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'
廃鶏の表皮からのヒト型スフィンゴ脂質とプラズマロ
ーゲンの機能性食品素材化技術の開発
大西, 正男
平成18年度産学官連携による食料産業等活性化のため
の新技術開発事業成果報告会成果概要集
2007-02-26
http://ir.obihiro.ac.jp/dspace/handle/10322/2686
社団法人食品需給研究センター
帯広畜産大学学術情報リポジトリOAK:Obihiro university Archives of Knowledge
平成 1
8年度産学官連携による食料産業等活性化のための
新技術開発事業成果報告会
成果概要集
平 成 19年 2月 2
6日
社団法人
食品需給研究センター
ー
¥
1
0 廃鶏の表皮からのヒト型スフインゴ脂質とプラズ、マローゲ
ンの機能性食品素材化技術の開発
株式会社レオロジー機能食品研究所
有限会社梅田事務所
南薩食鳥株式会社
国立大学法人帯広畜産大学
巧/
q
o
廃鶏の表皮からのヒト型スフィンゴ、脂質と
プラズマ口ーゲンの機能性食品素材化技術の開発
実施者名
問合せ先
株 式 会 社 レオロジ 機 能 食 品 研 究 所
有 限 会 社 梅 田事 務 所
南 薩食 鳥 株 式 会 社
国 立 大 学 法 人 帯 広 畜産 大 学
株式会社レオロ ジ一機能金品研究所
干8
1
1-2
5
0
1
福岡 県糟屋郡久山町大字久原2
241
-1
営0
9
2
97
6
2
8
0
0
σ)
-1技術開発の目的
苫
一
一
直面
廃鶏の有効利用 │
邸、
1
億 3,
000
万羽
廃鶏表皮
本研究は、廃鶏中抜き屠体より分離した表皮部から、抗アレルギー性を有するヒト型スフィンゴミエリンおよび抗痴
呆性と抗酸化性が示唆されているプラズマローゲンを含む機能性複合脂質画分を大量生産する技術、並びに これを利用
した新規機能性食品の開発を目指すものである 。 現在、わが国では l億 3 万羽の採卵期が飼育されており、そのう
ち約 9
α泊万羽が毎年、廃鶏として処理されているが、その皮部は十分には有効利用されていない。
∞o
σ2技術開発の目的
スフィンゴ脂質およびプラズマローゲン
の構造と生理機能
〉ー
一
一
スフィンゴ脂質
プラズマローゲン型リン脂質
ピニルエーテル結合
極
〉 ートス ー ド 塩 基)
ー
」
量B
k
リン酸コリン
スフィンゴミエリン
Y
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2
0闘 訓R3
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C¥HOCORo
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CH
2
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極
i
一性
一基
l)
セラミド
OH
へキソースセレブロシド
忌
ホスファチジル..fエ9ノールアミン
コリン
他
-細胞の分化や増殖あるいは接着を調節・制御
-アトピー性皮膚炎緩和,美肌効果 大腸癌予防
f
-癒呆における脳神経細胞死防止作用
動脈硬化予防作用 (
LDL
の酸化防止)
-食品素材 l 化粧品原料
0最大の供給源は牛脳司日 SE発生後,分離困縫
O 現在の安全な供給源は穀類や酵母
=>問題点構成スフィンゴイド塩基の違いに
より生体利用性が低い
。
手2
5
Z
Z
手伝部竣工告 レ
O 脳や心筋l
こ多い
O 安全な供給源はホヤ内臓
司 大量入手が困難
2
セラミドを基本骨格とするスフィンゴ脂質(スフインゴミエリンやセレプロシド) は多棟な生理機能や食品機能性を
有することから、機能性素材「セラミド」として化粧品やサプリメントとして広〈利用されている 。従来、牛脳がス 7 イ
ンゴ脂質の供給源であったが、 B
S
Eの問題が発生して以来、安全な植物由来の「セラミド」が上市されている 。 しかし、
構成スフィンゴイド塩基が動物 (ヒト ) と植物では異なることから、生体利用性に違いがあることが示 唆されている 。
一方、プラズマローゲンもこれまで安全、且つ大量に入手可能な供給源は見当たらなか った。
一74
--h
i
法
方
の
砕
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塁里]暗主且j
暗室副 時旦主j
時旦里盟J
~ .-!監盟副
3
廃棄された採卵鶏は、懸鳥、放血、浸額、脱毛後に内蔵が摘出され、死後硬直前の中抜き の温屠体が調製される。昨
屠体か らは表皮が剥離されやすいことが明ら かになっている、今回は、手動に よる表皮採
年度の研究結果から、この温J
取を行った。背皮部にカッターで切れ目を入れ、表皮を採取し、得られた表皮原料を 8mmサイズのミンチに破砕した。
。
それ を真空 ー冷凍加工した後、脱油粂件の検討に使用 Lた
②技術開発の方法
(
2
)表皮部の脱油・脱脂技術の開発
h
i
-LOHS-R)
装置による加熱試験
低酸素ハイブリッドスチーム (
検討項目
戸
・加熱温度と時間
.原料形状
チルド皮仕込時
・原料保管
.回転数
・装置の防汚対策
加熱終了後の皮
4
廃鶏表皮から複合脂質高含有素材を調製するためには、大量に古まれる油成分を効率的に除去する ことが必要である 。
本開発事業において 「
低酸素ハイブリッドスチ ーム h
i
L
O
H
S
R装置を開発した。本装置は、準密関空間おいて低酸素条
件下で連続的に過熱 ー飽干[i蒸気を噴射させ、試料の殺菌、脱塩および脱油を行うものである 。 さらに、回転機構を加え
ることによって、廃鶏表皮の脱脂と装置の自古川効果を高めることに成功した。今回は、実用化に向けた具的的検討項目
1
0軌温度と時間および装置の防汚対策なとぞの検討を行った。
として、 1
7
5
②技術開発の方法
(
3)
原料試作及びその試作濃縮物並びに試料製品の品質検定
溶媒分画j
去による複合脂質の;
盟締法
スフインゴミエリン精製品の銅製法
ミンチ化表皮
l
ヘキサンで脱脂
工告ノールで抽出
抽出液
ヘキサン(
H)
で脱脂
一
エタノール(
E
t
)
で抽出①
濃縮乾固
0.
5N エ骨
ノール性 NaOHでアル力 リ分解
印刷 ,
SO.(
18N)
で酸分解
4NNaOHで中性化
8
/
5
容のへキサンを添加し撹梓
下層(吉水エヲ
ノール層)
H-Et-W(8:
4:
1)で分毘
H層(油脂) Et-W
膚
l
N
S
O
ろ過
ろ過
濃縮乾固
50%アセトン
;a縮乾固
複合脂質②
易
機能性被合脂質クラスの HPLCに
よる定量および構成分分析
J
!
<
アセ ト
ン
沈殿物│
I N,
乾固
5
ヌフィンゴミエリン
廃鶏表皮の脂質成分の大部分は中性脂質画分であることから、食品加工で使用が許可されているヘキサンとエタノール
を用いて、 複合脂質の濃縮法の検討を行っ た。表皮をミンチ状に し、ヘキサ ンで軽〈脱脂 した後 にエ タノールで抽出 を
行った。その後、水を加 えて 2庖系で分配 し、下層から複合脂質iAl縮物を調製した。 また、エタノ ール抽 出物を弱アル
カリおよび酸により分解処理し、その後、アセトン沈殿処理を行 って、高純度スフ ィンゴミエリン漫縞物を調製した。
②技術開発の方法
(
4)試作調製品の機能性評価の方法
アトピー性皮膚 炎 モ デ ル マ ウ ス の 発 症 抑 制
廃鶏表皮からのスフィンゴミエリン精製
物を含む軟膏の塗布
ー
治療経過の肉眼的
および顕微鏡的観察
息
機能性評価
6
昨年度作製に成功し たア トピー性皮膚炎モデルマウスを用いてスフィンゴミエリンのスキンケア機能を評価した。廃
刻表皮から銅製 Lたスフインゴ ミエリン精製物を含む軟膏 を本モデルマウスに 塗布し、治療経過の肉眼的および顕微鏡
的観察を行 った。
7
6-
盛墨i
l
l
廃鶏からの表皮の手動採取法と粉砕j
去の確立
'
時
•
7
廃鶏からの表皮の手動採取法と粉砕法を確立した。廃賂背皮部にカッターで切れ目を入れ、左右に引きはがすと全身
の表皮が一度に簡単に採取できた。得られた表皮原料はミンチ機により粉砕した。メッシュを変更することにより様々
なサイズに調製可能であるが、脱油効果やハンドリング性の点から 8mmサイズに決定した。
盛墨金二1
hi-LOHS-R
装置による脱油・脱脂条件の確定と
装置汚染抑制効果の実註
加熱終了時
LOHS加熱鶏皮の総脂質含有率
90
80
7
0
6
0
5
0
% 40
30
2
0
1
0
o
生皮
2
0
分
0
1
5分
9
9C
1
5
分
2
0分
1
5
分
o
1
0
20C 1
0S
C 1
0
70C 1
1
50C
加熱温度と時間
8
hi.LOHS.Rによる廃鶏表皮の脱脂試験を行 ったところ、加熱時間は 1
5分、処理温度は 1
0
5
'tが至適条件であり、表皮
中の脂質含泣を 50%
低下させる ζ とに成功した。 また、加熱終了後の装置内は、水道水シャワーで水洗するだけで洗浄
可能であることが実証された。
,
勾
,
勺
盛墨盆-2
h
iー LOHS-R
処理による影響脂質
5盃嘉E
脂肪酸組成 i
極性脂質画分の TLC
極性脂質圏分の脂肪酸成分
廃鶏表皮
(
コントロ-Jレ}
2
0,
4
1
6,
0 1
8,
0
PE
I
プラズマローゲン由来。
ジメチルアセタール
PC
2
2,
3-6
リン脂質由来の
高度不飽和脂肪酸
LOHS
-R
1
0
5C/1
5
m
i
n
SM
1,
2
。
1
0
LOHS-R
廃鶏表皮 105
・
C/15min
調
h
トL
OHS-R処理が脂質成分及ぽす影響を検討した。廃鶏表皮を h
i
L
O
H
S
Rで 1
0
5
'
t
、 1
5分間処理すると、複合脂質画
2
仕4
) やドコサ
分が濃縮されるが、脂質組成に菱化は見られなか った。また、 脂肪酸分析の結果から、アラキドン酸 (
2
2
,
6
)といった多価不飽和脂肪酸平、プラズマローゲン由来のジメチルアセタールが加熱処理後も安定
ヘキサエン酸 (
して残存していたことから、 h
i
・
LOHS
-R処理による脂質成分の酸化的変性はほとんど起こらないことが実証された。
盛墨盛
廃鶏表皮からの機能性複合指質素材調製法
廃鶏 (
温屠体 )
j
早出
I
hj-LOHS-R
Ig-則一
ω
│ 抽 ﹁ 酒づ っ
二 媒サ 一
hキ一
ノ一 谷
エ一 (-
タ 一 j へ一
凍
結
戸1
粉砕 │
寸-
ヘキサン脱脂
エタノール抽出 │
機能性複合脂質 │機能性食品素材」 機能性油指 │
濃縮物
1
廃鶏表皮からの機能性複合脂質素材調製法についての成果をまとめた。 I廃鶏の温屠体を用いることによって 、表皮
を人力でも効率的に剥ぎ取ることが可能であった。 2
.
h
i
L
O
H
S
Rを新規に開発し、脂質成分の酸化分解を起こすことな
く表皮を殺菌 ・脱脂できることを明らかにし、その後、凍結乾燥処理によりそのまま機能性食品素材として実用化でき
.
L
O
H
S処 理 Lた表皮をヘキサン脱脂してからエタノール抽出、あるいはエタノ ール抽出物をヘキ
ることを提示 Lた。 3
サンで分配することによって、廃鶏表皮複合脂質を濃縮することがラポレベルで達成された。
7
8
盛星盆二1
溶媒分画法と機能性複合脂質;濃縮物の調製
スフィンゴミエリン構成分
TG
主要な構成脂肪敵組成
脂肪酸
1
6
:
0
18:
0
2
0
:
0
2
2
:
0
2
3
:
0
2
4
:
0
2
4
:
1
・
2
24
CE
PE
開
3CSM
pps
,
回目回自
司組 制
質問
包臼 a
主1
リン脂 質収 率(
也
)
(
mol
c
)
也
)
①②
44
10
5
10
4
10
14
3
2
2
i
t
)
1
4
.
0 2.
5
9
7.
89
2.
0
廃鶏表皮中には油脂 (トリアシルグ'}セロール)が多量に含まれることから、廃鶏表皮をミンチ化した後にへキサン
で脱脂してからエタノール抽出を行った結果(図①)、機能性複合脂質に富む油脂を調製することが可能であった。 また、
エタノール抽出物をヘキサンと水で分配することにより、簡単、且つ高収率で油脂成分がほとんど含まれない機能性複
合脂質濃縮物が得られた。複合脂質濃縮物に含まれるスフインゴミエリンの構成脂肪酸はパルミチン酸で、構成スフイ
ンゴイド塩基はヒト型であるスフインゴシンであることが明らかとなった。
盛 墨 企Z
アヤトリシスによる 2アシル舗の分析
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試作濃縮物中のリン脂質クラスの
プラズマローゲン型の割合と構成分の組成
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.
G
PS
2
"
リン脂質中のプラズマローゲンの割合は、 P
Eでは 62%、 PCでは 9%、PSでは 2%であ った。 プラズマローゲンの 2
7シル鎖を分析するために、アセトリシスを行った。原理としては、ジアシルリン脂質はアセトリシスにより 3-7セチ
ル体に恋換されるのに対 L、プ ラズマロ ーゲンは 1
.
3ジアセチル体へと変換され、 TLC上で分離される 。 s
n
2の脂肪酸
Cでは 1へキサデセニル、 2
.
パル ミトイル製が、 P
Eでは 1
-オクタデセニル、 2-7ラキドニル型が主成分
結果から、 P
であることが明らかとなった。 また、 P
Eプラズ 7 ローゲンでは DHA結合型も 1
2
%
存在し てい た。
ー
7
9
盛墨盆当
試作スフィンゴミエリン精製品およびプラズマローゲン濃縮品の分析
主Q
J
HPLCI
TG
Ch
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TG
FFA
,
.
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9
5
也
∞
FF
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。
,
Gpvc
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C
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CE
PE
SM
精製品
m
30
mm
・
0
漉縮品
SM
複合脂質面分 SM精製品
PE
濃縮品
"
z5 mln
特願 2
0
0
70
1
6
0
5
6
"
技術開発② 3項で関製されたス 7 インゴミエリン精製品の純度検定を行った。複合脂質濃縮物から調製された試作精
CE) お
製品中の脂質成分はスフィンゴミエリンが大部分であったが、他に微量の遊離脂肪酸 (FFA)、セレプロシド (
L
a
c
C
e
r
) が検出された。順相 HPLCで分離して光散乱検出した結果、食品素材と Lて使用
よびラクトシルセラミド (
可能である試作精製品中のスフインゴミエリンの純度は 95%と、極めて高純度であることが示された。 また、簡便なプ
)の分離漫縮法を開発し、食品用試作漫縮品 (
約 40%
含有品) も調製した。
ラズマローゲン (PE
盛墨重量
ADモデルマウスに対するスフィンゴミエリン (SM)精製物の塗布効果
IFN-r
表皮
対照マウス
真皮
+ ++
iNOS
±
SM塗布マウス
+強い免疫反応,土田微弱な免疫反応
ー免疫反応なし
1
4
アトピー性皮膚炎 (AD) モデルマウスに対するスアインゴミエリン (SM) 精製物の塗布効果を検証した。対照 AD
マウス皮膚の蛍光顕微鏡写真像では、若干の免疫細胞が表皮基底側に授潤しており、また、其皮全層に免疫細胞が比較
完全に消失しており、
的密に観察された。一方、 SM軟膏を塗布した ADマウス皮膚では、 AD関連の免疫細胞が殆と・
ADモデルに対する軟膏塗布の効果が明確に示された。 また、 SM塗布は Thl型細胞産生性のインター 7 エロンガンマ
(
IF
N-y)および誘導性一酸化窒素生成酵素(iNOS
)の免疫反応をいずれも抑制することが実証された。
-80-