バイトアングルの制御を志向した下端部架橋型カリッ - 日本大学生産工学部

日本大学生産工学部研究報告A
2010年 12月 第 43巻 第 2 号
研究ノート
バイトアングルの制御を志向した下端部架橋型カリックス
アレーンジホスフィン配位子のデザインと合成
清水正一 ,鈴木幸恵
,市川隼人
,白川誠司
Design and Synthesis of Calixarene Diphosphine Ligands Having Bridged Structure
at Narrow Rim for Controlling Bite Angle of Metal Complexes
Shoichi SHIMIZU , Yukie SUZUKI , Hayato ICHIKAWA
and Seiji SHIRAKAWA
To realize high regioselectivity for linear aldehydes in aqueous biphasic hydroformylation of higher
olefins,novel water-soluble calixarene diphosphine ligands bearing oligomethylene chain as a bridging
group at the narrow rim were designed for controlling bite angle of the metal complex.Their precursors
were prepared and characterized by the means of spectral analyses.Moreover,they were examined as
ligands for rhodium metal complex catalyst in homogeneous hydroformylation of 1-octene. Their
catalytic activities and regioselectivities in aldehyde products were comparable with those of triphenylphosphine which is the ordinary phosphine ligand for industrial processes; that is,the regioselectivities
were improved to the acceptable level, but not the desired one. This result therefore indicates that, in
organic solvents, the bridged structures are insufficient to control the bite angle.
[4]arene, Diphosphine ligand, Transition metal complex catalyst, Bite angle,
Keywords: Calix
Hydroformylation
置異性体が得られるが,直鎖アルデヒドの方が工業原料
1. 緒言
としての需要が大きいため,高い触媒活性だけでなく,
高い位置選択性が求められている。
代表的な遷移金属錯体触媒反応の一つであるヒドロホ
金属錯体触媒の回収・再利用の問題を解決する方法と
ルミル化反応はオレフィンからアルデヒドを得るための
して,Kuntz ら は水溶性配位子であるトリフェニルホ
重要な反応で,世界全体で毎年 800万トン以上のブタ
スフィントリスルホナトを用いた水相−有機相二相系で
ナールがプロペンを原料として製造されている。この反
のヒドロホルミル化プロセスを開発した。この反応プロ
応では高価な Rh 金属錯体触媒を用いることが多く,触
セスでは,反応終了時には金属錯体触媒が溶解した水相
媒の回収・再利用が大きな課題となっている。また,生
と生成物の有機相が二相を形成するため,分液により容
成物としてホルミル基が付加した位置により二種類の位
易に触媒を回収・再利用できる。しかし,水に不溶な長
日本大学生産工学部応用分子化学科教授
日本大学大学院生産工学研究科博士前期課程応用分子化学専攻2年
日本大学生産工学部応用分子化学科助教
京都大学大学院理学研究科特定准教授
― 35 ―
鎖オレフィンでは反応が進行せず,共溶媒や界面活性剤
2. 結果および
の添加が必要となるという欠点があった。この共溶媒や
察
界面活性剤の添加は,界面活性剤などが含まれる廃水の
発生や生成物の精製操作を複雑にするなどの新たな問題
2.1 カリックスアレーンジホスフィン配位子のデザイ
ンと Rh 金属錯体のバイトアングルの推定
を引き起こすことになる。そこで我々は,添加剤などを
使用せずに長鎖オレフィンの二相系ヒドロホルミル化に
上端部の distal 位にホスフィノ基が結合したカリッ
適用できる配位子として,包接化合物のカリックスア
クスアレーンを二座配位子として用いた場合,下端部に
レーンを基体とした水溶性ジホスフィン配位子を開発し
特別な置換基が無い場合にはバイトアングルを固定でき
た 。この配位子は Rh 金属に配位することにより,金属
ないが,その distal 位を架橋することによってバイトア
錯体触媒と逆相間移動触媒の両方の機能を合わせ持ち,
ングルを制御できると
水に不溶な長鎖オレフィンに対しても高い触媒活性を示
-6のオリゴメチレン鎖で架橋された水溶性カリックス
すことが明らかとなっている。しかしながら,生成物の
アレーンジホスフィン1 (Fig.1)をデザインした。次に,
十分な位置選択性は達成できていない。
1からスルホナト基を削除した配位子の Rh 金属錯体
えられる。そこで,炭素数が3
一方,ジホスフィン配位子金属錯体を触媒とする反応
(Fig.2)のモデルを作成し,分子力学計算ソフトを用い
において,生成物の選択性に大きな影響をおよぼす指標
てバイトアングルを推定した。その結果,いずれもほぼ
として,2つのリン原子と中心金属のなす角度を表すバ
120°
のバイトアングルを示すコンホメーションが存在す
イトアングルの概念が Caseyら によって導入され,こ
ることが分かった。しかし,炭素数3の架橋を有する錯
の角度が 120°
付近のとき高い直鎖選択性が得られるこ
体は構造上の歪みが大きく,モデル構造のコンホメー
とが知られている 。そこで本研究では,バイトアングル
ションでは不安定で,Rh 金属が前後のどちらか一方に
の制御という視点から直鎖選択性の向上を目指し,カ
偏ったコンホメーション がより安定であることが推測
リックスアレーンジホスフィン配位子のデザインを再検
された。また,ヘキサメチレン鎖で架橋されたカリック
討した。具体的には,カリックスアレーン下端部の distal
スアレーンジホスフィンでは,より短いメチレン鎖で架
位をオリゴメチレン鎖で架橋することにより,バイトア
橋されたものに比べ,C-C 結合の回転により自由度が増
ングルを 120°
付近に制御可能な構造の配位子1 (Fig.1)
大し,バイトアングルはそのコンフォメーションに大き
をデザインし,その前駆体ジホスフィン配位子7の合成
く依存することも判明した。
を行った。さらに,得られた配位子7の Rh 金属錯体を有
2.2 カリックスアレーンジホスフィン配位子の合成
機相
目的化合物のカリックスアレーンジホスフィン配位子
一系ヒドロホルミル化反応の触媒として用い,生
7の合成は,下端部の distal 位がベンジル化されたカ
成物の直鎖選択性を評価した。
リックス[4]アレーン 4 を鍵中間体として行った (Fig.
3)。この4と炭素数の異なるジハロゲン化アルキルとの
求核置換反応により4の二つの遊離フェノール性水酸基
間を架橋し,収率 38-68%で 5a-d を得た。この反応は分
Fig.1 New water-soluble calixarene diphosphine
ligands.
Fig.2 Rh complexes with calixarene diphosphine
ligands.
― 36 ―
Reagents and conditions: (a)BnBr,K CO ,CH CN,reflux ; (b)Br ,CHCl ,−20°
C ; (c)Br(CH ) Br,NaH,THF/DM F,5070°
C ; (d)n-BuLi,B(OM e) ,THF, −78°
C,rt,1N HCl; (e)10,[Pd(PPh ) ]
,2M Na CO ,benzene,reflux ; (f)n-BuLi,PPh
Cl, THF, −78°
C ; (g)n-BuLi, THF/Et O, p-BrC H CHO, −78°
C ; (h)TFA, NaBH , 0°
C, rt.
Fig.3 Synthetic route to new calixphosphine ligands.
子内環化反応であり収率良く生成物を得ることは難しい
と
えられたが,高希釈条件下,比較的良好な収率で生
Table 1 Rh-Catalyzed Hydroformylation of 1Octene
成物を得ることができた。次に,この 5a-d の上端部にス
ペーサー部位をカップリングし,6a-d を収率 48-61%で
得た。スペーサー部位の化合物 10の合成は,当初,ジフェ
ニルメタンを原料として気相/固相二相系での臭素化に
よる方法を試みた。しかし,反応の選択性が低く多数の
entry
ligand
1
PPh
7a
副生成物が見られ,収率良く生成物を得ることができな
かった。そこで,1,4-ジブロモベンゼンから9を経由し,
2
トリフルオロ酢酸中での水素化ホウ素ナトリウムによる
3
還元反応を経由する合成法に変更したところ,高収率で
4
10を得ることができた。
5
このようにして得られた 6a-d をリチオ化し,クロロ
6
ジフェニルホスフィンとの反応により目的化合物のカ
7
リックスホスフィン 7a-d を収率 30-59%で得た。7a-d
の P NM R ス ペ ク ト ル に は,δ−5.92,−5.91,−
5.65,−5.64ppm にそれぞれシ一重線のシグナルが現れ
た。これはリン原子にアリール基が3個結合したトリ
フェニルホスフィン誘導体に見られるシグナルのケミカ
ルシフト値とほぼ一致し,スペーサー部位の先端にジ
フェニルホスフィノ基が導入されたことが確認できた。
8
conversion
(%)
yield
(%)
100
95
l/b
2.98
100
85
2.79
7b
7c
100
98
2.95
100
97
3.42
7d
7b
100
92
3.06
100
87
2.87
7a
7b
99
42
1.71
100
42
1.67
Reaction conditions: Substrate (4.0 mmol), ligand (3.26×
10 mmol).[Rh(acac)(CO) ](8.14×10 mmol),substrate/
P/Rh=500/8/1, Toluene (5 mL), 10 atm (CO/H =1/1), 80
°
C, t=12 h, stirring speed 800 rpm. Determined by GC
analysis. Yield of aldehydes. Ratio (linear/branched)
includes all branched aldehyde. Incubation (rt, 30 min).
Substrate/P/Rh=500/2/1, incubation (rt, 30 min).
また, H NM R スペクトルでは,メチレン架橋に帰属さ
れるシグナルが 7a:4.49,3.30ppm,7b:4.40,3.20
ホ ス フィン 配 位 子 と 同 様 に 高 い 触 媒 活 性 を 示 し た
ppm,7c:4.44,3.17ppm,7d:4.43,3.12ppm にそれ
(Table 1,entries 2-5)。また,直鎖アルデヒドと分枝アル
ぞれ一組の二重線として現れた。この結果から,生成物
デヒドの比(l/b 比)は,いずれもトリフェニルホスフィ
は対称な構造の cone コンホメーションに固定されてい
ンを配位子とした場合と同程度の値を示した。この値は
ることが分かった。以上の結果から,最終標的化合物 1a
我々が既に開発した水溶性カリックスアレーンジホス
-d の前駆体である目的のカリックスホスフィン 7a-d が
フィン配位子の値より大きく,選択性が改善されたこと
得られたことが確かめられた。
示しているが,満足できる程度までの改善には至らな
2.3
かった。これらの結果は,想定したコンホメーションの
一系ヒドロホルミル化反応
有機相
一系ヒドロホルミル化反応の結果を Table 1
に示した。7a-d を配位子とした Rh 金属錯体は,既存の
金属錯体が生成していないことを示していると
えられ
るので,反応条件を検討した。具体的には,インキュベー
― 37 ―
ションを加えた条件 (entry6),さらには過剰に用いてい
えた Hewlett Packard 社製 HP 6890を使用した。赤外
た配位子の量を P/Rh=2/1の当量まで減らした条件
吸収スペクトル分析は,日本分光社製 FT/IR-4200を使
(entries 7,8)でも反応を行ったが,選択性の向上は見ら
用し,KBr 錠剤法により測定した。核磁気共鳴スペクト
れなかった。すなわち,7の Rh 金属錯体ではスペーサー
ル分析は Bruker Avance-400
(400MHz)を使用し,室
部位の回転によるコンホメーション異性体 や単座配位
温で測定した。 H および C NMR スペクトル分析にお
子として配位した種々の錯体 の存在のため,バイトア
いては,TMS を内部標準物質として用いた。 P NMR
ングルが分子力学計算により推定されたようには制御さ
スペクトル分析では H PO を外部標準物質として用い
れていないことを示している。
た。融点は,Yazawa 社製 Micro Melting Point BY-1
合成した 7a-d は,脱ベンジル化,次いでスルホン化す
ることにより最終標的化合物の水溶性配位子 1a-d へと
を使用して約3°
C/min の昇温速度で測定した。
4.3 合成
誘導することができる。これらを配位子とした Rh 金属
目的のカリックスアレーンジホスフィン配位子 7a-d
錯体触媒を水相/有機相二相系ヒドロホルミル化反応に
の合成経路を Fig.1 に示す。既知化合物であるカリック
用いた場合,Rh 金属錯体のカリックスアレーン空孔部
ス[4]アレーン 4 から下端部の架橋反応,上端部の Suzu-
にオレフィンが包接されると
えられ,加えて導入され
ki-Miyaura カップリング反応を経て 6a-d を得た。これ
たスルホナト基同士の静電的な反発のため,分子力学計
をリチオ化し,クロロジフェニルホスフィンとの反応に
算ソフトで推定したコンホメーションに近い包接錯体が
より目的化合物の 7a-d へと誘導した。
形成されると推察される。したがって,水相/有機相二相
系では有機相
一系で得られた結果よりも生成物の位置
選択性が改善されるものと
5a-d の合成
えられる。
冷却管を備えた 200mL の三ツ口丸底フラスコに4
(Fw 762.53)1.04g(1.36mmol),60%水素化ナトリウ
3. 結論
ム−パラフィン 0.13g
(3.3mmol,2.4equiv.)を
取り,
アルゴン雰囲気下で脱水 THF 45mL と脱水 DMF 45
本研究では,
水相/有機相二相系ヒドロホルミル化の配
mL の混合溶媒に溶解させた。これに 1,3-ジブロモプロ
位子として,下端部の distal 位を架橋することでバイト
パン 0.14mL(1.4mmol,1.0equiv.)を加え,50°
Cで
アングルを 120°
付近に制御可能な水溶性カリックスア
18時間撹拌した。このフラスコに 1N HCl を加えて反
レーンジホスフィンをデザインし,その前駆体を合成し
応を停止させ,大部分の溶媒を留去した後,クロロホル
た。さらに,このカリックスアレーンジホスフィンの Rh
ム 80mL で抽出した。この有機相を 50mL の純水で2
金属錯体を触媒として1-オクテンの有機相
一系ヒド
回洗浄した後,無水硫酸マグネシウムで脱水し,ロータ
ロホルミル化反応を行ったところ,この Rh 金属錯体触
リーエバポレータで減圧濃縮した。この粗生成物をフ
媒はトリフェニルホスフィンと同程度の活性および生成
ラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し,白色
物の位置選択性を示した。すなわち,選択性の改善は認
固体の 5a
(Fw 802.59)を 0.48g
(0.59mmol),収率 43%
められたものの満足できる程度の改善には至らなかっ
で得た。5b-d の合成は,対応するジハロゲン化アルキル
た。しかし,この前駆体から誘導される水溶性配位子を
を用いて 6a と同様の方法で行い,それぞれ 68%,55%,
用いた水相/有機相二相系反応では生成物の位置選択性
38%の収率で得た。
の大幅な向上が見込まれ,生成物の位置選択性の向上と
5a:R =0.68(chloroform/hexane=1/1);M p 240−
いう課題を解決できる新たな触媒の開発が期待できる。
242°
(m,
C; H NMR(CDCl ,400MHz)δ7.40−7.26
10H),7.24
(s,4H),6.36
(t,J =7.6Hz,2H),6.12
(d,
4. 実験
(s,4H),4.36
(d,J =14.7Hz,
J =7.6Hz,4H),4.73
4H),4.02
(t,J =5.0Hz,4H),3.14
(d,J =14.7Hz,
4.1 分子力学計算ソフトによる Rh 金属錯体のバイト
アングルの推定
4H),2.35−2.25(m,2H)ppm; C NMR(CDCl ,
100MHz)
δ157.4,155.2,139.8,138.0,133.5,132.5,
分子力学計算ソフト (Spartan 06)を用い,中心金属の
128.9,128.4,128.4,127.1,124.0,114.8,77.6,70.6,
Rh に1からスルホナト基を削除した配位子,一酸化炭
31.9,30.8ppm;IR (KBr)ν3027,2912,2866,1452,
素,水素原子およびエテンを配位させた錯体構造 (Fig.2)
1248,1203,1051,756,698cm ;Anal.Calcd for C
を作成し,安定化させて得られたコンフォメーションで
H Br O :C,67.34;H,4.77.Found:C,67.50;H,
bite angle を推定した。
4.75.
4.2 分析
5b:R =0.68(chloroform/hexane=1/1);M p 247−
ガスクロマトグラフ分析は,キャピラリーカラムを備
249°
(m,
C; H NMR(CDCl ,400MHz)δ7.41−7.30
― 38 ―
10H),7.2(
7 s,4H),6.30
(t,J =7.6Hz,2H),6.05
(d,
ボロン誘導体を得た。
(s,4H),4.28
(d,J =14.0Hz,
J =7.6Hz,4H),4.71
アルゴン雰囲気下,このジボロン誘導体が入った三ツ
4H),3.66−3.56
(m,4H),3.06
(d,J =14.0Hz,4
口フラスコにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パ
(m,4H)ppm; C NM R
(CDCl ,100
H),2.20−2.11
ラジウム 0.05g(0.05mmol,8mmol%),ビス(p-ブ
M Hz)
δ157.8,154.9,140.4,137.9,133.3,132.4,128.8,
ロモフェニル)メタン 0.86g
(2.67mmol,5.0equiv.)を
128.7,128.4,127.4,123.3,115.3,77.6,75.4,31.0,
取り,これに2M 炭酸ナトリウム水溶液7mL,ベンゼ
27.3ppm;IR (KBr)ν3056,3029,2967,2912,2868,
ン 17mL を加え,20時間還流した。反応終了後,クロロ
1455,1210,988,759,693cm ;Anal. Calcd for C
ホルムで3回抽出し,合わせた有機相を水で1回洗浄し
H Br O :C,67.66;H,4.94.Found:C,67.34;H,
た。無水硫酸マグネシウムで脱水した後,ロータリーエ
4.64.
バポレータで溶媒を留去し,これをショートカラムにて
5c:R =0.68(chloroform/hexane=1/1);M p 229−
精製した。続いて,得られた粗生成物をフラッシュカラ
232°
(m,
C; H NM R(CDCl ,400M Hz)δ7.43−7.29
ムクロマトグラフィーによ り 精 製 し,白 色 固 体 の 6a
10H),7.2(
5 s,4H),6.27
(t,J =7.6Hz,2H),5.99
(d,
(Fw 1135.03)を 0.34g
(0.30mmol),収率 57%で得た。
(s,4H),4.32
(d,J =13.8Hz,
J =7.6Hz,4H),4.67
6b-d は,対応する前駆体の 5b-d を用いて 6a と同様の
4H),3.8(
0 t,J =5.2Hz,4H),3.04
(d,J =13.8Hz,
方法で行い,それぞれ 48%,61%,57%の収率で得た。
4H),1.98−1.88
(m,2H),1.69−1.60
(m,4H)
ppm;
6a:R =0.55(chloroform/hexane=1/1);M p 241−
C NM R(CDCl ,100M Hz)δ158.4,154.4,139.2,
243°
C; H NMR(CDCl ,400MHz)δ7.58(d,J =
137.9,133.1,132.2,128.9,128.8,128.4,128.0,123.3,
8.3Hz,4H),7.47−7.27
(m,18H),7.21
(d,J =8.2
114.5,77.7,73.0,30.9,27.6,19.6ppm;IR (KBr)
Hz,4H),7.09(d,J =8.3Hz,4H),6.35(t,J =
ν3060,3030,2906,2858,1454,1369,1286,1242,1188,
7.6Hz,2H),6.16
(d,J =7.6Hz,4H),4.79
(s,4
1082,1043,1001,933,872,758,700cm ;Anal.Calcd
(d,J =14.5Hz,4H),4.11
(t,J =4.6Hz,
H),4.49
for C H Br O :C,67.96;H,5.10.Found:C,
4H),3.96
(s,4H),3.29
(d,J =14.5Hz,4H),2.41−
67.95;H,4.90.
2.31(m,2H)ppm; C NMR(CDCl ,100MHz)
5d:R =0.68(chloroform/hexane=1/1);M p 236−
δ157.9,155.5,140.7,139.6,139.3,138.3,138.0,134.6,
239°
(m,
C; H NM R(CDCl ,400M Hz)δ7.45−7.28
134.1,132.0,131.2,129.7,128.9,128.5,128.4,128.2,
10H),7.2(
4 s,4H),6.28
(t,J =7.6Hz,2H),6.13
(d,
127.6,127.1,123.9,120.4,77.7,70.6,41.4,32.4,
(s,4H),4.31
(d,J =13.2Hz,
J =7.6Hz,4H),4.65
31.0ppm;IR (KBr)ν3059,3026,2911,2864,1487,
4H),3.6(
6 t,J =4.8Hz,4H),2.98
(d,J =13.2Hz,
1473,1457,1240,1181,1080,1011,975,785,761,
4H),1.76−1.62
(m,4H),1.55−1.47
(m,4H)ppm;
699cm ;Anal.Calcd for C H O P :C,75.13;H,
C NM R(CDCl ,100M Hz)δ158.5,154.0,139.1,
5.15.Found:C,75.38;H,4.93.
137.6,132.9,131.9,129.8,128.7,128.6,128.2,122.9,
6b:R =0.57(chloroform/hexane=1/1);M p 243−
114.9,78.1,77.6,30.4,28.6,26.6ppm;IR (KBr)
246°
C; H NMR(CDCl ,400MHz)δ7.60(d,J =
ν3061,3030,2917,2861,1456,1430,1208,1186,977,
8.2Hz,4H),7.47−7.33
(m,18H),7.24
(d,J =8.2
762,698,551,513,408cm ;Anal.Calcd for C H
Hz,4H),7.10(d,J =8.2Hz,4H),6.25(t,J =
Br O :C,68.25;H,5.25.Found:C,67.95;H,5.06.
7.6Hz,2H),6.06
(d,J =7.6Hz,4H),4.76
(s,4
(d,J =13.9Hz,4H),3.97
(s,4H),3.75−
H),4.40
6a-d の合成
3.60(m,4H),3.20(d,J =13.9Hz,4H),2.30−
100mL 二 ツ 口 丸 底 フ ラ ス コ に 5a 0.43g(0.53
mmol)を
2.13(m,4H)ppm; C NMR(CDCl ,100MHz)
取り,乾燥 THF 15mL に溶解させ−78°
C
δ158.4,155.1,140.7,139.7,139.5,138.7,138.3,135.2,
に冷却した。次いで,1.67M n-ブチルリチウム n-ヘキ
133.9,132.0,131.2,129.8,128.9,128.7,128.4,128.3,
サン溶液 0.78mL(1.22mmol,2.3equiv.)を5分間か
127.6,127.5,123.3,120.5,77.5,75.4,41.5,31.5,
けて滴下し,10分間撹拌した。これにトリメトキシボラ
27.6ppm;IR (KBr)ν3025,2956,2912,2866,1782,
ン 0.18mL(1.60mmol,3.0equiv.)を3分間かけて加
1589,1485,1460,1433,1242,1186,1010,991,810,
えて 30分間撹拌した。室温で 30分間撹拌して1N 塩酸
783,758,700,507,488cm ;Anal.Calcd for C H
水溶液5mL を加えた後,さらに室温で1時間撹拌した。
Br O :C,75.26;H,5.26.Found:C,75.39;H,5.04.
大部分の有機溶媒を留去し,これをクロロホルムで3回
6c:R =0.59(chloroform/hexane=1/1);M p 244−
抽出した。抽出したクロロホルムを純水で1回洗浄し,
247°
(m,
C; H NMR(CDCl ,400MHz)δ7.55−7.48
ロータリーエバポレータで溶媒を留去することによりジ
4H),7.47−7.30(m,18H),7.28−7.22(m,4H),
― 39 ―
7,14−7.0(
7 m,4H),6.20
(t,J =7.6Hz,2H),6.00
(d,
6.34
(t,J =7.5Hz,2H),6.15
(d,J =7.5Hz,4H),
(s,4H),4.45
(d,J =13.7Hz,
J =7.6Hz,4H),4.73
4.80(s,4H),4.49(d,J =14.5Hz,4H),4.11(t,
4H),3.99
(s,4H),3.89
(t,J =5.1Hz,4H),3.18
(d,
(s,4H),3.30
(d,J =14.5Hz,
J =4.7Hz,4H),4.03
(m,2H),1.73−1.64
(m,
J =13.7Hz,4H),2.15−1.96
4H),2.41−2.27(m,2H)ppm; C NMR(CDCl ,
4H)ppm; C NM R
(CDCl ,100M Hz)
δ158.9,154.5,
100MHz)
δ157.8,155.4,142.5,139.54,139.48,138.3,
140.7,139.6,139.3,138.2,137.4,134.4,133.6,132.0,
138.0,137.9(d, J (C,P)= 10.6Hz),134.9(d,
131.1,129.7,128.8,128.7,128.3,128.2,127.9,127.5,
J (C,P)=10.1Hz),134.7,134.6,134.4,134.2,
123.2,120.4,77.6,72.9,41.4,31.4,27.7,19.8ppm;
134.1,134.0,129.8,129.6,129.6,129.1,128.97,128.90,
IR (KBr)ν3058,3024,2962,2906,1587,1460,1244,
128.87,128.5,128.34,128.26,127.5,127.0,123.9,
1185,1072,1041,970,937,810,783,754,698,509,
77.5,70.6,41.8,32.3,31.0ppm; P{ H}NM R
480cm ; Anal. Calcd for C H Br O : C,75.38;
(CDCl ,162MHz)−5.92ppm;IR (KBr)ν3045,3024,
H,5.37.Found:C,75.27;H,5.12.
2908,2864,1433,1238,1182,1080,694,505cm ;
6d:R =0.62(chloroform/hexane=1/1);M p 231−
Anal. Calcd for C H O P :C,84.80;H,5.84.
234°
(m,
C; H NM R(CDCl ,400M Hz)δ7.64−7.58
Found:C,84.58,H,5.89.
4H),7.48−7.29(m,18H),7.27−7.20(m,4H),
7b:R =0.52(chloroform/hexane=2/1);M p 120−
7.13−7.07
(m,4H),6.23−6.10
(m,6H),4.70
(s,
127°
(m,
C; H NMR(CDCl ,400MHz)δ7.78−7.60
4H),4.43
(d,J =13.2Hz,4H),3.97
(s,4H),3.75
(t,
4H),7.52−7.41(m,4H),7.40−7.15(m,42H),
(d,J =13.2Hz,4H),1.80−
J =4.8Hz,4H),3.12
6.25
(t,J =7.6Hz,2H),6.06
(d,J =7.6Hz,4H),
1.70
(m,4H),1.64−1.45
(m,4H)ppm; C NMR
4.76(s,4H),4.40(d,J =13.9Hz,4H),4.02(s,
(CDCl ,100M Hz)
δ159.1,154.2,140.7,139.6,139.3,
4H),3.78−3.64
(m,4H),3.20
(d,J =13.9Hz,4
137.9,137.3,134.6,133.5,132.0,131.1,129.7,129.7,
(m,4H)
(CDCl ,100
H),2.31−1.99
ppm; C NMR
128.7,128.4,128.2,127.9,127.5,122.8,120.4,77.9,
MHz)
δ158.3,155.0,142.5,139.6,139.5,138.6,138.3,
77.4,41.4,30.8,27.8,26.6ppm;IR (KBr)ν3025,
137.9(d, J(C,P)=10.8Hz),135.2,134.9
(d, J
2908,2846,1460,1433,1240,1184,1011,989,785,
(C,P)=10.1Hz),134.6,134.4,134.3,134.1,133.9,
810,785,758,702cm ;Anal. Calcd for C H Br
129.9,129.7,129.6,129.1,129.0,128.9,128.8,128.7,
O :C,75.51;H,5.48.Found:C,75.71;H,5.50.
128.4,128.3,127.6,127.4,123.2,77.5,75.4,41.9,
31.5,27.5ppm; P{ H}NMR(CDCl ,162MHz)−
7a-d の合成
5.91ppm;IR (KBr)ν3050,3025,2909,2850,1474,
50mL 二 ツ 口 フ ラ ス コ に 6a(Fw 1135.03)0.26g
(0.23mmol)を
取り,アルゴン雰囲気下,乾燥 THF
1461,1433,1238,1182,1084,994,743,696,507cm ;
Anal. Calcd for C H O P :C,84.81;H,5.93.
10mL に溶解させ−78°
C に冷却した。これに 1.57M n
Found:C,84.58;H,5.83.
-ブチルリチウム n-ヘキサン溶液 0.33mL
(0.52mmol,
7c:R =0.52(chloroform/hexane=2/1);M p 114−
2.3equiv.)を5分間かけて加え,10分間撹拌した。続い
117°
(m,
C; H NMR(CDCl ,400MHz)δ7.69−7.58
てクロロジフェニルホスフィン 0.10mL(0.52mmol,
4H),7.49−7.42(m,4H),7.42−7.14(m,42H),
2.3equiv.)を3分間かけて加え,
−78°
C で 20分間撹拌
6.19
(t,J =7.6Hz,2H),6.00
(d,J =7.6Hz,4H),
した。さらに室温で 15分間撹拌した後,飽和塩化アンモ
4.73(s,4H),4.44(d,J =13.7Hz,4H),4.03(s,
ニウム水溶液を加えて反応を停止させた。大部分の溶媒
4H),3.89
(t,J =5.0Hz,4H),3.17
(d,J =13.7Hz,
を留去した後,クロロホルムで2回抽出し,合わせた有
4H),2.08−1.91
(m,2H),1.79−1.61
(m,4H)ppm;
機相を純水で2回洗浄した。これを無水硫酸マグネシウ
C NMR(CDCl ,100MHz)δ158.9,154.5,142.5,
ムで脱水し,減圧濃縮により溶媒を留去した。次いでフ
139.55,139.51,138.2,137.8
(d, J(C,P)=10.7Hz),
ラッシュカラムクロマトグラフィーにて精製し,白色固
137.4,134.9
(d, J(C,P)=10.0Hz),134.6,134.5,
体の 7a
(Fw 1345.58)
を 0.11g
(0.082mmol),収率 35%
134.4,134.2,134.0,133.6,129.8,129.6,129.5,129.1,
で得た。7b-d は,対応する前駆体 6b-d を用いて 7a と同
129.0,128.9,128.82,128.75,128.3,128.2,128.0,
様の方法で行い,それぞれ 59%,59%,30%の収率で得
127.4,123.2,77.6,72.9,41.8,31.4,27.8,19.8ppm;
た。
{ H}
(CDCl ,162MHz)−5.65ppm;IR (KBr)
P
NMR
7a:R =0.50(chloroform/hexane=2/1);M p 126−
ν3051,3027,2859,1477,1462,1433,1244,1183,1087,
129°
(m,
C; H NM R(CDCl ,400M Hz)δ7.63−7.55
756,743,696,495cm ;Anal.Calcd for C H O P :
4H),7.47−7.40(m,4H),7.40−7.16(m,42H),
C,84.81;H,6.02.Found:C,84.66;H,5.85.
― 40 ―
7d:R =0.54(chloroform/hexane=2/1);M p 110−
取ったガラスライナーに移し,同様の反応を行った。
118°
(m,
C; H NM R(CDCl ,400M Hz)δ7.66−7.56
4H),7.59−7.41(m,4H),7.40−7.09(m,42H),
謝辞
6.23−6.0(
7 m,6H),4.70
(s,4H),4.43
(d,J =13.2
本研究は,平成 20年度生産工学研究所研究プロジェク
(s,4H),3.75
(t,J =4.6Hz,4H),
Hz,4H),4.02
トとして採択され,生産工学研究所の支援により遂行さ
3.12(d,J =13.2Hz,4H),1.80−1.65(m,4H),
れました。ここに深く感謝致します。
1.63(m,4H)ppm; C NM R(CDCl ,100MHz)
参
(d,
δ159.1,154.2,142.5,139.6,139.5,138.0,137.8
文献
J(C,P)=10.8Hz),137.3,134.9(d, J(C,P)=
10.0Hz),134.7,134.6,134.4,134.2,134.0,133.5,
1) Kuntz, E.G. Homogeneous catalysis...in water,
CHEMITECH , 1987, 570-575.
129.8,129.7,129.6,129.5,129.1,129.0,128.9,128.7,
128.4,128.2,127.9,127.4,122.8,78.0,77.4,41.8,
2) Shimizu, S.; Shirakawa, S.; Sasaki, Y.; Hirai,
30.8,28.8,26.7; P
{ H}NM R
(CDCl ,162MHz)−
[4]arene ligands
C. Novel water-soluble calix
5.64ppm;IR (KBr)ν3032,2918,2850,1716,1461,
with phosphane-containing groups for dual func-
1433,1236,1186,1091,997,949,901,843,802,754,
tional metal-complex catalysts: The biphasic
698,611,440cm ;Anal.Calcd for C H O P ・0.1
hydroformylation of water-insoluble olefins,
CHCl :C,84.18;H,6.06.Found:C,83.94;H,
Angew. Chem. Int. Ed. 39, 2000, 1256-1259.
3) Casey, C.P.; Whiteker, G.T. The natural bite
6.10.
4.4 有機相
一系ヒドロホルミル化反応
angle of chelating diphosphines, Isr. J. Chem.30,
1990, 299 -304.
[Rh (acac)(CO) ]2.1mg(8.14×10 mmol),ホ ス
フィン配位子(3.26×10 mmol)
,1-オクテン 0.45g
4) (a) Achord, P.D.; Kiprof, P.; Barker, B. Study
(4.0mmol)
,内部標準物質としてのウンデカン 0.12g
of bite angle effects in hydroformylaion
(0.80mmol)をガラスライナーに
CHEMITECH , 2008, 103-111. (b) Kamer P.C.J.;
取り,脱気トルエン
5mL を加え,CO/H ガスで加圧してオートクレーブ内
van Leeuwen, P.W.N.M.; Reek J.N.H.
で反応を行った。反応条件は1-オクテン/P/Rh=500/
bide angle diphosphines: Xantphos ligands in
8/1,10atm(CO/H =1/1)
,80°
C,12時間,撹拌
transition metal complexes and catalysis, Acc.
速度 800rpm とした。なお,本研究ではこの反応条件を
Chem. Res. 34,2001,895-904.(C)van Leeuwen,P.
基準とした。次いで,室温まで冷却し反応を停止させた
W.N.M.; Kamer, P.C.J.; Reek, J.N.H.; Dierkes,
後,この溶液をセライトに通し,
液をトルエンで希釈
P. Ligand bite angle effects in metal-catalyzed C
してガスクロマトグラフィー (GC)分析試料とした。内
-C bond formation Chem. Rev. 100, 2000, 2741
部標準法を用いた GC 分析での面積比より検量線を用い
-2769.
て転化率,アルデヒド収率,直鎖アルデヒド/分枝アルデ
Wide
5) Lejeune, M.; Semeril, D.; Jeunesse, C.; Matt,
ヒド比(l/b 比)を算出した。
D.; Peruch, F.; Lutz, P.J.; Ricard, L. Diphos-
インキュベーションを行った場合は,まず丸底フラス
phine with expandable bite angles: Highly active
コにカリックスアレーンジホスフィン配位子(8.14×
ethylene dimerisation catalysts based on upper
10 mmol)を
[4]arenes,
rim, disallally diphosphinated calix
取り,アルゴン雰囲気下でトルエン5
Chem. Eur. J. 10, 2004, 5354-5360.
mL に溶解させ室温で 30分間撹拌した。この溶液に[Rh
(acac)(CO) ]2.1mg(8.14×10 mmol)を加え,さら
6) Mongrain, P.; Harvey, P.D. An Original calix
に 30分間撹拌した。次いで,P/Rh=2/1の条件ではこ
[4]
arene-containing oligomer/polymer catalyst
のまま,P/Rh=8/1の条件ではさらにカリックスア
for homogeneous hydroformylation, Macromol.
レーン配位子(2.44×10 mmol)を加え,最終的に調製
Rapid Commun. 29, 2008, 1752-1757.
された溶液を1-オクテン 0.45g
(4.0mmol)および内部
標準物質としてのウンデカン 0.12g(0.80mmol)を
― 41 ―
(H 22.3.24受理)