行うことを目標としている。
従って,当専修を志望する諸君も,まず自分の専門分野を確立したうえで,将来的には,スラブ全体
を視野に納めた幅広い研究を目指して欲しい。学部でロシア語,ロシア文学を専攻した人は大学院入学
後他のスラブ語,文学について学ぶ必要が出てくるであろう。また他方,ロシア語がスラブ研究のため
の国際的共通語としてもっとも重要な地位を占めていることも事実であるので,ロシア以外の言語,文
学を専攻した人も,入学までにできる限りロシア語の力をつけてきて欲しい。とはいうものの,修士課
程入学時にまず第一に要求されるのは,それぞれが学部で専攻した言語,分野についての十分な学力
と,将来自主的に研究を進めるための能力である。
年によって多少の変更はあるが,例年特殊講義として「中世スラブ語研究」「現代スラブ諸語文法論」
「19 世紀ロシア文学研究」など,演習として「ポーランド文学」「ロシア文化・社会論」「19 世紀ロシア
文学」「セルビア・クロアチア文学」などの授業が開講されている。また学部向けの授業としては,「ス
ラブ文献学入門」 「ロシア文化・社会論演習」 「露書講読」 「ポーランド文学講読」 「ロシア語外国人実習」
などがある。集中講義はこれまで「セルビア・クロアチア語」「ポーランド文学史」「ロシア・ロマン主
義研究」 「マケドニア語研究」 「19 世紀・20 世紀ロシア文学概論」 「現代ロシア語文法論研究」 「スラブ民
俗学研究」などが行われている。
本専修は,生まれてなお日の浅い専攻であり,何もないところから出発して新しい研究室の雰囲気,
学問的伝統を作っていく過程にある。そのために自ら積極的に貢献しようという諸君の入学を期待して
いる。
― 10 ―
ドイツ語学ドイツ文学専修
教
授
西村
雅樹
近現代ドイツ文学,オーストリア文化
准教授
松村
朋彦
近代ドイツ文学・文化史
〔著書・論文〕 西村『世紀末ウィーン文化探究―「異」への関わり』(晃洋書房,2009),
『ドイツ文学
と美術』(編著,日本独文学会,2006),「世紀末ウィーンにおける「異」意識」(
『グローバル化時代
の人文学―対話と寛容の知を求めて (上) 連鎖する地域と文化』,京都大学学術出版会,2007)。
松村「暴君から賢者へ ―― 18 世紀ドイツ文学・オペラのオリエント像」 (
『希土』 32,2007),
「根源と
しての東方 ―― ゲーテ時代のドイツ文学のオリエント像」(
『京都大学文学部研究紀要』47,2008),
「越境と内省――ゲーテと〈世界文学〉
」(
『ゲーテ年鑑』50,2008)。
本専修の研究教育の対象領域は,中世から現代へといたるドイツ語圏 (オーストリア,スイスを含む)
の言語文化全般にわたっている。現在主として西村教授は,19 世紀後半から 20 世紀前半にかけてのド
イツ語圏の文化について世紀末ウィーンの文学を中心に研究を進めている。また松村准教授は,18 世紀
後半から 19 世紀前半にかけてのドイツ文学を文化史的な観点から考察しようと試みている。専任教員
の専門分野からもわかるように,研究教育の中心をなしているのは 18 世紀以降のドイツ文学であるが,
それ以外の研究領域についても,人間・環境学研究科や人文科学研究所の教員ならびに他大学からの非
常勤講師,さらには外国人教師の協力を得て,多種多様な授業が開講されている。ドイツ語学に関する
授業も毎年おこなわれている。授業の他に,学生による読書会も盛んである。
本分野の研究教育の特色は,講座開設当初から一貫して,原典の綿密な読解を重視する点にあり,こ
の伝統は今日もなお生きつづけている。だが他方では,新しい方法論の出現と対象領域の拡大によって
ますます多様化しつつある現在の研究状況をふまえて,せまい意味での語学・文学研究の枠組にとらわ
れることなく,広くドイツ語圏の諸芸術や文化と社会のさまざまな問題に目を向けることもまた必要で
あろう。
さらに,ドイツ語圏の言語文化が他の欧米諸国との密接な影響関係のもとに成立,発展してきたこと
を考えるなら,ドイツ語学ドイツ文学を西洋文化全体とのかかわりのなかでとらえようとする視点もま
た,今後ますます重要になってくるだろう。
このような意味で,ドイツ語学ドイツ文学を研究しようとする学生諸君には,ドイツ語のテクストを
正確に読みこなすだけの語学力と西洋文化全般に対する広範な関心を期待したい。
― 11 ―
英語学英米文学専修
教
授
宮内
弘
英詩
教
授
若島
正
現代アメリカ小説
教
授
佐々木
徹
イギリス小説
准教授
家入
葉子
英語史
准教授
廣田
篤彦
イギリス演劇
准教授
森
慎一郎
アメリカ小説
〔著書・論文〕 宮内『英詩の文体論批評―イェイツ,ラーキンを中心に』京都大学学術出版会。同
“Rhyme Style : with Examples from Larkin, Yeats and Heaney”, POETICA 58 (Eikoh Institute
of Culture and Education 2002).
若島『ロリータ,ロリータ,ロリータ』作品社。同ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』訳書,新潮
社。
佐々木
Thomas Hardy, The Hand of Ethelberta (Everyman Paperback) 校訂・編集。同『ウィル
キー・コリンズ傑作選』監修,臨川書店。
家入
Negative Constructions in Middle English (Kyushu University Press, 2001).同 Aspects of
English Negation 編集 (John Benjamins & Yushodo Press, 2005).
廣田
“The Partner of Empire : Literacy and Imperialism in Titus Andronicus”, The Shakespearean
International Yearbook 6 (Ashgate 2006).「アエネアスとディドの変容 ――『オセロー』における
文学的伝統」『シェイクスピアとその時代を読む』 (研究社 2007)。
森「ギャツビー・ゴネグション ―― フィッツジェラルド『偉大なギャツビー』をめぐって」『みす
ず』第 46 巻第 3 号.同アラスター・グレイ『ラナーク ――四巻からなる伝記』訳書,国書刊行会。
本専修の特殊講義および演習は専任教員のほか,人間・環境学研究科および学外の教員によって行わ
れ,英語学英文学およびアメリカ文学のほぼすべての分野を網羅するようになっている。英米人教員に
よるものを除いて,講義および演習は日本語で行われるが,その場合にも教材は英語の原典を用い,作
品の正確で厳密な読解を特に重視する。
研究テーマおよび方法論はすべて学生の独自性にまかされており,自由なテーマについて研究を進め
るのが本専修の基本方針である。ただし,とくに前期課程においては特定の狭い分野にのみ目を向ける
ことなく,隣接する分野についても広い関心を養ってほしい。
最近では外国での学会で院生が研究発表を行う機会も珍しくない。研究室で行われる外国からの研究
者による特別講演,セミナー等にも積極的に参加・貢献することが望まれる。
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フランス語学フランス文学専修
教
授
吉川
一義
近現代フランス文学
教
授
田口
紀子
フランス語学,テクスト言語学
准教授
増田
眞
准教授
永盛
克也
18 世紀の思想と文学,ルソー,ディドロ
17 世紀文学,ラシーヌ
外国人教師 エリック・アヴォカ
フランス文学全般
上記に加えて,人文科学研究所 (文献文化論講座) 所属の下記の教員が教育と研究指導に参加して
いる。
教
授
大浦
康介
文学理論,現代フランス小説
〔著書・論文〕 吉川『プルーストと絵画』,岩波書店;同『プルーストの世界を読む』,岩波書店。
田口『文学をいかに語るか ―方法論とトポス―』 (共著),新曜社;同『身体のフランス文学』 (共編),
京都大学学術出版会。
増田『フランス文学史』(共著),東京大学出版会;同,ル・メルシェ・ド・ラ・リヴィエール『幸福
な国民またはフェリシー人の政体』(訳),岩波書店。
永盛『ラシーヌ劇の神話力』(共著),上智大学出版会;同「ラシーヌとカタルシス」(
『エキノクス』
15,1998)。
大浦『文学をいかに語るか
―方法論とトポス―』(編著),新曜社;同『哲学を読む―考える愉しみ
のために―』(共編著),人文書院。
さらに,人間・環境学研究科,人文科学研究所および学外の教員が講師として教育と研究指導に随時
参加しており,平成 21 年度は北村卓大阪大学教授がボードレールを,嶋﨑陽一龍谷大学准教授が中世
フランス語・フランス文学を講じている。
本専修ではフランス文学・芸術・歴史・言語について広く学び,とくに関心のある主題について深い
知識を身につけることが求められる。また大学院ではフランス語で修士論文を書くことが義務づけられ
ているので,高度の語学力が要求される。将来大学の教職についたり,研究者になろうとする者は日本
またはフランスで博士論文を執筆することが必要である。研究対象は自由に選ぶことができる。それだ
けに学生自身が自覚的に問題意識をもつことが重要となる。本専修では教員一同が論文などの研究指導
だけではなく,留学に関する相談などにもきめ細かく応じている。仏文ホームページ参照 http : //
www. bun. kyoto-u. ac. jp/futsubun/index. htm
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イタリア語学イタリア文学専修
教
授
齊藤
泰弘
レオナルド・ダ・ヴィンチ研究,イタリア演劇史
(平成 22 年 3 月退職予定)
准教授
天野
恵
イタリア・ルネサンス文学,アリオスト研究
〔著書・論文〕 齊藤『レオナルド・ダ・ヴィンチの謎―天才の素顔』岩波書店,1987。
天野「ベンボとアルドゥス版『カンツォニエーレ』
」イタリア学会誌
56 号,2006。
イタリア語学イタリア文学関係の教育・研究機関で博士後期課程をそなえるものは日本では当専修と
1979 年に東京大学文学部に開設されたもの,および大阪外国語大学のもののみである。当専修は 1940
年に創設されたが,日本で最初にこうした機関が京都大学に設置をみた背景には,1908 年文学部創設以
来,上田敏,厨川白村はじめ多くの教官がダンテ研究にたずさわったことによる研究成果の蓄積があっ
た。幸いにも開設に先立ち,京都大学附属図書館は,ダンテ研究者大賀寿吉氏により「旭江文庫」の寄
贈を受けている。この文庫はダンテの貴重な原典をはじめ 1936 年までに刊行されたダンテ関係文献約
3000 点を収めた日本では他に類をみないきわめて重要なコレクションで,それ以降文学部の蒐集になる
集書とともに内外の研究者から利用されている。
ダンテ,ペトラルカ,ボッカッチョの三大詩人を生んだイタリア文学の伝統と西欧近世思想の母体と
なったイタリア・ルネサンス文化の知識が,ヨーロッパ文学研究にたずさわるものにとって基本的な条
件であるということはいうまでもない。その意味でイタリア文学の研究になお未開拓な分野を多く残す
日本においては,とくに研究者が要請されているのが現状である。
天野准教授の専攻はルネサンス期のイタリアで隆盛を見た騎士物語詩,特にアリオストの文学,およ
び 16 世紀の言語問題である。
専任教員がイタリア古典文学・演劇を主な研究分野としているため,近・現代の文学については,外
部から数名の講師を招き,
「特殊講義」等の授業担当を願っている。
将来イタリア語学イタリア文学の研究を志す 2 回生を主たる対象として,短時日でイタリア語テキス
ト講読の能力を養う目的で『イタリア語文法 4 時間コース』が開かれている。また 1 回生から履修でき
る専門科目として「イタリア文学史」の講義があり,起源から近代にかけて講じられている。なお当講
座には専任のイタリア人教師がおり,イタリア語の会話実習のほか文学・語学の各種演習・特殊講義の
授業を担当し,学生の指導にあたっている。
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