鋼構造接合部の設計を学ぶ - 玉井宏章のホームページ

日本建築学会中国支部 2007 年度 構造委員会 鋼構造セミナー
鋼構造接合部の設計を学ぶ
― 改訂設計指針から ―
2007 年 8 月 4 日(土)
(第 1 分冊)
社団法人 日本建築学会
中国支部構造委員会
2007 年度 構造委員会 鋼構造セミナー
□ 鋼構造接合部の設計を学ぶ
目次
・主旨説明
・講演資料
高松
隆夫
(広島工業大学)--------------------------------------3
梁・柱継手の例題
近松
・講演資料
(広島工業大学)--------------------------------------1
設計のポイントと解説 ①
高松
・講演資料
隆夫
英樹
(㈱ カナイ建築構造事務所)--------------------------18
ブレース接合部設計解説
立石 直弘
(㈱ スウィング)------------------------------------46
主旨説明
日本建築学会鋼構造運営委員会においては、現在出版されている多数の設計指針を定期的
に改定することが決まっている。そのため、中国支部構造委員会の鋼構造研究小委員会では、
今後、それぞれの設計指針が改定される毎に、その改定内容についての講習会を鋼構造セミ
ナーとして開催することになった。
第1回鋼構造セミナーとして、2006 年 3 月に出版された鋼構造接合部設計指針改定版につ
いての講習会を開催する。セミナー形式なので若手構造技術者が気楽に参加できるように配
慮している。指針内容については大学関係者が平易に解説を行う。指針を用いた設計例につ
いては中国地方で活躍している若手構造技術者に解説をお願いしている。JSCA 中国支部技
術委員会が中心となり、若手構造技術者育成を目的とした設計例についての勉強会が毎週の
ように開催されており、十分に検討された設計例の解説が行われることになっている。参加
者には日常の設計においての疑問点を遠慮なく質問していただきたい。議論の中で指針の内
容がより深く理解されることを期待している。
今回のセミナーは新しい試みなので、過去の経験を踏まえた講習会ではない。そのために、
いくつかの問題点が発生することが予想させるが、それらは今後の検討課題として議論して
いきたい。参加者全員が議論することにより新しいセミナー形式を創造することが今回のセ
ミナーの最も重要な目的である。鋼構造セミナーに参加することにより、中国支部から活力
ある優秀な若手構造技術者が多数輩出されることを切に願っている。
平成 19 年 8 月 4 日
日本建築学会中国支部 構造委員会
鋼構造研究小委員会 構造設計部会
高松
1
隆夫
□鋼構造セミナー「鋼構造接合部の設計を学ぶ
−改定設計指針から−」
<主催
協賛
日本建築学会中国支部,日本鉄鋼連盟
日本建築構造技術者協会中国支部>
2006 年 3 月に鋼構造接合部設計指針が改定され出版された。鋼構造関連の設計指針は、今後定期
的に改定が行なわれる。
この新しい知見を取り入れた設計指針を,実務で有効に利用していただき,地域の設
計技術の向上するために,本鋼構造セミナーを企画した。今回は改定鋼構造接合部設計指針をベ
ースに、解説を行ない,それに沿った設計演習を実務者から示す。日常的な設計の問題点につい
ても質疑応答を行う。尚、本セミナーは、日本建築学会中国支部構造委員会と日本鉄鋼連盟中国
地区サブネット事業委員会が協力して開催する。
・会場:広島工業大学広島校舎 501 室(第 1 回),201 室(第 2 回)
(広島市中区中島町 5−7,TEL:082-249-1251)
・講師:高松隆夫(広島工業大学)
、玉井宏章(広島工業大学),構造設計実務者
・日時:第 1 回
第2回
8 月 4 日(土)
9 月 1 日(土)
4名
13:30-16:30
13:30-16:30
・定員:60 名(定員になり次第受付を終了します。)
・対象:本会・協賛団体会員、建築技術者、大学院生
・会費:各回、本会・協賛団体会員 1000 円、会員外 3000 円、学生 無料
テキスト代: 第 1・2 回テキスト 4800 円 鋼構造接合部設計指針 2006 改定(日本
建築学会)を使いますので、お持ちでない方は,ご購入ください。
・問い合せ、参加受付先
〒731-5193 広島市佐伯区三宅 2-1-1
玉井宏章
E-mail:[email protected]
TEL/FAX 082-921-6441
2
広島工業大学工学部建築工学科
講演資料
設計のポイントと解説 ①
高松 隆夫 (広島工業大学)
3
■講演内容
鋼構造接合部設計指針
1.基本事項
- 設計のポイントと解説 -
2.接合要素と接合部の基本性状
広島工業大学 高松 隆夫
3.継手
4.ブレース接合部
1章 基本事項
001
1.1 適 用
第1章 基本事項
鋼構造接合部設計指針は、鋼構造
建築物の接合部の設計に適用する。
( pp. 001 – 025 )
:兵庫県南部地震では、柱脚の被害、ブレース
接合部の被害、柱梁接合部の被害が、また、
ノースリッジ地震では、柱梁接合部の被害が、
それぞれ多数露見した。
1章 基本事項
002
1章 基本事項
003
1.1.2 適 用 範 囲
1.2 材 料
:部材の降伏を限界として定められた許容応力
度設計においては、接合部がもつ降伏耐力が、
他方、部材の塑性化を考慮した塑性設計や
終局強度設計においては接合部が持つ最大
耐力が、それぞれ接合部に付与すべき耐力
の基本となる。
(1) 構造用鋼材の材料の強さ
:主要な構造用鋼材の材料の降伏強さFy、及び、
Fuは、表1.1 ~ 表1.4に示す値とする。
4
表 1.1 主要な構造用鋼材の材料の強さ(N/mm2)
1章 基本事項
003
1.2 材 料
004
1.2 材 料
表 1.2 溶接構造用鋼材の材料の強さ(N/mm2)
1章 基本事項
1章 基本事項
表 1.3 冷間加工材の材料の強さ(N/mm2)
004
1.2 材 料
1章 基本事項
004
1.2 材 料
表 1.4 溶接を使用しない部分に用いる鋼材の材料強さ(N/mm2)
(2) 接合材料の強さ
1) 高力ボルトの材料の降伏強さFbyおよび引張
強さFbuは、表1.5に示す値とする。
表 1.5 高力ボルトの材料の強さ(N/mm2)
1章 基本事項
004
1.2 材 料
(2) 接合材料の強さ
2) 構造用アンカーボルトの材料の降伏強さFy
および引張強さFuは、表1.6に示す値とする。
5
1章 基本事項
1.2 材 料
表 1.6 構造用アンカーボルトの材料の強さ(N/mm2)
004
1章 基本事項
004
1.2 材 料
(2) 接合材料の強さ
3) 表1.1 ~ 1.3に示した鋼材の溶接継目の降
伏強さおよび引張強さは、
第2章 接合要素と接合部の基本性状
( pp. 026 – 090 )
完全溶込み溶接についてはそれぞれ溶接される
母材の降伏強さFyおよび引張強さFuとし、
隅肉溶接についてはそれぞれ溶接される母材の
降伏強さFyおよび引張強さFuの 1/ 3 とする。
なお、溶接される母材の材料の強さが異なる場合
には、それぞれの小さいほうの値を溶接継目の強
さとする。
2章 接合要素と接合部の基本性状
026
026
2.1 高力ボルト接合部
2.1 高力ボルト接合部
(1) 高力ボルト
1) 高力ボルトの種類と等級
:本指針が対象とする高力ボルトは、摩擦接合用
高力六角ボルトセット、構造用トルシア形高力ボ
ルトセット、溶融亜鉛めっき高力ボルトセット、ステ
ンレス鋼高力ボルトセットとする。
鋼構造接合部設計指針は、鋼構造
建築物の接合部の設計に適用する。
:兵庫県南部地震では、柱脚の被害、ブレース
接合部の被害、柱梁接合部の被害が、また、
ノースリッジ地震では、柱梁接合部の被害が、
それぞれ多数露見した。
2章 接合要素と接合部の基本性状
2章 接合要素と接合部の基本性状
026
2章 接合要素と接合部の基本性状
2.1 高力ボルト接合部
2.1 高力ボルト接合部
(1) 高力ボルト
2) 設計ボルト張力
:高力ボルト接合部の設計に用いる設計ボルト張
力N0は(2.1.a)および(2.1.b)式による。
(1) 高力ボルト
1) 高力ボルトの種類と等級
026
: N 0 = 0.85 ◊ Fby ◊ Abe
(2.1.a)
F10T : N 0 = 0.75 ◊ Fby ◊ Abe
(2.1.b)
F8T
記号
Fby : 高力ボルトの降伏強さ
Abe : 高力ボルトのねじ部有効断面積
6
2章 接合要素と接合部の基本性状
026
2章 接合要素と接合部の基本性状
2.1 高力ボルト接合部
2.1 高力ボルト接合部
(2) 接合法と設計耐力
1) 接合法の種類
:本指針が対象とする高力ボルト接合法は、摩擦
接合と引張接合とする。
(2) 接合法と設計耐力
2) すべり耐力及び離間耐力
2) すべり耐力及び離間耐力
:高力ボルト摩擦接合のボルト1本あたりのすべり
耐力qby、高力ボルト引長接合部のボルト1本当た
りの離間耐力pbyはそれぞれ(2.2)式および(2.3)式
による。
2章 接合要素と接合部の基本性状
027
026
qby = m ◊ m ◊ N 0
(2.2)
pby = 0.9 ◊ N 0
(2.3)
記号
m : 摩擦面の数
µ : すべり係数
N0 : 設計ボルト張力
2章 接合要素と接合部の基本性状
027
2.1 高力ボルト接合部
2.1 高力ボルト接合部
(2) 接合法と設計耐力
2) すべり耐力及び離間耐力
:引張力とせん断力を同時に受ける高力ボルト摩
擦接合部のボルト1本当たりのすべり耐力q*byは
(2.4)式による。
(2) 接合法と設計耐力
3) 最大耐力
:高力ボルト摩擦接合部のボルト1本当たりの最
大せん断耐力qbu、高力ボルト引張接合部のボル
ト1本当たりの最大引張耐力pbuはそれぞれ(2.5)
式と(2.6)式による。
q*by = m ◊ m ◊ ( N 0 - Tb )
(2.4)
記号
Tb : ボルト1本当たりの引張力で、Tb ≦ pby
2章 接合要素と接合部の基本性状
027
2章 接合要素と接合部の基本性状
027
2.1 高力ボルト接合部
2.1 高力ボルト接合部
(2) 接合法と設計耐力
3) 最大耐力
(2) 接合法と設計耐力
3) 最大耐力
:引張力とせん断力の組み合わせ応力を受ける
高力ボルトの最大せん断耐力q*buおよび最大引張
耐力p*buは(2.7)式による。
qbu = 0.6m ◊ Abs ◊ Fbu
(2.5)
pbu = Abe ◊ Fbu
(2.6)
記号
Abs : 高力ボルトの軸部断面積
Fbu : 高力ボルトの引張強さ
7
Ê q*bu
ÁÁ
Ë qbu
ˆ
˜˜
¯
2
Ê p*bu
+ ÁÁ
Ë pbu
ˆ
˜˜
¯
2
=1
(2.7)
2章 接合要素と接合部の基本性状
044
2章 接合要素と接合部の基本性状
044
2.1.2 板要素接合部の設計と耐力
2.1.2 板要素接合部の設計と耐力
(2) 高力ボルト摩擦接合部
1) 降伏耐力
:降伏引張耐力Py、降伏せん断耐力Qy、降伏曲げ
耐力Myは以下の式による。
(2) 高力ボルト摩擦接合部
1) 降伏耐力
ただし、
Py = min { Py1 , Py 2 , Py 3 }
Qy = min { Qy1 , Qy 2 }
M y = min { M y1 , M y 2 }
(2.9)
(2.10)
(2.12.a)
Py 2 = An ◊ Fy + nr ◊ qby / 3
(2.12.b)
(1面せん断の場合は、Py 2 = An ◊ Fy )
(2.11)
2章 接合要素と接合部の基本性状
Py1 = n ◊ qby
Py 3 = Ag ◊ Fy
044
(2.12.c)
2章 接合要素と接合部の基本性状
045
2.1.2 板要素接合部の設計と耐力
2.1.2 板要素接合部の設計と耐力
(2) 高力ボルト摩擦接合部
1) 降伏耐力
ただし、
(2) 高力ボルト摩擦接合部
2) 最大耐力
:最大引張耐力Pu、最大せん断耐力Qu、最大曲げ
耐力Myは以下の式による。
Qy1 = n ◊ qby
(2.13.a)
Qy 2 = An ◊ Fy / 3
(2.13.b)
M y1 =
 ri2 ◊ q
rm
by
M y 2 = Z n ◊ Fy
(2.14.a)
Pu = min { Pu1 , Pu 2 , Pu 3 }
(2.15)
Qu = min {Qu1 , Qu 2 }
(2.16)
M u = min { M u1 , M u 2 }
(2.17)
(2.14.b)
2章 接合要素と接合部の基本性状
046
2.1.2 板要素接合部の設計と耐力
2章 接合要素と接合部の基本性状
2.1.2 板要素接合部の設計と耐力
(2) 高力ボルト摩擦接合部
2) 最大耐力
ここで、
Pu1 = n ◊ qbu
(2.18.a)
Pu 2 = An ◊ Fu
(2.18.b)
図 2.2 高力ボルト摩擦接合部(2面摩擦の場合)
8
044
2章 接合要素と接合部の基本性状
044
2.1.2 板要素接合部の設計と耐力
2章 接合要素と接合部の基本性状
ただし、Pu3は、なかぬけ破断、そとぬけ破断、
はしぬけ破断のうちの最小値とする。
Pu 3 = ( An + 0.5 Ans ) ◊ Fy
046
(2.18.c)
図 2.3 ボルト間の寸法と想定破断線
2章 接合要素と接合部の基本性状
046
2章 接合要素と接合部の基本性状
046
2.1.2 板要素接合部の設計と耐力
2.1.2 板要素接合部の設計と耐力
(2) 高力ボルト摩擦接合部
2) 最大耐力
ここで、
(3) 高力ボルト引張接合部
1) スプリットティ形式引張接合部の
降伏引張耐力
Ty = min {Ty1 , Ty 2 , Ty 3 }
Qu1 = n ◊ qbu
(2.19.a)
Qu 2 = An ◊ Fu / 3
(2.19.b)
Ty1 = n ◊ pby
(2.20.a)
Ty 2 =
(2.20.b)
Ty 3 =
M u1 =
 ri
rm
2
◊ qbu
M u 2 = Z pe ◊ Fu
2章 接合要素と接合部の基本性状
(2.22.a)
1
◊ n ◊ pby
(2.22.b)
2w ◊ M 0
(2.22.c)
2
047
2.1.2 板要素接合部の設計と耐力
(3) 高力ボルト引張接合部
2) スプリットティ形式引張接合部の
最大引張耐力
Tu = min {Tu1 , Tu 2 , Tu 3 }
w ◊ M0 +
(2.21)
2章 接合要素と接合部の基本性状
2.1.2 板要素接合部の設計と耐力
Tu1 = n ◊ pbu
(2.23)
Tu 2 =
Tu 3 =
w ◊ Mu +
2w ◊ M u
2
9
047
(2.24.a)
1
◊ n ◊ pbu
(2.24.b)
(2.24.c)
2章 接合要素と接合部の基本性状
048
2.1.2 板要素接合部の設計と耐力
048
2.1.2 板要素接合部の設計と耐力
(4) 組合せ応力を受ける高力ボルト摩擦接合部
:ボルトに生じる最大の作用力Rは以下の式による。
R=
2章 接合要素と接合部の基本性状
Rx = M
ym
,
 ri2
Ry = M
xm
 ri2
(2.25.b)
2
( Rx + Rn )2 + ( Ry + Rq ) (2.25.a)
2章 接合要素と接合部の基本性状
048
2.1.2 板要素接合部の設計と耐力
(4) 組合せ応力を受ける高力ボルト摩擦接合部
:高力ボルト摩擦接合部の板要素に面内のせん断
力Qと面外方向の引張力Tが同時に作用する場合
のすべり耐力Rbyは以下の式による。
*
Rby = n ◊ qby
(2.26)
2章 接合要素と接合部の基本性状
2.2 溶接接合部
2.2.1 溶接継目の耐力
(1) 完全溶込み溶接継目
1) 軸方向耐力
:単位長さ当たりの降伏耐力wpyおよび最大耐力wpu
は以下の式による。
(2.27)
w p y = a ◊ Fy
w pu
2章 接合要素と接合部の基本性状
065
065
= a ◊ Fu
(2.28)
2章 接合要素と接合部の基本性状
065
2.2.1 溶接継目の耐力
2.2.1 溶接継目の耐力
(1) 完全溶込み溶接継目
2) せん断耐力
:単位長さ当たりの降伏耐力wqyおよび最大耐力wqu
は以下の式による。
(2) 部分溶込み溶接継目
1) 軸方向耐力
:単位長さ当たりの降伏耐力wpyおよび最大耐力wpu
は以下の式による。
(2.31)
w p y = a ◊ Fy
w qy
= a ◊ Fy / 3
(2.29)
w qu
= a ◊ Fu / 3
(2.30)
10
w pu
= a ◊ Fu
(2.32)
2章 接合要素と接合部の基本性状
065
2章 接合要素と接合部の基本性状
066
2.2.1 溶接継目の耐力
2.2.1 溶接継目の耐力
(2) 部分溶込み溶接継目
2) せん断耐力
:単位長さ当たりの降伏耐力wqyおよび最大耐力wqu
は以下の式による。
(3) 隅肉溶接継目
1) 前面、側面および斜方隅肉溶接継目の耐力
:単位長さ当たりの降伏耐力wqyおよび最大耐力wqu
は以下の式による。
w qy
= a ◊ Fy / 3
(2.33)
w qu
= a ◊ Fu / 3
(2.34)
2章 接合要素と接合部の基本性状
066
2.2.1 溶接継目の耐力
2章 接合要素と接合部の基本性状
066
2.2.1 溶接継目の耐力
w qy
= (1 + 0.4 cos q ) a ◊ Fy / 3
(2.35)
w qu
= (1 + 0.4 cos q ) a ◊ Fu / 3
(2.36)
(3) 隅肉溶接継目
2) 隅肉溶接継目による併用継目の
降伏耐力および最大耐力
:一つの継手に、溶接継目の方向が異なる2種類の
隅肉溶接継目を併用する場合には、併用継目の降
伏耐力および最大耐力はそれぞれの継目の降伏
耐力および最大耐力の和とする。
2章 接合要素と接合部の基本性状
086
2章 接合要素と接合部の基本性状
086
2.3 高力ボルトと溶接の併用継手
2.3 高力ボルトと溶接の併用継手
(1) 降伏耐力
:高力ボルト摩擦接合と隅肉溶接の併用継手の併
用継手の降伏耐力Pyは、高力ボルトの締め付けを
溶接より先に行う場合には、以下の式による。
(2) 最大耐力
:高力ボルト摩擦接合と隅肉溶接の併用継手の併
用継手の最大耐力Puは、高力ボルトの締め付けを
溶接より先に行う場合には、以下の式による。
Py = n ◊ qby + w q y ◊ Le
(2.37)
11
Pu = n ◊ qby + w qu ◊ Le
(2.38)
3章 継 手
第3章 継 手
( pp. 091 – 118 )
(1) 梁継手は梁の応力を伝達できる耐力を保有
するように設計する。
(2) 梁継手は骨組が終局限界状態に達するまで
破断してはならない。
3章 継 手
091
3.1 高力ボルト摩擦接合による
H形鋼梁継手の設計
3.1.1 基本事項
3章 継 手
091
3.1 高力ボルト摩擦接合による
H形鋼梁継手の設計
3.1.1 基本事項
表 3.1 継手の接合部係数
(3) 終局限界状態において、梁継ぎ手に作用す
る設計用曲げモーメントMjは以下の式による。
M j = a ◊ bM p
091
3.1 高力ボルト摩擦接合による
H形鋼梁継手の設計
3.1.1 基本事項
(3.1)
記号
bMh :梁の全塑性モーメント(=Zp・Fy)
Zp :梁全断面の塑性断面係数
α :継手の接合部係数
3章 継 手
092
3章 継 手
093
3.1.2 梁継手の降伏耐力
3.1.2 梁継手の降伏耐力
(1) 梁継手の降伏曲げ耐力jMyは以下の式を満
たすものとする。
(2) 梁継手の設計用せん断力Qyは以下の式を
満たすものとする。
jMy
j M fu
j M wu
= j M fu + j M wu ≥ M j
Ê
I ˆ
≥ Á 1- f w ˜ M j
I0 ¯
Ë
Iw
≥ f◊ ◊Mj
I0
f = 0.4
(3.2)
(3.3)
(3.4)
(3.5)
12
Q j £ nw ◊ qby
(3.6)
3章 継 手
093
3章 継 手
093
3.1.2 梁継手の降伏耐力
3.1.2 梁継手の降伏耐力
(3) フランジ接合部の降伏曲げ耐力jMfyは以下
の式による。
(4) ウェブ接合部の降伏曲げ耐力jMwyは以下の
式による。
j M fy
= min ( j M fy1 , j M fy 2 , j M fy 3 )
ただし、
j M fy1 = n f ◊ qby ◊ d b
(3.7)
j M wy
= min ( j M wy1 , j M wy 2 )
(3.9)
(3.8.a)
j M fy 2
= ( Asn ◊ Fsy + nr ◊ qby / 3 ) ◊ db
(3.8.b)
j M fy 3
= Asg ◊ Fsy ◊ db
(3.8.c)
3章 継 手
093
3章 継 手
096
3.1.2 梁継手の降伏耐力
3.1.3 梁継手の最大耐力
ただし、
(1) 梁継手の最大曲げ耐力jMuは以下の式を満
たすものとする。
j M wy1
=
 ri2 ÔÏÌ
rm Ô
Ó
Ê Q j ◊ ym
2
qby
- ÁÁ
Ë nw ◊ rm
ˆ
˜˜
¯
2
-
Q j ◊ xm
nw ◊ rm
¸
Ô
˝
Ô˛
j Mu
= Z sn ◊ Fy
(3.10.b)
Q j £ nw ◊ qbu
3章 継 手
096
3.1.3 梁継手の最大耐力
= j M fu + j M wu
(3.12)
3章 継 手
096
3.1.3 梁継手の最大耐力
(3) 最大曲げ耐力jMuは以下の式による。
j Mu
(3.11)
(2) 骨組み終局状態で梁継手に作用する設計
用せん断力Qjは以下の式を満たすものとする。
(3.10.a)
j M wy 2
≥ Mj
(3.13)
(3) 最大曲げ耐力
1)フランジ部の最大曲げ耐力jMfuは次式による。
j M fu
= min ( j M fu1 , j M fu 2 ,
j M fu 3 , j M fu 4 , j M wu 5
13
)
(3.14)
j M fu1
= A fn ◊ Fu ◊ db
(3.15.a)
j M fu 2
= Asn ◊ Fsu ◊ db
(3.15.b)
3章 継 手
096
3章 継 手
097
3.1.3 梁継手の最大耐力
3.1.3 梁継手の最大耐力
(3) 最大曲げ耐力
1)フランジ部の最大曲げ耐力jMfuは次式による。
(3) 最大曲げ耐力
2)ウェブ部の最大曲げ耐力jMwuは次式による。
j M fu 3
= n2 { ( n1 - 1 ) p + e f 1 } t f ◊ Fu ◊ db
(3.15.c)
j M fu 4
= n2 { ( n1 - 1 ) p + es1 } t fs ◊ Fsu ◊ db
(3.15.d)
j M fu 5
= n ◊ qbu ◊ db
(3.15.e)
3章 継 手
097
3.1.3 梁継手の最大耐力
(3) 最大曲げ耐力
2)ウェブ部の最大曲げ耐力jMwuは次式による。
j M wu 3
=
 ri2 e
j M wu 4
=
 ri2 e
j M wu 5
=
rm
w1
rm
s1
 ri2 ÏÌÔ
rm Ô
Ó
◊ tw ◊ Fu
(3.17.c)
◊ tws ◊ Fsu
(3.17.d)
Ê Q j ◊ ym
2
qbu
- ÁÁ
Ë nw ◊ rm
ˆ
˜˜
¯
2
-
3章 継 手
Q j ◊ xm
nw ◊ rm
101
j M wu 3 , j M wu 4 , j M wu 5
)
(3.16)
j M wu1
= Z wp ◊ Fu
(3.17.a)
j M wu 2
= Z sn ◊ Fsu
(3.17.b)
3章 継 手
101
3.2 柱継手の設計
3.2.1 基本事項
(1) 柱継手は骨組みの終局限界状
態における作用応力の小さい
位置に設け、その位置の組合
せ応力に対して柱継手を弾性
域に留める。
3章 継 手
102
3.2.1 基本事項
(2) 柱継手に作用する終局限状態
の設計用応力は以下の様に算
定する。
1)柱継手の設計用曲げモーメント
Mjは次式による。
cML
= min ( j M wu1 , j M wu 2 ,
¸
Ô
˝ (3.17.e)
Ô˛
3.2 柱継手の設計
3.2.1 基本事項
Ê
hj ˆ
˜
M j = a ÁÁ 1 y
◊ h ˜¯
Ë
M j ≥ 0.5Z ◊ Fy
j M wu
(3.18)
(3.19)
14
2) 柱継手の設計用軸方向力Njおよび設計用せ
ん断力Qjは、骨組みの終局限界状態で作用する
柱の軸方向力および柱のせん断力とする。
3章 継 手
102
3章 継 手
102
3.2.2 柱継手の高力ボルト摩擦接合
3.2.2 柱継手の高力ボルト摩擦接合
(1) 柱継手の設計用曲げモーメントMjはフランジ
接合部とウェブ接合部で負担する。
(2) 柱継手の設計用軸方向力Njはフランジ接合
部とウェブ接合部で負担する。
I
M jf = ÊÁ 1 - f w ˆ˜ M j
Ë
I0 ¯
I
M jw = f ◊ w ◊ M j
I0
ただし、
φ = 0.4
(3.20.a)
(3.20.b)
A
N jf = ÊÁ 1 - w ˆ˜ N j
Ë
A0 ¯
A
N jw = w ◊ N j
A0
(3.22.a)
(3.22.b)
(3.21)
3章 継 手
103
3章 継 手
103
3.2.2 柱継手の高力ボルト摩擦接合
3.2.2 柱継手の高力ボルト摩擦接合
(3) フランジ接合部が負担する曲げモーメントおよ
び軸方向力は、次式を満たすものとする。
フランジ接合部の降伏曲げ耐力jMfyおよび降伏
軸方向耐力jNfuは次式による。
M jf
N jf
+
£ 1.0
M
j
fy
j N fy
(3.23)
j M fy
= min { j N fy1 ◊ dc ,… j N fy 2 ◊ d c } (3.24)
j N fy
= min { 2 j N fy1 ,… 2 j N fy 2 }
(3.26.a)
= n f ◊ qby
(3.26.b)
j N fy 2
3章 継 手
103
(3.25)
ただし、
j N fy1 = Asn ◊ Fsy
3章 継 手
103
3.2.2 柱継手の高力ボルト摩擦接合
3.2.2 柱継手の高力ボルト摩擦接合
(4) ウェブ接合部が負担する曲げモーメント、軸方
向力およびせん断力は、次式を満たすものとする。
ウェブ接合部の添板の降伏曲げ耐力jMsyおよび
降伏軸方向耐力jNsuは次式による。
2
qby ≥
Ê N jw
Ê Q jw
ym ˆ
x ˆ
+
+ M jw m 2 ˜
Á n + M jw
Ë w
 ri2 ˜¯ ÁË nw
 ri ¯
M jw
N jw
+
£ 1.0
M
j
sy
j N sy
Qjw £
Asn ◊ Fsy
1.5 3
2
(3.27)
(3.28)
(3.29)
15
j M sy
= Z sn ◊ Fsy
(3.30)
j N sy
= Asn ◊ Fsy
(3.31)
3章 継 手
106
3章 継 手
106
3.2.3 柱継手の溶接接合
3.2.3 柱継手の溶接接合
(1) 完全溶込み溶接の場合
:完全溶込み溶接の柱継手は母材と同等以上の
耐力を有するので、継手における応力の検定は不
要である。
(2) 部分溶込み溶接の場合
1) 骨組の終局状態で次式を満足するのど厚を
確保する。
3章 継 手
2
Nj ˆ
Qj
Ê Mj
ÁË M + N ˜¯ + Q £ 1.0
j
y
j y
j y
(3.32)
106
3.2.3 柱継手の溶接接合
(2) 部分溶込み溶接の場合
2) 部分溶込み溶接継ぎ目の各降伏耐力は、次
式による。
(3.33)
j M y = j Z e ◊ Fy
j Ny
= j Ae ◊ Fy
(3.34)
j Qy
= j Awe ◊ Fy / 3
(3.35)
6章 ブレース接合部
233
第6章 ブレース接合部
( pp. 233 – 254 )
6章 ブレース接合部
237
6.1 ブレース接合部の設計
6.1 ブレース接合部の設計
:終局限界状態で塑性化するブレースの接合部
は次式を満たす物とする。
(1) 降伏引張耐力
:高力ボルト摩擦接合によるブレース接合部の降
伏引張耐力jNyは次式による
j Nu
≥ a ◊ Ny
(6.1)
表 6.1 ブレース接合部の接合部係数
16
j Ny
= min { j N y1 , j N y 2 , j N y 3 }
(6.8)
6章 ブレース接合部
237
6.1 ブレース接合部の設計
j N y1
j N y2
6.1 ブレース接合部の設計
= n ◊ qby
(6.9.a)
= Ae ◊ Fy + nr ◊ qby / 3
(6.9.b)
(1面せん断の場合は、j N y 2 = Ae ◊ Fy )
(6.9.c)
j N y 3 = Ag ◊ Fy
6章 ブレース接合部
237
6.1 ブレース接合部の設計
(2) 最大引張耐力
:高力ボルト摩擦接合によるブレース接合部の最
大引張耐力jNuは次式による
j Nu
= min { j Nu1 , j Nu 2 , j Nu 3 }
6章 ブレース接合部
(6.10)
ただし、
j N u1 = n ◊ qbu
(6.11.a)
j Nu 2
= Ae ◊ Fu
(6.11.b)
j Nu 3
= ( Ant + 0.5 Ans ) ◊ Fu
(6.11.c)
17
表 6.2 突出脚の無効部分の長さ
237
講演資料
梁・柱継手の例題
近松 英樹(㈱ カナイ建築構造事務所)
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
講演資料
ブレース接合部設計解説
立石 直弘(㈱ スウィング)
46
■解説例題
ブレース接合部設計例解説
〔例題1〕 山形鋼ブレース接合部の設計
〔例題2〕 圧縮ブレース接合部の ガセットプレートの設計
株式会社スゥィング 立石 直弘
例題1
001
〔例題1〕 山形鋼ブレース接合部の設計
( pp. 001 – 008 )
例題1
002
ブレースに作用する引張力:600kN
ブレース 2L-100×100×7(SN400)
Fy= 235N/mm2
Fu= 400N/mm2 ガセットプレート PL-16
高力ボルト F10T,M22
ボルト1本当たりの耐力(2面せん断)
qby= 185kN
qbu= 456kN
47
例題1
003
例題1
004
j
j
005
2) 最大引張耐力の検討
1) 降伏耐力の検討
j
例題1
j
Ny1 = 4×185 = 740kN
Ny2 = 1688×235×10-3 + 4×185/3 = 643kN
Ny3 = 1362×2×235×10-3 = 640kN
j
j
以上より、
j Ny = min{j Ny1 ,j Ny2 ,j Ny3 }= 640kN>600kN OK
例題1
006
3) ガセットプレートの設計
Nu1 = 4×456 = 1824kN
Nu2 = 1926×400×10-3 = 770kN
Nu3 = min{0+0.5×(3×60+40)×2
,38+0.5×(3×60+40)}×7×2×400×10-3
= 829kN
以上より、
j Nu = min{j Nu1 ,j Nu2 ,j Nu3 }= 770kN >α・j Ny3
=1.15×640
=736kN OK
例題1
007
3-2)ガセットプレートと軸部材の溶接部の降伏耐力
(C6.2)式を用いた場合
3-1)ガセットプレートと軸部材の溶接部の最大耐力
両面隅肉溶接(のど厚a=6mm)
両面隅肉溶接(のど厚a=6mm)
lx:150mm , ly:200mm
lx:150mm , ly:200mm
400 × 10 −3
a ⎞ c Fu
⎛
= 2(150 + 200 − 34.3) × 6 ×
⎟a ⋅
j N u = 2⎜ l x + lY − 4
0.7 ⎠
3
3
⎝
j
a ⎞ c Fy
235 ×10−3
⎛
N y = 2⎜ l x + lY − 4
= 2(150 + 200 − 34.3) × 6 ×
⎟a ⋅
0.7 ⎠
3
3
⎝
= 514kN < 640kN
= 875kN > 736kN OK
よって、cosの項を無視した(C6.2)式では、母材強度以下と
なってしまう。
例題1
008
3-3)ガセットプレートと軸部材の溶接部の降伏耐力
(C6.1)式を用いた場合
両面隅肉溶接(のど厚a=6mm)
lx:150mm , ly:200mm , θ=45°(π/4 )
j
N y = 2(l x − 2S )(1 + 0.4 cosθ )a
c
Fy
3
+ 2(l y − 2 S ){1 + 0.4 cos(π/ 2 −θ)}a
= 2(150 + 200 − 34.3)(1 + 0.4 × 0.7 ) × 6 ×
235 × 10 −3
c
〔例題2〕圧縮ブレース接合部の ガセットプレートの設計
Fy
3
− ブレース端部の固定度を高める場合 ー
3
= 657kN > 640kN OK
48
( pp. 009 – 020 )
例題2
009
例題2
010
〔本例の設計方針〕
1.骨組全体の終局耐力時に、ブレース架構を降伏させない
2.圧縮力を受けたときの接合部の耐力が、部材の圧縮耐力
よりも大きくなるように接合部を設計
図C6.12 ブレース形状
例題2
011
例題2
012
〔計算仮定〕
・ブレース端部条件は、両端拘束状態とする
・接合部設計用のブレース圧縮力は、鋼構造設計規準
による短期設計圧縮力に、余裕度として接合部係数
(1.15)を準用して乗じた値とする
例題2
013
設計用圧縮力Nの算定
l k = 0.5 × 4000 2 + 4000 2 = 2828 mm
λ = 2828 / 50.2 = 56 → f c = 130.3N / mm 2
したがって、設計用圧縮力Nは、
N = 1.15 × 6 353 × 1.5 × 130.3 × 10−3 = 1 428kN
49
ブレース材の諸元:H-200×200×8×12 (SN400A)
bA = 6 353 mm2
ix = 86.2 mm
iy = 50.2 mm
例題2
014
例題2
015
1) 高力ボルト本数の算定
例題2
016
2)ウィングプレートとガセットプレートの溶接部の検討
伝達軸力 Tω = 4×149 = 596 kN
総本数の算定
使用ボルト:F10T,M20
qby=149kN(2面せん断)
n ≧ 1428/149 = 9.6 → 10-M20
(片側2枚のウィングプレート当り)
ウィングプレート板厚を12mmとし、ガセットプレートに 隅肉溶接接合(S=9mm)するときの溶接長 l を求める
フランジとウェブへの配分
2×200×12:(200-2×12)×8 = 4 800:1 408
= 0.77:0.23
→ フランジ8本(各フランジ4本)
ウェブ2本
溶接部の降伏耐力 Ta = 2 × 2 × a(l − 2S ) Fy / 3
T ≧ T より l ≧ 596 × 10 3 × 3/ (4 × 6.3 × 235) + 2 × 9 = 192mm
ω
a
→ 250mm とする
例題2
017
例題2
018
3)ガセットプレート板厚の検討
4)ガセットプレートと軸組部材の溶接長の検討
隅肉溶接 S=10 mm , のど厚 a=0.7S=7.0 mm
溶接長 lx , ly , θ=π/4 有効幅 be = 200 + 2×250×tan30°= 489 mm
tg ≧ N/(be・Fy) = 1428/(489×235×10-3) =12.4
→ 14 mm
j
N y = 2(1.28l x + 1.28l y − 1.28 ×4 × 10 )a ⋅ Fy / 3 ≧ N より
lx + ly ≧ 628mm
梁中央部(a1部)ではlxのみで、柱梁接合部まわり(b1部)
では lx+ly で、必要溶接長を確保する
例題2
019
例題2
020
5)スプライスプレートの検討
フランジのスプライスプレート:
2×149×103/{2×(80-22)×235}=10.9
→
ウェブのスプライスプレート:
2×149×103/{2×(140-2×22)×235}=6.6
12 mm
→
9 mm
図C6.13 ブレース接合部詳細
50