部分陰が生じた太陽電池の最大電力時の電圧推定

部分陰が生じた太陽電池の最大電力時の電圧推定
石川
淳 (愛知工業大学),
元谷
中田
篤史
(静岡理工科大学),鳥井 昭宏,
卓, 道木 加絵, 植田 明照
(愛知工業大学)
A DC Voltage Estimations at the Maximum Power Point of a PV System with Partial Shade
Jun Ishikawa (Aichi Institute of Technology), Atsushi Nakata (Shizuoka Institute of Science and Technology),
Akihiro Torii, Suguru Mototani, Kae Doki, Akiteru Ueda (Aichi Institute of Technology)
この時、直列抵抗 Rs は 13.3Ω、並列抵抗 Rsh は 116Ω、ダイ
1.まえがき
オードのオン電圧 VF は 21.9V、電流源 Iph は 0.686A と求ま
近年,太陽光発電など自然エネルギーの導入が活発であ
る。
る。山登り法による最大電力点追従制御(MPPT)が一般的に
用いられているが、その応答性が問題となる場合もある(1)。
本稿ではモジュール毎に設置された照度センサでおおよ
その照度率 U が求まると仮定する。十分な強度の太陽光が
本稿では直並列に接続されたパネル毎の照度を元に、最大
照射されるときの照度率 U を 1.0 とすると、照度率 U に対
電力時の電圧を算出し実験結果と比較する。
応する起電流 Iph’ 、短絡電流 Isc’はそれぞれ
2.太陽電池モジュールの等価回路
................................................................ (5)
太陽電池モジュールは,定格開放電圧 Voc が 21.9V、短絡
電流 Isc が 0.615A、最大電力時の電圧 Vop が 15.5V、電流 Iop
................................................................(6)
が 0.482A、定格電力が 7.5W のものを使用した。折れ線近
似した太陽電池モジュールの IV 特性を Fig.1、等価回路を
となる。(1)、(2)式より最大電力時の Iop’ 、Vop’はそれぞれ
(2)
Fig.2 とする 。MPPT 制御を行うためには、最大電力点付
.................................................. (7)
近の電圧を表現できる簡易な等価回路が望ましい。そこで
ダイオードを I=0 と V=VF の半直線によって近似した。
Fig.1 から等価回路のパラメータ(1)-(4)式が得られる。
................................................................... (1)
.................................................................... (2)
.............................................. (8)
となる。ただし、(7)式の分子が正でなければならず,
........................................................ (9)
................................................................................ (3)
を満たす必要がある。以上より照度毎の特性を導出し部分
.......................................................... (4)
3.シミュレーションと実験
0.8
0.8
(Vop , Iop)=(15.5[V], 0.482[A])
Io[A]
陰が生じたモジュールを模擬できる。
シミュレーションと実験はモジュールの 2 直列、2 並列接
続で行った。Fig.3 に実験で用いたモジュールの等価回路を
0.4
0.4
Isc =0.615[A]
示す。各モジュールの特性は 2 章で述べた。電流源 Iph1 の出
力電流は 0.686A で、パネルに十分な光が当たる(U=1.0)。電
00
0
0
55
10
15
10
15
Vo[V]
20
20
25
25
Voc =21.9[V]
Fig.1. PV module characteristic by polygonal line approximation.
流源 Iph2 の出力電流は部分陰によって照度率 U が 0.80、0.65、
0.50、0.40 と変化するため Iph2 は 0.548A、0.446A、0.343A、
0.274A と減少する。シミュレーションでは式(5)-(8)を用い
て近似的な IV 曲線と PV 曲線を求めた。シミュレーション
と実験結果の比較を Fig.4 と Fig.5 に示す。Fig.4 には Fig.3(a)
の直列接続時の結果を示す。Fig.5 には Fig.3(b)の並列接続
時の結果を示す。青線がシミュレーションで赤線が実験結
果である。最大電力時の電圧を比較すると実験結果はシミ
Fig.2 Equivalent circuit of PV module.
ュレーション結果より小さい値となった。照度の低下によ
るモジュールの開放電圧の低下を考慮していないためと考
えられる。直列接続は高い出力電圧を得ることができるが、
4.まとめ
照度の低下によって最大電力時の電圧と電流が低下するだ
太陽電池の特性の開放電圧、短絡電流、最大電力時の電
けでなく、開放電圧も低下する。本稿で述べた手法はその
圧・電流から部分陰が生じたモジュールの特性をシミュレ
開放電圧の低下を考慮していないため最大電力時の電圧が
ートし、シミュレーションと実験で比較を行った。並列接
相対的に高い場合においてシミュレーションと実験結果に
続はシミュレーション結果と実験結果で誤差は小さかった
差が生じた。またバイパスダイオードの順方向電圧の影響
が、直列接続で最大電力時の電圧が相対的に高い場合、提
も考えられる。特に U=0.65 の時の誤差が大きかった。並列
案手法では実験結果との誤差が大きいことが分かった。
接続の場合はこれらの影響が小さいため誤差が小さかった
本研究の一部は、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業
と考えている。
の助成を受けたものである。
Id
Rsh
VF
Iph1
Id
DBP
Rsh
Io
Rs
Rsh
VF
Iph1
Vo
文
Id
DBP
Rs
Rsh
VF
Iph2
献
DBP
Vo
Rs
VF
Iph2
Id
Io
Rs
(1)
千住,他「太陽電池の部分的陰を考慮した最大出力点追従制
御」電学論B,119巻12号,pp.1331-1338(1999年12月)
中田,他「変圧器タップ切替による太陽光PCSの提案」電気学
会全国大会,4-101(2012年3月)
(2)
DBP
LOAD
LOAD
(a)Series connection
(b)Parallel connection
Fig.3 Equivalent circuit of 2-series or parallel PV module
12
14.0
1.2
Io[A]
34.7V,0.343A
0.4
0.4
13.0W
14
15.5V,0.841A
7.5W
Po[W]
Io[A]
1.20
11.9W
12.0
15.5V,0.482A
10.4W
6.0
6
Po[W]
0.8
0.8
13.3V,0.857A
0.60
11.4W
7.0
0.6
7
30.7V,0.340A
0
0
0.00
0.0
0
0
10
10
0
20
20
30
30
Vo[V]
40
40
50
50
0.0
0
00
10
10
20
20
30
30
Vo[V]
40
40
0
50
50
0
55
(a) U=0.80
10
10
15
15
Vo[V]
20
20
25
25
55
10
10
(a) U=0.80
15
15
Vo[V]
14.0
1.20
1.2
20
20
25
25
11.6W
14
12.0
0.8
0.8
0
00
12
9.0W
8.2W
6.0
6
Po[W]
Po[W]
Io[A]
37.5V,0.239A
Io[A]
7.5W
15.5V,0.482A
0.4
0.4
15.5V,0.749A
7.0
0.60
0.6
14.1V,0.702A
13.8V,0.493A
7
9.9W
6.8W
28.8V,0.283A
0.00
0.0
0
0
0
0
0
10
10
20
30
20
30
Vo[V]
40
40
0
10
10
30
20
30
Vo[V]
40
40
0
0
50
50
0
55
10
15
10
15
Vo[V]
20
20
25
25
0
0
55
10
10
(b) U=0.65
15
15
Vo[V]
10.2W
15.5V,0.657A
5.4W
6.0
6
Po[W]
6.3W
Io[A]
Po[W]
7.5W
40.2V,0.135A
14.6V,0.460A
25
25
14
1.2
12
0.4
0.4
20
20
14.0
1.20
12.0
15.5V,0.482A
Io[A]
20
(b) U=0.65
0.8
0.8
0.0
0
0
50
50
7.0
0.60
0.6
6.7W
7
8.9W
15.5V,0.573A
29.9V,0.210A
0
00
0.0
0
0
10
10
20
30
20
30
Vo[V]
40
40
50
50
0.0
0.00
00
10
10
(c) U=0.50
20
30
20
30
Vo[V]
40
40
0
0
0
50
50
55
10
15
10
15
Vo[V]
20
20
55
(c) U=0.50
1.20
1.2
10
15
10
15
Vo[V]
20
20
25
25
14.0
14
12.0
0.8
0.8
12
9.2W
5.2W
6.0
0.4
0.4
15.0V,0.463A
29.3V,0.178A
20
30
20
30
Vo[V]
40
40
50
50
(d) U=0.40
0.0
0
00
10
10
7
8.1W
0.00
0
10
10
7.0
14.9V,0.542A
0.0
0
0.60
0.6
6
6.9W
00
0
15.5V,0.595A
Po[W]
Po[W]
Io[A]
7.5W
15.5V,0.482A
Io[A]
0
00
25
25
20
30
20
30
Vo[V]
Fig.4 IV and PV characteristics in series connection
40
40
50
50
0
00
55
10
15
10
15
Vo[V]
20
20
25
25
(d) U=0.40
0
0
55
10
10
15
15
Vo[V]
Fig.5 IV and PV characteristics in parallel connection
20
20
25
25