近代ランドスケープ作家研究 - WordPress.com

環境デザイン基礎 1[ランドスケープデザイン]
211 近代ランドスケープ作家研究
■ローレンス・ハルプリン(Lawrence Halprin)
代表作:シー・ランチ・コンドミニウム(1964)
代表作:NCNB プラザ(1988)
自然形態的に敷地をとらえた彼の空間構成においては、建築は自
然原野に溶け込み、人は野生動物と植物に囲まれて生活する。人
と自然とを調和させるかのように、そこに住む人たちのライフス
タイルの中に組み込まれたこの雄大な自然こそが彼のデザイン
であり、ランドスケープが人々の生活の質にまで深く影響するも
のであることを期待させる作品の要素となっている。
グリッドに沿った植栽や床のパターンは、古典的なバロック様式
庭園のように幾何学的であるが、一方で、ランダムに配された百
日紅が光と影の変化を床に与え、歩く人には自然の気配を感じさ
せる。同時に、それらのデザインは空間展開のリズム感を生み、
人の身体的な知覚・行動にまで及んでいる点から、彼の「自然と
人間は都市の中でも限りなく一体化していくべきだ」という思想
を感じることができる。
【参考文献】
[1] 佐々木葉二著『デザイン基礎[ランドスケープデザイン]第 1 章』
、京都造形芸術大学、1998 年
[2] シーランチの開発 | 20123 | お知らせ | デザイナーズマンション,株式会社リネア建築企画
URL:http://www.linea.co.jp/info/detail/?iid=519&mo=te 最終アクセス:2015 年 4 月 20 日
■ガレット・エクボ(Garrett Eckbo)
代表作:ユニオン・バンク・プラザ(1968)
代表作:タナー・ファウンテン(1984)
彼が意図したのは、銀行前の広場を歩く人が、40 階建てのユニオ
ンバンクタワー内の社員から見られる図、つまり、広場と歩行者
の動きを絵画のように見立てた公共空間をデザインしている。コ
ンクリートによって芝と水のエリアがはっきり分かれており、上
から見た曲線美が特徴的であるが、3 次元の奥行きを求める彼の
意匠と、芸術としての要素の強さを感じることができる。
大学内の広場に同心円状に置かれた数多くの岩の真ん中からミ
スト状に水が噴出されており、校内に霧の情景を演出している
が、それ自体に彼は意味は持たせていない。この場所を行き交う
人たちの動きにより現れる「現象」をデザインし、可視化するた
めの要素としてそれらを用いており、ヒューマンスケールの風景
を表現している作品である。
[1] Union Bank Square | The Cultural Landscape Foundation
:http://tclf.org/landscapes/union-bank-square 最終アクセス:2015 年 4 月 22 日
[2] National Register of Historic Places Registration Form
URL
【参考文献】
[1] 佐々木葉二著『デザイン基礎[ランドスケープデザイン]第 1 章』
、京都造形芸術大学、1998 年
[2] プロセスアーキテクチュア 108 号『ダン・カイリーのランドスケープデザイン 2』プロセスアーキテクチュア社、1993 年
■ピーター・ウォーカー(Peter Walker)
【参考文献】
URL
■ダン・カイリー(Dan Keily / Daniel Uarban Keily)
:https://preservetucson.org/sites/thpf/files/project-doc/
AZ_PimaCounty_TCCLandscape_NRHPNomination.pdf
最終アクセス:2015 年 4 月 22 日
【参考文献】
[1] タナーファウンテン(Tanner Fountain) | 景観デザインを目指せ
URL:http://blog.enviro-studio.net/?eid=551 最終アクセス:2015 年 4 月 21 日
[2] 第 2 章 都市へどうかかわるか|宮城俊作
URL:www.geocities.jp/prospect5204/miyagi_text01.pdf 最終アクセス:2015 年 4 月 21 日
31473712 横田直也
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環境デザイン基礎 1[ランドスケープデザイン]
211 近代ランドスケープ作家研究
ローレンス・ハルプリン(Lawrence Halprin):シー・ランチ・コンドミニウム(1964)
(1)施設配置に関して
ここでの施設とは、住居のほか、ゲ
ストハウスやロッジ、ガレージ、植
栽などであるが、それぞれの外観上
の特徴、大きさ、色、納まりなどで
の集約を考えるのではなく、その使
用上の利便性や隣地との継続性、そ
して「場所との呼応」を意図して配
置されている。波打ち際や丘陵の峰
の部分から距離を保った部分に配さ asahi.com(朝日新聞社):アメリカ西海岸
れた建築物からはそれをよく読み取 建築行脚(1)「シーランチ・コンドミニアム」
ることができる。
http://www.asahi.com/housing/column/TKY20
(2)気候に対応するデザイン
(3)植栽・建築素材に関して
(4)地形のデザイン
1011050165.html
より引用
建築物と道路以外は自然原野の風景
を残す意図から、植栽はそこに自生
しているものを、建築素材は木造に
限定し、材木はこの土地の杉(レッ
ドウッド)を用いるなど、自然景観
を統一するための形態制限を多く設
けていた。その結果、敷地の現況地
形を最大限維持し、自然への負担を
最小限にとどめた、自然との共生を Asahi.com(朝日新聞社):アメリカ西海岸建
演出するデザインが実現されてい 築行脚(1)「シーランチ・コンドミニアム」
る。
http://www.asahi.com/housing/column/TKY20
1011050165.html
より引用
建築を自然にいかに溶け込ませる
か、あるい人と自然がいかに共生し
ていくかを重視しているため、「海風
が強く、霧が発生しやすい」などの
気候条件に対応できるよう、空気抵
抗を減らすために軒や庇をつけない
ことや、屋根に指定した角度をつけ
た勾配屋根にすること、また自然か
らの経年劣化を最小限にするため地 シーランチ・コンドミニアム | シーランチ
元の材木を使用することなど、様々 を訪ねて(アメリカ)No.24
より
な制限における工夫がされている。 http://www.linea.co.jp/info/detail/iid/493
引用
沿岸部の岸壁エリア、内陸部の草原
エリア、丘陵部の林エリア、そして
それぞれの地形の変化するエリア
(変化帯)の 4 種類の地形から構成
されている。空間設計は、地形によ
り異なる生態系や風景などそれぞれ
の特徴に影響されているが、地形上
の力学に基づき、手の入れすぎや、
既存の環境が維持できないようなデ asahi.com(朝日新聞社):アメリカ西海岸
ザインにはしないように一貫して設 建築行脚(1)「シーランチ・コンドミニアム」
計されている。
http://www.asahi.com/housing/column/TKY20
1011050165.html
より引用
建築家チャールズ・ムーアが設計した同建築は、世界中から見学に訪れるほど有名であるが、この建築のデザインの力を引き立たせているのは、そこ
にある大自然との融合を可能にしたランドスケープデザイン的アプローチ、特にエコロジカルデザイン的アプローチがあったからである。端的に言うと、
シー・ランチの立地条件としての地形・風向き・日照条件・植生分布などを設計時に理解していること、また敷地の現況の最大限の保全につながるよう
な制限を設け、その地域における変化に責任を持つことをプロセスに組み込んだ点が、建築業界において革新的だったとして評価されている。そして、
都市や建築の範囲で捉えていたものが、「人と自然との共生」というより大きなスケールで捉えさせる意義深い作品であると考える。
また、この作品から景観保全の必要性において最も重要だと感じたのが、このシー・ランチに住む人自身をデザインに組み込んでいる点である。それ
は、ライフスタイルの中に大地への帰属感や自然観を育むという意味だけではなく、そこに住む人には自然景観保全のために努力が求められていること
を意味している。というのも、シー・ランチのルールにおいては、使用上の利便性、隣地との継続性を保つため、視線を遮るプライバシーを手に入れる
ことが容易ではないなど、近隣同士が互助の関係を築かなければシー・ランチの自然景観も住民の豊かな暮らしも保全できない要素が多くあるからであ
る。そういう意味では、こうした点に設計者自身が意識を向け、設計段階でコミュニティの調和が図られている点に感心させられると同時に、ランドス
(『チャールズ・W・ムーア作品集』a+u 建築と都市 、1978 年より引用) ケープデザインとは何であるかを改めて考えさせられる作品である。
【参考文献】
佐々木葉二著『デザイン基礎[ランドスケープデザイン]第 1 章』、京都造形芸術大学、1998 年
[2]『チャールズ・W・ムーア作品集』a+u 建築と都市、1978 年
[3] asahi.com(朝日新聞社)
:アメリカ西海岸建築行脚(1) 「シーランチ・コンドミニアム」 - 住まいのお役立ちコラム - 住まい
URL:http://www.asahi.com/housing/column/TKY201011050165.html 最終アクセス日:2015 年 4 月 24 日
[1]
[4] The Sea Ranch Design Manual and Rules
: http://www.redwood.jp/closeup_detail/36/ 最終アクセス日:2015 年 4 月 24 日
[5] シーランチ・コンドミニアム | シーランチを訪ねて(アメリカ)No.24 | Tabi/世界の建築
URL: http://www.linea.co.jp/info/detail/iid/493 最終アクセス日:2015 年 4 月 24 日
URL
31473712 横田直也
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