lecture0617実施 - 京都大学エネルギー理工学研究所小西研究室

エネルギー科学研究科エネルギー変換科学専攻
地球環境学舎サステイナビリティ学コース
未来エネルギーシステム技術とメタ評価
ー核融合、地球環境、水素社会の技術と経済
10-
2013.6.17
京都大学エネルギー理工学研究所
小西哲之・笠田竜太
現実社会で起こることは、すべて確率問題でなく、
その確率をどう見るか、人がどう信じるか、という問題。
「人が死ぬ確率」。データは統計として確かにある。
言われたことを信じなかったり、聞き落としたら、経験で原因
を判断するしかない。現実世界では、たとえ偶発事象でも、内
訳を知らされない方が多い。まして、偶発とは限らない。
結局、「安全」「リスク」とは、「確率」でなく、その「確率をど
のように信じるか」の問題。「経験」で判断。
これがベイズ理論。たとえ確率現象でも、偏りもあれば間違いも
いかさまも「想定外事象」もある。観測後にわかるから事後確率。
ギャンブラーでなくても、すべての人がすでにこのリス
ク統計=確率現象の経験に巻き込まれている。
前回の課題
スロットマシーンで、ジャックポット(大当たり)で10000$出るとする。
(1)1回1$賭けるとき、手持ち金の時間変化を表現せよ。試行1回6秒
かかるとする。払い戻し率は99%である。当たる確率をどう考える?
どうやったら勝てる?
(2)カジノ側の立場で考える。払い戻し率は99%である。
(すごく良心的!でも本当にある。)カジノの手持金の時間変化は?
客の数は適当でいい。log0.99=-0.00436とする。
(3)同じ当たりの確率で、つまり当たったら10000$払うとしたら、
つまり、一人でカジノ胴元をやるとき一回いくらならやる?? (たとえば
払えなければ死ぬとしたら?「ロシアンルーレット」 )
→すみません、実はこれ、問題のふりをしていますが、「リスク」という
ものの捉え方(正体)を見てもらうため、対処の仕方の思考実験です。
一応期待した答えは、こういうこと。やった人ならわかるけど、めったに
かえってきません。1ドルかけて、平均99セントかえってきても、おもしろ
くもなんともない。時々大当たりが出るのが狙いでしょ。
だから6秒に1$ずつ減っていく。で、どこかの時点で当たりがでて、
$10000 儲かる。「期待値」でいえば、$0.99 だから必ずわずかずつの損。
→グラフにしてくれてたら正解といえる。が、それは一目で正しいか
どうかわかる。
確率論では、平均的には$10101賭ければ、17時間以内に当たることに
なる。運がよければ約半分の確率で、 $10101負ける前に$10000 当たる。
もっとずっと低い確率で大もうけする、その可能性に期待して6秒に1
$ずつ払っています。確率が高く、わずかな損が出る、というリスクで。
カジノ(短期)
客
ラッキー!
やった!
つきが戻っ
たかも。
よし!
流れがきてる。
カジノ(長期)
ついてない。
やめようか
なあ。。
もうすこし
がまんすれば
取り返せる。。
やめときゃよ
かった(泣)
生命保険、自動車の保険。。。「保険」という種類のリスク分
散はみなこの形です。逆に、わずかな試行なら、ほぼ確実
にわずかの損で終わる。
これが、リスク分散。(low risk high return)
「客の立場}
少しずつ払う
客
カジノ
「カジノの立場}
大体、少しずつ確実に儲かる。
時々、大きく失う。
(許容範囲)
客
客
客
客
時々
大当たり!
客
リスク負担の構造が、客とカジノでは違う。
ここで一つ注意!!
「確率」現象を正しく理解していない人が多い。
(確率論のわからんやつに確率で説明しても意味がない)
10101回に1回当たる、という「確率」は、
10101回目までに必ず1回当たる、なんて約束していない。
(「1000年に1回の災害」は、1000年たっても起きない確率30%)
完全にランダムな現象では、
1回目でおきることも
10万回やってもおきないことも
ある。(周期ではない!!!)
でも、1億回もやれば、1万回くらいが平均で当たる。
1万の台でやっていれば、平均6秒に1回、どこかであたってる。
でも、自分がそれに当たるかは、やっぱりわからない。
。。。。当たるかどうかは、つき?運?イカサマ??
(生命保険はこれにあたるのか?)
(2)カジノ側。絶対損をしない。元金が、必ず6秒ごとに1/0.99倍して
いくことになる。 log0.99=-0.00436なので、1桁増えるのにかかる時間
は、1/0.00436 x 6(s) = 1376(s)。(まあ、客が増え続けるわけじゃないけ
ど。)でっかいホテルが建つわけだ。、運悪く最初の一人が当てちゃっ
たときに破産しないだけの資産さえ(最初に$10000)あれば。。
その資産がないのがつまり、次のケース。
(3)リスクを分散せず、集中するのがロシアンルーレットです。少しず
つ利益を得ていって、事故で大きなものを瞬時に失う。
現実の我々が直面している多くのリスク現象が、このタイプ。
好き好んでやる、と言う人はまずいないけど。
(やり飽きてるのか、気づいてないのか?)
(ちなみに、東日本震災では、すでに1600億円以上は支払われて
いる)
リスクの分配:
日本(のサラリーマン)や農業社会ではあまりなじみがないが、多くの
リスクはこのような形をとる。債券や株式など、すべての投資はほと
んどこのリスク。リスクが高ければ利率がよい。
ペイオフで、一般の預貯金でもこのリスクは目に見える形になった。
すべての保険には「再保険」という形でのリスクの売買がある。
(本当はこちらが保険の起源)
原子力事故も同様。最悪どの位の被害なら、どのくらい低い確率な
ら許せるか?どのくらいの期間無事故なら信じられるか?
保険料
客
「保険と再保険」
保険会社
客
保険金
客
大体儲かる。
時々、大きく失う。
再保険会社
客
客
客
客
客
客
「確率」は仮想的なものかもしれないが、
「リスク」 は現実の存在!
いつか起こる災害(起こるかもしれない、起こらないかもしれない)
→ 現実に保険料を支払っている。
リスク=ハザードx確率<許容範囲(支払ってもよい価値)
何で支払うかはいろいろありうる。
お金
不安
反対に受けている利益
リスクはギャンブラーだけのもの?まじめな人は考えない?
実は誰でもがこのギャンブルには参加させられている!
安全性って、なンだ?(再)
Institute of Sustainable Science


Institute of Advanced Energy, Kyoto University
「リスク」が許容範囲であること
→リスク=ハザードx確率<許容範囲(支払ってもよい対価)
-ベネフィットが大きければリスクは許される?
-どんなに利益があっても許容できないリスクがある?
リスクはどのように減らすか?
-確率を減らす
-被害(ハザード)を減らす
-許容範囲を見直す?
12
間違えないために、だまされないために
・先入観を捨てよう。鵜呑みにするな。疑え。
・考えよう。普通に論理的に。
別に、天才の頭脳も、専門知識もいらないんだから。
。。。てゆーか、「専門家」がだめなんです。「-の立場でいうと」
とか言いながら、普通の一般人としての総合的な視点、判断を
逃げてしまうので。
確率論的安全論(再)
Institute of Sustainable Science
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
Probabilistic Safety Analysis

「リスク」が「確率」を中に持っているので、
どんなにハザードが大きくても確率を小さくすればいい
(と考える)
-「多重防護」「深層防護」をすればいくらでも
確率を下げられる
-工学的に安全性信頼性を確保するには有効な方法論
-安全性を「説明」するのに有効か?
←そもそも本当に正しいのか?
(これは確率現象なのか?)
14
発電技術のリスク1
Institute of Sustainable Science
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
まず、ルールを考えよう。(適当に決めることができるが)
たとえば、発電技術ごとに
ライフサイクルでの関連死亡者
ライフサイクルでの発電量
を考えれば、かなり公平なのではないか?
しかしそれでも、低確率の死亡となると因果関係が
同定困難。
チェルノブイリ死亡者(長崎大医学部 山下俊一氏による)
急性放射線障害:28名
甲状腺腫瘍の発生:+5000例
100mSv以上の被ばく:24万人
発電技術のリスク2
Institute of Sustainable Science

Institute of Advanced Energy, Kyoto University
もし、発電の安全性を、年間の死亡者数で比べると、
火力>水力>>原子力>太陽光。(発電量でわると?)
(最新の統計を調べてないがだいたい数1000人(1名/100万t)、数100
人(1000人/100万KW)、1人以下、ほとんどなし)
– ただし、火力は炭鉱事故、水力はダム事故で計算。
– これに、火力によるSOx、NOx放出に伴う呼吸器疾患を
加えれば、数倍に増える。(これを「外部性」という)。ただし、炭鉱
事故で日本人は死亡していない。(日本で掘ってない)
ー水力の死亡者は多いがだいたい建設時のみ。運転期間で割れ
ばかなり少ない。しかし16万人死んだ例がある。
ー原子力は、ウラン採掘、低線量被曝が現状はいっていない。入
れれば増えるが、信じていいか?チェルノブイリでも直接では約
30人しか死んでない。その後の発ガンでも死亡は少ない。
ー太陽光の死亡者は統計がないが、発電量が少ないだけ。日本の
冬季の屋根の雪下ろしだけで年間100名以上。今後が怖い。
各種発電システムに起因する
過酷事故の比較
Institute of Sustainable Science
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
------------------------------------------------------------------------------Coal Oil N Gas LPG Hydro Nuclear
-------------------------------------------------------------------------------即発性死亡
0.04
0.05
0.01
0.4
0.1
0.001
人/TWh
傷害
0.008 0.05
0.02
2
0.02
0.01
人/TWh
避難者
0.8
0.7
60
4
9
人/TWh
経済的損害
0.002 0.07
0.01
0.2
0.07
10
million 1996
US$ /TWh
-------------------------------------------------------------------------------MATSUKI Y. Comparison of health and environmental impact of energy systems //
International Journal of Risk Assessment and Management, 2002, Vol. 3, No. 1, p.1-15.
発電による死亡リスク
Institute of Sustainable Science
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
発電により人は死ぬ

水力:ダム建設。ロシアでは
爆発事故があった。

火力:爆発、転落等。最大は
石炭採掘で発生。大気汚染も
多い。

バイオマス:大気汚染

原子力:美浜での蒸気事故で5
名。

チェルノブイリは直後28名。
その後19名。小児がん15名。
Coal – world average 161
Coal – China 278
Coal – USA 15
Oil 36 (36% of world energy)
Natural Gas 4
Peat 12
Solar (rooftop) 0.44
Wind 0.15
Hydro 0.10 (europe)
Hydro - world 1.4
(171,000 Banqiao dead)
Nuclear 0.04
(incl. Chernobyl assuming
4000)
(by WHO data)
死亡リスクをあげる方法
Institute of Sustainable Science
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
死亡リスクを1/1000000上げるには以下の行動がありうる

死亡リスクを減らすに
は、簡単なものも難し
いものもある.

コストや手間で、明ら
かに損な安全対策がた
くさんある.

しかし人為的死亡リス
クは厳しく管理されて
いる.

「原子力を使う」と
「原子力を使わない」は
どっちが安全?
ワイン500cc
ニューヨークで2日間
自転車で16km
自動車で480キロ
ジェット機で1600キロ
ジェット機で10000キロ
煉瓦の建物で2カ月
レントゲン撮影1回
喫煙者と2カ月
ダイエットコーク30缶
原子力発電所から30kmで
150年暮らす
デンバーで2カ月
水道水1年分
煙草1.4本
炭鉱で3時間
肝硬変
大気汚染
事故
事故
事故
宇宙線
自然放射線
放射線
ガン
サッカリン(ガン)
放射線
宇宙線
塩素(ガン)
ガン
事故
wilson, 1979
この表に、「福島20km圏内で暮らす」「東京に逃げる」を入れたら?
地球環境問題の見方-1
Institute of Sustainable Science
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
・「温暖化」といわれる現象のいくつかは起きている。
(たぶん)
・二酸化炭素濃度は確かに上昇している。
・二酸化炭素濃度上昇のかなりの部分は人為的である。
・二酸化炭素濃度上昇は地球規模での気候変動を
もたらす可能性がある。
・人間社会は気候変動に対する「脆弱性」があり、損害
のリスクがある。(多くの気候変動は不利に働く)
→したがって、リスク対策としての二酸化炭素排出削減
は意味がある。(「問題」としてはすでに現実)
→ただし、リスクの大きさと妥当な対策の関係に注意。
エネルギー開発は、この対策の一つ。
地球環境問題の見方-2
Institute of Sustainable Science
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
・「温暖化」は摂動の範囲かもしれない。(もともとある)
・二酸化炭素濃度は確かに上昇している。
・逆に温度上昇が二酸化炭素濃度上昇の原因かも。
・わずかな気温上昇は影響は少ないか有利。氷河期の影
響のほうが大きかった。
・人間社会は気候変動に対する「脆弱性
(vulnerability)」があり、損害のリスクがあるが、多く
は人為的なもの。
→したがって、リスク対策としての二酸化炭素排出削減は
非効率。脆弱性の直接の是正のほうが効果的。
→リスクは極めて大規模、長期、緩慢。つまり適応しや
すい。長期的に大きな経済効果を持つ投資が適当。
エネルギー開発は、この対策の一つ。
地球温暖化「問題」の見方(応用)
Institute of Sustainable Science
この考えはすべての
リスク管理に適用できる。
「温暖化」ではなく、「気候変動
リスク」
が問題。
気温上昇が大きいほど、リスク
が大きくなる。
でもこれ、すべてが「言われた
リスク」
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
・「気候変動リスク」は、GDPの損失額として計量されている。
・対策コストは、リスクより小さいとき正当化される。
本日の課題 1
1.水素と酸素の結合による水の生成の△Hは、-285.8kJ/molで
ある。
すべて電気分解で供給すると、電圧は何V必要か?ファラ
デー定数96480As/mol~105As/molとしてよい。
RT
2.濃淡電池の起電力はE=
l(
2F n
(図参照)
P1
)
P2
と表される。
H+ H2
これは、前掲図での電解で、水素発生側と酸素
H2
側の間の水素分圧比と等価と理解される。
H+
P1
水の電気分解に1Vかかったとすると、300Kでは
P2
圧力の比として、何桁の違いがあることになる
V
eか?Ln(10)=2.303 ~ 2
R=8.31J/K・mol~8とする。
2009年4月17日、内閣官房資料より
内容
Institute of Sustainable Science
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
第3部
第4部
5.未来エネルギーと水素
7.エネルギー研究の社会影響
① 未来型エネルギーシステム
① 研究開発と社会
② 現在の水素製造
② 経済効果
③ 技術的に考えられる
③ 外部性の概念
水素製造
④ 水素製造法の比較
6.核融合エネルギーの利用法
① 核融合と核分裂
② 核融合による水素製造
③ 水素製造とエネルギー源
④ 核融合と水素社会
8.核融合の導入シナリオ
① 核融合開発戦略
② 未来のエネルギー市場
③ 環境対策とエネルギーの意義
Physics Today, vol.55, No.4 (2002)
人工衛星(400個)の撮影画像から合成した地球の夜景
第3部
5.未来エネルギーと水素
核融合発電の原理
Institute of Sustainable Science
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
未来のエネルギーと水素
Institute of Sustainable Science
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
・未来の燃料は脱炭素
- 化石燃料の需給の逼迫
- 地球温暖化問題
・未来燃料としての水素
- 自動車用燃料電池(高効率、低騒音)
- 航空機燃料(高速、軽量)
燃料電池自動車
・未来の電力は分散化
- 燃料が必要
電力
燃料
未来のエネルギー構成
水素燃料航空機
燃料は電力の約4倍
必要!
水素エネルギー社会
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
Institute of Sustainable Science
・水素と電力は相互変換可能
- 「水平統合型」エネルギーシステム
- 地球温暖化問題
自然エ ネ 電源
配電
水
化石燃料資源
バイ オ マ ス
電解
H2
核熱
シフ ト
CH 4
電力
反応
メ タ ノ ール
リ フォー
ミ ング
グ リ ッ ド 燃料
輸送燃料
ジメ チル
分散電源
エ ーテ ル
燃料電池
CO
化学原料
CO2 回収
分散電源
水素への期待と問題
Institute of Sustainable Science
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
1.水素エネルギーの利用
・製造:それ自体エネルギーではない。二次エネルギー
・貯蔵:必要な時まで貯める(ことができる)
・輸送:配管で送る。液化?貯蔵できれば移動できる
・分配:必要なときに必要な所へ
・排気:使ったら排気は出る
・安全:爆発性、可燃性、化学的特性
・資源:モノ自体があるか?
・技術:技術は確立しているか?成熟しているか?
・コスト:¥¥¥
2.サプライチェーン
コストの主要部分は、モノ自体の値段とは限らない。
サプライチェーンの制約
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
Institute of Sustainable Science
需要自体の大きさ(時間、場所)
需要
インフラ、グリッド安定性
社会的要求
資源、原料
廃棄物
エネルギー
発生技術
燃料供給
廃棄物処理
フロー
供給速度・場所
ストック
変動吸収容量
エネル
ギー供給
不安定
外部性
設置場所
イメージ
水素製造技術
Institute of Sustainable Science
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
① 現在の水素製造
○スチームリフォーミング(水蒸気改質)
CnHm +2nH2O → 2nCO2 +(2n+m/2)H2
天然ガスなど化石燃料を原料に水素をつくる
・大きな吸熱反応
・熱エネルギーを供給するため原料の一部を燃焼
(部分酸化法)
・
②技術的に可能な水素製造
○製鉄工業の副産物ーコークス炉ガス
製鉄所のコークス炉から水素(50%)、メタン等が発生
生産量は80000t/yレベル
・ 現在はプラント内で消費
・この使用で二酸化炭素発生量は増えない
○電気分解
・第二次大戦以前は主流
( アンモニア工業用原料)
・電解法の種類
-アルカリ水溶液電解
-SPE(Solid Polymer Electrolyte)
-高温水蒸気電解
アルカリ水電解 2V ~
SPE電解
1.5V ~ 2V
水蒸気電解 1.0V ~ 1.5V
1/2O2
H2O
H2
H+ H2
O2-
H+
1/2O2
H2O
SPE
水蒸気電解
・原理:H2O → H2 + 1/2O2
必要な電流はクーロンの法則で決まっている。
必要な電圧が消費電力i.e.エネルギー効率を決定。
△H=△G+T△S
分
電
解
発生圧力に自由度がある。
解
エ
ネ
1V 電
製品純度が高い
ル
ギ
ー rt 100
圧
500
1000
40
水の分解に必要な総エネルギーはH
そのうちΔQ分は熱の形で与えることが可能
エ
ン
タ
ル
ピ
ー
20
0
ΔQ:状態変化分
の熱エネルギー
H -20
ΔG:ギプス自由
エネルギー
H
(kcal/mol
-40
) -60
-80
水の分解で、どうしても電気で入れなければなら
電解に要するエネルギーH
= ΔG + ΔQ
ないエネルギー分(ΔG)は温度とともに減る。
0
500
1500
2000
1000
絶対温度 T(k)
2500
3000
②’水素製造プロセス
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Institute of Sustainable Science
CnHm +H2O → CO2 +H2
○リフォーミング
・石炭、石油の液化
・天然ガス
-メンブレンリアクターで低温化可能
CnHm +H2O
熱( >800℃)
CO2
H2
熱( >600℃)
透過膜
○熱化学的水分解
・IS法 (実は吸熱反応ー発熱反応の熱サイクルになっている)
○バイオマスからの製造
・生物化学的製造
・熱化学的反応
○光化学分解
・Honda-Fujishima 効果
・微生物による製造
本日の課題 2
1.ある会社が、今お金を預けたら、100年後に100万円にして返
してくれるという。以下の条件で投資して良いか判断せよ。
通貨価値変動は無視する。(あるいは実質金利と考える。)
log1.05=0.021, log1.02=0.0086 である。
(1) 100年間の平均の預金金利が年5%の世の中としたら
一万円の投資(額面100万の債券を買う)は得か?
(2)「50年後、100万円返す」だったら10万円投資してよいか?
(3)100年間の平均金利が2%だったら10万円投資していいか?
(4)では100万返してくれるとして10万円預けていいのは何年?
(おまけ)会社がつぶれてしまうことも。。。
バイオマスからの燃料製造
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
Institute of Sustainable Science
エネルギー(熱,900℃)
バイオマス
+
水
水素、CO
大きな吸熱
セルロース:(C6H10O5)n+ nH2O → 6nH2 + 6nCO – 816n [kJ]
リグニン: (CH1.4O0.3)n + 0.7nH2O → 1.4nH2 + nCO –136n[kJ]
シフト反応 CO + H2O ⇔ H2 + CO2 + 32 [kJ]
水素燃料
フィッシャー・トロプッシュ合成
カーボンニュートラル
2H2 + CO → -CH2- + H2O + 160
[kJ]
合成石油
廃熱
カーボンニュートラル
エネルギー変換効率の比較
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
Institute of Sustainable Science
発電
水電解 熱
水素
熱サイクル効率 (40~70%) 電解ロス
水の熱分解 熱
~30%
水素
IS プロセス
~50%
バイオマス
熱分解
熱
バイオマス
(with enthalpy)
発熱反応
ロス(50%)
~270% バイオマス
吸熱ガス化
発熱反応ロス
水素
エネルギーは
保存
合成石油 ~200%
エネルギー効率の比較
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
Institute of Sustainable Science
◯単位量の核熱からの水素生成量で評価
・軽水炉(300℃)での発電
→ 既存技術による電気分解
・高温炉(900℃)での発電
→ 水蒸気電解
・高温炉(900℃)からの熱化学的な水素製造
発熱 3 GW
発電効率 発生電力 消費エネルギ
ー
軽水炉ー水電解 3 3 %
1 GW
2 8 6 kJ/mol
高温炉ー水電解 5 0 %
1 . 5 GW
2 3 1 kJ/mol
高温炉ー 水蒸気 5 0 %
1 . 5 GW
1 8 1 kJ/mol
電解
発生水
素量
2 5 t/h
4 4t /h
5 6t /h
高温炉ー廃棄物 ー
3 4 0t /h
ー
6 0 kJ/mol
高温熱による燃料製造
Institute of Sustainable Science
16MJ
廃棄物
バイオマス
(1kg)
高温熱(900℃)
+
H2O
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
8.2MJ 2.3kw時相当
H2,CO
吸熱
セルロース:(C6H10O5)n/6+ n/6H2O → nH2 + nCO – 136n [kJ]
リグニン: (CH1.4O0.3)n + 0.7nH2O → 1.4nH2 + nCO –136n[kJ]
24.2MJ
水素
シフト 反応
CO + H2O ⇔ H2 + CO2 + 32 [kJ]
Fischer-Tropsch 反応
排熱
発電
カーボンニュートラル
2H2 + CO → -CH2- + H2O + 160 [kJ]
廃棄物バイオマスは、
合成燃料(軽油)
高温熱で燃料化することができる。 約0.5リットル
15.6MJ
バイオマス(廃棄物)からの水素製造
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
Institute of Sustainable Science
(C6H10O5)n+ nH2O → 6nH2 + 6nCO – 816n [kJ]
◯廃棄物処理/燃料製造量
H2 280 t/h
・2120t/hの廃棄物を処理
反応器
・280t/hのH2を生成
CO 3.1x106 kg/h(回収)
2
900℃
核融合炉
圧縮機
2.5GWt
h
He 600℃
1.1x107 kg/h
プラントとして2.7倍の
エネルギーを発生
2120 t/h 原料(バイオマス)
CO 2.0x106 kg/h (わが国で年
H2 1.4x105 kg/h 間6000万トン
Steam
(640 t/h)
H2O 発生)
冷却器
タービン
FC車110万台/日に供給*
年間1700万台分**
* 6kg/台日と仮定
** 460g/台年と仮定
FT液体燃料化とエネルギー収支
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
Institute of Sustainable Science
0.67kg
37mol
FUSION
水
8.2MJ
バイオマス原料
H2:0.138kg,69mol 製品ガス
CO:0.38kg,14mol 24.2MJ
CO2:0.74kg,17mol
CH4:0.009kg,0.56mol
21MJ (CH1.4O0.3)n
1kg
反応器
残渣:0.40kg
53mol
H2O:0.76kg,42mol
0.4MJ
CO2:0.13kg、3mol
CH4:0.009kg,0.56mol
15.6MJ
-CH2-:0.39kg,28mol
合成油製品
1.0MJ
損失 4MJ
発電利用可能
FT反応器
8.1MJ
発熱損失
核融合炉はバイオマス
転換機能のみ
エネルギーの大部分は
バイオマスから
エネルギー・コスト分析
Institute of Sustainable Science
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
総合的なエネルギー・コストより社会に適合するか評価
燃料製造の方法と特徴
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Institute of Advanced Energy, Kyoto University
水素燃料は他の燃料と競合する
-「改質」で他の燃料から水素を作れる
・水の電気分解
-発電効率が低い。
-水素しかできないため市場がない。
・水の熱分解
ー原理的に50%以上の効率にならない
・現在のバイオエタノール
-発酵によるエネルギーロスが大きい
ー食料と競合する
・廃棄物バイオマスの燃料化
-効率が高い(バイオマスのエネルギーを利用)
-液体燃料が自給できる。将来的に水素に移行。
→我が国の発電・電力技術で燃料製造可能。
-資源節約、リサイクル、廃棄物の処理になる
水素製造法のコスト比較
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
Institute of Sustainable Science
70
60
62
~
39
円/Nm3
50
40
30
54
41
20
34
27
32
23
10
0
解
太
電
+
電
+
光
陽
解
解
電
+
力
風
力
子
原
天
ガ
然
質
改
ス
炭
石
ガ
化
ス
オ
イ
バ
マ
ガ
ス
化
ス
入
輸
電
力
水
海
外
解
水素エネルギーのまとめ
Institute of Sustainable Science
Institute of Advanced Energy, Kyoto University
○水素は未来のエネルギー媒体として有望視されている。
・燃焼で二酸化炭素を出さない
・燃料電池で電力に変換可能
→電力と相互変換可能な二次エネルギー媒体
・エンジンでの使用も可能
○水素の用途は電力and/0r動力
・水素は燃料としてベストというわけではない(欠点が多い)
→天然ガス等がある間利用されるとは考えにくい
・水素はエネルギー(特に熱)変換のオプションのひとつ
・中間的なエネルギー媒体とみるべき
→今、水素は余り、捨てられている
・二酸化炭素削減なら、水素製造法を考えなければ意味がない
→そこから液体燃料にしたほうがもっと社会に適合する
エネルギー変換と利用のまとめ
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Institute of Advanced Energy, Kyoto University
○エネルギー問題の本質は、「使い手に届ける」こと
・資源の量は問題ではない
・すべてのエネルギーには、サプライチェーンがある
・サプライチェーン上、最も制約するところが全体を制限する
・貯蔵、分配に、輸送よりコストがかかることがある
・サプライチェーンの後ろ側(廃棄物処理や環境影響)が
制約条件になることも多い
○エネルギー変換
・エネルギー変換は、「エネルギーを届ける」ための一手段
・エネルギーは、消費者が変換装置を持っていれば互換性がある。
・逆に、利用装置側がエネルギー構造を変えていくこともある。