テニスにおけるオンコートトレーニングのコントロール(ISSUE 32,APRIL

テニスにおけるオンコートトレーニングのコントロール
By Miguel Crespo (ITF Development Officer) and Machar Reid (ITF Assistant Development Officer)
(木内
真弘
訳)
イントロダクション
スポーツ科学は、トレーニングの質と量を共に最適化するという観点から、トレーニング
のプロセス全体を通じたコントロールの必要性を強調している(Viru and Viru, 2001)。歴史的
に、テニスコーチは陸上、スイミング、サイクリングやチームスポーツ(フットボール、バ
スケットボール)など他の種目のコーチと比較すると、トレーニングにおいての多様なコン
トロールの利用という点では大きく立ち遅れてきたと言わざるを得ない。言いかえれば、他
種目のコーチはアスリートが最高のパフォーマンスを発揮するために必要なツールを備え、
疲労レベル、傷害予防、オーバートレーニング/オーバーリーチング、バーンアウトを回避す
るすべを知っていると言ってもよい(Calder, 2003)。
トレーニングをモニタリングする際には、コーチはトレーニングやストレスに対するプレ
ーヤーの適応能力や反応の仕方は、個人により異なることを認識すべきである(インディビ
ジュアライセーション)。練習やストレスに対する個人特有の反応をトレーニング時のみなら
ず、試合時やトレーニング以外の時間でモニタリングを行うことはプレーヤーのパフォーマ
ンスを最大限に伸ばすために不可欠となる(Wilmore and Costill, 1994)。
この小論文の目的は2つある。日常の練習においてコーチがトレーニングをコントロール
することの重要性を示す事と、数種類のコントロールの実例を紹介することである。
オンコートトレーニングのコントロール
コーチは、トレーニングセッション後のプレーヤーの疲労感と無力感の違いを理解しなけれ
ばならない。前者は、トレーニング負荷に対するノーマルな適応反応の結果からくるもので
あり、後者はトレーニングに対する不適応反応のサインと成るものである。
多くのコーチやプレーヤーは、トレーニングセッションの記録やモニタリングに一貫性を
持って取り組めていない。しかし、多様なトレーニングコントロールの記録を日常的につけ
ることは、トレーニング負荷やプレーヤーの適応力を的確に判断するためには不可欠となる。
トレーニングをコントロールすることによって得られる様々な意義を 14 ページの表に示し
た。
結論
効果的なトレーニングには、適切なボリューム(量)と質が求められる。このバランスが崩
れるとパフォーマンスの低下や傷害の発生が起こる。つまり、最高のパフォーマンスを発揮
させ、傷害発生率を減少させることを目的にトレーニングをコントロールすることがキーポ
イントとなる。ここに詳細に紹介するトレーニングコントロールは、コーチがその目標を胸
にトレーニングセッションやアスリートの経過をどうモニターすべきかを示す例である。
ITF Strength and Conditioning for Tennis などのテキストを参照する事を読者に推薦する。
何をコントロールする?
どのように?
実用例
トレーニング前の状態
プレーヤーによるセルフテスト
(Calder, 2003)
プレーヤーによるセルフテストま 睡眠の質、朝の安静心拍数と体重、エネルギーレ
たはコーチからの質問
どう感じているか?
気楽に設問に答える
ベル、自己の自信度、自己効力感、筋肉痛、トレ
ーニングに対するモチベーションと情熱、仕事や
勉強に対する姿勢、健康、傷害、食生活、食事、
外部ストレッサー(家族、友人、メディア、勉強
など)
トレーニングを通じて
コーチによる観察
ダイレクトコミニュケーション: プレーヤーがコ
ーチに伝えた事柄
ボディーランゲージ: 表情、顔色、姿勢、フラス
トレーションのサイン
パフォーマンス: 技能の低下、加速力の低下、足
取りの重さ、判断力や反応時間の低下
心理的: モチベーション、集中力の低下、異常な
攻撃性、自信の低下や攻撃性表出後の様子
ワークアウト強度
心拍計
心拍計により、プレーヤーとコーチは運動強度が
セッションの目標に合うものかどうかを確認でき
る。またプレーヤーにタイムリーなフィードバッ
クとモチベーションを提供する。
¾ 85% Maximum Hart Rate (MHR): 無酸素乳酸シ
ステム
¾ 55-65%(MHR): 有酸素システム
血中乳酸値分析
運動強度とトレーニング適応度をモニタリングす
る観血的手法。トレーニング中(ゲームやドリル
間)やトレーニング後に計測
プレーヤーの評価
プレーヤーによるセッションの難易度(身体的負
荷)やトレーニング姿勢の主観的評価
評価法 5= 非常に困難/優秀
4= 困難/良い 3= 普通/
まあまあ 2= 楽だ/悪い 1= 非常に楽だ/非常に悪い
コーチの評価
コーチによるセッションの難易度(身体的負荷)
やトレーニング姿勢の主観的評価
評価法
5= 非常に困難/優秀
4= 困難/良い
3= 普通/まあまあ 2= 楽だ/悪い 1= 非常に楽だ/非
常に悪い
ストロークパワー
レダーガン
テクノロジーの進歩により、コーチはストローク
(グランドストロークやサーブ)時のラケット速
度の向上の計測が可能 (Quinn and Reid, 2003)
nd
ボールの 2 バウンド
コートやバックフェンスにラインを引くことによ
り、ストロークパワーに対するシンプルで視覚的
なフィードバックをプレーヤーに提供する
(ITN,
2004)
ストロークの正確性/安定性
ターゲット
ターゲットやゾーンを設定し、ストロークの正確
性/安定性のコントロール(指標)とする。
ネットを越えたボールの数
ネットを越えた/かかったボールの数や、特定のタ
ーゲットにヒットするために要したボールの数を
カウントしてストロークの正確性 /安定性をモニタ
リングするためのコントロールとする。
ストロークテスト
インターナショナルテニスナンバー ITN テスト(C
SSR 29, 2003; www.internationaltennisnumber.com )
ストロークプロダクション
ソフトウエアによるビデオ分析
ビデオ分析専門プログラムの利用: SiliconCOACH
(www.siliconcoach.com), NEAT (www.neatsys.com),
Mostill
SE
(
www.simi.com
( www.internetsportsacademy.com
) ,
) ,
VI
Swinger
(www.swinger.com.au ), Dartfish (www.dartfish.com)
の利用により、ストローク技術の分析と向上を促
進する(Knudson and Elliott, 2003).
戦術的パフォーマンス
戦術表記ソフトウエア
手書き、またはコンピュータ表記による分析シス
テム(ASE など)を用いた戦術研究や、練習や試
合における有用な統計の利用
(Hughes and Tillin,
1995).
戦術面のビデオ分析
ビデオ映像 /リプレイによるプレー戦術パターンの
決定
心理的要因
パフォーマンスの心理的分析
手書き、またはコンピュータ心理分析システムソ
フトウエアによる試合や練習でのプレーヤーのメ
ンタルパフォーマンスの分析が可能 (Slder, 2001).
心理面のビデオ分析
マッチプレー中の“ボディランゲージ”やメンタ
ル“ストレングス”などのビデオ分析による評価