初期緑内障をどのように マネージメントしていくか?

第119回日本眼科学会総会共催モーニングセミナー15
The 119th Annual Meeting of the Ja panese Ophthalmological Society
2015年 4月19日(日) 7:45 8:45
第3会場(さっぽろ芸術文化の館 3F 黎明の間)
緑内障眼底
読影勉強会
初期緑内障をどのように
マネージメントしていくか?
座長
講演
1
東邦大学医療センター大橋病院 眼科 教授
富田 剛司 先生
最近のOCTの発展はめざましく、
また実際にOCTにより
初めて診断できる初期緑内障も少なくないため、OCTの有
用性は広く認められている。
しかし、OCTを導入したものの、
うまく使いこなせているか自信のない先生もいらっしゃるの
ではないだろうか。かつて緑内障眼底読影勉強会Ⅲ
(OCT
編)を実施したが、OCTによる緑内障診断の実際を教えて
ほしいとの要望は、減るどころかますます多くなってきた。
そ
こで、新たに緑内障眼底読影勉強会Ⅳ「OCTを併用する眼
底読影の実際:進化編」を企画し、眼底読影の最先端の話
題をお送りすることとなった。画像解析装置は単に眼底像
を機械の眼で捉えて提示しているだけであり、画像を判断
し使いこなすのは、最終的に我々眼科医である。だからこそ、
眼底の読影に加え、OCTを勉強することに意義があると考
えている。
そこで本セミナーでは、
エキスパートの3名の先生
方をお迎えし、眼底読影を通してどのように初期緑内障を
マネージメントしていくかを考えていきたい。乞うご期待!
OCTを活用し見つける
初期緑内障
愛媛大学医学部 眼科 准教授
溝上 志朗 先生
講演
2
OCTの診断に関係する
非緑内障因子、ピットフォール
東京大学医学部附属病院 眼科 講師
間山 千尋 先生
講演
3
OCTを活用し見つけた
初期緑内障の治療戦略
金沢大学附属病院 病院臨床 准教授
大久保 真司 先生
共催:第119回日本眼科学会総会/株式会社アールテック・ウエノ
緑内障眼底
読影勉強会
講演
1
初期緑内障をどのようにマネージメントしていくか?
OCTを活用し見つける初期緑内障
愛媛大学医学部 眼科 准教授
溝上 志朗 先生
近年、飛躍的に性能が向上した光干渉断層計(OCT)が日常臨床に急速に普及している。
このOCTを適切に用いれば、
これまで鑑別が難しかった発症早期例だけでなく、近視や小乳
頭合併症例の診断にも威力を発揮する。
しかしその反面、OCTの異常判定を過信すると、正常な症例を緑内障と誤認するリスクが高ま
り、いわゆる OCT緑内障 を量産する羽目になる。
では、なぜ、OCTによる緑内障診断はかくも難しいのだろうか?
そこで、本講演では実際にOCTを初期緑内障診断ツールとして使いこなすために、押さえてお
きたい基礎的な知識を確認し、正しく診断するためのコツ、
そして注意すべきポイントついて、実
際の症例を供覧しながら簡潔にお話ししたい。
講演
2
OCTの診断に関係する非緑内障因子、ピットフォール
東京大学医学部附属病院 眼科 講師
間山 千尋 先生
OCTを利用することで、
より早期の緑内障、従来の眼底検査では発見しにくいような緑内障が
診断しやすくなったが、一方で、検査には偽陽性、偽陰性がつきものである。いわゆるアーチファ
クトによってあたかも緑内障のような所見が出ることもあれば、緑内障による変化が見逃されや
すくなる可能性もある。
また、緑内障以外の生理的な眼の状況や緑内障以外の疾患の影響によ
り、緑内障の所見がマスクされることもある一方で、緑内障に類似した所見を示す緑内障以外の
疾患との鑑別診断が重要になることがある。OCT検査後にはサマリーの判定結果を見るだけで
はなく、適切な撮影ができているかどうかをまず確認する必要があり、OCT以外のスリット検査、
眼底検査による視神経乳頭と網膜、硝子体の観察が重要になるが、
どのようなピットフォールが
あるのかは、知識として知っておく必要がある。本講演では、
これらの緑内障診断の障害となりう
る状況について、実際の症例をみながら考えたい。
講演
3
OCTを活用し見つけた初期緑内障の治療戦略
金沢大学附属病院 病院臨床 准教授
大久保 真司 先生
緑内障は構造的変化が機能的変化に先行するといわれており、静的視野計で異常が検出さ
れるころには30∼50%の網膜神経節細胞が失われているとされている。極早期緑内障では、視
神経乳頭変化は捉えにくいことが多く、網膜神経線維層欠損(retinal nerve fiber layer defect:
RNFLD)が視神経乳頭変化より数年早く検出されることが報告されている。光干渉断層計
(optical coherence tomography: OCT)は、RNFLDの検出に優れており、OCTの普及に伴い緑
内障がより早期に診断されるようになってきた。
また最近では、緑内障も早期の段階から黄斑部
の障害をきたす症例が多いことが知られてきており、黄斑部に障害がみられる症例においては
必ず中心10度内の視野検査を行い、視野障害がみられる症例に関しては、積極的な治療を考
慮する。
その他、眼圧、年齢、障害部位、近視の有無、乳頭出血の有無などを考慮して治療方針を
患者さんと相談しながら決めている。現在の私の治療戦略を提示し、OCTを活用して見つけた初
期緑内障のマネージメントについて皆様と整理していきたい。