身近事業の取組について 交通対策課 長嶺 偉久 瀬戸 翔志郎 1

身近事業の取組について
交通対策課
長嶺
○瀬戸
偉久
翔志郎
1.はじめに
年々、道路事業に対する予算が減っていく中でも、地域住民や自治体・道路利
用者から寄せられる渋滞や交通事故の改善、利便性の向上を目的とした要望は減
ることが無い状況である。
このような状況の中で現在、交通安全対策事業を行っているが、家屋の隣接や
用地買収面積微小等に伴う用地買収難航、大量の支障物件移設など様々な理由に
より事業期間の長期化や事業費の増額など事業難航箇所が多数存在し、整備効果
を即時に地域住民に提供することが出来ていない状況にある。
そのため、交差点改良事業や歩道整備事業などの大規模事業だけでなく、地域
住民が要望する身近な問題に、迅速にそして安価に応えていく「身近事業」の取
り組みが求められている。
本報告では、仙台河川国道事務所で現在も継続して取り組んでいる「身近事業」
の事例とPDCAサイクルの一環であるデータベースの構築について報告するも
のである。
2.身近事業とは
身近事業とは、地元から身近なニーズを汲み取り、ニーズを満たす道路事業を
低コストに尚かつ、スピード感を持ち、地域と一体となって進めていき、道路利
用者の満足度の向上を図ることを目的としたものである。
対象事業としては、地元からの要望・協力があり、早期に効果が発現できる箇
所で、幅広歩道・バリアフリー・視界不良箇所改善・歩道の段差解消等、地域が
抱える細かな問題が挙げられる。
・幅広歩道の設置
・バリアフリー
・視界不良箇所の改善
・歩道の段差解消
等の地域が抱える細かな問題
(アンケート・聞取り調査等)
(事務所予算内にて実施)
・地元の要望及び協力体制有り
・現道内で整備可能(用地買収なし)
・早期に整備効果が発現
3.実施済みの身近事業の紹介
実際に昨今仙台河川国道事務所で実施した事例を2項目紹介する。
3.1.三陸縦貫自動車道 登米IC 簡易な外側線の引直しで滞留長が大幅に減少
【改良目的】
下り線オフランプ(1車線)に右左折車が混入して滞留することにより、本
線付近まで渋滞が頻繁に発生しているため、渋滞解消及び安全対策を目的とし
て実施。
【施工までの経緯】
平成25年3月 登米市長から登米 I C下り線オフランプの渋滞対策及び安
全対策の要望
平成25年4月 関係者による現地合同点検(登米市・宮城県・宮城県警・
国土交通省)
平成25年5月 交通量調査(事前調査)対策案検討及び調整
※ランプを2車線に拡幅することは用地買収等に多大な
時間を要することから、既設車道幅の中で対策を実施
平成25年7月 対策実施(簡易区画線施工)
平成25年9月 交通量調査(事後調査)
【対策内容】路面表示・ドットラインを施工し外側線の位置を変更
改良前
路肩 2500
7000
車線幅 3500
改良後
路肩 1000
路肩 750
7000
車線幅 5250
ドット表示
路肩 1000
【整備効果】滞留長が大幅に減少した。
撮影日:平成25年5月
撮影日:平成25年10月
以上のように、要望があってから、施工効果を把握するまでに、僅か7ヶ月
であり、対策内容も区画線のみであるため、とても安価であるにも関わらず。
十分な効果を得ることが出来た身近事業の例である。
3.2.国道108号丸井戸地区 歩道未整備区間における路肩のカラー舗装化
【改良目的】
石巻市丸井戸地区は、石巻市立蛇田小学校があり、通学路として指定されて
いるが、国道沿線に住居やスーパーなどの商店が隣接し、両側に歩道がなく通
学する児童が危険であるため、歩行者の安全対策を目的として実施。
【施工までの経緯】
石巻市丸井戸地区は、地元・小学校関係者から歩道設置を強く望まれていた
が、沿道状況よりなかなか事業化することが出来なかった区間である。
平成21年9月 地元・関係機関との合意形成を図るため、第1回丸井戸
地区歩道計画懇談会を開催、この懇談会にて用地買収によ
る歩道整備ではなく、既存の道路幅員を利用した歩行空間
の確保を実施することで合意を得た。
平成22年3月 第2回丸井戸地区歩道計画懇談会を開催し、車道幅員を
3.25mから2.75mに縮小し、歩道スペースにする案を提案。
また、側溝蓋については、全て更新することとし、蓋の上
に舗装することで合意を得た。
平成22年6月 第3回丸井戸地区歩道計画懇談会を開催し、施工するにあ
たり、再度、関係者に対して内容を説明。
平成23年3月 対策実施(カラー舗装施工・側溝蓋更新)
【対策内容】側溝蓋を更新し、その上にカラー舗装を施工。
1 m程度
計画歩道幅員
現況歩道
2 .7 5 m
計画車道幅員
3 m程度
現況車道幅員
2 .7 5 m
1 m程度
計画車道幅員 計画歩道幅員
3 m程度
現況車道幅員
現況歩道
【整備効果】歩道幅員が広がり、また、カラー舗装により車道と歩道が視覚的
に分かれるため、歩行者の安全性が向上した。
(対策前)
(対策後)
歩道幅員が広がり安全。
以上のように、地元の方々と合意形成が図られ尚かつ、事業コストも抑えるこ
とが出来た。身近事業の例である。
4.今後予定している身近事業の紹介
①国道47号 大崎市のバス停付近における駐輪場整備
大崎市の石名坂バス停付近では、駐輪場が整備されていないため、歩道付近
に多くの放置自転車があり、歩行者の通行の阻害となっている。そこで、官地
の有効活用により駐輪場を整備することで、歩行者の通行の確保する。
②三陸道における津波避難階段の整備
東日本大震災による津波被害を受け、三陸道への避難階段を整備することで、
津波発生時の避難経路を確保する。
石名坂バス停付近
駐輪状況
官地内にて駐輪場設置
津波避難階段の整備
5.身近事業のデータベースの構築
仙台河川国道事務所では、身近事業のPDCAサイクルを確定させるために、
データベースの構築を行っている。データベースの項目として、対策の必要性
・内容・進捗状況を、また、対策実施済みの事業については、施工コスト、実
施期間、広報方法、対策前後の写真等を記載している。
データベースは仙台河川国道事務所内の共有サーバーに保存しているので、
仙台河川国道事務所の職員であれば、誰でも閲覧することが可能である。そ
のため、異動等により担当者が変わっても、一目で身近事業の取り組みを把握
することができ、対策を継続して行うことが可能となった。
6.おわりに
身近事業のPDCAサイクルを確定するだけでなく、今後はいかに身近事業を
周知していくかが大事になる。そこで、今後の展開として、事業ごとの段階的な
広報活動を密にしていくとともに、データベースの更新・ホームページや
Facebook 等への公表を通して、より多くの方々に理解して頂こうと考えている。