渡辺好之著『子育て、原点からの出発:楽しさの中に厳しさのある教育の

【書評】
渡辺好之著『子育て、原点からの出発:楽しさの中に厳しさのある教育の追
求 —41 年 間 の 軌 跡 よ り ー 』
昔を振り返 って、改 めて専門的な 視点から
この本は、渡辺好之先生が、1966 年に北海
道根室管内の 別海町上 風連中学校の 教諭に着
感銘を受けたのは、渡辺先生が生徒一人一人、
任されて以降、教頭、校長を歴任され、2006
そして、集団 に対して も、常に「対 話」 を心
年 に 根 室 市 の 教 育 長 を 退 職 さ れ る ま で の 41
がけていた点 です。先 生は、いつも 生徒一人
年に及ぶ教員 生活の軌 跡を具体的な エ ピソー
一人の視点に 立って状 況を理解しよ うと し、
ドを取り上げ つつ、当 時の資料と合 わせて 刊
生徒に確認し ながら言 葉を選んで言 語化し、
行したものです。題名にもなっているとおり、
先生ご自身の 考え方と の違いをオー プンな会
この本では、 教師にな ることの楽し さと 生徒
話の中で進め てい まし た。周囲に生 徒である
に真剣に向き 合う厳し さが具体的な エピソー
自分たちがど のように 映っているか を見せて
ドを通して描かれています。
くれるこのよ うな「対 話」は、生徒 の意識的
内容を紹介し てしまう と 、来年以降 の履修
な自己理解を おおいに 促すものでし た。私が
者がレポート で取り上 げたいと思っ た部 分を
教育心理学を 講義する 中でイメージ している
先取りしてし まうこと になるので 、 詳細は省
理想の教師像 には、渡 辺先生の この ようなお
略させてもら うことに します。概要 を述べ る
姿が大きく重なっています。
と、
「教育に関する15の提言」に始まり、
「教
2008 年 の 刊 行 時 に 著 者 の 渡 辺 先 生 か ら こ
育実践10か条 と生徒 との交換ノート 」、「い
の本を寄贈し ていただ き、教師とし ての心構
じめをなくす ための発 達課題研究 」 のほか、
えを知る実践 書として 、多くの教職 履修生と
校長になって から教職 員を啓蒙し、 保護者地
共に読み継い できまし た。長年、教 育心理学
域とのコミュ ニケーシ ョンをとるた めの「校
の指定図書とし、半期 2~30 名が手に取って
長だより」の 記録から なっています 。 自分が
きたこともあ り、表紙 も相当くたび れてしま
教員に向いて いるかど うか迷ったと き、教育
いました。も う手には 入らない本 と いうこと
実習にいく前 に必ずも う一度目を通 してみて
もあり、今年 度は指定 図書から外し ていまし
ください。渡 辺先生の エネルギーあ ふれる活
いました。渡 辺先生に その様子をお 伝えした
動の記録を読 むことで 、 きっと、そ の教師像
ところ、ご好 意により 教職履修者の ために新
を自分の内面 に取り込 むことができ ると思い
たに7冊をご寄 贈いた だくことになり ました。
ます。
こうした経緯 もあり、 来年度はこの 本を教育
私事になり ますが、 私板垣は北海 道の別海
心理学の指定 図書 に戻 しますので、 大切に読
町中西別中学 校に入学 してから3年 間 担任で
んでください。
あった渡辺先 生の指導 を受けました 。 当時を
最後になりま したが、 ご寄贈いただ いた渡
思い出すと、 渡辺先生 は生徒と一緒 にいるの
辺好之先生、本当にありがとうございました。
が好きな先生 でした。 生徒に対して は厳しく
ここに記してお礼申し上げます。
とも威圧的で なく、優 しくとも だら けず、生
(教育心理学担当・板垣文彦)
徒の気持ちを 汲み取り ,適切な 言葉 で補い、
生徒皆に平等 に接し、 他の生徒と比 較せず、
生徒との向き 合い方が 本当に澄み渡 っていた
ように思います。
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