第一席 一期一会 安宅 成美

第一席
すことはないから、かけがえのない「今」の瞬間に感謝して相手を
思いやることが大切という意味だと、初めて知りました。
それは茶道だけではなく、私の日頃の生活にも言える事だと思い
ます。茶道の教えとは違うかも知れませんが、私はこの「一期一会」
という言葉を「今日が最後だと思って生きる」と私なりに解釈しま
りました。
は離れた世界と思っていた茶道を、もっと知りたいと思うようにな
多くなりました。小さなこととはいえ、それが嬉しく、日常生活と
バイト先の割烹料理屋で、お客様に所作や姿勢を褒められることが
正座の苦痛から始まった茶道の授業。足がしびれて辛いと何度も
思いました。しかし、正座に慣れ、お点前を習いだしてから、アル
で…。そう考えると、口うるさい両親や、喧嘩した友達とも、「最後
私はつい、「次に会った時に謝ればいい」「いつも会えるんだし、
今日じゃなくても」と「いつも」という言葉に甘えてしまいます。
のです。
のことこそが、本当は「幸せ」だったのだと、失って初めて気付く
慣れてしまって、当たり前だと思ってしまうけれど、その当たり前
一期一会
名古屋文化短期大学一年(愛知県)
した。
茶道を学び始めてから、好きになった言葉があります。授業中に
先生が仰る「一期一会」です。
「一期一会」は有名な言葉ですが、意
は、今日しかない…」
「最後に、謝っておかなきゃ…」と思えるので
安宅 成
美
味を深く考えたことはありませんでした。
「初めて会う人には、二度
はないでしょうか。何気ない一日でも「今日が最後の日」と思えば、
私たちは毎日の生活を「当たり前」と思って生きています。母親
の作ってくれるご飯、父親からの仕送り、相談を聞いてくれる友達、
と会えないかもしれないという気持ちを忘れずに、誠心誠意を尽く
誰だって「今」という瞬間を、目の前の相手を、大切に思えるはず
けれど、もし明日自分が死ぬとしたら、もし今日が地球の最後の日
温もりをくれる恋人。どこにいても相手と繋がれるネットや電話。
す」ということだと思っていました。
もし、この瞬間が「今」しかないと知らずに生きていたら、私は
この先後悔すると思います。いつか必ず訪れる別れの時「ありがと
です。
た一度きりのものです。だから、この一瞬を大切に思い、今出来る
うって言っておけば良かった」「意地をはらずにちゃんと謝ればよ
しかし「一期一会」という言葉を調べてみると、利休居士の「あ
なたとこうして出会っているこの時間は、二度と巡っては来ないたっ
最高のおもてなしをしましょう」という心得と書かれていました。
と思います。
かった」
「素直な気持ちを伝えておけばよかった」きっとそう感じる
「一瞬」
「今」それは、初めて会う人だけでなく、両親や友達など
身近な人でも、季節や時間・場所・風・思いなど、同じ瞬間を過ご
「一期一会」を自分なりに考えた日か
未来は誰にも分かりません。
ら、
「ありがとう」
「ごめんね」そんな大切な言葉を、もっと意識し
て使おうと思いました。
また言葉だけでなく、朝は必ず笑顔を、雨の日は雨を楽しむ心を、
季節の移ろいにも目を向け、その日の出来事や出会った人々を心に
刻む、そんな風に生きられたら嬉しいと思います。小さなことにも
目を向け、感謝の心を持って過ごせたら、素敵な一生になる気がし
ます。心に余裕がなく相手を傷付けたときは、すぐ素直に謝るよう
にしたいです。
これら一つ一つは、利休居士の「一期一会」に繋がると思います。
この言葉で、豊かな生き方を学びました。金銭の豊かさでなく「お
金がなくとも、あなた(大切な人や家族)がいて、今を生きていら
れるだけで、幸せ」と感じる心の豊かさです。豊かな心でこそ人生
は輝くと思うのです。
「今」を大切に生きることは、考えているだけでは出来ないので、
茶道を続ける中で、確実に身につけていきたいと思っています。