長野式臨床研究会 第6回テーマ『リウマチ疾患』 平成 23 年 11 月 27 日

1
長野式臨床研究会
平成 23 年 第 13 期 「大阪マスタークラス
大阪マスタークラスセミナーQ&A」
マスタークラスセミナーQ&A」
第6回テーマ
第6回テーマ『リウマチ疾患』
テーマ 『リウマチ疾患』
平成 23 年 11 月 27 日
講師 長野康司
『リウマチ疾患』
リウマチとは、ギリシャ語で「流れる」という意味
あちこち痛みが流れ動くところから付けられたといわれます
「リウマチとは」
リウマチ
診断基準
①朝の強張り、②関節の運動痛と圧痛、③関節の腫れ、④左右対称の関節炎、⑤
多発性関節炎(少なくても 2 箇所以上ある)、⑥関節の変性、⑦リウマチ反応陽性、
発症
長い時間をかけて全身の関節炎が徐々に進む病気
最初、微熱や全身倦怠感、食欲不振が続き、関節は時々痛む
そこに、気温の変化などの誘因が加わると、急に症状が現れる
関節が腫れて痛み、やがて変形して動かなくなる
特に、手足の指の第二関節より近位関節へ徐々に症状は発症する
起床時、身体が思うように動かせないが、しばらく動かしていると、少しずつ身
体の自由が回復する、リウマチの特徴的な症状
はっきりした原因は不明
血清中に「リウマトイド因子」というたんぱく質が検出される
自己抗体の一種で、リンパ球の異常で作り出され、様々な症状を現す
天候や気温が深く関わりを持つ
季節の変わり目、台風接近等で痛みが激しくなる
妊娠、出産、過労、精神的ストレスによっても症状は悪化する
「単・多周期型」 で、関節が骨化の骨変形まで至ってないものは、十分対処できる
症状
関節炎
朝の強張り
原因
症状の悪化
鍼灸適応
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「リウマチ疾患」の所見パターンと臨床的意味とまとめ
『リウマチ疾患』症例①②
症例
主訴
現病歴
脉状
所
腹診
見
火穴
局所
その他
順証逆証
処置
所見に
沿って
経過
解説
①「慢性関節リウマチ」
女性 54 歳 農業
(新治療法の探求 P105)
左手関節の腫脹、疼痛及び運動不全
10 年前より発症、リウマチ慢性化
洪緊数(リウマチ特有の脉状)
腎虚、肝・小腸の実
記載なし
記載なし
記載なし
肥満型
脉状も、症状も共に「実」で「順」
太谿・兪府(腎虚に)
太谿・兪府
合谷・解谿
(小腸実に陽明経からアプローチ)
陽陵泉(滑膜の炎症に)
陽陵泉
臨泣・外関(奇経治療)
臨泣・外関
全てを 20 分留鍼
②「関節リウマチ」
②「関節リウマチ」
女性 62 歳 農業
(新治療法の探求 P106)
右手関節痛
洪緊数
肝実(「肝実」を現す事が多い)
記載なし
記載なし
記載なし
右手関節の炎症著明、運動不能
脉状も、症状も共に「実」で「順」
天牖(初期の扁桃処置)
天牖
合谷・解谿(洪脉「心実」陽明経からアプローチ)
合谷・解谿
健側の懸鐘・外関
(奇経治療)に 20 分留鍼
その後気海
気海(リウマチは下腹部穴を多く使う)
気海
左大巨に施灸(肝実で使ったが、
瘀血との明瞭な
左大巨
違いがなかった)
左陽陵泉に多壮灸
左陽陵泉
患側の臑兪
臑兪を追加(小腸経)
臑兪
毎日自宅施灸、1 週間で病勢衰退
2 ヵ月後、症状全く消失
リウマチの様に、通常でない「自己免 心実はその対抗・同調経絡の小腸経がよく効く
疫疾患」に対して、「奇経治療」(臨泣・ 陽陵泉の多壮灸は不思議とよく効く
外関)は効を奏す
「症例①のポイント」
・「臨泣・外関」は、奇経治療に当たる。
当初は、「懸鐘・外関」「陽輔・三陽絡」「臨泣・陽池」等、少陽経の組み合わせであった。
後に、「陽輔・外関」の処置に発展してくる。
・「心実」は、水剋火の関係上、水の「腎」を補う事で、火の「心」を剋する形になる。
つまり、副腎処置で腎を強化すると、心を抑えることが出来る。
・リウマチは、「滑膜」が炎症をおこして腫れてくる状態。
「陽陵泉」は、筋肉や関節そして「滑膜」(結合組織)の、炎症、熱、腫脹、痛みを抑える
作用がある。
21~31 壮の多壮灸が不思議とよく効く。
「症例②のポイント」
・扁桃病因論に至ってない時期の処置法で、天牖がそれに相応していたと考えられ使用。
・「懸鐘・外関」の「懸鐘」は、「陽輔」に近く、この組み合わせの「陽輔・外関」と共に、中枢に
関わりを持つと考えていた。
3
・今は、「洪数」の場合「関元」(小腸の募穴)を使うが、当時は「気海」も使っていた。
どちらも、下腹部の経穴で、リウマチの場合よく用いる。
・当時は、「瘀血」「肝実」の明瞭な組み分けがなかったので、「左大巨」を肝実のために使用。
・「臑兪」は「小腸経」で、「心実」を抑えるのに、「心」と対抗・同調経絡(同じ「火」の性質を持
つ)の「小腸」を使った。
『リウマチ疾患』症例③④
症例
主訴
現病歴
脉状
所
洪緊数、
心肝の実(リウマチの特徴の脉状)
記載なし
記載なし
記載なし
④「関節リウマチ」
45 歳 女性 販売 長野康司症例
手指の強張り、肘・肩・膝痛
5 年前リウマチと診断、リウマチ科でステ
ロイド、抗リウマチ剤、消炎鎮痛剤、胃薬
服用中も、徐々に悪化、CRP5.7(正常値 0.5
以下)
洪数
反応なし
特に圧痛なし
陰陵泉(+)、前脛骨筋溝のこり、胸鎖乳突筋
緊張
その他 肥満型
特に右肩~上肢にかけて痛み、
手指の強張り強い
順証逆証 脉状も、症状も共に「実」で「順」
脉状「実」、腹証「虚」で「逆証」
処置
関元(小腸募穴、
心実に対して小腸から補 扁桃処置(全身的な免疫力強化)
関元
扁桃処置
所見に
う)
副腎処置
沿って
気海(数脉は、下腹部が重要な治療点にな (心実に拮抗作用の腎で抑える)
気海
る)
筋緊張緩和処置
左陽池(奇経治療)
(奇経治療と胸鎖乳突筋緊張緩和)
左陽池
左陽陵泉(腫脹と疼痛に)
陽陵泉(関節・筋肉の熱を取る)
左陽陵泉
陽陵泉
左環跳・帯脈(肥満による下垂)
帯脈(強張りを取る)
左環跳・帯脈
帯脈
右臑兪・天宗・後谿
丘墟・上四瀆・陽陵泉に施灸
丘墟・上四瀆・陽陵泉
(小腸経からのアプローチ)
経過
鍼週2回、施灸毎日、症状次第に消退、 3 回(14 日目)で症状和らぐ、
半年目に消失
4 回(23 日目)数消失、段々よい、
5 回(30 日目)CRP 2.7、症状低下、八割減
25 回(318 日目)CRP 0.04、痛みほぼ無い、
殆んど治癒
解説
初期の処置で、変動経絡を重視
5 年前から進行した「多周期型リウマチ」
「多周期型リウマチ」、
「多周期型リウマチ」
リウマチで数を呈するものは、下腹部に
下腹部に 手指だけでなく、膝まで発症が物語る
リウマチで数
ポイントを置く「気海・関元・中極・大巨・
ポイント
気海・関元・中極・大巨・ 鍼の感受性がよく、「逆証」でも効果が出た
帯脈」
帯脈
関元の刺鍼手技は、寸
6-④番、垂直刺鍼
関元の刺鍼手技
で脂肪層貫通後、腸の動悸に触れるまで
深刺(約 2 ㎝)雀啄
見
腹診
火穴
局所
③「慢性関節リウマチ」
60 歳 女性 農業
(新治療法の探求 P459)
右手関節の腫脹と疼痛
数ヶ月、夜眠れぬほどの痛みで腫脹は増
すばかり。医師はリウマチ性関節炎と診
断
4
「症例③のポイント」
「症例③のポイント」
・リウマチの脉状は「洪緊数」を呈する場合が多い。またこれと同じく「心・肝の実」も呈す。
「洪」は、「浮・中・沈」全てが広がって、熱証を現す。滑膜が燃えている感じ。
「緊」は、痛みを意味し、
「数」は 1 分間に 80~90 拍以上の、活発な動きを意味します。
つまりリウマチは、進行性の病変で、常に勢いよく動いて、活動的な病状だと言える。
・「後谿」は、小腸経の「木穴」、五行穴の意味を考えると、
「金・井穴」は出るところ
「金・井穴」 出るところ、
「水・滎穴」 流れるところ、
「木・兪穴」 注ぐところ(
身熱節痛)
出るところ 「水・滎穴」は流れるところ
流れるところ 「木・兪穴」は注ぐところ
注ぐところ(身熱節痛)
「火・経穴」
「火・経穴」は行くところ
・経穴」 行くところ、「土・合穴」
行くところ 「土・合穴」は入るところ
「土・合穴」 入るところ
小腸経の「木・兪穴の後谿」は、注ぐところなので、小腸から心に流れを注ぎ抑えていった。
・「関元」(臍より3寸下)のへの刺鍼は、垂直刺鍼で脂肪層貫通後、腸の動悸に触れるまで
深刺(約 2 ㎝)し、「洪脉」の改善まで雀啄補鍼をする。
軽いものは、雀啄している最中に、痛みが減ってくる。
質問 01 処置の選択で、「健側の少陽経」と「患側の小腸経」とありますが、このうちの「少
陽経」の処置は、必ず「健側」にやった方がいいのですか?
返答 01 リウマチは、右が悪い時は反対の左側を使うのが基本ですが、今は「両側」使って
います。厳密に言えば「健側」です。
また、「心」は相剋で、「心」を抑える為に左を使っている場合もあります。
原点は経絡治療から入っています。
沢田流太極療法→解剖・生理学を踏まえ→今の扁桃を中心とした治療が確立され
てきた。あくまでも、この当時は「変動経絡」を整えることを主眼にしていました。
「症例④のポイント」
・「心」の相剋である「腎」の強化を目的に「副腎処置」を使った。
・「丘墟・上四瀆」は、「奇経治療」の応用から作られた処置法。
・「陽陵泉」を両側使ったのは、両方の手足の痛みだったので使用。
・お灸を、いきなり初めから「21 壮やってください。」では、抵抗があります。
しかし、2回の治療で、身体が動いてきたことで、治療意欲が増し、お灸を7壮から増
やしていっても抵抗が無く受け付けた。
質問 02 この症例は、殆んど治癒との事ですが、もうお灸もやらなくてもいいということ
ですか?
返答 02 しばらくはお灸を続けてもらっています。
質問 03 予防でも自宅でやった方がいいですか?
返答 03 全くストップすると良くないです。
リウマチ発症はストレスだと思うので、毎日の施灸は無理だけど、月の半分はや
ってもらってください。休み休みやってもらった方が長続きします。
質問 04 もう来なくていいのですか?
返答 04 CRP が 0.04 まで下がっていますので、殆んど問題ないと思います。
質問 05 お灸は時々やってもらった方がいいですか?
返答 05 効果は本人が一番分かっていると思いますので、続けてくれます。
5
『リウマチ疾患』の臨床的パターンとキーポイント
脉状
腹診
火穴
その他
関節リウマチ
は
自己免疫疾患
症状
炎症の実態
リウマチ人口
男女比
年代別
リウマチの
タイプ
鍼灸対象
偉功を発揮す
る
経穴
リウマチは「洪脉」、特に「左寸口」で診る、多くは「数」を伴う
特に一様ではない
魚際、行間に圧痛が出る事がある
天牖、陰陵泉の圧痛や、胸鎖乳突筋緊張もあり、一様ではない
関節の腫れは、第2手指関節から、手・足関節、肘・膝関節など腫れ、熱、疼痛
が、左右対称に発現する事が多い
全身の関節に起る炎症性の病気
免疫異常による「自己免疫疾患」、明確な原因不明
自分の身体の構成成分に対する抗体(免疫細胞)が作られ、自分自身を攻撃する
関節の腫れや痛み等が生じ、徐々に進行して、関節の変形や硬直で、重篤な運
動機能障害を引き起こす
発症後 2 年以内に、骨の変形が始まる事が多い(最近の知見では)
関節を包む「関節包」の内側の、繊維性の「滑膜」に、
繊維性の「滑膜」
攻撃性の免疫細胞が増殖、
攻撃性の免疫細胞
「サ
イトカイン」というタンパク物質が作られ、「滑膜」が侵されてしまう
「滑膜」が侵されてしまう
イトカイン」
そのサイトカインが軟骨をも侵し、徐々に関節の変形・骨化に繫がる
わが国では約 80 万人、その 10%(8 万人)が身体障害者、その 10%(8 千人)が悪
性関節リウマチ
女性が男性の 3~4 倍の比率で多い
30~50 歳代の発症が多い
①多周期型
寛解と悪化を繰り返しながら徐々に進行、全体の 70%を占める
②急性進行型 発病後一気に進行、1 年以内に関節の変形・硬直が診られ 10%を
占める
そのまた 10%が、悪性関節リウマチで、鍼灸対象外
③単周期型
発症後、しばらく関節炎が診られるが、半年~1 年位で症状が軽
くなる
関節破壊は殆んど起らない、全体の 20%を占める
①多周期型と、③単周期型
関元
数脉の時の洪脉(心実)の処置、心実はその対抗・同調経絡の小腸経がよ
く効く
小腸兪 遅脉の時の洪脉(心実)の処置、
陽陵泉 関節・筋肉の熱を取り、腫脹と疼痛、滑膜の炎症に、
照海(
照海(太谿)
太谿)・兪府 心実に拮抗作用の腎で抑える
健側の丘墟・上四瀆 リウマチの様に、通常でない「自己免疫疾患」に対して、「奇
経治療」は効を奏す、
他に「臨泣・外関」「懸鐘・外関」「陽池」
「臨泣・外関」「懸鐘・外関」「陽池」
経治療」
これらは患側
患側を使っても良い
患側
気海・中極・大巨・帯脈 リウマチで数を呈するものは、下腹部にポイント
6
「リウマチ疾患のポイント」
質問 06 手・肘が伸ばせなく、肩関節も痛い、
手・肘が伸ばせなく、肩関節も痛い、Dr はリウマチではないと言います。
リウマチの診断が無い患者でも、リウマチの処置は効きますか?
返答 06 この患者さんの場合、RA(-)等、リウマチの基準を満たしていなくても、脉状は
「洪脉」を打っていると思います。
また、逆のパターンの、RA(+)で、リウマチの診断を受けていても「洪脉」が無い
場合もあります。
Dr が全て正しいとは限りません。脉状では「洪脉」を打っているかを診ます。そし
て「洪脉」を呈していれば、リウマチの可能性は大で、その処置をやっていけばい
いです。
質問 07 手首が伸びない場合にも効果がありますか?
返答 07 変形や骨化まで行ったものはダメですが、動きが悪い場合や、運動制限程度のも
のなら大丈夫です。
質問 08 症例 1 の、10
の、10 年経っている慢性関節リウマチでも骨化はしていないのですか?
返答 08 多周期型は、悪化と寛解を繰り返していますので、多周期型だと思われ、10 年経
ってもそこまでは行っていなかったと思います。
質問 09 骨化したものはなぜ戻らないのですか?
返答 09 軟骨の再生はきかないので、一度骨化したものは元に戻りません。
しかし、そこまで至っていないものなら治癒は可能だと思います。
質問 10 進行している最中のものは、進行を止めるのを目的にするのですか?
返答 10 治癒までいきます。症例④でも5年経っても尚、治療は続けられる。この場合も
進行を止めるだけではなく、殆んど治癒までいった。
関節の変形まで行ったものは、手を出さないという意味ではなく、骨化の再生は
無理ですが、痛みや腫れは取れます。
質問 11 リウマチの患者は、すぐ疲れ、刺激が多いとすぐ熱を出してしまうみたいなので
すが、この場合に施灸の数は減らしてやってもいいのですか?
すが、この場合に施灸の数は減らしてやってもいいのですか?
返答 11 熱が出る時は、感受性が強い。
患者さん自身の身体が強すぎると言っているのです。
この場合は、施灸壮数、鍼数は減らしたりしたほうがいいです。
質問 12 症例①②③の処置と症例④の長野先生の処置が違いますが、この処置は両方共や
ってもいいのですか?
返答 12 両方やると強すぎます。今の処置だけでも十分に集約されていますが、身体の状
態を診て、やってください。
質問 13 『次に抑えるのはここ!』って、優先順位をつけるとすると?
返答 13 優先順位はありません。これが初め、これが最後はないです。
リウマチの病態は、基本的に火が燃えているので、火を副腎から抑え込む。
肝の反対、胆経の「陽陵泉」を使っている今の処置はかなりいい使い方をしていま
す。
7
質問 14 症状が軽い時は効くけど、ひどい時にはどうでしょうか?
返答 14 ポイントは「陽陵泉」です。
患者さん本人の話で『膝の外のお灸がよく効いている感じです』と言われました。
「陽陵泉」は、何度も言っているように、関節の熱を取りますので、両方に多壮灸
でやるといいです。「胆」で「肝」を抑える意味があり、全部関連しています。
質問 15 脉状について、「洪数」はイメージがつきますが、「洪緊」は、尖ったイメージがあ
るので、尖った先端は細く当たるように思うので、ちょっと分かりません?
返答 15 細い感じではなく、尖っている強さがあります。
特に左寸口の沈位(心の位置)で診ます。
質問 16 しかし「緊脉」は沈の脉位では感じないと言われますが?
返答 16 厳密に言えば確かにそうですが、実際の臨床現場で診ると、本当は「弦」だと思い
ます。「緊」は痛みの脉状なので、「緊」と表現したのではないかと思います。
実際は、「弦」として考えていいと思います。
質問 17 「洪」は、大量の水が、ドドーっと来るような感じでいいのですか?
返答 17 寸口全体が広がっている。「浮」も、「中」も、「沈」も、全部広い。
脉状の表現は難しいですね。
・リウマチの治療は、簡単にはいきません。あくまでも、根気です。
特に、鍼だけではダメです、灸も一緒にやらないと効いてきません。
8
「脉のイメージトレーニング」
1 年間、全 6 回分をまとめてみました
頭の中で患者さんを診ている様に、臨床を想定してイメージしてください。
「洪緊数」幅広く、緊張のある、早い脉。
「洪緊数」
リウマチの典型的な脉、
「洪」は、細くなく、鉛筆みたいに幅広い脉状です。
「浮・中・沈」全てが広がって、熱証を現す。
滑膜が燃えている感じです。
「緊」は、痛みを意味する。
「数」は 1 分間に 80~90 拍以上の、活発な動きを意味します。
また「緊数」は、緊張していて早い脉で、熱があることを現しています。
リウマチの病状を現すのにピッタリな脉状です。
心肥大、スポーツ選手は大抵この脉状を呈しています。
「平脉」
「平脉」早くもなく、遅くもなく、緊張もなく、穏やかな脉。
脉」
早くもなく(80 拍以下)、遅くもなく(60 拍以上)、
「浮」でもなく、「沈」でもない。
「浮・中」まで感じるのが「浮脉」、「中・沈」で感じるのが「沈脉」。
「浮・中・沈」まで全てちゃんと触れて「平脉」
「緊」でも「弦」でもなく、柔らかい脉を「平脉」といいます。
他の脉を診る上でも、「平脉」を知っておく事が大事です。
「細緊数」細く早く緊張の強い脉です。
「細緊数」
「細」の細いは糸の様、冷え性、血流障害を現す。
逆に太い「洪」は鉛筆位太く、心肥大、リウマチ、痛風を現す。
「尺中の細」は目の疲れ、
「左寸口の細」は血流良くない。ここが広い「洪」が心肥大、リウマチ、痛風です。
浮中沈の脉位で、浮中まで尖っているのは「緊」、浮中沈の全て沈まで尖っているのは「弦」
「数」は早い脉、1 分間に 80~90 拍以上。熱、急性症状、活動的な「実」の脉。
自律神経失調(交感神経緊張)、更年期症、冷え、神経性体質を現します。
交感神経が緊張していると、副腎皮質Hの分泌が抑制され、更年期はカルシウムが骨か
らとけだしたり、副甲状腺Hが亢進してしまうので骨粗鬆症が多いです。
うつ病の人は「細緊数」を打つことが多い。
「細沈遅」非常に細く、沈んで、ゆっくりした脉。
「細沈遅」
「細沈遅」は「虚脉」の典型的な脉状です。
「細緊数」とまったく反対の脉状です。虚証で、循環障害を現しています。
「細」は、糸のように細い脉で、血流障害や冷え性を現します。
「沈」は、「中位」と「沈位」で触れて、「浮位」では感じません。
逆に「浮」は「浮位」と「中位」で触れて、「沈位」では触れません。
「遅」は、1 分間に 60 拍以下の遅い脉状です。弱っている時に現れます。
「沈遅」冷えや慢性症状を現します。
「沈遅」
「沈」は、沈んで、中の位置より下でしか触れない、奥に沈む「虚」の脉状です。
「遅」は、1分間に 60 拍以下の遅い脉。
9
「細軟数」
「軟脉」は、緊脉の逆で尖っていなくて丸みをおびています。
慢性症や、自覚しない扁桃の脉状です。
この場合の「数脉」も熱を現すので、症状の「灼熱痛」も、ここに現れています。
「弦数」
「緊」より緊張が強い脉状で、浮中沈の三層にわたって緊張している。
程度が悪い難治性の脉で、性格的なものも多い。奥が深い難症の人に現れる。
目の障害、難症疾患、肝胆の実を現し、同時に「脾虚」もある。
時に、熱がある場合にも現れる。
自律神経失調症にも「弦数」は多い。
「やや弦やや数」
「やや弦」は、やや緊張の強い脉状
「やや数」は、熱や進行性病変を現します。
「緊数」
「緊数」が、性格からきている場合はなかなか変わりません。
一時的に緩んだとしても、大きな変化はない。
「緊」は、「弦」と違い、深く沈めると消える尖った脉。「弦」は、尖って消えない脉。
この方も神経性体質です。
「浮緊やや数」脉が浮いて、緊張し、少し早め。
「浮緊やや数」
「浮」は、深い所まで行っていない、表層の脉。
「弦やや細」
「弦やや細」
「弦」は、肝胆の実の脉であり、眼の脉でもある。
「細」は、「尺中の細」の場合、眼の疲れを現します。
「細数」血流障害を現しています。
「細数」
「細」の細いというのは、糸の様。
「数」は、熱を現します。
血流が悪いと、何処かに熱があります。
この症例の場合は、1年来の咳が物語っています。
「細虚」冷え性、疲れきっている、正気の不足を現します。
「細虚」
「細」細くて弱い。
脉を変化させるのに、5回の治療を要した。
「沈やや虚」沈んで弱い脉。
「沈やや虚」
「沈」は、「中位」から「沈位」でやっと触れる脉。
症状は、長期化して、「表証」ではなく、「裏証」の状態。
「やや虚」は、身体が疲れきっていることを現す。
10
「弱短」
「弱短」は、非常に弱い脉で、「沈遅」より更に悪い。
「短」は短くポツポツと途切れるような脉、そして「弱」はかなり弱い脉である。
この脉状は、何よりも、まず最優先にしなければならない。
「三陰交・陰陵泉・労宮・百会」
「血虚」浮中沈のうち、中がポッカリ穴が開いているような空洞のある脉状。
「血虚」
力のない「ネギ」を押しているような感じです。
血の巡りが悪い冷え性の脉状。
「中脉」が弱く、何か“空洞”があるような脉。
冷え(お腹の冷えも)、血流障害がある。
「肺実」
「右寸口の沈」が強い。
風邪の第3期の脉。
第1期「小腸実」(左寸口の浮の実)、第2期「大腸実」(右寸口の浮の実)
そして第3期の「肺実」です。
耳鼻科の専門医の所見に出ていない場合でも、脉に現れていることがあります。
「緊」この場合は、坐骨神経痛の強い痛みの時に現れる「緊」です。
「緊」
「やや緊」自律神経、交感神経の緊張を現す。
「やや緊」
痛みの時にも現れるが、この場合は性格によるものなので自律神経を現す。
たくさんの脉を診ることで、色々な脉状が見えてくる。
「滑」クルッとした、球を転がすような脉。
「滑」
緊張ではなく、先が丸まったような感じです。
アレルギーの脉でもあります。
「寸口の滑」は、痰を現す。
この場合は、明らかに咳を現しています。
脉は、とにかく診ていくしかない
そこに参加するしかない
たくさん診ていけば分かってきます
最初から名人はいません
そして、これが皆さんの診断・治療に大きな武器になってきます