― 80 ― 石川保環研報 〔抄 録〕 ヒトふん便からのノロウイルス検出法に関する検討 石川県保健環境センター健康・食品安全科学部 倉 本 早 苗・児 玉 洋 江 大 矢 英 紀・尾 西 一 キーワード:ノロウイルス,RT-PCR法,LAMP法,NASBA法 日本食品微生物学会雑誌,27(2),86-89,2010 石川県における迅速かつ効率的なノロウイルス検査体 結果の不一致がみられた検体についてreal-time PCR 制の構築を目的に,通知法であるRT-PCR法と,LAMP 法 に よ り 特 異 遺 伝 子 の 検 出・ 定 量 を 実 施 し た 結 果, 法およびNASBA法との比較検討を行い,これら2法の real-time PCR法で陰性となった1検体ならびに定量値 有用性について調べた。 が僅少(約 104 コピー/g )であった3検体以外は,いず 2004~2007 年度に石川県で発生した食中毒 15 事例由 れの方法でも検出可能なウイルス量があったと推定され 来ふん便 100 検体,および集団または散発下痢症 17 事例 た。また,同一事例(同一遺伝子型)の中でも検出法に 由来のふん便 34 検体,計 134 検体を用いて,RT-PCR法, より結果が異なる場合があり,これら結果の不一致の一 LAMP法およびNASBA法によるノロウイルス特異遺伝 因として,個々のふん便中の各検査法に対する反応阻害 子の検出を行い,その結果を比較検討した。 物質等の存在が示唆された。 供試した 134 検体の3種類の検査法によるノロウイ 今回検討した検査法( LAMP法,NASBA法)はいず ルス特異遺伝子の検出結果は,RT-PCR法では 118 検 れも,感度・特異度ともに高く,また迅速性・簡便性は 体( 88. 1 %) が,LAMP法 で は 113 検 体( 84. 3 %) が, 通知法より優れていることから,ノロウイルスの検索に NASBA法では 100 検体( 74. 6%)がそれぞれ陽性であっ 非常に有用であると思われる。しかし,いずれの方法に た。 おいても反応産物がシークエンス解析に応用できないな RT-PCR法と他2法の検査結果についてカイ二乗検 どの課題もあることから,より迅速な検査結果を必要と 定を行った結果,RT-PCR法とLAMP法については有 する場合にはLAMP法やNASBA法を用い,従事者ふん 意水準5%で有意差を認めなかったが,RT-PCR法と 便や食品などウイルス量が僅少であることが推定される NASBA法については有意差( p<0. 05 )を認めた。なお, 検体や,シークエンス解析が必要な場合などに通知法を RT-PCR法でノロウイルスGⅠ型が検出された3事例の 用いるのが,効率的な検査体制であると考えられた。石 12 検体については,すべての検体でNASBA法の結果が 川県では本調査結果を行政担当者に提言し,平成 21 年 陰性となり,この結果をメーカーに提示した結果,後に 度からLAMP法を導入している。 試薬の改良がなされた。 Key words : Norovirus , Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction( RT- PCR ) , Loop-Mediated Isothermal Amplification( LAMP ) , Nucleic Acid Sequence-Based Amplification( NASBA )
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