JOGMEC NEWS vol.25 - 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

JOGMECからの様々なお知らせです。
最新の事業やニュース、
イベントなどをご紹介します。
JOGMECホームページより、
各記事の詳細情報をご覧いただけます。 http: //www.jogmec.go. jp/index_news.html
2011.5.6
本部を東京都港区に移転
外
堀
溜池山王 首相官邸
通
り
内閣府
財務省
首相公邸
経済産業省
溜池
5月6日、JOGMECは、本部を神奈川県川崎市から東京都港区
(虎ノ門)
へ移転しました。また、
これに併せて、
石油・天然ガス
JOGMEC
開発部門の一部組織改編を行いました。これを契機に、
役職員
13番出口
一同、
これまで以上に、
日本の資源・エネルギーの安定供給に貢
アクセス:東京メトロ銀座線・南北線「溜池山王」駅 徒歩5分
東京メトロ銀座線
「虎ノ門」駅 徒歩 6分
六本木
一丁目 サントリー
ホール
六本木
一丁目
サウジアラビア
大使館
東京メトロ日比谷線「神谷町」駅 徒歩7分
新海洋資源調査船
「白嶺」が進水
金属
2011.3.25
虎ノ門
3番出口
ホテルオークラ東京
虎ノ門
一丁目
虎ノ門
三丁目
愛宕
一丁目
スウェーデン
大使館
4a出口
テレビ東京
神谷町
西新宿
交番前
愛宕神社前
オーストラリア北西沖合の
石油等の探鉱事業への
出資を採択
石油・天然ガス
3月23日、三菱重工業(株)下関造船所において、JOGMEC が
3月25日、
JOGMEC は、
三菱商事
(株)
の子会社がオーストラリア
建造する新たな海洋資源調査船の進水式を行いました。進水
の北西沖合で推進する石油等の探鉱事業を出資案件として
式 では 、河 野 理 事 長 が
採択しました。同社は、
ロイヤル・ダッチ・シェル子会社との間
船 名 を「 白 嶺( は く れ
で、オーストラリア北西沖合鉱区の権益譲渡契約を締結して
い )」と命 名し 、船 体 の
います。プロジェクト成功の際には、
同社のオーストラリアにお
進水が無事に行われま
けるさらなる事業の拡大と日本のエネルギー安全保障への貢
した。
「白嶺」は、総トン
献が期待されます。
数6,200トン、全長118
メートル、2種類の大型
2011.4.25
掘削装置や各種の最新
本周辺海域の海洋資源
JOGMECは、カナダのブリティッシュ・コロンビア州コルドバ地域
の 探 査・開 発 で の 活 躍
において、三菱商事(株)が子会社を通じて推進するシェールガスを
が 期 待 さ れ て い ま す。
中心とした天然ガス開発事業を出資案件として採択しました。プロ
今 後 、船 内工 事 が 施さ
ジェクトには、JOGMECに加えて電力・ガス会社も参加し、官民一体
れ、2012年2月の就航を
の体制で進められます。将来的には、LNG(液化天然ガス)
として日
予定しています。
本へ輸出する可能性についても検討が進められる予定です。本件
進水式の様子
は、JOGMECのシェールガス事業の支援第一号案件となります。
https://www.jogmec.go.jp/contact /
▼
本誌に関するご質問は、
ホームページの
「お問い合わせ」
まで
石油・天然ガス
天然ガス最新事情
調 査 機 器 を 搭 載し 、日
カナダのシェールガス
開発事業への出資を採択
◎特 集LNGからメタン
ハイドレートまで
2011.3.23
虎の門
病院
vol.
表紙:国家備蓄石油ガスの緊急放出を実施した神栖国家石油ガス備蓄基地LPガスタンク。
25
2 011 . 6
J U N.
東日本大震災について
日本郵政
銀座線
日比
谷線
首都高
速都心
環状線
(西棟13∼20階 JOGMEC総合受付16階)
虎ノ門
桜田
通り
住 所:東京都港区虎ノ門2-10-1 虎ノ門ツインビルディング
アメリカ
大使館
南
北
線
献するべく努力していきます。
文部科学省
特許庁前
JOGMEC NEWS vol.25
溜池
山王
資源とエネルギーの明日を伝える
[ 広報 誌 ]
J.Letter
ジェイ・レター
資源とエネルギーの明日を伝える
[広報誌]
天然ガス
最新事情
◎特集 LNGからメタンハイ
ドレートまで
2011. 6 JUN.
JOGMEC関連施設の
被害状況
むつ小川原
国家石油備蓄基地
青森県上北郡六ヶ所村
青森 青森
被害状況
●地震による被害なし
●停電時は自家発電で対応
し、
現在は通常操業
小坂
金属資源技術研究所
秋田県鹿角郡小坂町
東日本大震災について
秋田
被害状況
●地震による被害なし
秋田
岩手
岩手
岩手県久慈市
秋田
国家石油備蓄基地
秋田県男鹿市船川
3月11日に発生した東日本大震災により、
お亡くなりになられた方々に深い哀悼の意を表するとともに
被災された方々、
避難生活を余儀なくされている方々に
心よりお見舞い申し上げます。
操業を行う岩手県久慈市の久慈国家石油備蓄基地が、
被害状況
●地震による被害なし
津波による大きな被害を受け、
現在も復旧活動を行っています。
私たちJOGMECは、
使命である資源・エネルギーの安定供給に貢献することが
震災復興の一助になると信じています。
公的機関の一員として、
社会からの要請に応えるべく、
役職員一丸となり不断の努力を続けていきます。
福島
旧松尾鉱山
新中和処理施設
福島
岩手県八幡平市
被害状況
●地震による被害なし
●停電時は自家発電で対応
し、
現在は通常操業
栃木
茨城
茨城
神栖
国家石油ガス備蓄基地
希少金属備蓄倉庫
茨城県神栖市
茨城県
被害状況
●地震による被害なし
●停電時は自家発電で対応
し、
現在は通常操業
被害状況
●地震により備蓄物資に荷崩
れが生じたが、
外部への影
響なし
久慈国家石油備蓄基地の復旧作業
独立行政法人 石油天然ガス
・金属鉱物資源機構
宮城
群馬
地震発生以来、
日本中の多くの人々が力を集結し、
この未曾有の危機を乗り越えるべく、
様々な取り組みを行っている中
山形
東北
鉱害防止支援事務所
新潟
JOGMECにおいては、
人的被害はありませんでしたが、
被害状況
●津波により管理棟建屋を除く
ほぼ全ての地上設備が倒壊
●岩盤貯蔵設備の被害なし。
原油流出もなし
●油回収船が基地隣接地に
乗り上げ、
防災船は大破。陸
上保管中のタンカー係留ブ
イ6基が流出
宮城
山形
被害状況
●地震による被害なし
●停電時は自家発電で対応
し、
現在は通常操業
山形県山形市
久慈
国家石油備蓄基地
東日本大震災により甚大な被害を受けた東日本において、
JOGMECは3か所の国家石油備蓄基地をはじめ複数の関連施
設を操業しています。中でも最も被害が大きかったのは、
高さ
8メートルを超える津波に襲われた岩手県の久慈国家石油備
蓄基地です。基地職員が地下設備を守る防潮扉を閉めてから
避難したため、
地下設備は津波による被災を免れましたが、
地
上設備はほぼ全壊しました。
JOGMECでは、
被災直後より現地に対策本部を設置し、
関係企
業等と右欄のとおり各種復旧作業を行ってきました。これらの
作業により、
地下岩盤タンクの原油は漏出することなく安全に保
管されています。現在、
基地施設の復旧建設工事を実施してお
■応急復旧作業内容
1. 地下岩盤タンクの貯油システムの維持
《岩盤タンク底水の排水と不燃ガスの供給》
岩盤タンク内にしみ出した地下水を排出するため、
3月19日に仮
設発電機を設置し、
排水ポンプを稼働、
また3月20日には、
岩盤
タンク内の圧力を調整するための不燃性ガス充填装置を設置
《人工水封水の確保と供給》
岩盤タンク内の原油を安定的に封じ込めるために仮設の水源を
確保し、
3月20日より岩盤タンク周辺に供給を開始
2. 事務所棟の機能回復
3月20日より東北電力からの受電を再開、
3月25日より電話回
線復旧
3. 係留ブイ等の回収
津波により三陸沖に漂流していたタンカー係留ブイ3基を回収
し、
4月27日に久慈港に陸揚げ、
また陸地に乗り上げた油回収
船を5月5日に港に移動させ、
修理のため室蘭の造船所に曳航
り、2013年度内の完了を目標に速やかな復旧を行う予定です。
2
JOGMEC NEWS vol.25
東日本大震災について
東日本大震災について
vol.25 JOGMEC NEWS
3
国家備蓄石油ガスを緊急放出
特集◎
■国家備蓄石油ガスの放出フロー
配管により約4
万トンのLPG
を移送
(放出)
東日本大震災の影響による石油ガスの供給不足に備
え、
JOGMECは資源エネルギー庁より国家備蓄石油ガ
国家備蓄タンク
ス放出の検討指示を受けました。これに伴い、3月17
神栖国家石油ガス備蓄基地
日に
「国家備蓄石油ガス放出準備チーム」
を設置し、
放
民間備蓄タンク
東北地方
(被災地)
へ
出荷
鹿島液化ガス共同備蓄
(株)
鹿島事業所
出に際しての情報収集、
放出に向けての体制整備を
行い、
逐一国へ報告。3月31日には経済産業省より国
家備蓄石油ガスの放出指示※1を受け、
4月4日から3日
民間備蓄タンク
間にわたり、神栖国家石油ガス備蓄基地から隣接す
所有権の移転により
国家備蓄の減少分を確保
る鹿島液化ガス共同備蓄(株)鹿島事業所へ、約4万
大分液化ガス共同備蓄
(株)
大分事業所
トン※2 のLPG(液化石油ガス)
を放出しました。この
LNGからメタンハイ
ドレートまで
天然ガス最新事情
東日本大震災以降、
全国的な電力不足が懸念されています。
本特集では、
日本の発電用燃料の主力の一つである
「天然ガス」
にスポットを当て、
資源特徴や安定供給に向けた取り組みを紹介します。
LPGは、
震災の影響によりLPGの入荷が困難な東北
地方の基地への供給を目的としたものです。
今回の国家備蓄石油ガスの放出は、2 0 0 5年 7月の国
家石油ガス備蓄基地の操業開始以来、初めての事例
となります。なお、
国家備蓄の減少分は、
別の民間備蓄
基地のLPG所有権を国に変更することで確保し、
引き
続き東北地方(被災地)へのL PG 安定供給に万全を
期しています。
※1「石油の備蓄の確保等に関する法律」第 31条の2
(国家備蓄石油
の交換)
に基づいた放出指示。
※2 東北地方における2010年3月のLPG販売量の約4割に相当する量。
神栖国家石油ガス備蓄基地
国家石油ガス備蓄基地の概要
JOGMECでは現在、
国内5か所
(うち2か所は建設中)
の国家石油ガス備蓄基地を業務運営し、
合計63.6 万ト
ンの国家石油ガスを備蓄しています。
※備蓄量は2011年3月31日現在
福島国家石油ガス備蓄基地
長崎県松浦市福島町
施設容量:約20万トン
備蓄量:約19.5万トン
波方国家石油ガス備蓄基地
愛媛県今治市波方町
施設容量:約45万トン
(現在建設中)
地上低温タンク方式
平底円筒式 の二重 殻タ
ンクの中で冷却液化され
た石油ガスを低温で貯蔵
する方式。
神栖国家石油ガス備蓄基地
茨城県神栖市
施設容量:約20万トン
備蓄量:約19.6万トン
七尾国家石油ガス備蓄基地
水封式地下岩盤貯蔵方式
地下にトンネルのような空
洞を掘り、
地下水圧により
常温の石油ガスを貯蔵す
る方式。
倉敷国家石油ガス備蓄基地
岡山県倉敷市
施設容量:約40万トン
(現在建設中)
石川県七尾市
施設容量:約25万トン
備蓄量:約24.5万トン
私
たちの生活に欠かせない電気ですが、
その国内消費量は戦後からほぼ
一貫して増え続けています。2008年度の発電電力量
(一般電気事業
用)
は9,915億kWhに達しました。第一次石油ショックが起きた1973年度の発
電電力量が3,790億kWhであるため、
この3 5年で約2.6倍に増加したことにな
ります。また、
発電に用いられるエネルギーの構成割合も大きく変化しました。
1973年当時の発電用燃料の主流は石油でしたが、2 度の石油ショックの経験
から、
日本は石油依存の低減を目指し、
天然ガスや原子力、
新エネルギーなど
の導入を進めてきました。その中でも、
現在最も大きな割合を占める発電用
燃料が
「天然ガス」
です。次ページ
(P6)
より天然ガスの資源特徴や開発状況、
JOGMEC NEWS vol.25
東日本大震災について
水力・地熱・
新エネルギー
揚水
1%
天然ガス
石油等
12 %
石炭等
9.915
25 %
また天然ガスの一種であり次世代エネルギーとして注目されるメタンハイド
レートについて紹介します。
4
■電源別発電電力量
(一般電気事業用)
2008年度
28 %
8%
億kWh
原子力
26 %
《出典:資源エネルギー庁
「電源開発の概要」
》
特集◎LNGからメタンハイドレートまで 天然ガス最新事情
vol.25 JOGMEC NEWS
5
特集◎LNGからメタンハイ
ドレートまで 天然ガス最新事情
日本の電力、
都市ガスを支えるエネルギー
石油調査部 調査課
天然ガス 基礎講座
POINT 1
POINT 4
ガス燃料としてLNGとLPGを一括りに捉えられることがありますが、
下記表の
LNG船により
日本へ輸送されています。
通り、それぞれ製造方法や成分、使用方法が異なります。LNGは「Liquefied
天然ガスを燃焼しても、
酸性雨の原
天然ガスの供給方法は2通りあります。
Natural Gas
(液化天然ガス)
」
の略称で、
天然ガスを液化した燃料です。一方、
因となるSOx( 硫黄酸化物)
が 発生
世界的に主流なのはパイプラインを通
LPGは
「Liquefied Petroleum Gas
(液化石油ガス)
」
の略で、
石油ガスを液化して
しません。また、
光化学スモッグなど
じて気体 のまま供給する方法で、
世界
つくられます。世界のガス生産の主流はLNGを含む天然ガスであり、
石油ガス
大気汚染の原因とされるNOx
(窒素
総生産量の約9割がこの方法で供給さ
(LPG)
の生産規模はそれほど大きくありません。また、
LPGは石油製品の副生
酸化物)や地球温暖化につながる
れています。残りの約1 割は、
天然ガス
2
CO(二酸化炭素)
の排出量も石油や
を液化し、
LNGとして輸送されていま
■LNGとLPGの比較
されるケースも
多く、
統計資料な
主成分
どでは石油製品
製造方法
の一つとして表
記され ることも
日本での
主な使用方法
あります。
LNG
LPG
メタン
天然ガスを約--160℃
の極低温で液化
プロパン、
ブタン
石油ガスを
加圧・冷却して液化
発電用燃料や
都市ガス原料
家庭用プロパンガス
やタクシー燃料
ため、
供給安定性に優れています。日本の原油輸入の約8 7%を中東地域の国々
その他の
中東地域
2.9 %
オマーン
1.0 %
その他 7.6 %
※単位発熱量あたりの排出量を
石炭100とした場合の割合
2.1%
中東地域
24.5 %
カタール
11.9 %
サウジ
アラビア
クウェート
総輸入量
7.6 %
カタール
10.8 %
24,321
27.8 %
万キロリットル
UAE
イラン
23.8 %
11.8 %
総輸入量
オーストラリア
17.9 %
マレーシア
19.6 %
86.9 %
JOGMEC NEWS vol.25
100
天然ガス
石油
■日本国内の主な油ガス田
油ガス田
スが産出されています。これらの地域で生産された
岩手
岩船沖
天然ガス価格は、
地域により異なります。
57
市場により国際価格が決定する原油に対し、
天然
ガスは地域により価格決定方式が異なります。天然
80
100
由利原
油ガス田
油ガス田
70
POINT 6
青森
秋田
費量の2 パーセント程度を占めています。
100
勇払
油ガス田
鮎川
県、
秋田県、
北海道などにもガス田は存在し、
天然ガ
周辺の地域へ供給されており、
現在、
国内天然ガス消
40
山形
東新潟
宮城
中条
ガス田
吉井
ガス田
新潟
福島
ガス田
南長岡
東柏崎
ガス田
ガス田
片貝
ガス田(深層)
ガスは原油と比較し開発コストが高く、
またパイプ
ラインや液化プラントなど、
供給先により必要設備
《出典:天然ガス鉱業会》
も異なるので、
商業化以前に供給側
(輸出国)
と買
8.1%
中東依存度が低く、
環境にやさしいところが
天然ガスのメリットです。
インドネシア
20.5%
オマーン
《出典:資源エネルギー庁
「日本のエネルギー2010」
》
特集◎LNGからメタンハイドレートまで 天然ガス最新事情
電力に変換して
供給
北海道
天然ガスは、
パイプラインやコンテナ、
ローリーにより
NOx
(窒素酸化物)
UAE
4.5%
中東地域
発電所
日本
天然ガスの生産地は海外だけではありません。新潟
70
石炭
家庭
LNGを気化
産出国
日本国内でも生産されています。
0
石炭
6,813
万トン
気化 天然ガス
設備 (気体)
POINT 5
SOx
(硫黄酸化物)
CO(
2 二酸化炭素)
アメリカ
パイプラインを
通じて供給
■SOx・NOx・CO2 排出量の比較
石油
3.2 %
スーダン2.4 %
その他 4.2 %
海上輸送
ています。
からもバランスよく輸入しています。
インドネシア
LNG
ンなエネルギーといえます。
天然ガス
■日本の天然ガス輸入元
(2008年度)
ブルネイ 9.0 %
約--160℃
で液化
LNG
タンカー
す。液化プラントやLNGタンカーが必要になるため、
パイプライン輸送と比較して高
が占めるのに対し、
天然ガスは東南アジアやオーストラリアなど中東以外の地域
■日本の原油輸入元
(2008年度)
ロシア 3.4 %
ガス田
液化
プラント
コストになりますが、
産出国から遠く離れた日本や韓国は全量をLNGとして輸入し
石炭
産出国が中東に偏る石油とは異なり、
天然ガスは世界各地に広く存在している
天然ガス
(気体)
石炭と比較して少ないため、
天然ガ
石油
世界各地に存在し、
供給安定性に優れています。
都市ガス
■天然ガスの供給フロー
(日本の家庭に届くまで)
スは化石燃料のなかでも最もクリー
天然ガス
POINT 2
アジア太平洋地域の石油ガス
開発状況・プロジェクト調査、
世
界ガス・LNG事業状況調査が
主要業務。また、
世界ガス協会
ガス市場委員会の東アジア・グ
ループリーダーも務めている。
7つのポイントをJOGMECの専門家が解説します。
他の化石燃料に比べて
クリーンなエネルギーです。
燃 料として生産
6
その特徴を正しく理解するための
POINT 3
「都市ガス」
は天然ガス、
「プロパンガス」
は石油ガスからつくられます。
坂本茂樹
発電用燃料や都市ガスとして私たちの生活を支える天然ガス。
主側
(輸入国)
の間で10∼30年程度の長期売買契
約を結ぶケースが一般的になっているのです。た
だし、
アメリカとイギリスについては石油と同様に
市場で価格決定が行われています。日本では長
■日本の天然ガス調達方法
調達方法
長期売買契約
スポット購入
メリット
長期安定的に調達可能
需要に合わせて調達可能
デメリット
総じて
市場価格より高額
価格の変動が大きく、
安定的に調達できる保証がない
割合
9割以上
1割以下
期売買契約で安定的に天然ガスを調達しなが
ら、
想定外の猛暑、
厳冬といった気候変動等によ
り需要が大幅に変動した際にスポット購入し、
過不
足を補っています。
特集◎LNGからメタンハイドレートまで 天然ガス最新事情
vol.25 JOGMEC NEWS
7
特集◎LNGからメタンハイ
ドレートまで 天然ガス最新事情
日本の電力、
都市ガスを支えるエネルギー
天然ガス 基礎講座
POINT 7 日本企業による天然ガスプロジェクトが世界各地で行われています。
世界で生産される天然ガスの7割は生産地域や国内で消費されます。国境を越えて取り引きさ
れる天然ガスのうち、
欧州・北米では輸出用パイプラインが早期に整備され、
これを通じて輸出
Pick up
入されています。しかしアジアは、
日本、
韓国等のガス需要国と、
インドネシア、
マレーシア、
ブル
ネイ等のガス供給国との距離が遠いため、
当初よりLNGによる天然ガス開発プロジェクトが
ボンタンLNG
MLNG
組成され、
日本の民間企業や政府機関も数多くのプロジェクトに関わってきました。こうした
経緯から、
現在、
日本企業が参加する天然ガス開発プロジェクトの多くはLNG関連です。一方
でタイ沖合等の一部地域では日本企業による地域供給プロジェクトも進められています。
日本 向 け L N G 輸 出の上位 2 か国(前項
■日本企業が参画する主な天然ガス開発・生産プロジェクト
シア両国におけるLNGプロジェクトです。
POINT 2 参照)
であるインドネシア、
マレー
ユーラシア
北米
天然ガス年間生産量
天然ガス年間生産量
10億立方メートル
10億立方メートル
813.0
973.0
中東
LNG年間輸出量
9.8
天然ガス年間生産量
4 07.2
サハリン2
LNG年間輸出量
0.9
10億立方メートル
10億立方メートル
10億立方メートル
1970∼80年代以降、
長年にわたり日本へ
LNGを安定的に供給し続けており、
日本の
LNG供給の核となってきました。いずれ
のプロジェクトでも、
日本企業が開発・生産
している天然ガスも使用されています。
カタールガス/ラスガス
カタールガスプロジェクトは、
1990年代に
日本向けLNGプロジェクトとして日本の
官民支援の下で立ち上げられました。以
LNG年間輸出量
68.4
降、
カタールガス
(2-4)
、
ラスガス
(1- 3)
と拡
張が続けられ、2 010年末、世界 の約3割
10億立方メートル
を占める年間約7,700万トンのLNG生産
能力を有する基地が完成しました。
MLNG
ボンタンLNG
カタールガス/ラスガス
アフリカ
天然ガス年間生産量
203.8
イクシス
10億立方メートル
アジア・パシフィック
LNG年間輸出量
55.1
天然ガス年間生産量
4 38.4
10億立方メートル
10億立方メートル
LNG年間輸出量
生産段階
(日本政府またはJOGMECの出資対象案件)
開発段階
(日本政府またはJOGMECの出資対象案件)
生産段階
開発段階
※2011年6月現在
8
JOGMEC NEWS vol.25
88.6
10億立方メートル
特集◎LNGからメタンハイドレートまで 天然ガス最新事情
世界合計
サハリン2
天然ガス年間生産量
ロシア極東のサハリン島沖合で生産された
10億立方メートル
す。日本企業の三井物産(株)
と三菱商事
2987.0
天然ガスを液化するプロジェクトで、
年間約
960万トンのLNG生産能力を有していま
(株)
が権益の一部を保有し、2009 年には
LNG年間輸出量
242.5
10億立方メートル
日本向けのLNG輸出が開始されました。
中南米
天然ガス年間生産量
151.6
10億立方メートル
LNG年間輸出量
19.7
10億立方メートル
イクシス
西オーストラリア州・北部準州において進
められるLNGプロジェクトです。2016年の
生産開始に向け、
基本設計作業や環境影響
調査等の開発作業が進められています。
国際石油開発帝石
(株)
が権益の76%を保
有しており、
日本企業としては初めてオペ
レーターとして開発される天然ガスプロジェ
クトです。L NG生産能力は年間約84 0万
トンの計画です。
特集◎LNGからメタンハイドレートまで 天然ガス最新事情
vol.25 JOGMEC NEWS
9
特集◎LNGからメタンハイ
ドレートまで 天然ガス最新事情
未来の国産エネルギー
メタンハイ
ドレート
次世代エネルギー資源として世界的な注目を集める
「メタンハイドレート」
。
PHASE 2
フェーズ1の研究結果を基に、2009 年度よりフェー
ズ2を開始しています。最大のイベントは日本周辺海
域で2回実施予定の海洋産出試験です。2 011年6月
現在、
試験実施に向けた準備を行っています。
目標
日本近海にも多く分布することが推測され、
未来の国産エネルギーとして期待されています。
○海洋産出試験の実施による生産技術の実証と
このメタンハイドレートの開発に向け、
日本では1990年代前半から基礎研究がスタートしています。
商業的産出のための技術課題の抽出
2 001年7月には経済産業省から
「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」
が発表され、
現在、
JOGMECやAIST ※1を中心とした産学官共同のチーム
※1 AIST:
(独)
産業技術総合研究所の略称。
※2 砂質層孔隙充填型メタンハイドレート:深海海底下
の砂層の孔隙中に存在するメタンハイドレート
※3 BSR:Bottom Simulating Reflector
(海底疑似反
射面)
。海底下を地震探査した際に表れる特殊な反射
記録。
メタンハイドレートの存在を示し、
メタンハイドレー
ト濃集帯抽出のための一つの指標となる。
※4 MH21-HYDRES:MH21が独自に開発したメタンハ
イドレート生産シミュレータ。
メタンハイドレートの様々な
生産手法をフィールドレベルでシミュレーションするこ
とが可能。
○経済的かつ効率的な採収法の提示
○日本周辺海域での
メタンハイドレート賦存状況の把握
「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム
(通称:MH21)
」
により、
PHASE 3
○海洋産出試験を通じた環境影響評価手法の提示
商業化に向けた取り組みが行われています。
○日本周辺海域のメタンハイドレート層が
フェーズ1
・2の結果を基に、
商業的産出準備や経済
安全かつ経済的に開発できる可能性の提示
性、
環境影響等を総合的に評価します。
■我が国におけるメタンハイドレート開発計画 ※フェーズ1終了時に設定されたスケジュールです。
メタンハイドレートとは?
天然ガスの主成分であるメタン
をカゴ状の水分子が取り囲ん
だ物質で、低温高圧の海底下
や凍土下に存在します。人工の
メタンハイドレート結晶は白く
冷たい氷の様な形状で、
火を近
づけると燃焼することから、
「燃
える氷」
ともいわれています。
PHASE 1
2001 - 2008
PHASE 2
PHASE 1
PHASE 1
2001∼2008年度に実施されたフェーズ1において、
メタンハイドレートの
調査技術・分解生成技術・生産技術・環境影響評価などの基礎研究を実
成果ハイライト
○東部南海トラフにおいて開発可能性が高い
メタンハイドレート濃集帯を確認
○地震探査によるメタンハイドレートの
存在推定手法を確立
確率論的に計算
メタンハイドレートは様々な形態で存在しますが、
MH21
は石油・天然ガス開発の機器や生産手法を活かせる可能
性があることから、
石油や天然ガスとほぼ同様の形態の
「砂質層孔隙充填型メタンハイドレート※2」
に着目しました。
この形態のうち、
メタンハイドレート含有率が高く、
一定の
広さ厚さを有するものを
「メタンハイドレート濃集帯」
と名
付け、
東部南海トラフだけでも大ガス田クラスのメタンハイ
ドレート濃集帯が 存在することが分かりました。
東部南海トラフで実施した
基礎試錐の様子
○メタンハイドレート層からメタンガスの
メタンハイドレート生産における
メタンハイドレートを生産するためには、
メタンハイドレート
を地層の中で分解させ、
メタンガスのみを採取する手法の
確立が必要です。MH21は
「MH21-HYDRES※4」
によりシ
ミュレーションを行った結果、
減圧法を主体とする生産手
法がメタンハイドレートの産出に適していることが分かっ
てきました。これに伴い、
MH21は永久凍土地帯にメタン
ハイドレートが存在するカナダ北西準州において、
減圧法
によるフィールドテストを実施しました。その結果、
2008年
に世界で初めて減圧法による連続生産に成功し、
メタンハ
イドレート生産における減圧法の有効性を実証しました。
■減圧法の原理図
BSR
(濃集帯を示唆する特徴が
海域の一部に認められる)
約61,000k㎡
○メタンハイドレートの物性や
メタンハイドレートの構造
(▲メタン ●水)
PHASE 1
2016 - 2018
Pick up 「減圧法」
の有効性を実証
BSR
(詳細調査により海域の
一部に濃集帯を推定)
約5,000k㎡
メタンハイドレート原始資源量を
開発し、
手法を確立
大ガス田クラスの
■日本周辺のBSR※3 分布図
○東部南海トラフの
分解挙動を測定する室内実験機器を
PHASE 3
Pick up メタンハイドレートの存在を確認
施し、
世界初となる業績を複数挙げました。
人工のメタンハイドレートを
燃焼させた様子
2009 - 2015
水汲みあげ
BSR
(濃集帯を示唆する特徴がない)
約20,000k㎡
メタンガス
回収
BSR
(調査データが少ない)
約36,000k㎡
メタンガス回収
抗井内の水頭を下げて
メタンハイドレート層に
かかる圧力を減圧
産出挙動を予測する日本独自の
メタンハイドレート生産シミュレータを開発
ポンプ
○メタンハイドレート濃集帯の
生産手法として減圧法が有効であることを
科学的データに基づき提唱
○陸上産出試験により減圧法の
減圧によりメタンハイド
レートが分解し、
メタン
ガスバブルが発生
減圧により
分解
有効性をフィールドレベルで実証
第2回陸上産出試験を実施した
カナダの陸上産出試験サイト
メタンハイドレート層
砂質層孔隙充填型メタン
ハイドレート
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JOGMEC NEWS vol.25
特集◎LNGからメタンハイドレートまで 天然ガス最新事情
特集◎LNGからメタンハイドレートまで 天然ガス最新事情
vol.25 JOGMEC NEWS
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