2010年 6月16日 1限 (8:50-10:10)

2010 年度 制御工学 II 中間試験 (模範解答)
1
2010 年 6 月 16 日
河合康典
2010 年度 制御工学 II 中間試験 (模範解答)
2010 年 6 月 16 日 1 限 (8:50-10:10)
注意:途中計算が解答欄に記入されていない場合は減点とする。
[問題 1] (配点 20 点)*学生の到達目標 (1)
下記の基本要素のボード線図を用いて,伝達関数
s + 10
のボード線図の概形を描け。
10s + 1
[問題 2] (配点 20 点)*学生の到達目標 (1)
1
√ のシステムに入力 u(t) =
伝達関数が G(s) =
s+ 3
sin t を加えたときの定常状態における出力 y(t) を求
[解答]
伝達関数は
めよ。
G(s) =
s + 10
= (0.1s + 1) ·
10s + 1
1
10s + 1
· 10(1-1)
1
,
10s + 1
G3 (s) = 10 と定義すると,G1 (s), G2 (s), G3 (s) はゲイ
ン曲線,位相曲線について次のような折点各周波数をも
つことがわかる。よって,G1 (s),G2 (s) ,G3 (s) を重
と分解できる。G1 (s) = 0.1s + 1, G2 (s) =
ね合わせればボード線図が図 1-1 のようになる。
伝達関数
T
1/T
0.2/T
5/T
G1 (s)
0.1
10
2
50
G2 (s)
10
0.1
0.02
0.5
40
[dB]
20
G1
G3
となる。t → ∞ において,e−
1
ejt
y1 (t) = √
3+j
G
G2
Im
!
101 102
G3
G
−90
y1 (t)
G2
=
=
−180
−270
10−2 10−1 100
(2-3)
1
__
π
6
_
Re
F3
図 2-1: 1 + j の位相
G1
[
]
103
O
90
(2-2)
_
F3 +j
1
180
0
→ 0 となるので,
となる。
−40
−60
10−2 10−1 100
√
3t
ここで,図 2-1 から
√
1
1
√
= − ( 3 + j) = − π
6
3+j
0
−20
[解答]
仮想的な複素数の入力 u(t) = ejt = cos t + j sin t を
考える。このとき,出力は
1
y1 (t) = L−1 G(s)
s−j
1
1
√
= L−1
s+ 3s−j
1
1
−1
√ −
√
= L−1
s+ 3 s−j
3+j
√
1
= − e− 3t − ejt √
3+j
√
1
1
ejt − √
e− 3t
= √
(2-1)
3+j
3+j
1
1
1
1
√
e−j 6 π ejt = ej(t− 6 π)
2
3+1
1
1
1
cos t − π + j sin t − π
2
6
6
(2-4)
!
101 102
図 1-1: ボード線図
103
仮想的な入力の sin 成分だけ,すなわち虚数成分のみを
取り出せばよい。よって,y(t) は次のようになる。
y(t)
=
=
Im[y1 (t)]
1
1
sin t − π
2
6
(2-5)
2010 年度 制御工学 II 中間試験 (模範解答)
2
[問題 3] (配点 10 点)*学生の到達目標 (1)
伝達関数のベクトル軌跡の概形を始点,終点,通過
点の 3 つに注意して描け。ただし,通過点は 1 つ分かっ
ていればよい。
G(s) =
Im
!=0
s
√
s+ 3
図 3-2: ベクトル軌跡
jω
√
jω + 3
(3-2)
ゲイン
ω
|G(jω)| = √
2
ω +3
(3-3)
√
π
|G(jω)| = jω − ( 3 + jω) ≤
2
(3-4)
位相
0
√ =0
0+ 3
G(0) =
√
3=0−0=0
0−
(a) 伝達関数 G(s) の周波数伝達関数を求めよ。(分母
に複素数がないようにすること)
(c) 終点 (ω = ∞) と,終点に漸近する軌跡の角度を求
めよ。
(3-5)
(d) ベクトル軌跡が実軸と交わるときの角周波数 ω と
その交点を求めよ。
(3-6)
(e) ベクトル軌跡を描け。
[解答]
ω = 1 のとき
1
j
1
√ = √
=
2
1+3
j+ 3
|G(j)| =
G(j)
[問題 4] (配点 30 点 (各 6 点))*学生の到達目標 (1)
1
伝達関数 G(s) =
のベクトル軌跡
s(1 + s)(1 + 4s)
について下記の問いに答えよ。
(b) 始点近傍 (ω ≈ 0) の実部を求めよ。
ω ≈ 0 のとき
|G(0)| =
(3-7)
(a) s = jω を代入する。
G(jω)
√
j
√ = j − (j + 3)
j+ 3
π
1
2
1
− π= π= π
2
6
6
3
=
=
1
(3-8)
=
=
=
1
__
π
6
__
Re
F3
O
=
=
__
F 3 +j
Im
1
jω(1 + jω)(1 + j4ω)
1
jω(1 − 4ω2 + j5ω)
1
−5ω2 + jω(1 − 4ω2 )
−5ω2 − jω(1 − 4ω2 )
25ω4 + ω2 (1 − 4ω2 )2
−5ω − j(1 − 4ω2 )
25ω3 + ω(1 − 4ω2 )2
Re[G(jω)]
=
=
ω ≈ ∞ のとき
|G(jω)| =
=
=
(4-1)
(b) G(jω) の実部は
√
図 3-1: 3 + j の位相
G(jω)
!=
Re
(3-1)
[解答]
周波数伝達関数
G(jω) =
1
O
−5ω
25ω3 + ω(1 − 4ω2 )2
−5
2
25ω + (1 − 4ω2 )2
(4-2)
であることがわかる。よって, 始点近傍 ω ≈ 0 の
1
1+
√
3
jω
=1
jω − jω
π
π
− =0
2
2
(3-9)
実部は次のようになる。
Re[G(0)] = −5
(3-10)
これらから,始点は原点であり,終点は (1, 0) であ
る。また,その間の周波数では位相は, π2 を超えない
のでベクトル軌跡の概形は図 3-2 のようになる。
(4-3)
(c) 終点 (ω = ∞) のとき, すなわち ω が十分大きいと
き G(jω) は,
G(jω)
=
≈
1
jω(1 + jω)(1 + j4ω)
1
1
=
jω(jω)(j4ω)
4(jω)3
(4-4)
2010 年度 制御工学 II 中間試験 (模範解答)
と近似できる。ゲインは
|G(jω)| =
1
1
=
4(jω)3
4ω3
と な る こ と か ら,
(4-5)
終点 (ω = ∞) のゲインは 0
3
[問題 5] (配点 20 点)*学生の到達目標 (2)
図 5-1 のフィードバック制御系で,P (s),K(s) が次
式で与えられているとする。内部安定性を調べよ.
P (s) =
1
,
s2 − 4
s−2
s+4
K(s) =
(5-1)
すなわち原点 (0) が終点となる。
d
また, この時の軌跡の角度は,
G(jω) =
1
=
4(jω)3
1
= −270°
j3
r +
(4-6)
K(s)
−
u
+
+
y
P(s)
となり, −270°の角度で終点に漸近していく。
(d) ベクトル軌跡が実軸と交わるとき, G(jω) の虚数
部分は 0 となる。よって, 式 (4-1) より, G(jω) の
虚部
Im[G(jω)] =
−j(1 − 4ω2 )
25ω3 + ω(1 − 4ω2 )2
(4-7)
図 5-1: フィードバック系
[解答]
(解法 1)
φ(s)
が 0 となる条件は,
2
1 − 4ω = 0
(4-8)
であることから, ベクトル軌跡が実軸と交わるとき
の角周波数は
ω=
=
(s2 − 4)(s + 4) + (s − 2)
=
(s + 2)(s − 2)(s + 4) + (s − 2)
=
(s − 2)((s + 2)(s + 4) + 1)
=
(s − 2)(s2 + 6s + 9)
=
(s − 2)(s + 3)2
(5-2)
となり,s = 2 を極としてもつので,内部安定でない。
1
2
(4-9)
=
=
1
1
−5 − j 1 − 4
2
4
1
25 +
8
−5
2 =
25
8
1
2
1−4
1
4
4
− ,0
5
2
−5
O
Im
!=
Re
1
! = ___
2
!=0
図 4-1: ベクトル軌跡
=
=
K(s)
=
1 + P (s)K(s)
1+
s−2
s+4
1 s−2
s2 −4 s+4
(s2 − 4)(s − 2)
− 4)(s + 4) + (s − 2)
(s + 2)(s − 2)2
(s + 2)(s − 2)
=
(s − 2)(s + 3)2
(s + 3)2
(s2
1
Gud (s)
=
(4-10)
=
=
である。
(e) ベクトル軌跡は図 4-1 のようになる。
4
− __
5
4 つの伝達関数は
=
4
−20
=−
25
5
となることから, 交点は
(解法 2)
Gur (s)
である。この ω を, 式 (4-1) に代入すると
G(jω)
特性多項式において
Gyr (s)
=
Gyd (s)
=
s−2
2
−P (s)K(s)
= − s −41 s+4
s−2
1 + P (s)K(s)
1 + s2−4 s+4
s−2
− 4)(s + 4) + s − 2
1
s−2
=−
−
(s − 2)(s + 3)2
(s + 3)2
P (s)K(s)
1
=
1 + P (s)K(s)
(s + 3)2
−
(s2
1
=
=
P (s)
s2−4
=
s−2
1 + P (s)K(s)
1 + s21−4 s+4
s+4
(s2 − 4)(s + 4) + s − 2
s+4
(s − 2)(s + 3)2
となる。Gur , Gud , Gyr は安定であるが,Gyd は
不安定極 s = 2 をもつので不安定となる。よって,
内部安定でない。