4thエキシビジョンテーブル1

4th エキシビ総評
テーブルメンバー
永原(明治3)
川島(立教3)
竪石(立教3)
室井(早稲田3)
馬場(UT3)
桑原(UT3)
議論の概要
文責:杉本(WESA4)
竪石、室井、川島、永原の 4 人がオプレ立候補し、ADゲットに固執せずアイデア次第
でプロシの変更を柔軟に受け入れることをアピールポイントにした永原がオプレとして選
ばれることとなる。
A.S.Q における特筆すべき議論として、オプレのコアに関する質問が活発に見受けられた。
室井がオプレに対して「なぜオプレは脳死患者に臓器提供を強制できるのか?」という質
問を投げかけ、永原は「脳は人間特有の器官であり、その脳が機能停止した脳死者は人間
ではない」、また桑原の「なぜ脳死が死であるなら強制できるのか?」という問いに対して
「脳死者の体の中に臓器を置いておく意味はない」と答え、今後の議論の根幹となるはず
だったアイデアを提示した。
ASQ が終わり、インタミ直後、室井が先のオプレのコアをカンファメしつつあらたに
「B/D は死を引き起こすものであるので、死へのプロセスである」という論点をQで引出
し、以上3つの論点を議論しようとするプロシを提示した。Sの必要性についてダウトが
かかりかけたものの、先の永原のアピールポイントを利用し、一旦そのプロシに基づいて
テーブルを進めることを全員に同意させた。プロシは先の永原のコアをプラカのロジック
として書き直し、それを順番に検証し、その後に反対のロジックを検証し最終的にロジッ
ク同士を「正義」に基づいてコンパリする、もしくは永原のロジックに対する反論として
検証することを基本的な手順として想定したもののように思えたが、一旦テーブルとして
乗ったはずの室井のプロシの理解で以降 2 時間が消費されることになる。誤解はまずそも
そもプラカのアイデアは永原のアイデアを基に検証するのか、それとも他のメンバーのア
イデアをギャザーするのかから始まり、ロジックを建てる際に必要な要素はなんなのか、
ロジック検証の順番は一体どうするのか等の議論の土台となる部分の理解に 1 時間を消費。
竪石や川島が積極的にQを行うものの、室井から適切なAを引き出せず、また室井も明確
なAや論点を提示することができずテーブル全体が停滞することとなる。同じQが乱発さ
れた後、曖昧ながらもどのロジックを検証すべきか、という点において、いったんテーブ
ルの中で比較的明確であった永原の「臓器を維持する必要性がない=強制できる」という
ロジックの検証をすることがテーブルで決定する。ロジックの検証においては川島が永原
に対して反論を行おうとしたものの、川島のアイデアがダイレクトな反論なのか、別のロ
ジックなのかで再度テーブルが混乱。議論が宙に浮いたところで、桑原が「結局、脳死患
者の臓器維持の必要性を決めるのはADとDAなのではないか」、「だとしたらADとDA
のコンパリをすべきなのではないか」という議論の根底にかかわる C と S を打つものの、
桑原のSに対する効果的なカンファメが他のテーブルメンバーからなされることはなく、
一悶着の後、消極的な形で永原のロジックに戻ることが選ばれ、室井が反論を提示しよう
と試みるも時間切れとなった。
順位と選定理由
文責:廣田(東大 4)
上記のとおり、本テーブルの結論を問われたら「何もない」という他ない。ゆえに本総
評は、議論の概要、各人の選定理由、全体へのコメントのすべてが直接的にしろ間接的に
しろ「なぜこのような質の低いテーブルになってしまったか」についても言及している。
逆に言えば、本総評はこのような無益極まる停滞を回避するための示唆に富んでいると言
える。本テーブルの参加者でなくとも他山の石として参考にしてほしい。
1 位 永原(明治 3)
オピニオンプレゼンターとして、自らの臓器移植へのオピニオンをパンツへの Answer
という形で展開、後にロジックとして立論を試み議論の土台を形成したこと、室井のプロ
シージャ―に乗って以降のマクロな Confirmation、Suggestion により、進度に貢献したこ
とを評価し 1 位に選定した。議論が混乱して以降も落ち着いた態度、プレゼンを保ち、結
果として発言の浸透率が高かった。
しかしながらオピニオンシートの詰めが甘く、途中から実質オピニオンプレゼンターの
役割を担えなくなっていたのが残念である。
(コメント:ニュープロについて)
彼の出したような「論点次第でプロシを変化させる」あるいは「論点を広くギャザーし
て通常のタスクから外れていても話す」というオピニオンシートはしばしば見受けられる
ものであるが、「どのような論点が、プロソルを外れ特殊なプロシージャ―を設置して議論
するのに値するか」という判断軸を持っておくことが肝要である。
個人的な見解だが、「政策決定に必要であるにも関わらず、プロソルでは話せない・話し
づらい論点」のみがそれに値すると考える。「必要でない論点を(ニーズがあるだとか、面
白そうだからという理由で)無理やり話す」というプロシは大体が上手くいかない。必要
性がない以上目標設定もできるはずがなく、その目標なしにハンドリングすることは困難
を極めるからだ。
2 位 室井(WESA 3)
永原のコアを引き出す Q と、それをテーブルの論点へと昇華させる S、議論が混乱した
際の Proceeding を行い、本テーブルにおける主論点を形成し、結論に大きく影響を及ぼし
た人間として 2 位に選定した。
しかし、彼の「永原のアイデア 3 つを Examine しよう」という永原のアピールポイント
に則った S は、議論したい内容」「ゴール」「具体的なステップ」「Task との関連性=政策
決定における必要性」いずれの説明にも欠けており、結果としてテーブルに多大な混乱を
引き起こした点は深く反省してほしい。
(尤も、この S を詰め切らず、雰囲気で通してしま
ったパンツにも大きな責任がある。本テーブルに限らず、上記の要素は S を打った人が提
示していないのならばパンツが質問をして詰めきり、その上で S に乗るか否か判断すべき
ものである。)
テーブルの空気を操り、S を通すことに秀でた室井だからこそ、自分の S の具体性と必
要性について人一倍注意しながら議論することを心がけ、アッセンに臨んでほしい。
3 位 桑原(東大 3)
介入に波はあるものの Understanding に秀で、要点をまとめる Question→Confirmation
を行い進度に貢献したことに加え、議論の破綻している点を指摘したことを評価し 3 位に
選定した。
しかし、介入量と押しに乏しく、上位ランカー内で比較すると、自分一人でテーブルを
動かす能力に大きく欠けることが今後の課題と言える。
(コメント:見慣れないプロシに対応するには)
繰り返しになるが、各パンツ(特に終盤にクリティカルな視点を提示した桑原、川島)
は永原のオピシと室井の S の詳細を詰め、ダウトを出すのが遅すぎたと言える。室井が S
を打ったすぐ後に、後半の議論に見られたような「Q→C→Doubt」を行うことが理想だ。
本テーブルに限らず、このような新規、新奇のプロシに対しては「いかに早くそのプロ
シの核心をつけるか」という点がコンクルの質、またそれへの貢献度、すなわち勝負を左
右する。
ではどうすれば最も速く核心なるものにたどり着けるのか。これは私見だが、そのため
には普段からジョイントなどで様々な試みをすること、それに尽きると思う。例えば今回
のように事前に「広く論点を受け入れる」プロシで議論をしたことがあれば、その手のプ
ロシにおいて、論点の necessity がいかに重要なものであるかを理解していることができた
はずだ。その上で本テーブルに臨めれば、テーブルに潜む危険を察知してハンドリングが
できただろう。
アッセンの甲テーブルにおいて、普通のプロシで議論することは稀だと思われる。ゆえ
に、いまのうちからジョイントや大会で様々なプロシで議論しておくことを筆者は勧める。
なお、他方の 4th エキシビジョンテーブル 3 位の青笹(上智 3)と比較した際、両テーブ
ル間の結論に有意な差はなく、室井と桑原の差に比べ、青笹と 2 位の田中(明治 3)との間
に著しい得点差があったことを勘案し、桑原を 5th エキシビジョンテーブルに選出した。
4 位 川島(立教 3)
室井のプロシに対し終始懐疑的な姿勢を持ち、主にその詳細と必要性を問う Q と、永原
のコアへの反論を提示した。
個人的な見解だが、彼が前述のプロシに抱いたダウトは至極真っ当なものであった。し
かしながら、そのダウトを Q という形で投げかけ、それに室井の Answer が最後までミー
トしなかったことから、彼のダウトも検討されることはなかった。加えて永原のロジック
への反論も、「ダイレクトかインダイレクトか」という妥当性についての議論に終始し、そ
の内容について議論されることはなかった。以上より、彼がテーブルに残したものは上位
三名には及ばず、4 位に選定された。
着眼点の妥当さと介入の早さ・量は関東でもトップレベルに位置すると言えるので、今
後は、このような浮足立ったテーブルを落ち着け、自分の意見を結論に影響させる方法を
磨いていってほしい。
5 位 竪石(立教 3)
Q により、各パンツから情報を引き出していた。しばしば議論の確信に触れる Q も見られ
たが、多くは自分の理解のためという性質が強く、テーブルの結論への貢献度は限定的で
あったため 5 位とした。
川島と同じく、室井の S に対して抱いていたダウトは真っ当なものであったが、結果的
にテーブルを動かすには至らなかったことが残念である。今後はプレゼン能力に磨きをか
け、自分のダウトからテーブルを動かせる存在になっていってほしい。
6 位 馬場(東大 3)
テーブルの議論内容を理解できていなかったというより、介入のタイミング、チャンスを
最後まで見いだせずにいたという側面が強ものの、絶対的に介入量に乏しく、進度、深度
ともに貢献が非常に限定的であったため 6 位とした。終盤から介入がほぼ見られなくなっ
たことは残念である。
全体へのコメント 文責:奥田(青学 4)
今回の議論はプロソルに則って始まったものの、途中からプロソルの枠を外れて進行し
ていった。このプロソルの枠を外れるというのはかなりリスキーな試みであると理解して
欲しい。そもそも何年も続く discuuion 界でどうしてほぼ全ての議論でプロソルが用いられ
ているのだろうかということを考えて欲しい。あくまで個人的な見解になってしまうがそ
の理由は他のどんなプロシージャーよりも全ディスカッタントのプロソルへの理解が深い
からということに尽きると思う。プロソルが他のプロシージャーよりも優れているとかで
はなく、皆が理解しているからこそ議論がスムーズに進み、政策決定という内容について
3時間をフルで使えるというのが最大のメリットであり、それこそがプロソルを皆が使う
理由なのだ。
ではなぜプロソルから外れた、つまり Task から外れた議論をすることがリスキーなのか。
その理由をプロソルを使った議論を行うということが決まった時、テーブル内でどのよう
なコンセンサスが形成されているかおさらいしながら説明していく。
そこには大きな二つのコンセンサスが生まれている。ひとつは日本政府の存在意義と目
的に対するコンセンサスである。これは narrowing において決定される。日本政府は何の
ために存在し、何をすべきなのかということを議論なしに決定しているのである。この議
論なしにという点が重要である。それは皆が長年の経験からくる理解によってすんなりそ
の妥当性を受け入れることができるからこそ議論なしにきまるのである。もしそこに今ま
でにない概念が持ち込まれたらどうなるか。いわゆる narrow ぶっこみである。その場合そ
の概念の妥当性、そしてなぜそれがプロソルより優先されるのかという議論が必然的に発
生してしまう。しかしその議論は本来行わなければいけない政策決定の内容の話ではなく、
それよりはるかに前の前提の話なので、結論に対しての費用対効果がより低い議論になっ
てしまう。それに加え、その部分の議論は内容の部分の議論よりはるかに難しく、また正
解を見つけ出すのが限りなく難しいという欠点がある。なぜならその議論は国の根幹に関
わる議論であるため、高度な政治学や哲学の知識が必要となり、また政治学や哲学の中で
何が優れているかということに関してはプロの政治学者、哲学者の中でも議論の絶えない
問題であり、たかだか学生の我々が答えを出せるような代物ではないからである。これが
ゆえに narrow ぶっこみや途中でプロソル以外の概念を導入した場合に往々にして、解決不
可能ではないかと思うほどの絶望的なごちゃりが生まれてしまうのである。
二つ目のコンセンサスはプロシージャーに関するコンセンサスである。これも一つ目と
同様で、普段の経験からそのプロシージャーの妥当性を受け入れているため、プロシがど
うこうという議論は行われることはない。(プロソル全体という意味でのプロシージャーの
こと。アーギュメントが起きた際の局所局所のプロシージャーは含めない。)しかし新たな
概念を導入した場合、その概念を話し合う上で最も適当なプロソル以外のプロシージャー
が必須となり、何が最適なプロシージャーなのかを話し合う議論とそれに付随するそのプ
ロシージャーは妥当なのかという議論が当然必須となってくる。またこの議論も内容の議
論に対して話し方そのものを決めているだけなので、費用対効果は低くなってしまう。今
までの話をまとめると、要するにプロソル外のことを話すのは、結論に結びつかない枠組
みの話に終始してしまい、内容について深く話せないということが起きやすいというリス
クがあるのだ。しかもさらに残念なことにそのリスクを乗り越えて、内容についてたっぷ
り話すことができたとしても、それがその話をプロソルで話した場合よりいい議論になる
という保証はどこにもないのだ。ぶっちゃけ提案したやつが目立つだけである。
だからといってそのようなリスクを取るべきではないと言っているのではない。むしろ
そのような姿勢は賞賛すべきものである。これだけ多くの人が参加し、長年の歴史をほこ
る discussion 界に皆が理解し、問題なくすすめることができるプロシージャーが一つしか
ないというのは悲しい事実であると個人的には考える。だからこそディス会全体の多様性
と可能性を広げようとするそのような試みはとても大切である。しかしながらそれをやる
には、導入する側としてはプロソルのオピシを作るよりはるかに時間のかかる下調べと、
それを短い時間でわかりやすく伝えるだけのプレゼンの練習、そしてなぜそれを導入する
ことが必要なのかという明確な理由を考えることが必要になってくる。また、ほかのメン
バーにも、説明の段階で、それが乗ってもいいと思えるほどしっかり練られているものか
を判断する判断力と、もしダメだと感じたらより良い結論を得るために早い段階でそれは
やるべきではないと指摘する勇気、またよいと感じたら、全力でそれを理解し、より良い
結論に導こうとする姿勢をもつことが必要になってくる。
今回に関して言えば室井にはなぜそれをやらなくてはいけないのかという理由と、どの
ように話すべきかという具体的方法をしっかり練ってくるという部分が欠けており、テー
ブルメンバーとしても室井の提案を本当に必要でかつ、本当に話すことができるのかと考
えることなしに提案に乗ってしまったことが、問題が起きた原因だと思う。ただこれにめ
げることなく、今回の反省を活かしつつ、これからも同じような試みを続けて、ディス界
でいつかプロソルと並ぶようなものを作り上げていってほしいと思う。偉そうに言ってい
るが私はそのようなものを作り上げることはできなかったし、いつからかプロソルの利便
性に迎合してしまっていた。だからこそ君たちはそうはならないで欲しいし、常にチャレ
ンジし続けて欲しいと思っている。