廣瀬・吉野研究室 - 岩手大学 工学部 機械システム工学科

岩手大学工学部機械工学科
先端金型技術研究部門
廣瀬 研究室
教授 廣瀬宏一
熱移動メカニズムの基礎的研究とその応用に関する研究
熱はエネルギの一種であり,また全てのエネルギの終焉の姿であることから,雨や風などの自然現象の
みならず,身近な所では各種エンジン,冷凍機,ヒートポンプなどの機器などを通して,日常生活の多く
の面にかかわっています.当研究室では様々な機械システムを構成する要素の中で,熱による影響を調べ
たり,熱そのものがどのように移動していくのかという熱移動メカニズムの研究を行っています.それに
より電子機器の熱的条件に対する設計目標を到達できる構造への応用や射出成形における金型冷却回路の
最適化などについて,問題の定式化、モデル化し、数値解析手法やコンピュータソフトを適用して求解し
たり,実験装置を製作して実験研究を行っています.
研究テーマ
¾水中に置かれた水平な管群内の氷の融解熱伝達特性に関する研究
¾熱媒体中に置かれた伝熱管まわりの相変化熱伝達に関する研究
¾小型電子機器の冷却技術に関する研究
¾加熱回転場における共存対流熱伝達に関する研究
¾樹脂の融解や凝固の対する潜熱の影響に関する研究
¾ペブルベット蓄熱槽を用いた空調システムに関する研究
水平な管群内の氷の融解熱伝達特性
実験結果
数値解析結果
加熱回転円板上の共存対流熱伝達
実験による流れの可視
同一条件の数値解析結果
解析による小型電子機器内の温度場と速度場
Velocity
連絡先
Email : [email protected]
Isotherms
温度場
速度場
水中に置かれた水平な管群内の氷の融解
熱伝達特性に関する研究
現在では様々な生産活動や日々の生活における
環境への影響を無視することはできなくなってい
ます.環境問題の中でも地球温暖化問題は特に身
近な問題であり,都市部においてはヒートアイラ
ンド効果による温度上昇も見られます.そのよう
な中で,エネルギー需給を平準化するシステムが
重要視されており,その一つとして,潜熱蓄熱シ
ステムがあります.潜熱蓄熱システムとは,相変
化物質(Phase Change Material:以下PCMと略記
します)の融解,凝固に伴う潜熱の吸収,放出を
利用するシステムです.PCMはそれぞれ固有の温
度によって融解・凝固を行い,潜熱の大きさや一
様温度で良質なエネルギーを供給するなどの利点
があります.潜熱蓄熱による空調システムはその
潜熱の大きさから狭い地域にビルが密集し,多く
の人が集まる地域に有効なシステムと考えられ,
ヒートアイランド現象が生じやすい都市部では,
省エネや熱汚染の抑制などに効果が期待できます.
こうした潜熱蓄熱システムを,駆動に特別な動力
を用いないパッシブな空調システムとして展開す
るには,PCMの融解過程と周囲熱媒体の流れとの
関連性や温度分布を知ることが重要となります.
この研究では,カプセル型潜熱蓄熱装置の基本
的なモデルとして熱媒体中に管群を水平に設置し,
管内部の相変化物質の融解熱伝達と管群周囲の熱
媒体の自然対流熱伝達とが相互に連成する複合対
流熱伝達特性について数値解析と実験の両面から
詳細に研究し,熱伝達特性を明らかにしています.
小型電子機器の冷却技術に関する研究
近年の電子機器は,市場の要求により,装置の
薄型化や洗練されたデザインが最重要取り組み課
題となっています.そうした中,小型化などのデ
ザインを追及することで,機器内部に熱がこもり
動作に悪影響が現れるという問題に直面していま
す.このことから熱を効率よく外へ逃がすことが
必要となり,その対策として様々な冷却技術の活
用が検討されています.
この研究では,解析ソフトによる数値シミュレー
ションや,実験によって基礎的なデータを取りな
がら熱問題に対する方策の有効性を探っています.
強制冷却ファンによる流れ場解析
加熱回転場における共存対流熱伝達
加熱回転場の熱伝達現象は共存対流の基本的
問題というばかりでなく,最近ではCVD法を用い
たシリコンウエハの製膜問題などに関連して重
要となりつつあります.また,CD-RやDVD-R,
HDDなどの記憶媒体は加熱回転体であり,高密度
であるがゆえに高い精度が要求され,媒体が熱
による変形や膨張などの影響を受けると多大な
被害を受ける可能性があります.これらは役割上
狭い空間内に設置され,駆動系や読み取り系な
どからさまざまな加熱を受けながら回転してお
り,狭い空間内における加熱回転体とみなすこ
とができ,共存対流が生じています.
この研究では,実験および数値解析により,
加熱回転円板場の共存対流と熱伝達メカニズム
を解明することを目指して研究を行っています.
樹脂の融解や凝固に対する潜熱の影響に
関する研究
実験装置
プラスチック製品の射出成型は加熱によって
溶融された樹脂を金型内に射出し,金型で冷却
することによって固化させるものです.溶融か
ら固化までは温度範囲が広いため,物性値も変
化します.本研究では,こうした物性値の変化
が融解や凝固に及ぼす影響を調べています.
ペブルベット蓄熱槽を用いた空調システ
ムに関する研究
実験結果
数値解析結果
吸湿剤を用いたデシカント空調の一環として,
固形吸湿剤が吸湿したり,脱湿させたりする際
の温度変化と作動流体の温度応答特性を調べ,
新しい空調システムの可能性を探っています.