AFTA と経済統合の深化 国際貿易投資研究所 助川成也 1.自由化に向け加速化・深化をしてきた AFTA 92 年の欧州連合(EU)や北米自由貿易協定(NAFTA)の誕生の動きに刺激された ASEAN は、独自の自由貿易地域「ASEAN 自由貿易地域(AFTA)」創設に動いた。AFTA は当初、 93 年から関税削減を開始し、2008 年までに 0~5%以下を実現することが目標であった。 しかし、アジア通貨危機など ASEAN の求心力低下に直面し、加速化・深化した。最終的 に ASEAN 先発加盟国は 2010 年、後発加盟国は 2015 年に、それぞれ関税を撤廃すること に目標を変えた。その結果、今や AFTA は、例外品目が非常に少ない、自由化水準の高い アジアを代表とする FTA となった。 2.ビジネスニーズを鑑み、ルールの改善を図る AFTA ASEAN の AFTA 改善に向けた動きは、関税削減の加速化のみならず、その規則にも及 んでいる。AFTA は原産地規則について「累積付加価値率(RVC)40%以上」を用いてき た。ASEAN は 2008 年にこの規則を RVC と「関税番号変更基準(CTC)」の「選択性」に した。更には、AFTA で仲介貿易の利用を認めるとともに、「Back to Back 原産地証明書」 の導入(域内国で AFTA 特恵対象品目を在庫として持ち、必要な時に必要なだけ特恵関税 で輸出)、RVC20%以上 40%未満の品目で一部累積を認める「部分累積」の導入、仲介貿 易でも利用し易いよう原産地証明書上での FOB 価格記載要件の緩和、等ビジネスニーズを 鑑み、改善を続けてきた。現在、ASEAN は、「自己証明制度」の導入を目指し、パイロッ トプロジェクトを進めている。これら ASEAN の取り組みは、AFTA の認知度や利用率の 向上に繋がるとともに、ASEAN ルールが東アジア域内の FTA に伝播している。 3.AFTA から AEC へ ~経済統合の深化へ~ ASEAN が AEC に踏み出したのは、アジア通貨危機と投資受入国としての中国の台頭に 伴う危機感からである。1997 年 12 月の「ASEAN ビジョン 2020」で、2020 年までの域内 中期目標として、「モノ、サービス、投資の自由な移動、資本のより自由な移動」を目指す ことを打ち出した。しかし、現在、AEC は「共同市場」を目指すわけではなく、AFTA を 核にサービス、人の移動等で部分的自由化を目指す「FTA プラス」である。例えば、サー ビス分野の投資(第 3 モード)で目指すのは、外国資本の完全自由化(100%)ではなく、 70%迄の自由化である。また、対象分野も部分的なものにとどまる懸念がある。人の移動 の自由化は、熟練労働者や相互承認協定(MRA)をベースにした資格保有者に限られる。 現在、ASEAN が目指す AEC は部分的統合に過ぎないが、次の 10 年に向けたロードマ ップ「AEC2025」では、一層の統合の深化が期待される。
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