<発表要旨> 日本語と韓国語の類義語分析 -「ゆとり:余裕」「うしろ

<発表要旨>
日本語と韓国語の類義語分析
-「ゆとり:余裕」
「うしろ:うら」「바르다(bareuda):옳다(olta)」-
李 澤熊(名古屋大学)
日本と韓国は長い歴史の中で中国から大きな影響を受けていた時代があり、受け継い
だものも数多く存在する。その中の一つに漢語系語彙があげられる。その結果、現在で
も中国語起源の漢語系語彙が数多く使われており、日韓両言語の語彙全体に占める割合
は 6~7 割に及ぶとも言われている(志部(1989))。
「分野:분야(bunya)」
「無料:무료(muryo)
「約束:약속(yakusok)」などのように、意味だけではなく発音まで酷似している例が数
多く見られる。しかしながら、同じ漢語系語彙であっても、まったく意味が異なったり、
ずれがあったりする場合もあり、両言語の語彙の対応関係には様々なパターンがある。
本発表では、その中で「類義関係にある複数の日本語が韓国語の 1 語に対応する(ま
たは、その逆の)例」について詳し考察する。具体的には、「余裕」と「ゆとり」:
「여유(yeoyu)」
、
「うら」と「うしろ」:「뒤(dwi)」、「바르다(bareuda)」と「옳다(olta)」
:
「正しい」の 3 つの例を取り上げる。
(1)ある程度お金に余裕(ゆとり)があれば是非活用したい制度です。
(2)それでもまだ駐車スペースに空きがあり、余裕(*ゆとり)で駐車。
(3)マツダは「スポーツカーのスマートさと SUV のゆとり(??余裕)を融合」って
いっているけど、(以下略)
(4)現在一戸建て住宅に住んでいますが、家のうら(うしろ)にマンションが建設さ
れることになりました。(http://okwave.jp/qa/q5911957.html)
(5)犬がカップ麺(担々麺)のふたのうら(??うしろ)をなめたんですが、大丈夫で
すか?(http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1147233866)
(6)(ラーメン二郎 中山駅前店)
店内待ちは座っている人のうしろ(??うら)に立って待つ方式です。
(http://blog.livedoor.jp/all_round_gate-jiro/archives/1722272.html)
(7)또
그것이
틀리다면
반드시
고쳐서
바른(옳은)길로 가도록
해야하는
것이다.
(またそれが間違っていたら必ず直して、바른(bareun) (옳은(oleun))道へ進むよ
うにするべきである)
(8)자세를
바르게(*옳게)갖고 쾌활한 태도로 면접한다.
(姿勢を바르게(bareuge) (*옳게(olke))して、快活な態度で面接に臨む)
(9)여론이 항상
옳다면(*바르다면)여론조사 기구 외의 모든 정책기구는
필요없을 것이다.
(世論がいつも옳다면(oltamyeon)(*바르다면(bareudamyeon))世論調査機構以
外のすべての政策機構は必要なくなるだろう)
分析結果に基づき、このパターンは「単義語よりの多義語」と見られるケースが多い
ことを指摘し、国広(1982)などを踏まえ、「ある語を多義語と認定する手掛かりとして
の可能性」について検討する。
参考文献
国広哲弥(1982)『意味論の方法』大修館書店.
志部昭平(1989)「漢字の用い方(韓国語との対照)」加藤彰彦(編)『講座
本語教育9
日本語の文字・表記(下)』,pp.194-212,明治書院.
日本語と日