MTDDCランチセッション 弁護士が教える Web制作の受注トラブル回避法

MTDDCランチセッション
弁護士が教える Web制作の受注トラブル回避法
講師紹介
弁護士 藤井総(Fujii Sou)
弁護士法人ファースト法律事務所代表
2005年 司法試験合格
2006年 慶應義塾大学法学部法律学科卒業
2007年 弁護士登録
2015年 弁護士法人ファースト法律事務所開設
使命(ミッション)
「世界を便利にしてくれるサービスを生み出すIT企業をサポートする」
SIer、パッケージソフト、ASP、受託開発、ネット関連サービス等、
上場企業を含めて50社以上(90%以上がIT企業)と顧問契約を結び、
IT企業に特化したリーガルサービスを提供している
MT東京顧問弁護士
書籍紹介
受注契約はトラブルが多い
プログラム
1 契約成立のトラブル
2 仕様のトラブル
3 検査・瑕疵のトラブル
4 契約外のトラブル
1 契約成立のトラブル
社内決済上、見積もりが確定するまでは、契約書を取り交わ
すことはできないと言われた。
しかし、仕様を確定しないと、確定的な見積もりは出せない。
そこで、何度も打合せをして、発注者の要望を整理し、こちら
からも提案を行って、ようやく仕様を確定して、確定的な見積
もりを出したところ、予算オーバーなので発注はしないと言われ
た。
仕方ないので、打合せ分の費用を請求したところ、交通費以
外は払わないと言われた。
1 契約成立のトラブル
契約は、口頭の合意で成立する
(でも)
契約書がないと、裁判所は
契約の成立をなかなか認めない 1 契約成立のトラブル
契約が成立していなければ、
委託料は請求できない
(でも)
「契約締結上の過失」によって、
損害賠償を請求できる場合がある
1 契約成立のトラブル
契約締結上の過失は認められにくい
認められたとしても、「過失相殺」で
賠償額が減額される 1 契約成立のトラブル
(理想としては)
作業の着手に際して、契約書を結んでもらう
(それが難しいなら)
せめて注文書は交付してもらう
(それすらも難しいなら)
記載を工夫した内示注文書を交付してもらう
1 契約成立のトラブル
内示注文書
(前文)
以下の内容にて本件業務を注文致したく、取り急ぎ本書面をもちまして、有償での作業に着
手頂けますよう、宜しくお願い致します。
(特記事項)
①本注文書は、当社と貴社間で締結予定の本件業務に係る基本契約書に定める個別契約
を申し込むものです。
②本注文書に対して、貴社が承諾の通知(書面又は電子メール)をすることをもって、承諾とし
ます。
③本注文書において未確定の事項については、本注文書発行後*日以内を目処に確定する
よう、当社貴社双方誠実に協議するものとし、必要に応じて再度注文書を発行するものとしま
す。
④協議の結果、当社が本注文書を撤回する場合は、それまでの間に貴社が実施した本件業
務に係る費用の額について協議の上、これを精算するものとします。
2 仕様のトラブル
仕様を決めるのは難しい
(しかし)
仕様を決めておかないと
5つのトラブルが起きる
2 仕様のトラブル
① 当初の代金を支払ってもらえな
(なぜなら)
仕事の完成が認められないから 2 仕様のトラブル
② 追加代金も支払ってもらえない
(なぜなら)
仕様の(追加)変更が認められないから
2 仕様のトラブル
③ さらに作業を行わないといけない
(なぜなら)
仕事の完成が認められないから
2 仕様のトラブル
④ 損害賠償を請求される
(なぜなら)
契約に違反したことになるから
2 仕様のトラブル
⑤ 契約を解除される
(なぜなら)
契約に違反したことになるから
2 仕様のトラブル
仕様を決める5つのポイント
2 仕様のトラブル
① 具体的に列挙する
2 仕様のトラブル
② 含まれないことも列挙する
2 仕様のトラブル
③ 現場の人間に聞く
2 仕様のトラブル
④ 互いに協力する
2 仕様のトラブル
⑤ 決まっていないことは、
決まっていないと書く
2 仕様のトラブル
受注者としては、
なるべく狭く、少なく、小さく
2 仕様のトラブル
仕様変更のポイント⇒
「変更」になるかどうか、
その都度明確にして、証拠に残す
3 検査・瑕疵のトラブル
制作物に瑕疵があると、
受注者はどんな責任を負うのか
3 検査・瑕疵のトラブル
債務不履行責任
(仕事が未完成の間の責任)
3 検査・瑕疵のトラブル
① 無償で修正
② 代金支払留保
③ 損害賠償
④ 解除
3 検査・瑕疵のトラブル
仕事が完成した
=最後の工程まで終わった
3 検査・瑕疵のトラブル
瑕疵担保責任
(仕事が完成した後の責任)
3 検査・瑕疵のトラブル
① 無償で修正(引き渡しから1年)
② 損害賠償(引き渡しから1年)
③ 解除(重大な場合に限り)
3 検査・瑕疵のトラブル
瑕疵⇒
契約で決められた品質
または通常有すべき品質を
有していない
3 検査・瑕疵のトラブル
「検査で瑕疵が見つからなければ検査合格」
とする契約書が多い
検査で瑕疵が見つかった場合
⇒債務不履行責任で対応
検査合格後に瑕疵が見つかった場合
⇒瑕疵担保責任で対応
3 検査・瑕疵のトラブル
法律の原則を契約書で修正
3 検査・瑕疵のトラブル
検査の壁をどう突破するか
3 検査・瑕疵のトラブル
① 瑕疵の範囲
「瑕疵とは、仕様書その他仕様につい
て定めた書面との不一致をいう」
3 検査・瑕疵のトラブル
② 検査方法
「検査方法は、受注者所定の方法に
よる」
3 検査・瑕疵のトラブル
③ 検査期間
「検査は、納入後*日以内に行う」
3 検査・瑕疵のトラブル
④ 不合格通知
「具体的かつ合理的な理由を示して
検査に不合格となった旨通知を行う」
3 検査・瑕疵のトラブル
⑤ 合格みなし規定
「検査不合格通知が検査期間内に行われな
かった場合、検査不合格通知に具体的または
合理的な理由が示されていなかった場合、
または制作物の利用が開始された場合、当該
検査期間の経過をもって、制作物は検査に合
格したものとみなす」
3 検査・瑕疵のトラブル
⑥ 修正作業の期間
「修正作業は合理的期間内に行う」
3 検査・瑕疵のトラブル
⑦ 修正作業の内容
「検査不合格時に受注者が行うべき
作業は、瑕疵の修正に限る」
3 検査・瑕疵のトラブル
瑕疵担保責任を可能な限り
軽くする
3 検査・瑕疵のトラブル
① 瑕疵担保責任の期間
「検査合格から3ヶ月」
3 検査・瑕疵のトラブル
② 過失責任
「当該瑕疵が受注者の責に帰すべき
ものである場合」
3 検査・瑕疵のトラブル
③ 修正作業の期間
「修正作業は合理的期間内に行う」
3 検査・瑕疵のトラブル
④ 修正作業の内容
「受注者が行うべき作業は
瑕疵の修正に限る」
4 契約外のトラブル
他社提供サービスに障害があった
場合の責任は誰が負うのか
4 契約外のトラブル
サービス利用契約は発注者と他
社との間で結ばれている
⇒受注者は責任を負わない
4 契約外のトラブル
説明義務違反の責任を負う場合
はある
(そこで)
リスクの説明はしっかりと行う
4 契約外のトラブル
他社提供サービスに責任を
負わないことを確認する規定を
設ける
4 契約外のトラブル
「受注者が、本業務の履行の過程でまたは本業務の履
行に関連して、第三者の提供にかかるサービス(以下
「第三者サービス」という。)の利用を提案した場合、発注
者は、自らの責任で、当該第三者サービスを検討・評価
して、その採否を決定する。受注者は、第三者サービス
に関して、瑕疵その他不具合が存在しないことおよび今
後生じないことを保証するものではなく、発注者に対して、
上記提案時に、第三者サービスに瑕疵その他不具合が
存在することまたは今後生じるおそれがあることを知りな
がらまたは重大な過失により告げなかった場合を除き、
何らの責任を負わないものとする。」
4 契約外のトラブル
契約内容によっては、
他社提供サービスの責任を受注者が負う場合
がある
(そこで)
他社提供サービスに関する責任内容は、
他社所定の契約書や利用規約に合わせる 最後に
まとめと質疑応答