伸びる結節線 山谷における風景を最大化する建築のかたち 敷地周辺は昔ドヤ街と呼ばれ、日雇い労働者が集まる簡易宿泊所の密集地であった。高度経済成長期には約2万人の労働者が 集まり、簡易宿泊所が300軒以上建ち並び活気に溢れていた。しかし、時代と共にそこで生活する人々の種類は変化し、生きる力 に満ちていた街の魅力は薄れてきた。 新たに流入してきた外国人バックパッカーや観光客などを取り込むことで、この場所に既にあるものを変質させ、既存のまち と融合したものを生み出し、再び生きた街に変える計画である。 均質で閉鎖的な商店街に絡み合う連続した建築を挿入し、周辺環境を取り込んで、商店街にアクセントをつける。 issue 建物は都市に対して寛容さを失ってしまった。敷地は自動車に占拠され縁側と庭を持たず、 建物は室内環境をコントロールするようになり窓を締め切り、外部に対して遮断した空間 となり、建物の中で何が起こっているのか外部から伺い知れなくなった。 site @ TAITOKU , TOKYO diagrams diagram 1 ドヤ人と住民はある一定の距離を保ち共存してきた。その関係を崩さず、新たに流入してきた 観光客を取り込むとともに公共の場を還元し、新たな関係をつくりだすようゾーニングする。 住宅街 住商併用建物 宿泊・遊興施設 スポーツ・興行施設 ドヤ街 専用独立住宅 集合住宅 台東区敷地利用図からまちを読み解く。 tokyo nihonzutsumi taitou ku 台東区人口変移 240,769人 日本堤1丁目 人口合計 1975年 207,649人 1980年 186,048人 70` 戦後、日雇い労働者の街として発展を遂げたこの地域は、現在、転換 2500人 1985年 176,804人 2000人 1990年 162,969人 1500人 1995年 153,918人 1000人 2000年 156,325人 500人 の時期にある。南千住北側では高層ビルや、タワーマンション、駅を 中心に数多くの施設が続々と計画されている。また、観光資源が多く 存在する台東区にあるこの街では、外国人の流入が目立つ。ここに、 2005年 165,186人 80` 90` 00` 10` 2010年 176,092人 diagram 2 東京都台東区日本堤 高齢者合計 1970年 240,769人 153,918人 住宅街、ドヤ街それぞれにひらく。 92` 02` 宿と住宅、周辺の住民を取り込む複合施設を提案する。 12` ー ア ケ ー ド 道 路 _ 台東区 日本堤 ケ アー ード images of site 計画敷地はいろは会商店街に面する日本堤1丁目とする。 街区内部には小規模な建築群がひしめき合い、これら住宅 の多くは築60年を越え、建て替えの時期を迎えている。 本来繋がっているはずのアーケード。しかし、2つのアーケードを分断する1本の道路。 連続体という曖昧な意味としてのパブリックな空間とプライベートな空間。 この地域の近隣活動のホットな結束点としての空間。 いろは会商店街 閑散とした商店 飲食店 堅く守られた擁壁 人を寄せ付けない柵 夜の商店街 6FL 5FL 4FL 3FL 2FL 1FL height of buildings site use A B service : 22 service : 10 house : 19 house : 5 total : 41 ( 22 ) a c b e d i A B f g j h 計画敷地 調査敷地 total : 15 ( 7 ) ※total(vacant) a b c d e service : 3 service : 1 service : 3 service : 4 service : 5 house : 18 house : 18 house : 11 house : 2 house : 6 total : 23 total : 22 total : 15 total : 10 total : 11 f g h i j service : 4 service : 7 service : 8 service : 5 service : 12 house : 8 house : 5 house : 7 house : 4 house : 5 total : 12 total : 14 total : 18 total : 11 total : 18 1 2 1 4 3 16 8 7 15 32 64 31 63 127 plan ( GL+1600 ) 1:200 本屋 服屋 屋 定食 bar 立飲み屋 (m ) diagrams diagram 1 住宅、ドヤ街にひらく中庭 商店街にひらく中庭 劇場のような焦点に集中させる傾斜を 軒先での会話を誘発させるため奥に行 あたえることで商店街に対してひらく くほど傾斜がキツクその先にある軒先 広場としての中庭のありかた。 空間で人々の賑やかな風景を生み出す。 (傾斜の角度は7°→人間工学的に 軽く腰掛けやすい角度より) diagram 2 住宅、ドヤ街にひらく中庭のありかた。 街での人の動きを読む 不特定多数 住民 使うひとを読み解く ドヤ人 上記より断面的な視覚の操作をする 商店街(不特定多数) 直接的な視線の抜け 間接的な視線の抜け ドヤの人が多い通り 同じ色には直接的な視線の抜け 違う色に対しては間接的な視線の抜け ドヤ街に開いている中庭 (これをもとに全体も計画していく) diagram 3 山谷においてネガティブと思われている風景をうまく 建築的に取り入れ、ポジティブに使うことで、山谷の 風景を残しつつ、新たな山谷として生まれ変わる。 人を寄せ付けないブロック 斜めからは内部が見えず、プライバシーが保たれる 光を頼りに寝る人 人を寄せ付けない柵 正面に立つと、うっすら他者の存在を確認できる 夜はカーテンが閉まり、街に行灯のような 距離感を保った共存 暖かい光が街にこぼれる これらの操作は、都市に対して寛容さをなくした建築に対して、住民の振る舞いを 住民、バックパッカー、ドヤの人が建物や 町並みに溶け込ませることで「建物の内部に家族の生活以外の事が起こる」建物を 中庭を動線とし有機的に活動を展開する。 都市に対して寛容な存在に転換する要素を含ませる。 ima ges of photo c e a d b 商店街 道路 a b c d e a b c d e : : : : : 公共空間 住民中庭 誘発する屋根 商店街中庭 角地 別々の機能をもった広場をつなぐ公共空間 軒先(縁側)空間へ誘発する傾斜をもうける 道路で分断された商店街を繋ぐ屋根と天井 人が滞留できる広場をもうける 山谷の賑わいを醸し出す立飲み屋とテラス 1 2 1 4 3 16 8 7 15 32 31 63 plan ( GL+4400 ) S=1:200 ホール 図書コーナー (m ) 1 2 1 4 3 16 8 7 plan ( GL+7200 ) S=1:200 15 32 31 63 (m ) section s e c t i o n o f a - a` ( 1:100 ) s e c t i o n o f b - b` ( 1:100 ) 商店街に対して開く中庭と、住宅街に開く中庭。別々の機能をもった 広場でありながら中心の中和空間をかいして、1つの広場として繋がる。 d e b a c a 商店街 道路 b c d e a b c d e : : : : : 屋根 エントランス 広場 連絡橋 裏道 それぞれの広場は連続する屋根によって視覚的にもゆるやかに繋がる 大きく開口をあけたエントランスが今までになかった人の動きを誘発する 消費活動ばかりに占められた空間を開き、人の為の場所をつくる 道路によって分断されていた街。新たな立体的インフラによりつながる スラブと屋根のラインを合わすことにより、形態の連続性をはかった
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