大阪市立大学看護短期大学部紀要 第 6巻 ( 2 0 0 4. 3 ) 周手術期看護 にお ける Qua l i t yo fLi e( f QOL)の概 念及 び測定方法 一食道がんで手術 を受 ける患者の場合 - 大阪市立大学看護短期大学部 白田久美子 CONC E PTANDMEAS UREME NTOFQUAL I TYOFL I FEI NPERI OPERATI VENURS I NG : I NCAS EOFAPATI E NTWHOHASANOPERATI ONI NE S OPHAGEALCANCER Ku mi k o SHI RATA Os a kaCi t yUni ver s i t yCol l e geofNur si ng Ⅰ.は じめに に関す る医学 分野 で の研究 で Gi l lら4)は概 念 的 に明確 に した研究 は少 ない ことを指摘 してい る。 Qual i t yofLi f e( 以 下 QOL とす る) とい う用 語 は、 QOL に関心 が高 まって い る背 景 は、特 に高齢社会 と 一般 的にコ ンセ ンサスが得 られ認 め られ た定義 はないが、 な り、延 命 よ り現 在 の生 活 の質 向上 が治癒 の 目標 とな 生命の質、人生の質、生活の質 と 3つの側面 を包含す る り、医療の受 け手で ある患者 の視点 にたった評価 が重要 概念 または評価基準で呼称 されてい る 1)。 そ して各専門 になって きた ことで あろ う。 さらに QOL は あ くまで健 領域 でよ く用い られてい る用語で ある。最近で は患者立 康状態 に直接起 因す る要素 に限定 し、 そ して基本的な構 脚型 アウ トカムの指標 と して取 り入れ られてい ることか 成要素 は身体機 能、心の健康 、社会生活機能、 日常生活 ら、周手術看護学 領域 における応用性 につ いて、先行研 機 能 が含 まれ る と した Heal t h-Rel a t edQual i t yofLi f e 究 を基 に手術療法 を受 けた食道がん患者 の QOL に焦点 ( HQOL)が用 い られて きた 5) HQOLや QOL に関す る をおいて検討 した。 論文 が増加 して い るに も関 わ らず、QOLの 用語 が唆味 。 な ままで取 り扱 った内容 も多 く、 中山 ら6)は、QOL と Ⅰ.1般的に用い られてい る Qu a H t yo fL i f e ( QOL )の概 念 い う用語が スローガ ンや キ ャ ッチ フレ-ズ と して扱 われ ている傾向があ ることを指摘 している。 最近では患者 か らの評価 を取 り入れ た QOL研究、つ ま り患 者 立 脚 型 ア ウ トカ ム ( Pat i e ntba s edout c ome s ) QOLは1 960年代 に当時の大統 領 が経 済 的 な施 策 に用 いてか ら社会経済 の領域 で使 用 されて いた。Qual i t yof の指標 と して QOLが用 い られ るよ うにな った。看護学 Wor ki n gLi f e( QWL) とい う関連 した用 語、 労 働 生 活 領域 で用い られ てい る QOL は、患者 か らみ た主観 的 な の質、単調 な労働 による勤労意欲、働 きがいの喪失 を回 視点が重ん じられ、特 に慢性 疾患患者 におけ る看護 にお 復 し、人間疎外 を克服 しよ うとい う意味 を含んで い るが、 いては 「 障害 を持 ちなが らも意味 ある人生 を生 きる」「よ QWL をめ ざ し世 界 的 な運動 が展 開 され1 973年 に QWL りよ く生 きる」「 生 き生 きと充実 して生 きる」とい う意 委員会がで きた経過 がある 2) 。 それ以後 QOL は、社会 ・ 味で使 われ る よ うにな り、QOLの指標 は患 者 の生 きが 経済学、保健 ・医療 ・福祉領域 で幅広 く使用 されてい る い、 自尊感情、満足度 な どの心理社会的な指標が使 われ 医療 の分野では1 970年代の後半頃か ら、寿命 ・生 存率 な てい る どの竜的評価 に代わ る概念 として、 つ ま り QOL とは人 々 人の機能の能 力 と、 それ らか ら生 じる各個 人の満足感 が の送 ってい る生活の向上につ いての評価 基準 ともい える 含 まれ る包括的概念 と して用 い られ、特 に ター ミナル ケ 。 さらに医療技術の 意味で使 われ るよ うになって きた 3) ア7 ) 、慢 性 疾患 と看 護 8) 9)、 が ん看 護 進歩 によ り臓器移植、人工授精、延命装置 による生命の い られて きた。 しか し周手術 期看護領域 での QOL に関 維持 な ど生死に関わ る倫理的な問題がみ られ るよ うにな す る研究 は少ない。 。 。 って きた なかで QOLが用 い られ て きたし しか し QOL ノ -3- そ して QOL は身体 的 ・精神 的特徴 お よび各個 1 0日 1 ) の領域 で用 大阪市立大学看護短期大学部紀 要 第 6巻 く 2004・ 3) Ⅱ.手術療法 を受ける食道がん患者の 出血量 な どの手術侵襲 が影響す る17)o食道 がん手術 後の QOLに関する研究の背景 人工呼吸器 か らの離脱への工夫 18)、手術 後急性 呼吸不 全 に対 し体外酸素化 を中心 と した呼吸管理 を行 い救命 した 報告 19) が ある。 いずれ に して も呼吸管理 を行 うことの必 周手術期看護 で QOL を考 え る時、診 断名お よび手術 要性 が指摘 されてい る。 療法 を受 けることか ら術式 に影響 され ることは言 うまで 食道再建 の再建経路 には、①胸壁前② 胸骨 後③胸腔内 もな い。 そ こで手術療法 を受 け る食 道 がん患者 の QOL に関す る動向 を 「日本 医学 中央雑誌 」での インターネン ( 後縦隔)、再建臓器 と して は① 胃、②空腸、③ 結腸 を用 ト検索す る 「 医中誌 WEB」で 「 食道がん」「 QOLJ「 看 い る方法 が ある20)。食道切 除術 を行 い、再建 され た食道 護」 をキーワー ドと して文献検索 を行 った。 ヒ ッ ト件数 は形態 も機能 も変 化す る。 この ことか ら術後回復期 にお は1 9 9 4- 1 9 9 8 年 まで は 0件で あったが、 1 9 9 9- 2 0 0 4 年 La r t ye ta l 2 1 )は、 食 道切 除 を いての問 題 につ い て、Mc では 9件、 そのなかで看護 ケアの解説 と事例紹 介そ して 59人の患者 の QOL を評価 した。 その結果胃食道 受 けた3 食事摂取 に関す る実態調査 が主で あった。 そ こで食道が 4名、 ダンピングの徴候5 3 逆流性食道 炎 をお こ した患 者6 んで手術療法 を受 け る患者の もつ身体 的、心理 社会的問 名、および嘆下困難 2 7名がいたことを報告 している。 Br a ni c kiFJe ta 1 2 2) は、治療群 と姑息 的 な治療群 とで 題 を把握す るため、一般 的な特性 につ いて各文献 を調べ 食事摂取 量、食べ ることか らお こる症状の程度、仕事の た。 食 道 がん は、年 間 に毎年 1万 人 ほ どの発症 がみ られ、 状 態、睡 眠、苦痛、 レジ ャー活動、働 く能 力、人生 観、 5 0- 7 0歳代 に最 も多 く、男性 に多い疾患 で あ る12)。食 幸福観 な どを調べ治療群 に有意 な差 があった ことを報告 道がんの治療法 には手術療法、手術療 法 に加 えて手術前 l l a r dJm e ta 1 2 3 ) は、 1 7名の治療 した患 者 して い る。 C。 後の補助療 法、化学療法、放射線療法 な どが ある。食道 3名は体重増加 、 4名は変 わ を 3年間後 に追跡 調査 し、 1 がんの治療 の難 しさには、がんの増殖 が速 い こと、周 囲 8回、 1 2名 は間食 を行 らず、 1日当た りの食事 回数 は2. の気管、気管支、肺、大動脈 な どの重要 な臓器 を巻 き込 って い た。 不満 な こ とは1 1 人 が食 事 に関 す る こ とで あ む ように増殖す ること、早期 に胸、腹部、頚部 な ど広範 り、 さらに膝下困難、下痢 、咳 に誘 発 した堰吐、食 後の 囲の リンパ 節転移 をお こ しやす い こ とが あげ られ る13)0 発汗 を訴 えていた。 この よ うな術後の身体 的症状 の問題、 また肺、肝臓 な ど血行性転移 もみ られ、進行す ると胸 また機能 障害 と QOL との 関連 をみ る報告 は 多い。 また 膜 まで浸潤 し、胸膜播種 がみ られ るな ど、食道 の解 剖 学 手術 後の生 存 率 を調査 した もので 1 61 名の切除術 を うけ 的特殊性 あ るいは、食道 がん 自体の複雑 な転移形式 に よ 1 0 年 後 の 生 存 が4 4名で あ った報告 24)にみ られ るよ うに り、消 化器 がんのなかで も特 に予後不 良で あ るといわれ QOLの 指標 は生 存率や治療 方法 の効果判 定、手術 後の て い る14)。 しか し上部消 化管 の診 断技 術 の進 歩 に伴 い、 機能障害 の発生状況 との関連 をみ るために多 く用い られ がんの浸潤 が粘膜下層 までに とどまる表在食道 がんの発 てい る 。 見率 が増加ル 、比較 的良好な予後が期待で きるよ うにな 当然 QOLが低下す る報告 内容 が 多い。 心理社 会的問題 は、術 後の身体症状 と関連す る 。 いず そ して s t a g eI∼ Ⅲの食道 がん に対す る れの術式 の場合 も主 に食 べ ること、つ ま り摂取状況 、摂 根 治的治療 法は、手術療法 を行 うのが最 も確実 な治療 法 取量、食 事摂取 に伴 う症状、食事 に対す る満足感 な どが で あると言 われてい る15)。一般 的に行 われて い る手術療 日常生活 で問題 とな り、不安 ・憂欝 になるな ど心理 社会 法 は、がん腫の切除 と食道再建 で ある。がんの進 行状況 的な面で苦痛 を伴 う って きてい る 。 。 また下痢、曝気 ・噂 吐な どの消 化 に もよるが、手術範 囲が広 く、頚部、縦 隔、腹部の広範 器症状 に よ り日常生活 に支障が生 じ、 さらに嘩下障害や な リンパ節郭清 を行 うため手術侵襲 も大 きくなる 噴声、手術 後の ボデ ィイメージに対す る問題 な どに よ り、 。 合併症 と しては、肺合併症 、縫合不全、循環障害 が主 心理面へ の影響 も推測 され るが心理面 に焦 点 をおいた研 究 はす くない。 で後出血、気胸、膿胸、反回神経麻痔 、肝 炎、逆流性 食 道 炎 さらに嘩下、通過、消 化の機能障害 を伴 う 森 16 )は 以上の よ うな身体的 ・心理社会的問題 が、手 術 療 法 を 合 併症の なかで2 0 . 8%が肺合 併症、6. 9%縫 合 不全 を起 受 け退院 した後の患 者の QOLに どの程度 影響 す るのか こ したことを報告 してい る( 〕疾患 に雁患 す る対象 も高齢 が明 らか にな ると、適切 な時期 に適 切な看 護 介入 を行い、 の人が多い ことな どか ら、手術後に病状 が急変 しやす く、 QOLの 向 上 をめ ざした周 手術期 看護 がで きるので はな 新 たな身体的問題 が起 こる可能性 は高 い。術 後の呼吸器 いか と考 える 。 。 合 併症 が起 こりやす く、術後 に人工呼吸器 を使用す るが、 人工呼吸器 か らの離脱 を さまたげ る要 因 に、手術時間、 -4- 大阪市立大学看護短期大学部紀要 第 6巻 ( 2 0 0 4. 3 ) Ⅳ.手術療法 を受ける食道がん患者の Ⅴ.手術療法 を受 ける食道がん患者の QOLの定義 QOLの測定用具 1. 包括 的尺 度 と しての QOL QOL の 定 義 は、 各 専 門 分 野 で そ れ ぞ れ の 定 義 で 。 一 般 的 な 定 義 と し て は、 用 い ら れ て い る (表 1) QOL の 測 定 用 具 を先 行 研 究 で 見 る限 り、 さま ざまな Dal ke y, N. C. eta1 2 5 )が、個 人 の安 寧感 、生 活 の満 足 ・ 不満足 、 尺 度 が用 い られ て い るが、 その 中で保健 医療 の領域 で は、 あ るい は幸 福 感 ・不幸 感 が QOL で あ る と述 べ て い るの QOL 測 度 の ほ とん どが健 康 状 態 と活 動 機 能 が重 視 され 看 護 の領域 で使 われ て きた QOL の 定 義 ppaer 31 ) は、個 人 が その 日その 日の生活 に お て い る。 Shi は、And re w 良Wi t hey26)が、個 人 的 に人生 を評 価 す る こ け る機 能 の程 度 、 す なわ ち その 日その 日を ど うす ご して es on27)は個 人 が主観 的 に 知覚 し決 定 す る もの で、 と、 01 い るの かで あ る と QOL を定 義 し、 QOL に含 まれ る概 念 QOL はヘ ル ス ケ アの方 針 や 治 療 の 意 志 決 定 す る うえで と して 4つ の 構 成 要 素 を あ げて い る。 に代 表 され る 。 重 要 な要 因 で あ る こ とを述 べ て い る 。 さ らに Me e ber g28) 1)physi c ala nd oc c upat i onalf unc t i on (日常 生 活 に お け る作 業 能 力) は、 は、 QOL は 人 生 に お け る満 足 感 で あ る と述 べ て い る 日常 生 活 、運 動 能 力、職 業 活 動 、 家庭 活 動 な ど人 と して 黒田29)は、個 人 の意識 的、心理 的、主観 的側 面 を重 視 し、 各 自の仕 事 を行 え る能 力、 2)so ci ali nt erac t i on ( 人間 生 活者 の意 識 構 造 に主 眼 を置 い て、生 きが い や 幸 福 感 、 関係 を維持 す る能 力) は、 社 会 と関 わ り合 う機 能 、 友人 wel l Bei ng) 等 を規 定 して い る諸要 因 の 満 足 感 、安 寧 ( 関係 、職場 関係 な ど人 と一 緒 に暮 ら して い け る能 力、 3) 質 的 内容 を見 よ う とす る視 点 と して QOL を と らえて い Ps ychol ogi c als t at e( 精 神 心 理 状 態 ) は不 安 、 うつ 状 態 。 る 。 また Ca l ma n30) は納 得、 満 足 、 幸 福 感 、 達 成 感 、 そ t i cs ens at i on ( 身体 的快 楽 、 不快 度 ) は、 な ど、 4) Soma して特 別 な期 間 で個 々に現 れ る経験 の 間 に うま く対処 で 痛 み や曝 気 な ど身 体 を感 じる不快 な感覚 で あ る きる ことで あ る と述 べ て い る TheFunct i onalLi vi ngI nde x 成 要 素 を含 ん だ考 え方 で 「 f orCa nc er 」を使 周 した。 以上 をみ て も QOL の定 義 は、 用 い る人 に よ って さま ざまな内容 が含 まれ て い るが、共 通 な もの に は、満 足 感 、 幸福 感 が あ る 。 そ して主観 的 な面 が基本 に あ り、 め ざす 目標 と しての側 面 が重 視 され て い る傾 向 が あ る 。 この構 。 。 また健 康 関 連 QOL を測 定 す る包括 的尺 度 で、患 者 の 視点 に立 脚 した健 康 度 お よび これ に伴 う 日常 ・社会生 活 そ こで 機 能 の変 化 を、 計量 心 理 学 的 手 法 に よ って 量 的 に測 定 す 周 手術 期 看 護 に お け る患 者 の QOL を考 え る と き、 手 術 る こ とを 目的 と して作 成 され た尺 度 が あ る 療 法 を受 けた患 者 が、退 院 した あ と各 自が どれ だ け満 足 Physi calFunct i oni ng)、 メ ン タル ヘ ル 本 的 に身体 機 能 ( 感 や幸福 感 を もっ こ とがで きるの か とい う点 が 大 切 で は Ment alHeal t h)、 日常 役 割 機 能 ( Rol eFunc t i oni ng) ス ( な い だ ろ うか。 そ して QOL とは退 院 後 の生 活 に関 す る 社会生活機 能 ( Soci alFunct i oni ng) な ど に よ っ て 構 成 幸福 感 ・満足 感 の認知 的主観 的評 価 と考 え る され 、様 々な疾 患 を もつ 人 や一般 に健康 といわれ て い る 。 。 それ は、基 人 々 に共通 す る要 素 が含 まれ る。 この包括 的尺 度 の なか 表 1.Qu al i t yof= f e( QOL)の定義 著 者 定 義 36で あ る で よ く用 い られ て い るの が健 康 関連 尺 度 ・SF- 。 対象の特徴 この 尺 度 は ア メ リカで 行 わ れ た主 要 慢 性 疾 患 患 者 を 対 象 と して 医療 評 価 研究 で あ る Me di c alOut c omeSt udy Da l k e y ( 1 9 7 1 ) 個人の安寧感、生活の滴 UCLAの学生を対象と 福感 足 .不満足、あるいは幸 .不幸感であるo したo ( MOS) に伴 って作 成 され 、 ① 身体機 能 、② 日常 役 割機 能 ( 身 体 )、③ 日常 役 割 機 能 ( 精 神)、 ④ 全 体 的健 康 観 、 成感そして特別な期間で QOLに関する文献を分析 Ca l ma n ( 1 9 8 7 ) 納得、満足、幸福感、達 がん患者 を対象とした 希望や期待と できること る経験の間にうまく である 個々に現れ 対処 したo ⑤ 社 会生 活機 能 、⑥ 体 の痛 み 、⑦ 活 力、⑧ 心 の健 康 の項 01 e s o n ( 1 9 9 0 ) 個人が主観的に知覚し決 主観的に知覚するQOL 定したものである 文から について著者 分析したo 11名の論 2.疾 患特 異 的 尺 度 と しての QOL 目が含 まれ て い る33)。 o o 包 括 的 な尺 度 で は、 疾 患 特 有 の症 状 に対 す る測 定 内 Me e b e r . g ( 1 9 9 3 ) 人生における満足感であ 辞書からの定義、実際に 容 が少 ない こ とか ら、疾 患 特 異 的尺度 が用 い られ る 。 疾 患 特 異 的 尺 度 で は、 そ の 疾 患 に特 有 な症 状 や そ の 影 響 を よ り詳 細 に測 定 す る こ と を 目的 と して い る 。 よ く用 い られ て い るの が、 が ん患 者 に対 す る尺 度 で あ る 。 代表 opeanOr gani zat i onf orRes ear c hand 的 な 尺 度 で は Eur - 5- 大阪 市 立 大学 看護 短 期大学 部紀要 第 6巻 ( 2 0 0 4. 3 ) Tr e at me n tCa n c e rQual i t yofLi f eQue s t i o n n a i r e( EORTC 液 の逆流、 むねや け、下痢 、などの症状 によ り日常生活 i onalAs se s s mentofCancerThera py QLQ) と Funct に支障 が生 じるな どの身体 的症状 に関す ることで あ る。 ( FACT) が あ る34) EORTC QLQ は1 9 8 6年 に開 発 され そ して嘩 下障害 や失声 に伴 う手術後の ボディイメージに r eque s t i onn ai r e 30 (C3 0) は、 自己 始 め た もの で、Co 対す る問題、非生理 的な経路で食道 を再建、吻合部狭窄 記 入式 QOL 調査票で あ り、 5つ の機能 スケール ( 身体 な どによ り誤嘆や通過障害 等が生 じ、経 口摂取 がスムー 面、役割面、認知面、心理面、社会面) と症状 スケール ズに進 まず、食事 に対す る不安や ス トレスな どの よ うに ( 疲労、痔痛、曝気 ・堰吐な ど)、健康一般 ・総合 スケー 心理的な面に関す ることが ある。 また村田 ら39) は、食道 ルか らな って お り、信頼性、 妥 当性 が確認 され てい る。 がん術後患者の生活障害 について分析 し、労作時の息苦 我が国における進行肺癌患者 と乳がん術後患者 において しさによる移動の困難、呼吸不全や肺癌 に対す る不安 な C3 0の信頼性 と妥当性 が確認 されてい る35) FACT はア どに関す る問題 が あること、 さらに生活障害 は経時的に メ リカの Ce l l aら36)によ り1 9 93年開発 され た ものであ り、 変化す ることを指摘 してい るが、 この よ うな身体的機能 FACTGe n e ra l( FACTG) は身体面 7項 目、 社会 ・家 の問題 そ して社会的 な面 な どが QOL には影響す る と推 族面 7項 目、心理面 6項 目、機能面 7項 目、計2 7項 目 (日 測 され る 本版 には社会 ・家族面 に 2項 目追加) か らなっている ppe nbe r ge ta 1 4 0 ),および sp e c t oreta 1 4 1 )の論文 研究 Kni 。 。 。 。 さらに具体的な関連性 を考 えるために、先行 よ り QOL の原因、帰結、 関連性 につ いて概 念分析 を行 QOL測 定 用具 はい ろい ろな用具 が 用 い られ て い る 。 うなかで図 1に示す よ うな QOL モデル を考 えた。 QOL が抽 象的な概念 で あると何 を測定 す るの か混乱す る。 しか しあ ら● ゆる目的に適 した、測定用具が存在す る ことはあ りえない。 だか ら研究者 は測定用具の選定では、 測定 の 目的、対象 とす る集団 を設定 し、医療専門職の援 助 を評価 す る指標 とす るのか、個 人の QOL情 報 と して の補助資料 とす るのかなどの位置づ けを して捉 えること が必要ではないか と考 える 。 面 QOLの測 定 は、重 要視 して い る研 究領域 の測定の 目 的、対象 とす る集団 を考慮 し、 1つの測定用具でな く併 用 した用い方 をす ることも必要であ り、研究領域 におい ては測定用具の開発が求め られて くる。周手術期看護 に お いて、QOL測定 は ケアの質 を査定 す るため に利用で きる。結果測定のひ とつ と して使用す る場合、測定用具 a z e byJM, eta1 37 ) は、手術後 の開 発が必要 で あろ うo Bl 峠下 困難 な ケースが あることか らその評価 を含む QOL スケールの必要性 を述べてい る 。 この ことか ら、食道が ん患 者の QOL研究 には、影響す る因子の測定 用具 と し て、食道 がん術後の症状尺度、食行動 を含め た QOL尺 度の開発が必要ではないか と考 える 。 Ⅵ.手術療法 を受 けた食道 がん患者の QOLモデル試案 手術療法 を受 けた食道 がん患者の QOL に影響す る要 時間軸 因 を文献か らみ ると、食道がん患者の手術後健康事象 と して、食事 に関す る問題が多 く見 られ た。例 えば手術後 0分前後、 は食事回数が 1日 5- 6回 とな り食事時間 1回3 食行動の変化 と して食事内容 、晴好に変化が あ り、満腹 感、空腹感 が 自覚 で きない、飲 酒 ・外食 がで きない38)。 また消化器症状 として狭窄感 による摂 食時のつ まり、 胃 -6- 図 1 手術 療 法 を受 ける食道 が ん患者 の退 院後 QO L概念 モデル試案 大阪 市立 大学 看 護 短期 大学 部紀 要 Ⅶ.おわ りに 第 6巻 ( 2004. 3) 1 999. 1 6) 森 昌造 :食 道 癌 の 外科 的治療 一成 績 向上 の道 程 -、 QOL に影響 す る要 因 は、 退 院 後 の生 活 に関 す る満 足 感、 幸 福 感 の 認 知 的主 観 的 評価 に 何 らか の 影 響 を与 え る要 因 とす る と、 QOL を冗 進、 低 下 す る場 合 もあ るが 1 7) 東浩 司他 ‥食道癌 術後早 期 にお け る呼 吸器合 併症 の 社 会的機 能、心理 面、 身体 的症状 、 身体 的機 能 、 デモ グ ラ フ ィ ック要 因 が あげ られ る 。 日本 外 科 学 会 雑 誌、 第 98巻, 第 8号, p700-705, 1 997 2000. 発生要因 ,日本集 中治療 学 会医学会 , 各項 目内容 につ いて は、 QOL モデル を基 に、検 証 して い くことが必要 で あ る ngl ebr eat hCO2 a mI ys i sに よ る 1 8) 小竹 良文 他 者 :si 食道癌術 後の呼 吸機 能評価 。 集 中治療 学会 医学 会 総 会 2002 引用文献 1 9) 松岡博 史他 著 :食道癌 手術 後の急性 呼 吸不全 に対 し 体外酸素 化 を中心 と した呼吸管理 を行 い救命で きた 1)看 護学大辞典 ( 大 四版) メジ カル フ レン ド杜 , 1 997 1例,集 中治療 学 会医学 会総会 2002 2) 長 谷川啓之編 ‥最 新英和経済 ビジネ ス用 語辞 典 春 20) 杉 山圭蔵 ,磨 伊 正義 :食 道再 建 の利 点 と欠点, 南 山 秋 社,東京, p1 220,1 997. 堂 p468479,1 998. 3) 中 島 義 明 他 編 ‥心 理 学 辞 典 有 斐 閣, 東 京 , p201 , 2003. oft heesophagus: l i ngt erm f unct i onandqual i t yof 4)Gi l lT,etal:A c ri t i c ala pprai s aloft hequal i t yof -l i f emea s ur ement sJAMA 272:61 9_ 261 994 5)Qual i t yofl i f e研 究 会 21 )McLart y, A. ∫etal : Es ophagealres ect i onf orcanc er l i f e, AnnThora cSur g63 (6)1 56872.1 997 M,etal:Qual i t yofl i f e 22)Bra ni ckiFJ,Law SY,Fok, 苗 代 隆 監 訳 :評 価 と応 用, 41 ,1 993. 丸善 プ ラネ ッ ト p81 i npat i ent swi t hcanc eroft hee s opha gusandgas t ri c g car di a:acas ef orpal l i at i ver es ect i on,ArchSur QOL 研 究 」 の動 向 6) 中 山健 夫 他 :わ が 国 に お け る 「 Mar; 1 33 (3):31 6221998 一文 献 的 レ ビュ ー、 第 2回 日本 行 動 医 学 会 抄 録 集, p2021,1 995 23)Col l ar dJM,Ot t eJB,ReynaertM,etal:Qual i t yof l i f et hreeyearsormoreaf t eresophagect omyf or 7) smeenk,F etal:TransmuralCareofTermi nal f ect sont heQual i t yofl i f eof CancerPat i ent s,Ef di rectCaregi vers,Nursi ngResearch.47 (3), p1 291 35, 1 998. canc er .∫Thora cCar di ovas cSurgÅug;1 04 (2): 39ト 4 1 992 24)BabaM,Ai kouT,Nat sugoeS,etal:Apprai sal oft enyearsurvi valf ol l owi ngesophagect omyf or anat oryModelof 8) st ui f bergen,A etal:AnExpl car ci nomaoft hee s opha guswi t he mpha si sonqual i t y Heal t hPromot i onandQuari t yofl i f ei nChroni c ofl i f e.Worl dJSur g Mar Apr;21 (3),282-5, si ngResear ch 49 (3) Di s abl i ngCondi t i ons,Nur 1 997 p1 221 29,2000. 25)Dal key,N &Rourke,D :TheDelphiprocedure i t yofl i f ei nCor onar yArt er y 9)Lukkari nen,H :Qual andrat i ng qual i t yofl i f ef act ors.I n Qual i t yof Di sease, Nursi ngResearch.47 (6), p337343, .Envi ronment alProt ect i onAgency, Li f eConcept 1 998. Wa s hi ngt on,Dc.1973 1 0)Ma s t ,M. E :Def ini t i ona ndMea s urementofQuari t y ofLi f ei nOncol ogy. Onc ol ogyNur si ngFor um Vo1 22 ,p975964,1 995. (6) t heypri vat el yknownandpri vat el y 26)Andrew 良 Wi eval uat eda s pect sofl i f e,p1 2,1 976. 27)01 es onM :Subj ect i vel yPercei vedQual i t yofl i f e. W :Cancer,anxi et y,andqual i t yof ll )Mccafrey,D. Jour nalofNur si ngSchal a rs hi pVo1 22 (3)1 871 90 1 990 ernur s i ngVo18 (3), p1 5ト158,1 985. l i f e,Canc 1 2) 厚 生統 計協 会 :国民 衛生 の動 向, 第 50巻 9号, p50, 2003 28)MeebeI ・ g G :Qual i t yofl i f e:aconceptanal ysi s Jour nalofAdvancedNurs i ng1 8.32381 993 29) 黒 田裕子 :虚 血性 心疾 患 を持 ちなが ら生 活す る男性 1 3) 磯野可- 著 :食 道 がんの臨床 , 中外医学 社 1988. の クオ リテ ィ ・オ ブ ・ラ イフに関す る記述 的研究 一 1 4) 武 藤 輝 - 著, 田通 達 三 監 :標 準 外 科 学 第 8版 医学 日常生活 の管理 とセ クシュア リテ ィか らの分析 一看 466.1 998. 書 院 p447 1 5) 食 道 癌 取 扱 い 規 約 第 9版 日本 食 道 疾 患 研 究 会 縮 24 (2).p1 671 77,1 991 護研究, vo1 -7- 大阪 市立大学看護短 期大学部紀 要 第 6巻 ( 2004. 3) 30)Ca l ma nDC :DeBni t i on sa nddi mens i on sofqua l i t y ofl i f e.I nN. K Aa r ons on 良 ∫. H. Be c kma n( Ends ), 81 081 5,1 998 36)Cel l aDF,etal:TheFunct i onalAss es s mentof Thequal i t yofl i f ec a nc erpat i e nt sNe wY Ca nce rThe r apys c a l e;De vel opme ntandval i dat i on RK :Ra ve nPr e s spL1 8,1 987. 0579, oft hege ner almea s ure.∫Cl i nOnc olll,57 31 )Sc hi ppe r,H.a ndLe vi t t ,M :Meas uri ngQual i t yof Li f e:Ri s ka ndBe nef it s .Ca nc erTr e a t me ntRe por t s , 69 ( 1 0).111 5 11 2 3,1 985 1 993. l l i amsMH,BrookesST,etal 37 ) Bl azebyJM,Wi :Qual i t yofl i f emeas urementi npat i ent swi t h 32)Revi ckiD. A :Heal t hrel at edqual i t yofl i f ei n oe s opha ge alca l l C e r .GutOc t;3 7(4):505 -8 1 995. t he e va l ua t i onofmedi c alt he r a pyf orc hr oni ci l l ne s s. 38) 永峰 卓哉 ,柿 川房子他 :食道癌患 者 の退 院後の食生 TheJo ur nalofFa mi l yPr a c t i c e29 (4), 377 380, 3回学術 活 に関す る研究, 日本 がん看護学会誌,第 1 1 9 89. 集会講演集 Vol . 1 31 999. 33) 福原俊一, 鈴鴨 よ しみ :臨床 の ための QOL評価 ハ 48,2002. ン ドブ ック,医学書院 ,p34- 39) 贋 田優子,足立和代他 :食道癌術後の栄養管理 につ . いて ,第49回 日本栄養改善学会学術総会, 2001 3 4)Aa r on s onNk, e tal:TheEur opeanOr ga ni z at i onf or 40) 村田千代、沖 田恵子他 :食道 がん患者 の生活障害 に Re s ear c ha ndTr eat mentofCanc erQLQC30;A 対す る支援 システム検 討 一事例 を通 して 一岩手 県立 qual i t yof l i f ei ns t r umentofusei ni nt er nat i onal 37 44,2002. 大学看護学紀要 4, c l i ni c alt ri al si nonc ol ogy∫Nat lCa nc erl n s t85: 3 65 37 6,1 993. 41 ) Kni ppenberg・out・Ti l anus・etal:Qual i t y of Li f ei npat i ent swi t hr e s e c t e doe s o pha gr al c anc er , 35) KobayashiK,etal:A cross_ val i dat i on。ft he Eur opea nOr ga ni z at i onf orRe s ear c ha ndTr ea t ment p1 391 45,1 992 42)spec t orN 良Hi c ks:Qual i t yofLi f eandSympt oms ofCancer QLQ-0 0( EORTC QLQ-C30) f or Af t erSurgeryf orGast roes ophagealCancer,A Japanesewi t hl ungcancer,Et l rJ Cancer3 4: Pi l otSt udy,p1 20 1 25,2002 -8-
© Copyright 2024 ExpyDoc