NMR の原理≫ 磁場中に置かれた核スピンにラジオ波を照射すると、エ

JNM-ECA400WB(日本電子)
≪NMR の原理≫
磁場中に置かれた核スピンにラジオ波を照射すると、エネルギーを吸収して励起する。こ
の現象が核磁気共鳴である。ラジオ波の照射を止めると核スピンはエネルギーを放出して元
の状態に戻っていく(緩和)。放出されたエネルギーは次第に減衰するシグナル(FID)とし
て観測される。FID をフーリエ変換(FT)することで、横軸が周波数に変換された NMR スペ
クトルが得られる。
磁
場
の
方
向
FT
緩和
ラジオ波
ΔE
励起
FID
1.一次元 NMR 測定
≪1H-NMR≫
1
拡大
スピン-スピン結合
積分値
-CH3
-CH2化学シフト
図1.エチルベンゼンの 1H スペクトル
≪13C-NMR≫
3
3 2
4
1
2
4
-CH2-
-CH3
1
図2.エチルベンゼンの 13C スペクトル
NMR スペクトル
図1に、1H-NMR の例としてエチルベンゼンの
スペクトルを示した。エチルベンゼンの
CH3,CH2,C6H5 の水素が3つのシグナルとして
現れており、その積分値(シグナルの面積比)
は水素の数の比を表している。化学シフトは
その水素がどのような化学的環境にあるかを
示しており、官能基を予測することができる。
また、シグナルを拡大すると分裂が見えるが、
これはスピン-スピン結合と呼ばれ、分裂のパ
ターンの解析から近くにある 1H の数を推測す
ることができる。
図2は、エチルベンゼンの 13C-NMR スペクト
ルである。1H 同様、6 種類の炭素が6つのシ
グナルとして現れている。13C のスペクトル
は、通常、ブロードバンドデカップリングさ
れるため、スピン-スピン結合の情報は得られ
ない。また、積分値の定量性も損なわれてい
るため、積分値は取らない。
2.二次元 NMR 測定
二次元 NMR スペクトルの二次元は、二つの周波数次元を指し、その測定データは下記のよ
うに一次元 NMR の FID を並べたものに相当する。これを X 軸,Y 軸方向にフーリエ変換する
と、両軸が周波数に変換され、Z 軸方向に強度情報を持つデータが得られる。実際の解析に
は、下に示したように等高線表示したスペクトルを使用する。二次元 NMR には、数多くの測
定法が存在するが、下記に、基本的な測定法について例を示す。
X 軸の FT
≪HMQC≫
1
H スペクトル
13
C スペクトル
Y 軸の FT
図3に、HMQC スペクトルの例を示した。
X 軸は 1H の化学シフト、Y 軸は 13C の化学シフ
トを示す。交差ピークから X 軸,Y 軸に線を引
くと、直接結合している 1H と 13C が分かる。
1
H の結合してない 13C には交差ピークは観測
されない。
図3.HMQC スペクトル
≪1H-1H COSY≫
JIH
G
FE
1
H スペクトル
D
C B
A
A
BC
D
EF G
図4.1H-1H COSY スペクトル
HIJ
対角ピーク
図4に、1H-1H COSY スペクトルの例を示した。
X 軸,Y 軸ともに1H の化学シフトで、対角線
上に現れている信号は、1 次元の1H スペク
トルに対応している。 で囲んだ信号が交
差ピークで、対角線に対して対称に現れ、2
つのピークがスピン結合していることを示
している。
≪HMBC≫
1
H スペクトル
A
図5に、HMBC スペクトルの例を示した。X 軸
は 1H の化学シフト、Y 軸は 13C の化学シフトで
13
C スペクトル ある。1H スペクトルの A のピークについて見
ると、13C スペクトルの A,C,D のピークと相関
があることが分かる。これは、水素 A は炭素
A,C,D と 2~3 結合隔ててロングレンジスピン
A
結合をしていることを意味している。
(1H の A
B
と 13C の B の信号は二つに分裂しており、これ
は炭素 B に水素 A が直接結合していることを
C
D
示す。)他のピークも同様に見て行くと部分構
造のつながりを見ることが出来る。
図 5.HMBC スペクトル
図5.HMBC スペクトル
参考資料
・これならわかる NMR【そのコンセプトと使い方】
安藤喬志・宗宮 創 著
化学同人
・JEOL NMR ユーザーズミーティング資料 NMR 基礎講座 構造解析
はじめの一歩 加藤 敏代 著
・有機化合物のスペクトルによる同定法-MS,IR,NMR,UV の
併用-第 5 版
SILVERSTEIN・BASSLER・MORRILL 著
荒木 峻・益子洋一郎・山本 修 訳
東京化学同人
・分析化学実技シリーズ 機器分析編・3 NMR
(社)日本分析化学会 編 田代 満・加藤敏代 著
共立出版
・有機化学のための高分解能 NMR テクニック T.D.W クラリッジ 著
竹内敬人・西川実希 訳 講談社サイエンティフィク
・化学者のための最新 NMR 概説-よりよいスペクトルを得るため
の実験法と考え方- Andrew E. Derome 著
竹内敬人・野坂篤子 訳
JNM-ECA400WB
化学同人