日本水処理工業株式会社 〒530-0046 大阪府大阪市北区菅原町8-14 TEL06-6363-6330 FAX06-6363-6372 レジオネラ属菌に対する次亜塩素酸 ナトリウムの殺菌効果と有効性 日本水処理工業株式会社 仲江 弘史・磯部瞬・奥田寿俊・脇谷壮太朗 目次 ・はじめに ・調査概要と目的 ・分析結果と考察 ・まとめ はじめに 浴槽洗浄作業の殺菌効果について 一昨年の研究発表では・・・・ 殺菌工程で120mg/l、15分間の循環 ⇒LAMP法で陽性と陰性反応が混在。 より高濃度でLAMP法に対応できないか? 調査課題 LAMP法に対応するための塩素濃度は? 昨年以上の高濃度でLAMP法での検出率を検証する。 変更点は以下の2点 槽内殺菌作業時塩素濃度を600⇒1200mg/l 塩素殺菌循環時塩素濃度120⇒240mg/l 薬品濃度に関して 薬品濃度の設定に関して、外部に知見が無く最大 限安全を考慮して1200mg/l、240mg/lとした。 なお、槽内殺菌作業は噴霧後15分放置、安全対 策としては、防護マスク、防護手袋、防護メガネ、 防護服装着の上、作業を行った。 調査概要と目的 ○目的 近年保健所の多くが採用している迅速法 (LAMP法)と高濃度次亜塩素酸濃度での有 効性を検証する。 ○対象 大阪府下の36施設の循環浴槽。 ○方法 1施設7ポイントでレジオネラ分析 (培養・迅速法)を行いその傾向を調査する。 2つのレジオネラ分析方法 レジオネラ属菌検査 培養法 検出 (生菌) 不検出 迅速検査法 (LAMP法を使用) 陽性 (生菌・死菌に関わらず 遺伝子があれば陽性となる) 陰性 (生菌・死菌いない =死滅) ※迅速検査法で陰性を示すものを死滅と表現する。 採水ポイント(洗浄作業前後と水入替作業) ①作業前 過酸化水素による洗浄後 1回目の水入れ替え作業後 ②2回目の水入れ替え作業後 吐 出 口 ①② 浴槽サンプリング箇所例 吸 込 口 採水ポイント(殺菌作業後) <次亜塩素酸ナトリウム濃度 240mg/lで殺菌> ③15分経過後 吐 出 口 ③ 吸 込 口 浴槽サンプリング箇所例 採水ポイント(作業完了後) <次亜塩素酸ナトリウム中和・すすぎ・水張り後10分 循環> ④吸込口と吐出口との間 ⑤⑥浴槽水が滞留し易い箇所2点目 ⑦補給水(給湯水と給水の混合栓) 吐 出 口 ⑥ ④ ⑤ 浴槽サンプリング箇所例 吸 込 口 分析結果と考察 全分析結果一覧 全36現場全480検体 各工程でのレジオネラ属菌分析結果 工 現場1 現場2 現場3 現場4 現場5 現場6 現場7 現場8 現場9 現場10 現場11 現場12 現場13 現場14 現場15 現場16 現場17 現場18 程 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 ① 陽 検 ② 陽 ③ 陽 ④ 陽 ⑤ 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 検 陽 検 陽 検 陽 検 陽 検 陽 陽 陽 ⑥ ⑦ - 陽 陽 検 陽 - 陽 検 陽 陽 陽 陽 陽 検 陽 陽 - - - - - - - - - - - - - - 陽 検 陽 検 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陰 陽 検 陽 陽 陽 陽 陽 検 陽 陽 検 陽 陽 陽 陽 検 工 現場19 現場20 現場21 現場22 現場23 現場24 現場25 現場26 現場27 現場28 現場29 現場30 現場31 現場32 現場33 現場34 現場35 現場36 程 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 ① 陽 陽 ② 陽 ③ 検 陽 検 陽 検 陽 検 陽 検 陽 陽 検 陽 陽 検 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 検 陽 検 陽 検 陽 陽 陽 陽 陽 陽 ⑤ 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 ⑦ - - - 迅:迅速法(LAMP法) 陽:陽性 - - - - 培:培養法 検:10CFU/100ml以上検出 空白:陰性or不検出 陽 検 陽 陽 ④ 陽 ⑥ 陽 検 陽 陽 ―:分析なし - 陽 陽 分析結果一覧 迅速法のみ記載 各工程でのレジオネラ属菌分析結果 工 現場1 程 迅 現場2 現場3 現場4 現場5 現場6 現場7 現場8 現場9 現場10 現場11 現場12 現場13 現場14 現場15 現場16 現場17 現場18 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 陽 陽 ① 陽 ② 陽 ③ 陽 ④ 陽 ⑤ 陽 陽 陽 迅 迅 迅 迅 陽 - 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 - - - - - - - 迅 迅 迅 迅 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 ⑥ ⑦ - 陽 迅 - - - - - - 陽 - 陽 陽 陽 陽 陽 工 現場19 現場20 現場21 現場22 現場23 現場24 現場25 現場26 現場27 現場28 現場29 現場30 現場31 現場32 現場33 現場34 現場35 現場36 程 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 ① 陽 陽 陽 ② 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 ③ 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 ④ 陽 ⑤ 陽 陽 陽 ⑥ ⑦ - - - - - 迅:迅速法(LAMP法) 陽:陽性 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 - - 空白:陰性 分析結果一覧 陽 陽 陽 - ―:分析なし 迅速法 工程② 作業前は陰性、過酸化水素洗浄後には陽性反応 25% 9件/36件 工 現場1 程 迅 現場2 現場3 現場4 現場5 現場6 現場7 現場8 現場9 現場10 現場11 現場12 現場13 現場14 現場15 現場16 現場17 現場18 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 陽 陽 ① 陽 ② 陽 ③ 陽 ④ 陽 ⑤ 陽 陽 陽 陽 迅 迅 迅 迅 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 ⑥ 陽 陽 陽 ⑦ - - - - - 迅 迅 迅 迅 迅 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 - - - 陽 陽 陽 陽 陽 陽 工 程 現場19 現場20 現場21 現場22 現場23 現場24 現場25 現場26 現場27 現場28 現場29 現場30 現場31 現場32 現場33 現場34 現場35 現場36 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 迅 培 ① 陽 陽 陽 ② 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 ③ 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 ⑤ 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 ⑦ - - - 陽 陽 陽 陽 陽 ④ 陽 ⑥ 陽 陽 陽 - 分析結果から高確率でレジオネラが生息していることがわかる 分析結果一覧 迅速法 工程③ 高濃度塩素殺菌後に陽性 30% 11件/36件 工 現場1 程 迅 現場2 現場3 現場4 現場5 現場6 現場7 現場8 現場9 現場10 現場11 現場12 現場13 現場14 現場15 現場16 現場17 現場18 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 陽 陽 ① 陽 ② 陽 ③ 陽 ④ 陽 ⑤ 陽 陽 陽 陽 迅 迅 迅 迅 迅 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 ⑥ 陽 陽 陽 ⑦ - - - - 迅 迅 迅 迅 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 - - - 陽 - 陽 陽 陽 陽 陽 工 程 現場19 現場20 現場21 現場22 現場23 現場24 現場25 現場26 現場27 現場28 現場29 現場30 現場31 現場32 現場33 現場34 現場35 現場36 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 迅 陽 陽 陽 陽 陽 陽 ② 陽 陽 陽 陽 陽 ③ 陽 陽 陽 陽 ① 迅 迅 陽 迅 迅 迅 迅 迅 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 ⑤ 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 陽 ⑦ - - 陽 迅 迅 陽 陽 陽 陽 陽 ④ 陽 ⑥ 迅 - 陽 陽 - 高濃度塩素殺菌240ppm(昨年の倍)にしても陽性反応 全分析結果一覧 培養法のみ記載 各工程でのレジオネラ属菌分析結果 工 現場1 程 培 現場2 現場3 現場4 現場5 現場6 現場7 現場8 培 培 培 培 培 培 培 ① 検 ② 検 現場9 現場10 現場11 現場12 現場13 現場14 現場15 現場16 現場17 現場18 培 培 培 培 培 培 検 培 培 培 培 検 検 検 検 検 検 ③ ④ 検 検 検 検 ⑤ 検 ⑥ ⑦ - - - - - - - 検 工 現場19 現場20 現場21 現場22 現場23 現場24 現場25 現場26 現場27 現場28 現場29 現場30 現場31 現場32 現場33 現場34 現場35 現場36 程 培 培 培 培 培 培 培 培 培 培 培 培 培 培 培 培 培 培 ① 検 ② 検 ③ 検 検 検 検 検 検 検 ④ ⑤ ⑥ ⑦ - - - - 培:培養法 検:10CFU/100ml以上検出 空白:r不検出 ―:分析なし 検 検 検 考察 培養法 ○過酸化水素で洗浄後、水入れ替え2回実施後 30CFU検出 ⇒定期的な洗浄が必要 1件 ※洗浄前が不検出であっても、洗浄中に検出された ○高濃度殺菌240ppm、15分間循環後 140CFU検出 ⇒高濃度殺菌後検出初 1件 ※高濃度塩素でも生息できるレジオネラ? ○作業完了後(中和・すすぎ・水張り後10分循環) 2900CFU検出 50CFU検出 20CFU検出 90CFU検出 10CFU検出 ⇒結果より原因調査を行った 3件 ※上記の3工程での検出は、全て別現場でした。 作業後にレジオネラ菌が検出された推定原因 ○現場4:客先都合によりブロアーポンプ稼働できず。 洗浄、殺菌工程で滞留箇所ができてしまった。 ○現場15:補給水にレジオネラ属菌が検出。 洗浄後にレジオネラ菌検出は、補給水の影響 ○現場18:循環吸込み口が、底と横に数か所あり、横の吸込み口 は水中ポンプで送水することで、作業打ち合わせを行 ったが、結果的には、その対応による洗浄不足が懸 念された いずれの現場も最終的には陰性、不検出で引き渡し完了しています。 作業後にレジオネラ菌が検出された3件のその後 いずれの現場も、再度、水入れ替え、洗浄 作業等を実施し、 最終的には陰性、不検出で引き渡し完了し ています。 まとめ ◎塩素濃度を高めたことにより、作業後のレジオネラ検出率 (LAMP法)は低下した。 2013年73%⇒2015年47% ☆塩素濃度を高めることはLAMP法には有効 ☆240ppmでは遺伝子を破壊できない場合を確認 ☆培養法では不検出。240ppmの妥当性を確認 今後の対応1 循環式浴槽洗浄の最終確認に迅速法 (LAMP法)を採用する場合が多くなっているが、 LAMP法に対応できれば、100%に近い安心が 得られることがわかった。 しかし、死菌遺伝子の影響を受けるLAMP法で は、陽性反応の場合も多く、公定法である培養 法の結果で判断しなくてはならない場合も想定 できる。 今後の対応2 弊社では、培養法とLAMP法の差異を十分に 理解したうえで、浴槽洗浄の提案行う必要性を 感じた。 また、日常の塩素管理では、レジオネラ属菌 がバイオフィルム内に寄生することも容易に想 定でき、予防保全の観点から定期洗浄の啓蒙 を行っていく。
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