運動・スポーツのもつ力で、 人と人、組織と組織をつな ぎ、元気なまちを創る

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NPO法人かなざわ総合スポーツクラブクラブマネジャー
健康運動指導士 竹井早葉子氏
NPO 法人かなざわ総合スポーツクラブは、健康運動
指導士・竹井早葉子氏らが設立した総合型地域スポー
ツクラブである。地元大学等と連携して陸上競技など
多くの教室事業、イベントを展開するとともに、「バ
サック体操」による健康・体力づくりを推進。運動・
スポーツを通じた元気なまちづくりをめざしている。
クラブは、現 在クラブマネジャーを
務 める 健 康 運 動 指 導 士・竹 井 早 葉
子 氏、 金 沢 青 年 会 議 所 や 大 学 関 係
者、スポーツ少年団の有志など、「子
どもたちの健 全 育 成を市 全 域で展 開
しよ う 」という 同 じ 志 を もつ人 た ち
が集まって設立された。
竹 井 氏 は、 平 成 元 年に資 格 取 得
し た 健 康 運 動 指 導 士の第 1 期 生。
「 社 会 体 育 がし たい」と 大 学 卒 業 後
小学生 53.4%
(7 人)
川 県 高 松 市の健 康 体 育センターで5
個人→集団→組織→組織+組織とな
個 人 ができ る 活 動には 限 り が あ る。
中学生 7.1%
年 間 指 導 し た 後、 結 婚 して 金 沢 市
(18 人)
ることで、「1+1は3にも4にも な
に順天堂 大 学 大 学 院で学び直し、香
(135 人)
高校生
2.8%
へ。 子 育て を し ながら、フリーで 運
28.5%
る」。 竹 井 氏は「 総 合 型クラブは、人
(72 人)
動 指 導や大 学の非 常 勤 講 師 をしてい
成人
と人、組 織と組 織 をつなげる役 割 を
幼児 8.3%
た。 年に女子も参加しやすいスポー
(21 人)
たい」と考 えている青 年 会 議 所の人た
考 えていた。
ブの加 入には入 会 金がなく、月 会 費
きるイベントの開催などである。クラ
の各 種 定 期 教 室 と、だれでも 参 加で
もつ」と言う 。
石 川 県 金 沢 市 に あ る「 NPO 法
人 かなざわ 総 合スポーツクラブ」
(以
ちに出 会い、これがきっかけでクラブ
制 。 会 員 は、 登 録 して 参 加 す る 定
ツ少 年 団 を 設 立したが、より 幅 広い
下、「クラブ」)は、日 本 体 育 協 会の
設 立 が 具 体 化 し た。 理 事 には、 体
期 教 室の月 会 費( 平 均 約4000円 )
スポーツに触れる機 会をつくりたいと
育 成 指 定クラブとして2年 間 活 動し
育 系 以 外のさまざまな業 界・業 種の
を 負 担 す る。 定 期 教 室の登 録 会 員
型 地 域スポーツクラブで あ る。 金 沢
市( 人口約 ・5万 人 )
には、現 在
の総 合 型クラブが あ るが、 最 初につ
14
年、「 社 会 貢 献 を し
年に設 立 された 総 合
人が多く 就任している。
数は、
10
た 後、 平 成
クラブのミッションは、 みんなでス
ポーツを「 する、みる、ささ える」機
女 比はおおよそ半 分 ずつ。 年 齢 階 層
月末現在322名 。 男
く られたクラブで、 金 沢 市 および市
会を提供しながら、スポーツのもつ力
で見ると、 小 学 生が半 数で最 も 多い
26
20
46
にしている。
年
周 辺のいわゆる金 沢 圏 域 を 活 動 範 囲
で 元 気 な ま ち をつく ることで あ る。
金沢市初の総合型クラブ
「かなざわ総合スポーツクラブ」
図1● N
PO 法人かなざわ総合スポーツクラブの
年代別会員数
主 な 事 業 は、 幼 児 から 高 齢 者 ま
で多世代を対 象とした、週1回 開 催
16
運動・スポーツのもつ力で、
人と人 、組 織と組 織 を つ な
ぎ、元気なまちを創る
子どもを対象にした
「ランニング教室」。お話を伺った竹井早葉子氏
18
8
健康づくり 2015.4
年 度 予 算 額 )。 経
( 図 1 参 照 )。 クラブの事 業 費 は 約
1800 万 円(
常 収 入の8割 を 自 主 事 業 収 入で賄っ
ている。
地元大学と連携、
学生が教室の
企画・運営・指導に参加
者 対 象の「 初めての大 人のマラソン」な
ど2教 室 を 開 設 した。 ま た、 毎 年、
走 行タイムを 測 定し、速さなどを 競
㎝のギムニクボールをいすの上に置 き、
だ
えき せん
種 類の運 動で構 成されて
その上に座って座 位で行 う 。 全 行 程
分。
呼 吸 筋、3首( 首・手 首・足 首 )、腹
運動能力を効果的に刺激する
「バサック体操」を開発
約
竹 井 氏 は、 健 康 運 動 指 導 士 とし
て、 多 くの中 高 年の健 康づく りや疾
筋 な ど、 日 常 生 活 に 最 低 限 必 要 な
お り、 舌( 唾 液 腺 )、 眼 球 移 動 筋、
病 予 防に携わってき た。 そ う したな
能 力も刺 激 する。 それぞれの運 動は
育 施 設 な どを 借 りて実 施 してお り、
動プログラム」を 依 頼 されたのが きっ
室で、「 日 常 生 活の向 上に役 立つ運
随時組み込まれているのが特徴だ。
その他、 約
「かけっこ記録会」を実施している。
年に高齢者の転倒予防教
会 場の確 保 に 苦 労 す る と 言 う 。 竹
かけで、「バサック体 操 」を 開 発、 運
か、平成
井 氏は「いつでもランナーが安 全で快
動指導に取り入れている。
回 ずつ繰 り 返 す 。 教 室では、
ランニング、
バドミントン、
テニスのほか、
適、 楽 し く 走ることのできる環 境づ
バサック 体 操 を 週1 回( 約 分 /
回 )、 全7回 実 施 した 一 般 高 齢 者の
5~
約1・2mの大 きなボールを、集 団でス
くり・まちづくりにも取り組みたい」
ある「 走ること」、ランニングである。
このうち9教 室は、スポーツの基 礎で
を置く大学もある。 事業には、体育・
が5校 あ り、 教 育・スポーツ系 学 部
大 学 生 が 指 導メンバーとして活 躍
しているのも 特 色 だ。 市 内には大 学
コーディネ ーション
( C )の 頭 文 字 を
筋 力 =ストレングス
(S)、 調 整 力 =
サック 」は、 平 衡 性 =バランス
(
(竹井氏)として開発したもので、
「バ
して、身 体 を 改 善できるプログラム」
テップ、座位ステッピング、ファンクショ
定 値は、膝 関 節 最 大 屈 曲 角 度、2ス
状・痛みに改 善が見られた。 体 力 測
名の計
よ う 。 対 象 者 は 男 性 2 名、 女 性
膝 痛・腰 痛 予 防 教 室の事 例 を 見てみ
定 期 教 室 を 開 催 している。
ま た、バドミントンやキンボールなど
スポーツを 専 攻 する学 生 など、 多 く
とって名づけられた。 限られたスペー
ナルリーチ、 m障 害 歩 行、 長 座 体
名で、平均年齢は ・7歳 。
26
実 施 後 は日 常 生 活 にお け る 自 覚 症
前 屈の6項 目で有 意な改 善が見られ
礎 的な運 動パターンは、6~7歳ごろ
子 どもの健 全 育 成は、クラブ設 立
時からの中 心 課 題である。 人 間の基
運動の基礎的な動きを習得
幼児体操「バサック・キッズ」
タイルを 変 えることで子 どもや障 害
ベントに応 じて約
7種・
には、親 子や多 世 代で楽しむ教 室 も
の大 学 生 が 指 導メンバーとして 参 加
スで、 短 時 間で 行 うことがで き、ス
69
%を 学 生 が 占めている。 イ
)、
ある。
名
28
た(次頁・図2参照)。
学 生 対 象の「マラソン塾 」、 幼 児・小
ク 」、 幼 児 向 け「バサック・キッズ」、
きるのが特徴だ。現在、「高齢者バサッ
その約 半 数 は 学 生であ る。 か けっこ
小 学 生 向 け「バサック・ジュニア」、 障
歳 )が 参 加 す る が、
スタッフ
(
害 者が一 緒にランニングを 楽しむ「 春
塾 やマラソン塾 な ど、 学 生 が 企 画・
害のある人向け「バサック・スペシャル」
~
学 生 対 象の「かけっこ塾 」、 一 般 と障
年 秋に開 催
運 営・指 導 する教 室もあり、学 生の
風クラブ」など多 彩 。
予 定の「 金 沢マラソン」も 見 据 えて、
の4プログラムがある。
高 齢 者バサック体 操は、 直 径 約
キャリア教 育、 次 世 代の指 導 者の育
70
成の場にもなっている。
20
27
年 度から一 般 初 心
26
10
Ba
のある人など、いろいろな人に展 開で
46
名のボランティア
している。 現 在、登 録 指 導 者は
だが、
10
10
ランニング教 室は、一 般( 高 校 生 以
上 )対 象の「 大 人のマラソン」、 小・中
60
分 間のステップ 運 動 も
ローとキャッチの巧みさ、速さで競 う
定 期 教 室 は、 金 沢 市 営 陸 上 競 技
場・総 合 体 育 館、大 学・中 学 校の体
う 子 どものイベント「 mダッシュ王 」
34
バサック体 操は、「だれでも 無 理な
くでき、より多 くの運 動 能 力を刺 激
教 室 事 業の特 色 は、 陸 上 競 技 種
目が多いことである。 平 成 年 度は
30
と話す 。
22
キンボールといったニュースポーツなど、
26
50
26
より 多 くの人たちにマラソンに親しん
でもらおうと、
健康づくり 2015.4
9
10
25
63
17
て 開 発 した 約
分 間の、 限られたス
市 内の幼 稚 園で幼 児 体 操 教 室(3~
5歳 児 )を 指 導している。 この園で定
までに習 得 され、ゴールデンエイジの
ペースでで き る 幼 児 体 操で あ る。 裸
期的に実施する園児の健康生活調査
は
多 様な運 動 経 験は、運 動 能 力だけで
足で円 形に走 り ながら、 合 図に従っ
60.0
55.3
だし
なく、人 間 性の形 成などにも影 響 す
月実施)
によると、園 児の両
て、動 物などの「まねっこ歩 き 」や「な
手 握 力、 跳 び 越 し く ぐ り、 m走、
年
ると 言 われる。 竹 井 氏は「 現 代の子
り き り 体 操 」、 動 的ストレッチ、コア
歳、 同
歳 )と5歳 児( 同 男 児5・
4歳 児( 平 均 年 齢 男 児4・
女 児5・
図3●運動指導を受けている5歳児の体力・運動能力スコア
(対全国平均 =50)
作を行 う 。
歳、同女児6・ 歳)
で、全項目が
全国平均を上回っている
(図3参照)。
立ち幅跳び
立ち幅跳び
年から継 続して
)
63.2
56.0
竹 井 氏は、平 成
ファンクショナルリーチ(
(
どもたちには時 間、 空 間、 仲 間の3
立ち幅跳び、ボール投げ、1日歩数は、
2ステップテスト値
10
04
25
26
93
98
25m 走
25m 走
56.8
ボール
投げ
57.0
50.1
ボール
投げ
40.0
52.5
事業後
ぐ
トレな ど を す る。 短い繰 り 返 しで、
1.6
08
30.0
30.0
跳び越し
くぐり
50.0
1 日歩数
54.3
40.0
33.9
30.8
50.3
53.1
跳び越し
くぐり
50.0
1 日歩数
0
き
間が欠けている」と危 惧している。
1.8
45
座位ステッピング
(回)
32
両手握手
63.0
<女子>
両手握手
62.4
60.0
<男子>
13
33
(*:p<0.05)
種の基 本 動
テンポよく、 連 続 して
事業後
事業前
「バサック・キッズ」は、保 育 士が開
発した運 動プログラムをベースに、竹
15
34
0.8
133
膝関節最大屈曲
(度)
35
1
134
事業前
事業後
事業前
29
ファンクショナルリーチテスト
座位ステッピングテスト
1.2
135
36.3
33.9
31
0.4
131
1.4
136
2ステップテスト
膝関節最大屈曲角度
(左右平均値)
1.5
1.3
0.6
134.4
132
37.5
37
36.5
36
35.5
35
34.5
34
33.5
cm 33
32.5
32
30
0.2
131.6
130
事業後
事業前
129
井 氏 自 身の子 育て経 験なども加 味し
図2●高齢者バサック体操実施前後の変化(n=28、平均年齢69.7±3.6歳)
運動生理の基本を押さえながら
経験から学び、 応用力をつける
竹 井 氏は、幼 児から高 齢 者までさ
ま ざ ま な 対 象 者に、 運 動・スポーツ
の指 導 を して き た。「 求 められれば
『 で き ない』と 言 わ ず、 学んで 臨 む 」
ことで、 力 をつけてき たと言 う 。 各
種 資 格 も 取 得 し た。 自 身の育 児 経
験、アスリート(バドミントン)として
のトレーニング経 験やけがの経 験など
を 含 めて、 すべての経 験 が「 力 」につ
ながっていると 述 懐 す る。 ま た、 経
験の積み重ねに加 えて、運 動 生 理 学
を き ちんと 学んでいたことは 指 導や
プログラムの作 成に大 き な 影 響 を 与
えており、効 果の出せるプログラムづ
くりなどに役立っているという 。
竹井氏は、健康運動指導士として、
「これからは、 障 害や 疾 病 な どでよ
り 制 限の大 きい人や、より 個 人 差の
大 き な 集 団の指 導に挑 戦 したい」と
話 す 。 健 康 運 動 指 導 士 は、「やって
みよ う!」とトライ す る 気 持 ち を も
ち、エビデンスを重 視 するという 視 点
を忘れずに、学び続けることが大切 。
広い視 点で「ヘルスプロモーション」を
考えてほしいと期待している。
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