園舎づくりを通して感じる 時代の変化 - ちびっこ計画 | 大塚謙太郎一級

第
回
新建わいわい子ども広場チーム
級建築士事務所
川本真澄 企業組合もえぎ設計
神野佐和子 いくのま計画舎
木村よしひろ 株式会社 VANS
伴年晶 株式会社 VANS
久永雅敏 企業組合もえぎ設計
堀井慎太郎 神戸芸術工科大学 環境・建
築デザイン学科
松井俊 松の実保育園・A&C(有)地域施
進行:高田桂子 企業組合とも企画設計
記録:桜井郁子 企業組合 Fuu 空間計画
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設建築研究所
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たいという気持ちがあり、保育
士資格の取得を目指しています。
まわりの人には両方は無理だと
言われますが、自分自身は保育
と設計のどちらもやる必要があ
ると考えています。短い期間で
あっても、保育の現場に身を置
いて保育の視点から建築を再評
価したいのです。
保育園づくりをやっていて最
近感じるのは、保育園に具体的
な保育の理念や方針が希薄なこ
とです。設計者からの確かな提
案が必要になってきているので
はないかと感じています。
堀井 今日はアルバイト先の大
塚さんから保育園の設計をして
いる人の座談会があると聞き、
参加しました。岡山で保育の勉
強をしているうちに子どもの環
境に興味を持ち、建築の大学に
入り直しました。
桜井 私の事務所は立ち上げた
ばかりで保育園の経験はまだあ
りません。保育園づくりに係わ
り、母親でもある所員がいるの
で、問題意識を持ちながら係わ
りはじめているところです。
■子どもを取り巻く環境の変化
きは今までなかったことで注目
しています。保育園と子どもを
めぐる社会状況は変化してきて
いますね。
まずは、皆さんと保育園づく
りの関わり、その中で感じてき
ていることをお願いします。
木村 VANSでは保育園の設
計に長い間係わっていますが、
私は 年くらい前からになりま
す。2歳の子どもを持つ親でも
ありますが、子どもが園庭のな
●設計者からみた子どもたちの豊かな空間づくり●
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高田 私が住む東京では、認可
保育園に入れない子どもの保護
者が次々と自治体に異議申し立
てをする事態となっています。
東京都は全国に先駆けて規制緩
和をして、企業でも設立できる
認証保育園を中心に整備し、公
立認可保育園を減少させてきま
した。そのツケが出ていると思
いますし、保護者のこうした動
■私と保育園づくり
月に関西に事務所があるメ
ンバーで座談会を行い、園舎づ
くりで感じてきたこと、その中
で見える課題を出し合ってもら
いました。最初の 回は座談会
での問題提起を掲載します。
回からはテーマごとに深めた連
載とします。
2000年代以降、日本の子
どもの施設体系をめぐる制度は
大きく変えられ、複雑になって
きました。時々に解説を加えな
がら、多くの新建会員に理解し
てもらえるようにします。 世
紀を担う子どもの豊かな成長を
願い、その空間について議論が
巻き起こっていくことを期待し
ます。 ︵連載担当 高田︶
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伴 VANSとして保育園づく
りに長く係わってきました。あ
● 1305
●建築とまちづくり●
●
No.419
*次回は﹁ゆとりがなくなった
園舎づくり﹂をテーマに座
談会を進めます。
る保育園を設計した時に、子ど
もたちが生き生きと遊ぶことが
でき、管理されてない子どもた
ちの保育園でした。とても印象
に残っています。
﹁子どもの育ちを大事に﹂と
保育園や設計者は言うが、実際
にそうなっている保育園を見た
ことがないと言ってもいいくら
いです。
子どもをどのように育てるの
か。子どもが存在できる社会な
のか。そういう時代になってい
るのではないかと感じます。
久永 先ほど﹁ポストの数ほど
保育所を﹂の時代のことを言い
ました。その時と今はだいぶ違
ってきていますね。子どもがち
ゃんとした大人になる過程、そ
ういう場が昔は地域にあったと
思います。異年齢で遊ぶことは
当たり前でした。その中で子ど
もたちなりの秩序が生まれてい
ました。今は保育園が地域の代
わりをしなくてはいけない時代
になってきました。
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み
日本は世界で最も低い出生率 豊かな空間づくりを目指し積
で、少子高齢化が国の大問題に 重ねてきた経験や、試行錯誤し
なっています。その上、子ども てきた空間づくりを紹介し、今
に対する国家予算は対GDP比 後の課題を提起していきたいと
で約1%と、先進国で最も低い 思います。
﹁全
水準です。
私たちは毎年夏に行われる
国保育団体合同研究集会﹂に参
そのような状況で子どもたち
はどのように育っているのでし 加している新建会員を中心に、
ょうか。建築とまちづくりを専 保育園や子どもに関する情報を
門にしている私たちは、大きな やり取りするメーリングリスト
関心を持って子どもの空間づく ﹁ わ い わ い こ ど も ひ ろ ば ﹂を
りに係わっていく必要があるで 2009年から始めました。連
載はテーマごとにそのメンバー
しょう。
が執筆します。設計者だけでな
新建では1970年代から子
どもの空間づくりについて、保 く、設計者でありながら保育園
育園づくりの実践や研究を通じ を実際に経営するメンバーや、
て係わってきました。今回の連 保育士として働く人など多彩で
載では、設計者が子どもたちの す。
大塚謙太郎 ちびっこ計画・大塚謙太郎一
い保育園に入っています。設計 取得しました。その後設計事務 この2年くらいは園長専業です。
者としては園庭のない保育園を 所でも働きました。設計の時だ
設計者と運営者の立場から保
設計したことがないので、設計 けでなく保育園にはいつも係わ 育園をみていると、保育園が生
者仲間と空間について話したり っていたいと思っています。
き残るための提案を打ち出して
しています。
久永 私は1970年代の﹁ポ いかなくてはいけないが、今の
神野 私は現在、福岡県で週3 ストの数ほど保育所を﹂の運動 保育園にはゆとりがなく、普段
回保育士をしています。4月か が盛んな時代から、保育園づく の保育で精一杯になっているの
らは保育士の仕事を減らして、 りに係ってきた世代です。
が現状です。
︶に東京 川本 最初に勤めた事務所で保
設計の時間をもっと取っていき 松井 万博の年︵
たいと思っています。大学院で の設計事務所から移ってきて、 育園の設計に関わり、 週間保
設計を学び、学んだことを深め 関西での仕事が中心になりまし 育実習に入ってわけがわからず
たいとまずは保育園に就職しま た。本当は古建築を見にくるつ 大変な思いをしました。保育か
した。子どもや職員の視点から もりだけだったのですが⋮⋮。 ら保育園の設計に関心を持ち、
見た空間づくりはどういうもの 保育園設計と同時に、松の実 保育に関する本を読みあさった
か、実践を通して感じてきまし 保育園では理事長として年間を りしているうちに面白くなって
た。保育士の資格もその時代に 通して運営に係わっていますが、 きました。
もえぎ設計では、保育園の小
さな改修や増築にたくさん関わ
っている内に、新築の設計も手
がけるようになりました。保育
園それぞれに個別の保育があり
それにできるだけ寄り添いなが
ら設計をしてきました。ただ一
方で与条件の枠を越えて、保育
の質や、将来像にも思いを馳せ
ることが大切だと感じています。
大塚 いくつかの設計事務所で
保育園を担当した後、 年前に
保育園等のこどもの建築を専門
とする設計事務所を立ち上げま
した。
建築だけでなく保育も勉強し
◆ 座談会出席者
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園舎づくりを通して感じる
時代の変化
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設計者からみた子どもたちの豊かな空間づくり
* 連載 *
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