石油タンクの地震被害想定用エキスパートシステム の作成に関する研究

4
5
総合都市研究
第 44号
1991
石油タンクの地震被害想定用エキスパートシステム
の作成に関する研究
二森友彦※
鈴木浩平※
要 約
京浜工業地帯をはじめとした沿岸地域には多数の化学プラントが存在し,大型タンクに石
油類,有毒ガスなどの毒物・危険物が多量に貯蔵されている。これら施設が,近い将来予想
される巨大地震によって被害を受けた場合,石油類の大量流出,有毒ガスの空気中への拡散
など,環境保全上非常に危険な状況となる。
このような地震被害を最小限に抑えることを目的とした,施設の損傷診断法は従来から多
数発表されている。しかし,そのほとんどは複雑な力学モデルによる応答計算や,耐震設計
基準の準用などによる高度な専門的技術や技法によるものであり,特にユーザとしての石油
会社にとってわかりやすく,簡便な診断方法とはいえない。
本研究は,過去の地震時における平底円筒型石油タンクの損傷データを蓄積・精査してま
とめた損傷モードと,その損傷状態や破損要因からなる知識ベースをもとに,タンクへの入
力となる地震波のパワーや,周波数特性・地震特性・タンクのサイズなどから推論を行な
い,実地震時のタンクの損傷診断をパーソナルコンピュータベースで行なう,エキスパート
システムの開発を目的としたものであり,本稿ではその基本的考え方と,いくつかの応用に
ついてまとめている。
解決のために必要な情報を選び,正しい判断のた
1.はじめに
めのデータを導き出すようにしたコンピュータプ
ログラムのことである。具体的には,病気の診断
エキスパートシステム (
e
x
p
e
r
t system,以下
と治療法,機械などの故障診断,鉱物資源の探査
ESと略す)とは,各分野の専門家,経験者が持
などをテーマとして,
っている知識や,判断の方法を収集してプログラ
れてきたものである O
ム化した非常に多くの情報集合体からなる知識
1970年代から米国で開発さ
従来,構造物や生産施設の耐震性など,安全性
ベースを基に,推論エンジンと呼ばれるプログラ
の評価における最終判断は,ある確定的な判定基
ムを用いて,利用者と対話しながら推論し,問題
準にもとづいて,
※東京都立大学都市研究センター・工学部
“安全か不安全か"という二者
総合都市研究第4
4号 1
9
9
1
4
6
択一的 (
b
i
n
a
r
y
) な査定をすることが前提とされ
てきた。しかし,本研究でとりあげる石油タンク
などのプラント設備や配管系など,ラインで連結
された機械システムの耐震安全性をこのような方
式で査定するのは実際には不可能である O この場
合,個々の設備などに詳しい専門技術者 (
e
x
p
e
r
t
e
n
g
i
n
e
e
r
) の査定に委ねる方が合理的であるとい
う考え方も根強く,実際そのような主観的判断が
従来の診断法の根幹であったともいえる O
1980年に開発された構造系の地震被害査定のた
めの ES, SPERIL(石塚,
1
9
8
3
) (structural
写真 1 石油タンクの地震時損傷例
(側板座屈 E1
e
p
h
a
n
tF
o
o
tB
u
l
g
i
n
g
)
p
e
r
i
lの意)は,そのシステム構成の基礎理論を
‘不確定性
(unc巴r
t
a
i
n
t
y
) と“あいまい性"
(
f
u
z
z
i
n
e
s
s
) においている O ここでは,被害状態の
2 診断用入力地震動の解析と分類
査定に有用な情報源として,
(1)構造・設備(周辺を含む)の各所の目視点
検によるチェックデータ
O
国内外における実地震波( 24波)の特性を時間
領域と周波数領域で解析し,その特徴からタンク
(
2
) 地震前,地震震動中および地震後に得られ
への入力地震動の分類を行なった。そして,地震
た計測あるいは各種試験データの解析結果が主体
波が実際の構造物に与える影響を調べるために地
となる。
震応答スペクトルを求め,それらを ESのデータ
知識が不備であった場合には, Bayesの確率論
ベースとして用いようとする O
を用いても補えるが, fuzzy理論も有効に利用さ
れ,統計的データがなくても,技術者,専門家の
経験や感覚にも適合した合理的判断,査定が行な
2-1 .時間領域解析による分類
本研究で採用する実地震波は,加速度の時系列
えるという特徴をもっ O 例えば,最終的査定の回
波形で与えられており,時間刻み
答は, (1)損傷なし, (
I
I
)わずかな損傷, (m)中
データ点数
0
.
0
1 [Sec],
2048点である。その一例を図 lに示
I
V
)かなりの損傷, (v)壊滅的な損
程度の損傷, (
傷
, (
V
I
)回答不可能,の 6段階に分類して与えら
れるというものである。
本研究では,まず地震入力のデータベース構築
;1:l州州内ι~
の目的で,国内外の実地震波( 24波)の特性を解
析し,地震波が実際の構造物に与える影響を調べ
血
T
i
1
日
_
1
田 c
)
1
5
新 潟 地 震 (N S 波 )
るために地震応答スペクトルを求めた O
次に,写真 1 に示すような過去の石油タンクの
地震時損傷調査を詳細に行ない,地震時の応答と
i
J
J
¥
j
J
1
1
J
j
i
l
l
¥
"
'
1
"
"
1
"
.
'
1
"
"
1
損傷との関連性や,損傷モードとその要因を調
べ,その損傷時の破損部分,破損様式,破損要因
f
a
u
l
tt
r
e
e, FT)で表わした。
の関連を樹木線図 (
この FT図をもとにして,タンクが巨大地震によっ
宮 城 県 沖 地 震 (E W 波 )
図1 加速度時系列波形
てうける損傷モード(災害)とその度合を診断す
る方法の構築を行なう
O
す。これももとに地震波の振幅だけに着目し,加
三森・鈴木:石油タンクの地震被害想定用エキスパートシステムの作成に関する研究
速度時系列の波の振幅をいくつかの階級に分け,
の数
Nm : 波形の極大点(山の数)
各階級に属する振幅の数,すなわち頻度(確率密
度)を図 2のように求めた。ここで,確率密度分
布は波の振幅を最大値について基準化して,横軸
を相対振幅で表わしている O
4
7
②
ピーク法
この方法は,地震波のピークとピークの間(山
と山,谷と谷)の時間間隔を測り,統計的に波の
持つ周期特性を見いだそうとするものである。前
1JJYUJi
h仏
。
{
民
]
、ga同ω白 .
s
述のゼロクロス法と異なり,“さざ波"の山の l
つ 1つを周期として拾っているので,高周波のも
のを取り上げやすく,一種の高域フィルタ
(
h
i
g
h
p
a
s
sf
i
l
t
e
r
) といえる。図 1に示した加速
度時系列波形を,ゼロクロス法とピーク法で周期
宮 域 県 沖 地 震 ( E W 投〉
γ
I¥
羽
拐F-
i
101
'
日E
ム
-0.
5
l
l
¥
Å"-'-'..A.......fヤ川
ー
1
.0
斗
¥
J
i...1
"I. ,',~ム.....A.........A.....J..."J..オ
日
目
白
図2 振幅の確率密度分布
μ
﹂
さらに,周波数頻度解析をゼロクロス法,
ク法の 2種類の方法によって行ない,入力波の卓
越周期を把握した。
;:lJ日~_ ~_
_--0-
,
_
.
.
0
.
.
.
.
.
.
.
.
1
Re
a
1t
i
v
eA皿 p
l
i
t
u
d
e
①
頻度解析を行なったものを図 3,図 4 に示す。こ
け
14144311J巾
, 。﹄仏
{
ぽb喝ロ@a a
<
I
O
レ
j
j
i
J
i
-ゴ
1
0
'
図3 周期頻度(新潟地震NS波)
ゼロクロス法
この方法は,波の周期性だけに着目して,地震
波の曲線が横軸(ゼロ線)を横断する点の時間間
隔を測り,それを 2倍することによって,周期を
見いだす方法である。したがって,周期が非常に
r
i
p
p
l
e
)
短く振幅の小さい,いわゆる“さざ波.. (
が重なっていると,これはゼロ線を横切ることが
ないので,周期成分として検出されない。すなわ
ち,波が不規則であればあるほど,実際の周期と
ゼロクロス法による周期の頻度との間に差が生
ゼ
ゴ
;
;
i
ベJ;v124
1
日1
l
i仏
大
1
1
B
'
じ,短周期の波の方を見落すことになる O この方
法は,周期の長い低周波数の成分をよく通し,高
波)
図4 周期頻度(宮城県起地震 E W
周波成分は通過させにくい一種の低域フィルタ
(
Iow-pass f
i
l
t
e
r
) ともいえる。ここで,“さざ
こで,各国の上がゼロクロス法,下がピーク法で
波"の多少を表わす不規則指数を (
1
)式のように定
得た結果である。前述のように各図とも,ゼロク
義する。
ロス法は低周波寄りに,ピーク法は高周波寄りに
E-
ここで
E
(
1
)
不規則指数(I
r
r
e
g
u
l
a
r
i
t
yi
n
d
e
x
)
No: 波が正の傾斜でゼロ線を横切る点
なっている。特に新潟地震( NS波)は図 Iから
も明らかであるが,その解析結果の図 3には,か
なりの長周期成分が含まれていることがわかる。
総 合 都 市 研 究 第 44号 1991
48
ま た , 解 析 を 行 な っ た 24波の不規則指数と,
示す。
2つ の 方 法 に よ っ て 求 め ら れ た 最 大 周 期 を 表 lに
表1 周期頻度解析で求めた最大周期
ピーク法
ゼロクロス法
地 震 波 形 71イル名
N
0
Nm
ε
最大周期
ピーク数
最大周期
ELNS
.DAT
78
t24
O
.78
O
.845
246
O
.480
ELEW
.DAT
74
126
O
.81
O
.899
246
.
。440
NIGATANS‘ DAT
34
18
O
.9
0
5
.184
154
1
.110
NIGATAE曹 DAT
34
63
O
.84
4
.229
123
O
.900
TOKACHNS.DAT
51
126
.
。91
1
.696
244
O
.490
TOKACHEW.DAT
46
114
O
.9
1
2
.005
218
O
.640
A
T
MIYAGINS.D
5
0
168
O
.9
5
1
.341
259
O
.560
A
T
MIYAGIEW.D
62
183
O
.9
4
1
.544
2
81
O
.380
CHUBUNS .DAT
125
254
O
.81
1
.818
496
O
.460
CHUBUEW .DAT
129
213
O
.80
1
.844
416
O
.460
TAFTN21E.DAT
111
233
O
.86
O
.683
404
O
.230
TAFTS69E.DAT
119
25t
O
.88
O
.66S
394
0.240
SANTN42E.DAT
1
9
151
O
.86
1
.253
289
6
0
O
.3
SANTS48E.DAT
75
127
O
.8
1
O
.988
242
O
.460
AMAGSKLG.DAT
3
9
70
O
.83
2
. 162
137
O
.900
AMAGSKTR.DAT
41
6
2
O
.75
4
.114
122
O
.900
CALMILNS.DAT
114
247
O
.89
O
.578
4
0
2
O
.2
5
0
CALMILEW.DAT
86
232
O
.93
1
.050
388
O
.2
4
0
JETPS82E.DAT
126
331
O
.9
2
O
.709
389
O
.200
JETPS08W.DAT
138
384
O
.93
O
.604
35
0
O
. 150
UNIVN29E.DAT
90
3
15
O
.9
6
1
.0
8
9
379
O
.220
UNIVS61E.DAT
6
5
296
O
.9
8
2
.008
365
O
.290
MANAGANS.DAT
70
121
O
.82
O
.860
232
O
.420
MANAGAEW.DAT
67
1
13
O
.92
O
.921
218
0.460
4
9
三森・鈴木:石油タンクの地震被害想定用エキスパートシステムの作成に関する研究
2-2.周波数領域解析による分類
ここで,図 1に示した地震波のパワースペクトル
を図 5,図 6 に示す。さらに上記 3分類の領域に
ここでは周波数領域で入力地震波のパワースペ
クトルを計算し,各入力地震波はどの周波数領域
どのくらいの割合でパワーを持つのかを求めて,
表2 に示した。この結果から,例えば新潟地震は
のパワーが卓越しているかを調べた O
図 l に示した時系列データからパワースペクト
長周期のエネルギーが強いことなど,被害想定に
ルを求め,どの周波数領域のエネルギーが強いか
用いる入力波のグローパルな特性がわかる O
を調べることによって,地震波を次の 3種類に分
2-3. 地震応答スペクトルによる分類
類した O
①比較的長周期成分のパワーが強い地震波
1
.0
;以上
構造物やその部材の周期には種々なものがあ
(
1
.0Hz以下)
り,局部的な破壊が起こるとこれらの固有周期は
②比較的中周期成分のパワーが強い地震
変化する O しかし,ある程度剛性の高い構造物で
.
1秒から
は,主要な周期はおよそ 0
1. 0~O Ac (l .0~2.5Hz)
るものと考え,この間のエネルギーの総和を表わ
③比較的短周期成分のパワーが強い地震
人
2
.
5秒の間にあ
0.4;以上 (
2
.
5
H
z以上)
す積分値
I
h=f~;Sv(h, T
)dT
(
2
)
をもって,地震の破壊力を表わす I つの指標とす
ることを,ハウスナー
ている o
NIGATANS
(
(G.W.Housner) は提案し
2)式において
h: 減衰定数
T
: 固有周期
S
v
: 最大相対速度
S
v(h,
T) :速度応答スペクトル
NlGATAEW
であって,
p
e
c
t
r
a
l
1 , は ス ペ ク ト ル 強 度 (s
i
n
t
e
n
s
i
t
y
) と呼ばれ,図 7の速度応答スペクトルに
1
由
おいて,ハッチングした部分の面積に相当する O
Frequency[
H
z
]
ハ
unυ
21
05
[ω¥臣υ]
図5 新潟地震波のパワースペクトル
EL CENTRO NS
MAX VEL.=44.42[crn/s]
h=0.020
民j
[
J
)
2咽日
5100
MIYAGINS
0
.
.
U】
同
E
己
50
0
2
=
f
J
I
O
ん
同
印 刷dT
〉
MIYAGIEW
o
2
3
PERIOD [SEC]
図7
図6 宮城県沖地震波のパワースペク卜ル
スペクトル強度
9
9
1
総 合 都 市 研 究 第 44号 1
5
0
表2 パワースペクトルによる周波数域分類
地 震 波 形 7y
イル名
Total
Long
Middle Short
L ---- M ---- S
ELNS
DAT
51183
0.1052 0.4489 0.4459
ELEW
.DAT
33038
.4019 0.3990
0.1991 O
NIGATANS.DAT
10258
0.6829 0.1827 0.1344
NIGATAEW.DAT
9859
0.6169 0.2546 0.1285
TOKACHNS.DAT
21754
0.3103 0.3583 0.3314
TOKACHEW.DAT
27910
0.4112 0.4071 0.1817
MIYAGINS.DAT
19603
0.2713 0.5228 0.2059
MIYAGIEW.DAT
16706
0.1335 0.4849 0.3816
CHUBUNS .DAT
32041
0.4418 0.2640 0.2941
CHUBUEW .DAT
37964
0.2214 0.3034 0.4752
TAFTN21E.DAT
8323
0.0161 0.1541 0.8292
キ
TAFTS69E.DAT
9088
0.0212 0.1413 0.8315
#
SANTN42E.DAT
3606
0.0363 0.3812 0.5826
SANTS48E.DAT
4290
0.0165 0.5695 0.3540
AMAGSKLG.DAT
100
0.3641 0.4350 0.2001
本
AMAGSKTR.DAT
497
0.2058 0.5841 0.2101
#
CALMILNS.DAT
5
831
&
0.0095 0.1289 0.861
CALMILEW.DAT
5412
0.0428 0.2660 0.6912
JETPS82E.DAT
5450
0.0145 0.0951 0.8904
JETPS08W.DAT
2938
0.0226 0.1248 0.8526
UN1
VN29
E
.DAT
1
6
31
0.2803 0.1193 0.5404
UNIVS61E.DAT
2261
0.2199 0.4071 0.3730
MANAGANS.DAT
6431
1
0.0516 0.3273 0.6211
宇
MANAGAEW.DAT
52112
0.0662 0.2991 O
.6340
#
ここで,解析を行なった地震波の最大入力加速
度(cr
u
/ぜ),最大入力速度 (
c
r
u
/
s
)および減衰が h=
キ
#
#
キ
#
#
#
キ
宇
宇
宇
牢
宇
キ
牢
#
宇
#
0
.
0
0, 0
.
0
1, 0
.
0
5, 0
.
1
0のときのスペクトル強
度 を 表 3 に示す。
三森・鈴木:石油タンクの地震被害想定用エキスパートシステムの作成に関する研究
¥
地震波形片付名
表3 各地震波のスペクトル強度
最大入力
Acc
.
Vel
.
ス ベ ク ト ル 強 度 ( 1b)
1 h=0.05 h=0.10
h=O.OO h=O 0
刷
ELNS
.DAT
.7
0
3
41
5
6
.9
9 2
6
3
.1
2 203 2
2 142.06 116.69
ELEW
.DAT
210.70
5
4
.9
2 242.01 179.32 118.18
9
3
.2
5
NIGATANS.DAT
134.75
8
0
.0
1 160.48 139.26 106.47
8
7
.4
8
NIGATAEW.DAT
156.87 1
17
.8
6 145.67 126.32 100.19
8
3
.9
3
TOKACHNS.DAT
225.00
4
0
.7
9 194.23 153.12 103.68
8
4
.0
1
TOKSCHEW.DAT
182.90
51
.5
5 120.27
4
2
.8
9 259.90 213.03 1
TAFTN21E.DAT
152.70
9
.2
0
5
3
.9
6
3
9
.4
7
2
8
.6
0
2
4
.5
3
TAFTS69E.DAT
175.90
8
.9
3
5
8
.2
5
4
5
.9
5
3
4
.8
2
2
9
.7
0
.DAT
SANTN42E
8
7
.8
0
5
.7
5
4
9
.2
4
3
8
.8
3
2
8
.3
7
2
4
.3
0
SANTS48E.DAT
128.60
9
.7
2
6
7
.8
5
5
2
.7
8
3
8
.4
2
31
.7
6
AMAGSKLG.DAT
2
7
.6
2
8
.8
1
3
0
.1
4
2
4
.6
9
17
.9
1
14
.6
3
AMAGSKTR.DAT
3
5
.5
0
1
3
.2
0
2
7
.6
1
2
0
.7
2
13
.7
6
11
.2
8
CALMILNS.DAT
198.00
4
.9
9
3
7
.0
5
2
9
.41
2
2
.9
2
19
.5
4
CALMl
LE
W
.DAT
1
81
.6
0
8
.8
8
5
4
.4
1
4
2
.4
0
3
0
.3
8
2
5
.8
6
JETPS82E.DAT
207.80
6
.6
3
34
.4
8
3
0
.2
5
2
4
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5
.8
7
21
JETPS08W.DAT
1
3
9
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0
4
.8
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31
.5
9
2
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.89
2
0
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2
1
7
.1
4
UNIVN29E.DAT
5
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9
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5
9
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1
5
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9
2
9
.4
0
.DAT
UNIVS61E
8
3
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5
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3
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1
5
6
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5
4
0
.7
7
3
3
.2
8
MANAGANS.DAT
333.40
11
.6
6
7
0
.9
9 133.39 1
57
.4
3 203.03 1
MANAGAEW.DAT
375.19
3
4
.0
0 1
0
5
.5
1
5
3
.8
1 225.90 188.24 1
‘
5
1
ul
N
百百出有蹄
(OX)
O
63 I 7
10 I93
11
010
010
O
010
O
O
記官砥揖
上
O
O
5
5
6 140
x 10 O O
O
O
1117
つ
O
O
1
7{ 0
申
出 底 筏 瞳 揖
O
アーユラ一夜磁描
3
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4
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O
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X IX
1
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多4
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因
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内
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O
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10
1
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5
2
容
噛
泊
油
その他の祖
11
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出;
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2
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38
1113
会
O
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1
1
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O
防τ
l
理 用 陥 没1
2
9
3
炎患 矯
上積 失
倒よ 倒
タンクの状回事
O
O
3
12
O
その他
その他
0 1 20
O
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ガソリン
震
O
O
8
軽
O
O
O
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.
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浮
麗
根
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喧
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出
ロ
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グ
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抑
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(1979)
山
法湖国時過輪郵刷阿菖
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煩
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1
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,
.
.
1-
1
剖い岳山町
タ
イ ン ペ リ ア Jレ
ト
1
原 淳 屋 根 破 損
ン
フ
(1952)
務ゆ勢街道湖
屋 根 破 損
O
タ
(1980)
2
1 I11
O
O
O
流 側 板 破 鼠 下
1
i
010 010
5
千 葉
(1978)
l
O
3
宮 埴 県 神
(1968)
(19")
(1923)
タ ン ク 数
十 路
潤
新
関 東
出 量 名
三森・鈴木:石油タンクの地震被害想定用エキスパートシステムの作成に関する研究
3 石油タンクの地震時損傷調査
5
3
国外8例,計 1
5例の地震について,石油タンク損
傷の詳細な調査を行ない,表4 にその一例を示す
石油タンクは多様な形状のものが使用されてい
ようにまとめた。これをもとに作成した事業所別
るが,本研究では化学プラント等に多く使用され
の被害一覧を表 5,表 6 に示す。表中の形式の項
ている平底円筒型のタンクを対象とした。平底円
表5 事業所別被害一覧(新潟地震)
筒型石油タンクはその屋根の形式によって,図 8
に示すように固定円錐屋根式,固定円屋根式,浮
屋根式に大別される。
貯麗量 克液率
容量 形式 内容物 直荏×高さ
流
出 着
火
(覧)
(
O
J
I
) (
l
I
I
I
)
(K1
)
(KL)
~ 't~ 番号
所在地
新潟市内
支柱
53.3 有 有 │
1101
45000 PRT
原油
6
2J
1O
(
)
x
1
6
S
0
0 23993
1102
) P
(5001
RT
原油
62000xl6S00 23876
53.1 有 有
1103
30000 PRT
原油
SlSOOx14500 27171
90.6 有 有
1
104
30000 PRT
原油
51500x14500 24934
83.1 有 有
1
105
30000 PRT
原油
51500x1
4500 22160
73.9 有 有
スロブシング
揖出原因
P/R衝突,
着火原因
シール摩樺熱,外部火種,静電気スパーク
貴上,倒壊
』マンホール
破損状置
フロートサタンヨン
スロァシング
融損原因
(a) 円錐屋根式
表6 事業所別被害一覧(宮城県沖地震)
所在地
仙台市
1け 番 号
IT-211
T-218
T-224
内ばしご
波出原因│底甑唖慣,側桓破損
底駈
破損状況
十
波 面t
ワレ
側桓上部華形
1こ27-.tfiワレ
中部霊形
配管
切 断 1 聖王
下部藍形
防抽埋
破損
匡根
変形
醒揖原因│スロッシング,
(b)
プラ
/
y
7川 志 川 切 断 , 引 植
ロッキング,腐童
円屋根式
で
, FRTは浮屋根タンクを,
トホーム
ウインド J
'
fーグーおよび手すリ
¥
回り陪段¥J
CRTは円屋根タン
ク
, DRTは円錐屋根タンクを示す。
タンクの致命的な損傷モードを「油の流出 j と
して,第 2 章で解析,調査を行なった地震応答ス
ペクトルをもとに,その地震時のタンクの応答
排水装置
と,前述した損傷との関連性について考察する O
図 5から新潟地震は長周期(低周波)のパワー
(c) 浮屋根式
図8 平底円筒型石油タンク
が卓越した地震波であり,固有周期 5-6秒くら
いの構造物である石油タンクに対して,かなり大
きな影響を与えていることがわかる。このためタ
ンク内容物がスロッシング現象によって流出し,
石油タンクの地震時損傷診断においては,ある
浮屋根の衝突や摩擦熱を原因とする着火によっ
損傷モードに関して,その損傷が生じるときに破
て,多数の石油タンクが炎上,倒壊する大被害と
損する部分,各部分の破損様式,破損の生じる要
なった。
,
因について考える必要がある。そこで園内 7例
宮城県沖地震では,中
短周期(中
高周波)
総合都市研究第4
4号 1
9
9
1
5
4
のパワーの方が卓越していたため,スロッシング
破撮部分
損傷モード
磁偏要因
破損禄式
よりもロッキングによる損傷が生じている。
タンク全体交一一一傾斜
このように石油タンクの損傷は,地盤特性と入
力地震動の周波数特性に大きく影響されることが
により想定される二次災害をまとめると表 7 のよ
¥¥S
破損または変形
1ロ
ヴ 'Jiケ j
皮の衝撃圧力
破口かりの溢流
厚雇栂
塵根.市川-,の破壊
浮軍栂の揺動
頂部叫勿滋流
ロ
ー
リ
ン
, 'H ー の 税 落 居 曲
(誼動,桂回)
屋損支柱
五性の座屈・横ずれ
鉛直地震力.'ロザ'.01誼
屋根]7ト
う7
1の連結部破損
1目げン f 桂 の 衝 撃
肩結合部
破壊または変形
1日刊汁 i
まの衝撃圧力
揮屋損タ, 1
上部変形
臣
側
下部張出
L
底車
一ー一ー溶憧止端部き型
接続配管
て
て
変
形
齢写力断
衝繍ん
る花主流出
固定星根
臣幽
転淳
地盤液状化による破駿
v
視トり
官の損傷によ
傾斜,沈下
71<平力
一一一浮屋根の揺動
一一一
本体。陸続配
ロソキング,
波衝隼圧力
y破損
変彊
想定二次災害
横ずれ
タンク全体
ミ¥
直接的要因
門
目
、.
'
)
d汁
泊の流出
表7 石油タンクの破損様式とその要因
転醐モーメント
'
i
ス日 γ~
て一一一屋根破損
うになる。
破損機式
転倒モ μ ト
て
て
;
;
石油タンクの損傷様式とその直接的要因,それ
臨場
一一一一四 dir, 水 平 力
、転倒
わかる。
各部名称
一一一一泊鍍液状化
沈下
i
、、横ずれ
倒仮下部座届
一一一一タ
J
クの日什汁,挽ずれ
破f
員
原産担沈下
屋損の陥没
図9 損傷診断ツリー構造(FT図)
破口かりの溢流
i
f屋 掴 揺 動 に よ る 衝 撃
転問トメ~
H
:よる軸圧縮力
偶底部破損に
了ン台北川瞳掴
浮上り力水平せん断力
よる油流出
偶底部
1
容時止端部のき型
側板下部直届。浮上り
関 口 部 bヲ流出
接続配官
破揖
~
'
i
のロマキ '
1、 蝿ずれ
破口判の溢流
石油タンクの地震時損傷診断においては,特定
の損傷モードに関して,その損傷が生じるときに
4-1
知識ベース
知 識 ベ ー ス で は , 図 9 に示した損傷モードの
FT図の知識を,図 1
0に示した構造体に格納す
;
ld
efine ~AX
1
0
0
typedef struct part {
[80];
char name
float prob:
float effect;
stru
ct sty1
e キslist:
破損する部分,各部分の破損様式,破損要因を連
鎖的に考えていく必要がある。表 5,表 6 から最
因
)
損信響損最の
卜要
ス踊式
名リ破様
式数数因の掲
機係係要初破
破確影破(次
うか診断している。
e
震によって,損傷モード(災害)を発生するかど
破損様式リスト
(最初の破温様式)
fe
]キn
104
8'r
e[toe
- e ,c t l
ymbecy
taofat
snrffs
一p e
tstt
cttcc
uraauu
raoorr
thiltt
scffss
f
を FT図で表わすと図 9のようになる。この FT図
をESの知識ベースとして用いて,そのタンクが地
確信係数
影響係数
) PART;
d
e
p
y
悪の損傷モードを「油の流出」とした場合の連鎖
破損部分名
雫
4 エキスパートシステム (
E
S
)
本研究で開発しようするエキスパートシステム
は,過去の地震時における大型石油タンクの損傷
調査からまとめた損傷モードと,その破損状態や
要因からなる知識ベース,地震波のパワーや周波
) STYLE;
typedef struct factor {
char f_name
[8
0];
f
¥oat pτob;
float effect
i
n
t q_type;
struct factor *next;
) FACTOR;
PART k base[MAX];
破局要因名
確信係数
影響係数
質問変数
次の破損要因
知識ベース領域
図10 知識ベース構造体
数特性,地盤特性, タンクのサイズなどから推論
を行ない,地震が発生する前に,タンクに生じる
る。構造体は「破損部分J
,I
破損様式 J
,I
破損要
損傷を予測・診断することを目的としている。
因」に対応する PART
,STYLE
,FACTOR の3
三森・鈴木:石油タンクの地震被害想定用エキスパートシステムの作成に関する研究
層から成り立っている。構造体 P
ARTは複数の構
造体 S
TYLEを持つが,その数はあらかじめ決って
いないため,
STYLEの数を可変にすることが必要
表9 破損原因と流出度
モード
になる。そこで,これらの構造体はリスト構造に
なっており,構造体 P
ARTは,可変聞の STYLE
流
からなる破損様式リストを持ち,構造体
STYLEは,可変個の FACTORからなる破損要因
リストを持っている。これらのリスト構造の関連
を表 8 に示す。この知識ベースでは,表の矢印の
表8
PA RT
I
STY LE
FACTOR
↓ next (横 f
れ)
~I ↓ next
↓ next (転倒)
ー-,L.十争ロノキング(最初の FACTOR)
II
全 体 一J I
出
流出度
備
屋根破損
0, 3
貯蔵量によって変化
因
原
考
側板破損
0, 5
位置,貯蔵量によって変化
底部破損
l
全貯蔵量流出
配管破断
0, 6
受人,排出中は流出度大
ス
ロ
マ "9'(
F/R)
0, 3
貯蔵量によって流出度変化
タンク転倒
1, 0
全貯蔵量流出
傾斜
0,
角度によって変化
沈下
0, 3
配菅破損の可能性あり
横ズレ
0, 3
配菅破損の可能性あり
。
リスト構造
地盤液状化
タンク
5
5
4-2 推論エンジン
本研究で開発した E
Sの推論エンジンのフローチ
1に示す。この推論エンジンは複雑な
ャートを図 1
っ
l
l
L
I
十
↓ next (水平力)
~ next (NULL)
なし
:
;
J
1
J
U 2
番目の
↓"色 Xt (NCLL)
な L
転倒モ←メント
↓ next (NULL)
なし
順番にデータの入出力や,推論などの処理が行な
われる。
また,それらの構造体はその状態が発生する確
, 1段階上のリストへの
率を示す「確信係数j と
影響度を示し,得点を伝達する際の重みとなる
「影響係数j とを持っている O そして,それぞれ
の破損要因に対して,ユーザと応対する際の質問
や,データ処理の方法を示す「質問変数j を持っ
ており,この変数を変えることにより,各種の破
損要因に対応させることができる。このように
データ形式の自由度が高いので,本研究で考察し
た「油の流出」という損傷モード以外の場合で
も,知識ベースの構築が容易であり,汎用性の高
いE
Sの知識ベース形態であると言える。
また,この知識ベースは 1段階上のリストへの
図11 推論工ンジンフローチャート
影響度を示し,得点を伝達する際の重みとなる
「影響係数Jを持つが,その値はその部分が破損
応答計算を行なわずに,周波数成分やパワーなど
した場合に,どの程度の割合で流出が生じるかと
の情報からなる地震データや,地盤の特性,タン
いう,表 9 に示した流出度を考慮して決定した。
クの形状と内容物の液高といった情報から,その
地震時の損傷を診断・推定するものである。推論
総合都市研究第 4
4号 1
9
9
1
5
6
手順は,図 1
1に示すように,知識ベースのすべて
スから得た,長局期(低周波)部分のパワースペ
の破損要因について順番に質問,あるいは計算・
クトルを,地盤特性(地盤のかたさ)による影響
判定を行ない,各要因の確信係数を決定する。こ
を考慮して換算し,その値によって確信係数を決
こで,同じ破損要因の時には,質問あるいは計算
定する。ここでは,地盤が柔らかいほど,地震波
などの重複を避けるようになっている。それぞれ
の長周期成分の影響が大きくなると考えて処理を
の破損要因について,質問変数によって指示され
行なった。
た方法で確信係数が決定すると,影響係数をもと
に知識ベースのリストにそって得点を伝達して,
(
4
) q- t
y
p
eニ 4のとき
その破損要因が,入力地震波の短周期成分によ
それらの破損要因をリストとして持つ破損様式の
る影響が大きいと考えられる場合の処理を行な
確信係数が計算される。この手順を図 1
1のフロー
う。ここでは,地盤が硬いほど,短周期部分の影
チャートに従って繰り返す,すべての破損部分に
響が大きくなると考えて処理を行なった。
関する判定が終了すると,目的とする損傷モード
の判定が行なわれる。
その破損要因が,スロッシングによる影響が大
ここで,質問変数に対応する処理としては,そ
の破損要因の確信度を
(
5
) q- t
ype=5のとき
D
e
s
t
r
u
c
t
i
v
e,Severe,
きいと考えられる場合の処理を行なう。 (
3
)式に示
したタンクのスロッシング周期と地震波の卓越周
Moderate,S
l
i
g
h
t,Noといった程度で入力する方
期との差,およびタンクの充液率から求めた値に
法,タンク形状や地震波の情報から,その確信度
よって確信係数を決定した。
amp= 1
1
.0-abs (
t
,ーし) /d
xl
H
,
/ (HX k)1 (3)
が計算される場合などがある。
4-3 エキスパートシステム (
E
S
)
ここで
この ESの構造上最も重要な質問タイプ,つま
1のフローチャート中の,
り図 1
rq- typeに応じ
て質問計算」の部分は次のようになっている O
q- t
y
p
eは
, 1桁あるいは 2桁の整数になって
おり, 1桁の場合にはすべて処理を行なうが, 2
桁の場合で 1
0の位が2のときは浮屋根式のタンク
H,:内溶液の液高
H: 石油タンクの高さ
k: 固定屋根式のとき
浮屋根式のとき
k =0. 95
k =0. 90
以上の質問変数に対応した処理によって,各破
1の
損要因の確信係数が決定すると,その値と影響係
位の数値によって処理方法が決定される。以下に
数から, 1段階上の破損様式の確信係数が決定さ
q- t
ypeによる処理手順を示す。
れる。この場合の得点の伝達は,その破損様式が
のみ処理を行なう
O
ここで, 2桁の場合は
t
: 石油タンクのスロッシング周期
t
,
:入力地震波の卓越周期
(
1
) q- t
ypeニ 1のとき
リストとして持つ破損要因から伝達される値の最
その破損要因が発生するかどうかを Y
es, Noで
大値によって,確信係数が求められる。そして,
答えて入力する。どちらかわからないときは,
各破損様式の確信係数が決定すると,その値と影
Grayとして入力し,その確信係数を決定する。
(
2
) q- t
ype=2のとき
響係数から, 1段階上の破損部分の確信係数が決
その破損要因が発生する程度(度合い)を,
分がリストとして持つ破損様式から伝達される値
定される O この場合の得点の伝達は,その破損部
D
e
s
t
r
u
c
t
i
v
e, S
e
v
e
r
e, Moderate, S
l
i
g
h
t, No
の合計値によって,その部分の確信係数が求めら
のいずれかで入力し,その確信係数を決定する。
れる。このようにして,すべての破損部分につい
(
3
) q- t
y
p
e=3のとき
ての確信係数が決定されると,それらの値と影響
その破損要因が,入力地震波の長周期成分によ
係数から,目的とする損傷モードの判定が行なわ
る影響が大きいと考えられる場合の処理を行な
れる。この場合の得点の伝達は,各破損部分から
う。そのときの処理は,入力地震波のデータベー
伝達される値の最大値によって損傷モードの確信
三森・鈴木:石油タンクの地震被害想定用エキスパートシステムの作成に関する研究
係数が決定され,その値によって診断を行なう。
本 ESでは,確信係数Pが次のような結果を出力
油が流出しているのに対して,診断結果は,接続
配管や側板の破損が特にひどく,油の流出も
S
e
v
e
r
eとなっている。これらの結果から考えて,
するようになっている。
1
.0>P>0
.
8:D
e
s
t
r
u
c
t
i
v
e
この ESの診断結果は,比較的信頼性が高いもので
.
5:S
e
v
e
r
e
0
.
8ミ P>0
.
2:M
o
d
e
r
a
t
e
0
.
5註 P>0
.
0:S
e
i
g
h
t
0
.
2孟 P>0
P= 0
.
0:No
あるといえる。
表 11
エキパートシステムへの入力と診断結果
(宮城県沖地震)
エキスパ
この ESによる診断結果を表 1
0,表 1
1に示す。
表 10
5
7
トν ステムへの入力 (2)
エキパートシステムへの入力と診断結果
(新潟地震)
式も
様一斜下吋
醐一傾此酌
破損要因
エキスバ
トシステムへの入力 (1)
地盤液状化
ロ'
:
1 ~トング
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このシステムでは,知識ベースの影響係数は過
去の地震時の損傷調査から推定して,その値を決
接続配菅
定しているが,損傷モードとその要因との関連を
示すデータが大量にあれば,実際のデータから学
新潟地震の実際の被害が,スロッシングの影響な
習させて,より正確な影響係数を求めることがで
どによって油が流出して,浮屋根の摩擦や衝突に
き,診断の信頼性も向上する。また,得点の伝達
よる着火のために炎上倒壊しているのに対して,
方法を最適化することで,診断精度はさらに高く
診断結果はタンク全体の傾斜や沈下,側板の破
なる。
損,接続配管の破損などが特にひどく,油の流出
また,この ESでは知識ベースがリスト構造にな
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っていて,その関係は上下方向にしか作用してい
害は,スロッシングや,ロッキングの影響で側板
ないが,横方向の関連を示すことができる知識
や底板の破損,接続配管の破断によって,大量の
ベースと,推論エンジンが作成できれば,損傷診
総合都市研究第4
4号 1
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文献一貫
断において,より有効なシステムとなる。
5
James T.R.Yao
1985 S
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本研究では,簡単なシステムではあるが,比較
消防庁
的自由度の高い知識ベースを用いた,大型石油タ
1964
ンクの地震時損傷診断 ESを開発した。このシステ
中久喜厚
ムは,知識ベースの内容に依存しない推論エンジ
1983 r
石油タンクの地震被害について j
ンを持つため,知識ベースを作成すればいろいろ
な損傷モードについての診断が可能である
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新潟地震火災に関する研究J
『火災』
第3
3巻 第 3号
石塚満
し,ある程度実際のタンクの診断にも適用できる
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建築物被害査定のエキスパートシステ
ム Jr
情報処理学会論丈誌』第 2
4巻
ことを示した O
第 3号
た,この ESによる大型石油タンクの診断結果を示
1983
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.357-363
Key Words(キー・ワード)
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e(診断ツリー), Damagemode(損傷モード),
Data base (データベース)
三森・鈴木:石油タンクの地震被害想定用エキスパートシステムの作成に関する研究
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