Japanese/American Symposium on Healthcare

米国弁護士が見た米国医療事情
Michael J. Jordan, Esq.
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内容
• 1. 病院と勤務医の関係
• 2. アカウンダブル・ケア・オーガニゼーション
(Accountable Care Organizations;ACO)とは
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勤務医に関する内規
病院理事会の任務
医師に対して
--当病院での診療資格の付与
--医局員として迎え入れるか
どうかの決定
--診療資格の剥奪
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内規によって勤務医に対する
措置、勧告、職務などが規定されている
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医師に対する検討措置
患者の健康に影響を与える、あるいは与える可
能性があり、
その病院での診療特権に影響を与える、ある
いは与える可能性のあるような
医師の適性や行動面に問題が生じた場合、
検討し必要な措置を講ずる.
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勤務医の種類
• *Active: 当院での診療活動や役割に積極的な医師
• *Courtesy: 当院のスタッフに名を連ねるが当院活動には
Activeスタッフほど関わっていない医師
• *Associate: 当院の緊急ニーズのため一時的に診療特権を付
与された医師
• *フェロー
• *インターン/ レジデント
• *名誉スタッフ
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是正措置
1. 調査の要請
2. 調査
3. 医師管理委員会
(Medical Executive Committee)
4. 病院理事会
5. 合同審査委員会
6. 聴聞会
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聴聞会メンバーの任命
調査対象となった医師と利害が対立しない
中立な立場の複数の医師で構成
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審問官
• 外部の専門官で、弁護士がよくその任に就き
聴聞会での手続き上の問題を解決する
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異議申し立て
• 大抵は病院理事会に提示される
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緊急診療特権取り消し措置
• 患者の安全に危険が差し迫って いると判断
された場合
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ピア・レビューに関する州制定法
• ピア・レビューに関する全書類は機密管理さ
れる
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医師の問題行動に関する
論争
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明確な定義付けの難しい内容
問題行動とは?
a) 下品な言葉
b) 性的表現
c) 人種や民族を差別するようなジョーク
d) 切れる
e) 安全確保を怠る
f) 威圧的行動
g) 病院の方針を無視する
以上全ては病院やナーシングホームでの
患者安全に繋がる
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ジョイント・コミッション
(医療施設合同認定機構)での定義
・激しい言葉遣いや身体的威嚇
・任務遂行の拒否や非協力的態度
・質問、電話や呼び出しへの応答拒否
・相手を見下したような言葉遣いや
・声の調子
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米国医師会の定義
問題行動とは
「・・・性的やその他の嫌がらせ、あるいは言語・非言
語的な行為でQOLや患者の安全に影響が生じる程
度にまで相手を傷つけたり怯えさせるような、いか
なる虐待行為を意味する」
不適切行動
「・・・不当な行為で、品位を落としたり侮辱的であると
合理的に解釈できる行為を意味する」
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これは問題なのか?
医師及び看護管理職13,000名を対象に米国医師エ
グゼクティブ学会 (The American College of Physician
Executives) が実施した調査によると、回答者97%が
プロらしからぬ感情が爆発した言動や過度に感情を
表す行為に曝された経験をしている.
また回答者の48%は看護師も医師も同様な行為で非
難されると回答したが、45%は医師が最も非難され
るとした.
Source: Amednews.com (American Medical News,
November 16, 2009)
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これは問題なのか?
医薬品の安全使用を目指す米国の非営利団体ISMP
( Institute of Safe Medication Practices)の調査結果
(2003年)
4%
43%
48%
88%
79%
明白な身体的虐待を受けた
相手を威嚇する身振りや表情を目撃した
言語的虐待を受けた
職員が侮辱的な待遇を受けた
質問や電話への応答を拒否したり
意図的に遅らせたのを目撃した
Source: Sandra Kendrick, Disruptive Physicians, Trustee Magazine,
November, 2009
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これは問題なのか?
米国医師エグゼクティブ学会 (The American
College of Physician Executives) が実施した
調査によると、回答者の70%が医師の問題行
動は大抵同一人物であるとしている.
Source: Med Surge Nursing, April 1, 2005
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これは問題なのか?
米国医師の5%が問題行動を起こしていると推
定される.
Source: Physician Executive Journal, January 1,
2008, American College of Physician
Executives.
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問題行動の原因
1.
2.
3.
4.
疾患
疲労
ストレス
人格障害
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ジョイント・コミッションは行動規範の作成と
コアコンピテンシー(中核能力)の評価実施を求めている
1. 対人/コミュニケーションスキル及びプロフェッショナリズム
2.容認できる行動と容認できない行動を明確
にした行動規範及び問題行動を管理するプロ
セスを確立しなければならない
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匿名報告は可能か?
ジョイント・コミッションの場合、問題行動に関する情
報収集に様々な手段を認めており、匿名報告
でも可能としている.
一方、米国医師会の規範によると匿名報告は
認めておらず、いかなる苦情も署名付きの書
面で行うこととしている.
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医療質改善法( (HCQIA)の効果
HCQIA は病院側が以下の条件を満たしている
場合、民事責任を問わないこととしている:
・ 医療の質改善に対して合理的な行動を起こ
した
・ 事実収集・確認の合理的努力を行った
・ 当該医師に対して公平な通知と聴聞会の
手順を実施した
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HCQIA法の司法的解釈は?
証拠の優位性による反論がない限り、病院側
が医師に対する措置検討過程を踏襲してい
れば病院側は免責基準に合致するとされる.
本法の「合理性」に関する基準は、主観的にみ
て誠実で公正な取り扱いが行われたか否か
ではなく、あくまで客観的に合理的段階を経
たか否かで判断する.
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全米医師データバンク
• 診療特権剥奪などの措置を受けた場合は報
告義務がある
• 病院及び保険会社は報告内容を閲覧できる
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医学界ではどんな議論が生じているか?
• ピアレビューでの悪い評価を恐れるあまり、
医師は病院のやり方を批判できなくなってい
るのではないか?
• 内部告発ができにくくなっているのではない
か?
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アカウンタブル・ケア・オーガニゼーション
• 患者保護及び医療費負担適正化法の一環
• 最高裁判決で違憲とされなかった
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質の高いケアへの動機づけ
アカウンタブル・ケア・オーガニゼーション(ACO) とは病院
と医師が協力しながらコスト削減に努めなが
ら質の高いケアを提供する仕組みである
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メディケアとは
65歳以上の高齢者を対象とした連邦政府管掌
保険
パートA 病院入院費用
パートB 医師の診療費及び外来治療費
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出来高払い
過去のメディケア制度での医療費支払い体系
は出来高払いが中心だった。つまり医師や病
院は検査や治療を行えば行うほどもうかる仕
組みだった。
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メディケア制度における
質のベンチマーク
ACOの仕組みを取り入れたからと言って出来高払い
が完全になくなってしまうわけではない。コスト削減
をしながら質の基準に合致すれば政府からボーナ
スが支払われる仕組みであるため、財務的にもメ
リットがある。受け取ったボーナスはACO組織の中
で分配する。
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医師側の動機づけとは
• ACOによって様々な形態の医療従事者(プラ
イマリーケア、病院、在宅ケア等々)が共通の
組織の中で協力しやすくなる。そのため患者
ケアがより調整しやすく管理しやすくなる。
• ACOに加われば医師も先に述べたボーナス
を受け取ることができるので財務的にも有利
である。ACOに加わらない独立した医師はこ
の競争に太刀打ちできにくくなる。
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ACOが質の基準を満たさなければ
どうなるか?
仮にACOが質の基準を満たさなくても、出来
高払いの償還は受けることができる。しかし
特殊医療機器の導入やスタッフ増員など質
向上に必要な投資が行いにくくなる。
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医師とACOは契約関係
• 医師個人としてある一定の基準を満たさなけ
ればならない。もし基準を満たせなければ契
約が打ち切りになる可能性がある。
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将来は不確定
• ACOがどのような道を辿るかはまだまだはっ
きりしない
• 今後医師が個人での診療活動継続を諦め、
ACOの中で診療行為を行うようになると、個
人開業医の数はさらに減少するかもしれない。
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