セルフケアハンドブック 医療編

セルフケア
ハンドブック
医療編
食事・運動
療法編
監修: 特定医療法人あかね会 土谷総合病院
副院長 川西 秀樹
EB070011DH
2011年3月作成
JR013 03-1 1103
HU 20 KYO
氏 名
生年月日
明 ・ 大 ・ 昭 ・ 平
性 別
男 ・ 女
住 所
〒
年
月
日生
医療編
電 話
緊急連絡先
病院名
所在地
電 話
主治医名
・腎臓のしくみとはたらき‥ ‥P1・2
・腎不全(腎機能不全)とは‥ ‥P3・4
・慢性腎不全の治療‥ ‥‥‥‥‥P5・6
・血液透析‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥P7〜12
・合併症の治療‥ ‥‥‥‥‥‥‥P13〜17
医療編
はい せつ
① さまざまな老廃物(尿毒素)の排泄
腎臓のしくみとはたらき
腎臓のしくみとはたらき
腎臓にはこんなはたらきがあります
尿毒素や重金属、有害物質を排泄します。
② 水分の調節
腎臓は左右に2つあります
腎臓は握りこぶし大のソラマメのようなかたちをしていて、おなか
の背骨側に左右1対あります。腎臓の中には腎動脈の先にたくさん
の枝分かれした毛細血管があり、その先端は糸をぐるぐる巻いたよ
し きゅう たい
うな糸 球 体になっています。
のう
糸球体はボーマン嚢と呼ばれる袋に包まれ、ここでろ過された原尿
が尿細管へと出ていきます。糸球体・ボーマン嚢・尿細管は尿生成
のユニットのようなもので、これらを総称してネフロンといいます。
ネフロンは左右に約100万個ずつあります。
尿の濃さや量を調節して、体に必要な水分を一定に保ちます。
③ 電解質濃度の調節
血液中の電解質濃度を一定の状態に調節します。
④ ホルモンをつくる
体に必要なホルモン(エリスロポエチン・レニン)を分泌します。
エリスロポエチンは造血、レニンは血圧調節に関わっています。
⑤ 活性型ビタミンD3をつくる
ビタミンDを活性化して骨へのカルシウム吸収を助けます。
⑥ 血液を弱アルカリ性に保つ
酸性物質を排泄して血液中のpHを弱アルカリ性に保ちます。
■腎臓のしくみ
■尿ができるまで
尿細管
腎 臓
血液の流れ
尿管
のう
ボーマン嚢
ぼう
こう
膀胱
尿
1
腎動脈
原尿は成人で 1日約 150L、
およそドラム缶 1 本分!
血液は糸球体でろ過され、
尿細管
赤血球、たんぱく質と
それ以外の原尿に分けられる
不要なもの(1日約1.5L)が
最終的に尿として捨てられる
じん う
腎盂
膀胱
し きゅう たい
糸球体
ネフロン
ネフロン
必要なものは尿細管から
腎盂を経て再吸収
尿
2
医療編 腎不全(腎機能不全)とは
慢性腎不全・尿毒症
腎不全には、急激に腎臓のはたらきが弱くなるものの治療によって
回復する場合がある急性腎不全と、回復が見込めず最終的に透析療
腎不全(腎機能不全)とは
法が必要になる慢性腎不全があります。ここでは慢性腎不全につい
腎臓病から腎不全へ
て知っておきましょう。
腎臓病は免疫反応や代謝異常(糖尿病など)、細菌感染、高血圧など
さまざまな原因により腎機能が低下する病気です。初期は自覚症状
が少ないため、検査してはじめてわかることもあります。
検査でたんぱく尿や血尿が認められ、腎機能が正常の60%未満に落
慢性腎不全になると、薬や生活改善で進行を遅らせる以外ありませ
はい せつ
ん。薬物療法を行っても尿毒症(尿毒素が排泄できなくなりさまざ
まな症状が出る)が強くなると、透析療法により血液をきれいにす
ることになります。
ちた状態が3カ月以上続く場合を、慢性腎臓病(CKD)といいます。
慢性腎臓病が進行すると、腎臓の機能がしだいに低下し、正常の
15%以下になると最終的に透析治療を必要とする腎不全(腎機能不
■慢性腎不全のおもな症状
意識障害
全)になります。
視力障害
尿臭などの口臭
■慢性腎臓病は段階的に進行
心肥大、息切れ、心不全
腎不全に至る病期は、腎障害を起こしやすい
ハイリスク群以下、5段階に分かれている。
ステージ1(GFR=腎機能を表す数値/90以上)
は「軽い腎障害あり」、その後腎障害が進みステー
ジ5(15未満)になると、透析を受ける「腎不全」
の状態。
ステージ
3
はい ふ しゅ
きょうすい
肺浮腫、胸水
おう と
皮膚症状
食欲不振、吐き気・嘔吐
・むくみ
・かゆみ
・皮下出血
けいれん
4
慢性腎不全の治療
・腹膜透析(PD)
腹膜に入れたカテーテルを通して透析を行い、尿毒素を除去します。
医療編
自己管理による在宅透析が可能で、24時間かけて血液を浄化します。
透析対象者の約4%が腹膜透析を選択しています。
初期の治療:保存療法
慢性腎不全になると、腎臓のろ過システムが機能しなくなるので、
腎臓提供者(ドナー)からの移植手術を行います。免疫抑制剤の服用
体内に尿毒素や余分な水分などが溜まります。初期段階(透析せず
が長期にわたること、移植後の不適合などを除けば生存率やQOL
に生命を維持できる場合)では、血圧管理、塩分・水分のコントロー
(生活の質)が上がるため、根本的な解決法といえます。ただしドナー
た
ルといった食事療法や、尿毒素を吸着して体外に排出する経口吸着
慢性腎不全の治療
・腎移植
の数が限られ、待機時間がかかるのが実状です。
薬、ホルモン薬(エリスロポエチン製剤)などの薬物療法で慢性腎不
全の進行を遅らせる治療が行われます。
■血液透析の通院スケジュール例
末期の治療:透析と腎移植
慢性腎不全末期になると尿毒症が強くなり、日常生活に支障をきた
すため、血液透析(HD)、腹膜透析(PD)、腎移植の3つの治療法か
ら選択することになります。
・血液透析(HD)
一般的に行われている外来透析療法です。腕のシャント(9ページ参照)
を通して透析を行います。医療スタッフの管理下で行い、基本的に
週2~3回、1回3~5時間かかります。
通院は一般に週2∼3回。
曜日と開始時刻(午前・午後・夜間)を
選べるところもある。
5
透析時間は症状によって異なるが、
一般に3∼5時間かかる。
6
血液透析
透析のしくみ
人工腎臓は透析液(ナトリウム、カルシウム、カリウムなど体に必
要な電解質が溶け込んだもの)供給装置と、ダイアライザーと呼ば
分な水分を取り除く(除水)、③血液の電解質濃度を調節する、④血
ダイアライザーの透析膜を通して血液中の尿毒素が捨てられ、透析
液の電解質が血液に入ります。その後、きれいな血液が体内に戻り
血液透析
せる治療法です。透析でできることは、①尿毒素を取り除く、②余
せん し
患者さんの腕に針を刺して(穿刺)、血液をダイアライザーに導き、
血液透析(以下、透析)は腎臓の機能を人工腎臓(透析装置)に代替さ
れる血液透析装置、患者モニターなどで構成されています。
医療編
腎臓機能の一部を代替します
ます。
液のpHを一定に保つ、などです。
人工腎臓では代替できない大切なはたらきは、薬(10ページ参照)で補
うことになります。
■ダイアライザーのしくみ
■血液透析の流れ
透析膜にあいた穴から
出る尿毒素
ウイルスや細菌、
エンドトキシン(毒性の物質)は
穴から入っていけない
赤血球やたんぱく質は
出ていけない
ダイアライザーの中には髪の毛より細いストロー状の透析
膜が約1万本も入っていて、その1本1本の中を血液が流
れ、外側を透析液が流れます。透析膜には極小の穴が無数
にあいていて、尿毒素や電解質は通しても赤血球やたんぱ
く質、ウイルスや細菌、エンドトキシンは通しません。
7
8
透析の手順
シャント管理で注意すること
膿させたりしないように注意します。
② 穿刺部分(腕のシャント部分)の洗浄・消毒
透析をした日は、シャント部分を水につけないようにします。また
③ 穿刺
シャント側の腕で血圧を測らないようにします。
④ 透析
日常生活では、シャント側の腕で重いカバンなどを持つ、きつい腕
⑤ 穿刺部分の止血
時計をする、シャント側の手に指輪をする、シャント部分を爪で引っ
⑥ 血圧・脈拍・体重・体温の測定
かく、不潔にするといったことは避けてください。
せん し
血液透析
① 血圧・脈拍・体重・体温の測定
シャント部分の血流をよくして、詰まらせたり、細菌感染などで化
医療編
透析を行う際は、おおまかに次のような順番で行います。
シャントとは
透析では腕に刺した針を通して1分間に約200mLもの血液を体外に
出し、ダイアライザーに送り込む必要があります。一般的にはスムー
ズな血液の出し入れができるようにするため、動脈と静脈をつない
で太い血管をつくる手術をします。
手術で動脈と静脈をつないだ部分を内シャントといい、十分な量の
血液が流れるアクセスポイントになります。
シャント側の腕で
血圧を測らない
シャント側の腕で
荷物を持たない
シャント部分を
爪で引っかいたり
傷をつけたりしない
■シャント手術(内シャント)
ふんごう
(つなぎ合わせる)
動静脈を吻合
動脈から流れ込んだ血液で
太くなった静脈に針を刺し
て透析用の血液を引き出す
透析を補う治療をします
腎臓の代わりをする透析でも、血圧の調節、造血ホルモン(エリス
ロポエチン)の分泌、活性型ビタミンD3をつくること、などはでき
ません。
透析では代替できない腎臓のはたらきを補うため、降圧剤やエリス
ロポエチン製剤、活性型ビタミンD3製剤などの薬を服用する必要が
あります。
9
10
こんなことが起こったら…
透析中に起こりやすい症状
●かゆみ
置の患者モニターが患者さんの状態を見守っています。それでも思
透析中や透析後にかゆみが出ます。原因には透析液で皮膚が温まっ
わぬトラブルが起こる場合がありますので、注意してください。
て乾燥すること、アレルギー、カルシウムの皮膚沈着などがあげら
医療編
透析中は異常や事故などが起こらないよう、医療スタッフや透析装
れますが、詳しいことはわかっていません。
フを待ちます。
血液透析
ン剤、抗アレルギー剤を服用。
腕に刺した針が抜けたら、抜けた部分を
押さえ、ナースコールをして医療スタッ
保湿クリームを塗る、透析液温度を下げる、抗ヒスタミ
●透析中に針が抜けた
対 策
●血圧低下
急速な除水や降圧剤の服用、貧血などが原因で、透析中に血圧が突
どう き
然低下することがあります。症状はあくび、動 悸、吐き気、頭痛、
冷や汗、意識障害などです。
●出血が止まらない
対 策
水をゆるやかにして予防。
透析後はシャントを指で圧迫止血します
が、出血が止まらないときは医療スタッ
フを呼びます。
体重の増加は適正体重(23ページ参照)の5%以下に抑え、除
●筋けいれん
急速な除水や体重減少があった場合に、足や腕の筋肉がこわばった
り、けいれんしたりすることがあります。
対 策
ジする。
●火災、地震時の緊急離脱
ベッドから動かず医療スタッフの指示に
従います。誰も来ない場合の緊急離脱と
して、針と血液回路の接続部分をはずす
せん し
か切って、穿 刺 した状態のまま安全な場
所まで行き、医療スタッフに針を抜いて
もらいます。
急に体位を変えない、けいれん部分を温める、マッサー
●不均衡症候群
頭痛や吐き気、だるさを感じることがあります。血液中の尿毒素が
抜け出ても脳内の尿毒素が抜けきらないため、体の水分が脳へ移動
して脳圧が上がるためだとされています。
対 策
水分や塩分の摂取を控え、ゆるやかな透析を行うように
して予防。
11
12
合併症の治療
カルシウム・リン代謝異常
骨のカルシウムが不足して、骨がもろくなったり、カルシウムが骨
以外の場所に沈着してしまったりする病気です。血液中のカルシウ
ムとリンのバランスが崩れると、副甲状腺ホルモンが大量に分泌さ
心血管系合併症
れ、骨からカルシウムを取り出して血液中に補おうとします。この
加齢による動脈硬化や、血液中に塩分や水分が溜まりすぎて血管に
負担をかけてしまうことがあります。高血圧や心不全を起こしやす
これは腎臓で活性型ビタミンD3をつくることができなくなるため
で、腸からカルシウムを吸収することができず、血液中のカルシウ
ム濃度が低下します。逆にリンは血液中に溜まっていきます。
・高血圧
控えるなどの治療をします。
合併症の治療
維持します。
いので、塩分、水分のとりすぎに注意し、適正体重(23ページ参照)を
結果、骨がもろくなり骨折しやすくなるのです。
医療編
た
活性型ビタミンD3製剤やリン吸着薬の服用、リンを多く含む食品を
ほとんどの透析患者さんにみられます。塩分や水分のとりすぎに注
意し、適正体重を維持します。治療には降圧剤が使用されますが、
■カルシウム・リン代謝異常のしくみ
はい せつ
使用する薬剤は透析への影響や代謝・排泄などを考慮して選択され
ます。
カルシウム
消化器系合併症
ストレスや尿毒症、薬物療法の副作用などにより、胃腸などの粘膜
が炎症を起こしたり潰瘍ができたりします。血便や腹痛、吐き気が
おもな症状です。内視鏡検査で病名を特定してから飲み薬などで治
療します。
リン
13
リン
リン
リン リン
14
感染症
透析アミロイド症
はい せつ
透析の患者さんは免疫機能が低下しているため、感染症にかかりや
長期にわたって透析を続けていると、尿中に排泄されるはずのβ2ミ
すくなっています。おもな感染症には次のようなものがあります。
クログロブリンというたんぱく質の一種が体内に溜まって、アミロ
た
イドという物質になり、骨・関節や臓器に沈着します。
・シャント感染
アミロイドは関節の痛み、しびれ、腫れを引き起こし、消化管や心
こします。シャント部分は清潔に保ち、腫れて赤くなっていないか
β2ミクログロブリンがよく除去できるダイアライザーを使う、β2
チェックします。
ミクログロブリン吸着カラムを使用するなどの予防法があります。
・肺炎
・手根管症候群
免疫機能が低下しているため、風邪やインフルエンザをこじらせて
アミロイドが手首のつけ根にある手根管に沈着して神経を圧迫する
しまうケースがあります。手洗いやうがい、マスクの着用のほか、
と、指のしびれや痛み、握力の低下をまねく手根管症候群になりま
早めにインフルエンザワクチンを接種します。
す。神経の圧迫を取る手術で改善します。また、手首や手指の屈伸
合併症の治療
臓など臓器に沈着した場合は、心不全や不整脈の症状が現れます。
は
穿刺したシャント部分から細菌やウイルスなどが入って感染症を起
医療編
せん し
しゅこんかん
運動を行って関節の動きを維持することも大切です。
・ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎(B型・C型)は他の人の血液の付着や輸血などにより
けん たい
感染すると考えられます。吐き気や倦怠感、微熱が続きます。定期的
な肝機能検査を行い、血液のついた針にはふれないように注意します。
高カリウム血症
カリウムが排泄されず、血液中に溜まりすぎると高カリウム血症に
なります。血液中のカリウム値が7.0mEq/Lに近づくと脱力感、手
のしびれや口のこわばりを感じるようになり、意識がなくなる、心
臓が止まるなど危険な状態が起こる場合もあります。
カリウムの多い食品を控え、十分な透析を行って予防します。カリ
ウム吸着薬を用いる薬物療法もあります。
15
16
貧血
腎不全になると、腎臓でつくられるエリスロポエチンという造血ホ
ルモンが減って貧血を起こしやすくなります。尿毒素や栄養不足(た
んぱく質や鉄分など)のために赤血球が少なくなり、貧血になる場
合もあります。
エリスロポエチン製剤を注射することで貧血は改善されます。鉄剤
や栄養を補給し、十分に透析をすることも大切です。
食事・運動
療法編
むずむず脚症候群
レストレスレッグス症候群ともいいます。夜寝ているとき、足がむ
ずむずして熱くなったり、違和感を覚えたりします。尿毒症性物質
まっ しょう
による末 梢 神経障害、カルシウム・リン代謝異常(14ページ参照)など
によるものと考えられています。
むずむず感のためにイライラしたり、眠れなくなったりして日常生
活に支障をきたす場合もあり、薬物療法が中心となります。
・食事療法‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥P19〜23
・運動療法‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥P24
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食事療法
食事のポイント
① 1日の水分(飲水量)は適正体重の3~5%以内
② 1日の塩分摂取量は7g未満
透析療法を行っている人は、食生活の改善も治療の一環となります。
病気の進行を遅らせ、合併症を予防するためにも医師の指導のもと、
正しい食事療法を行うことが大切です。
摂取、適正体重(23ページ参照)のコントロール、などです。飲酒は控
えめに、禁煙は必須です。
長く安定した透析生活を送るには、栄養をバランスよく適度にとる
④ 低たんぱくでアミノ酸を効率よくとれる食品を選ぶ
⑤ アルコールは1日の飲水量に含まれる
※食事療法のめやすです。病態によって異なる場合がありますので、医師の指示に従ってく
ださい。
①むくみや血圧の上昇につながる
水分のとりすぎに注意!
カレーなど食品にも水分は含まれてい
るので、体重増加分=水分摂取量と考
えて1日の水分量をチェック。
②塩分をとると水分が欲しく
なるので注意!
塩分が含まれる食品や調味料はなるべ
くとらないようにする。
③ カリウム・リンのとりすぎに注意!
カリウムを多く含む野菜やいも類はゆ
でこぼして。リンはたんぱく質の多い
食品に比較的多い。
④ たんぱく質の量に注意!
透析中にアミノ酸が失われるため、鶏
肉など良質のたんぱく質を一定量とる
ことが大切。
食事療法
食事療法の基本は、水分・塩分・リンの制限、適切なたんぱく質の
③ カリウム・リンを多く含む食品は控える
食事・運動療法編
バランスよく食べましょう
ことも大切です。
⑤ アルコールも水分に含まれるので注意!
エタノール量で男性1日20~30mL以下、
女性10~20mL以下をめやすに。
19
20
水分摂取=塩分摂取と考え、ともに注意する
水分を摂取すると塩分が欲しくなり、塩分を摂取すると水分が欲し
くなります。透析で大量の除水を行わなくてよいよう、水分摂取=
おもな食品の水分・リン含有量
食品名
重量
(めやす量) (g)
塩分摂取と考え、ともに気をつけましょう。
べく飲水しないようにするのもよいでしょう。また、食事でとる水
150
ぱく質に含まれているため、たんぱく質の多い食事をとれば同時に
リンの摂取も増えます。とくに動物性たんぱく質に多い(たんぱく
んぱく質の減少はエネルギーの低下につながり、栄養障害の危険性
とえば、適切なリンの量は体重50kgの人で1日800mg以下です。
21
70∼
100
74.4
80
57.8
223.8
62.5
60
56.3
16.8
80∼
100
95.4
36
100
92.7
27
200
179.4
66
100∼
150
141
39
250
212.3
25
30
11.5
26.1
30
15.1
42
300
204
510
葉1枚
192
中1個
170∼
200
194.6
300∼
400
347.2
10
中1個
440
1個
300∼
400
357.6
30
17.9
324
薄切り1枚
57
薄切り1枚
250∼
400
1わ
200∼
250
230
1パック
自身の適正体重に合わせたリンの摂取量を知って、食品成分表など
でリンの量をチェックしながら献立を考えるとよいでしょう。
1本
1丁
もあることから、正しい栄養指導のもとで食事療法を行いましょう。
リンを過剰摂取しないようにするのはなかなか難しいのですが、た
122.5
1丁
質1gにリン約2%)ので、肉や乳製品は控えめにします。しかし、た
リン
(mg)
食事療法
食事からのリン摂取量を減らす必要があります。リンは食品のたん
83.8
切り身
板1枚
水分
(mL)
83
1玉
リンもとりすぎると体内に溜まってさまざまな症状を引き起こしま
す。1回の透析で除去できるリンの量は約1,000mgであることから、
38
含まれる量
根、皮つき中1個
250
中1尾
た
51
中1本
100
しょう。
リン摂取の注意
90
8 枚切り2 枚
塩分は食塩や調味料だけでなく、食材にも含まれています。練り製
品や総菜には塩分が多いものがありますので、避けるようにしま
リン
(mg)
茶わん1杯
分にも注意します。汁物は具を食べて汁を残す、野菜、こんにゃく、
豆腐など水分の多い食材も少なめにとります。
水分
(mL)
食品名
重量
(めやす量) (g)
食事・運動療法編
水分摂取については、お茶の時間を決め、それ以外の時間ではなる
含まれる量
369.6
188
1枚
※出典:文部科学省「五訂増補日本食品標準成分表」 実教出版「オールガイド五訂増補食品成分表2010」より
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適正体重の求めかた
運動療法
適 正 体 重 と は 、 健 康 を 維 持 す る う え で 標 準 的 な 体 重 の こ と で、
「適正体重(kg)=[身長(m)×身長(m)]×22」の式で求められます。
食事療法はすべて適正体重を基準にしているので、現在の体重が適
運動で体力を維持
正体重を上回っている場合は減量しましょう(体重を測るのは余分
た
透析で筋肉が減少し、体力が低下すると運動もしにくくなります。
■水分は適正体重の3~5%以内
食事療法とともに適度な運動で改善を図ります。
(例)適正体重60kgで透析が週3回の場合
60kg×0.03=1.8kg/中1日
体力を使う激しい運動(無酸素運動)よりもウォーキングやジョギン
グ、水泳、ストレッチ程度のゆっくりした有酸素運動を行います。
継続した運動は代謝を活発にし、汗も出しやすくします。運動の強
度に応じて1日に30分程度をめやすに、透析日以外の日を選んで行
食事療法・運動療法
※透析を週3回している場合は3%、週2回の場合は5%の体重増加に抑えることがのぞまし
いとされています。
食事・運動療法編
な水分が溜まっていない透析後の時点とします)。
うようにします。
けん たい
倦怠感や疲れやすさがあるときは、日常の家事動作の中でなるべく
ふ
塩分摂取と体重増加率
摂取した塩分は体内に水分を引きよせるため、体重増加をもたらし
ます。一般に1kgの体重増加は、7.5gの塩分摂取によるといわれて
います。つまり塩分摂取に応じて、水分も摂取してしまいます。
ろ
体を動かすようにします。雑巾がけ、草むしり、風呂掃除などは意
外に運動になります。
どう き
血圧が高すぎたり低すぎたり、動悸や息切れがあるなど、病態によっ
ては運動を中止したほうがよい場合もあります。運動をはじめるま
えに医師とよく相談することが必要です。
体重1kg増=7.5gの塩分摂取
透析間の塩分摂取量(g)=体重増加分(kg)×7.5(g)
(例) 透析間が中1日で体重増加が1.8kgの場合の1日塩分摂取量
1.8(kg)×7.5(g)÷2(日)=6.75(g)
1日の塩分摂取量7g未満を維持するようにしましょう。
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