光技術情報誌「ライトエッジ」No.34(2011年3月発行) 電子ジャーナル10月号 (電子ジャーナル) 2010年10月 ウシオ電機のUV硬化システム 藪慎太郎 はじめに 1.光 ランプは光の品質を特徴づける最も重要な要素であ UV硬化システムとは、 紫外線 (UV) を照射すると瞬 り、 樹脂・材料双方の目的にあったタイプを選択する必 時に硬化する感光剤 『紫外線 (UV) 硬化樹脂』 を塗布し 要がある。 UV硬化で使用される代表的ランプとして、 た物質に、短い波長で化学反応を引き起こすエネル 高圧UVランプとメタルハライドランプがある。 ギーである紫外線を照射することで硬化させる方法で ある。 紫外線硬化樹脂は以下の特徴を持つ。 高圧水銀ランプは石英ガラス製の発光管の中に高純 度の水銀と希ガスが封入されたもので、 365nmを主波 長として254nm、 303nm、 313nmの紫外線を効率良く 放射する。 メタルハライドランプと比較し、 短波長側の 1. 速硬化 紫外線 (UV) の照射により、 通常数秒で硬化する。 紫外線出力が高いことが特徴である。 メタルハライドランプは発光管の中に水銀に加えてハ 溶剤系樹脂と比較して短時間で硬化が可能。 2. ダメージレス 低温処理が可能で、 熱ダメージが少ない。 光学ミラー等の光学系中心のシステムのため、 加 熱炉等の大型設備が不要。 4. クリーンテクノロジー 無機材のため、 有毒ガスや水質汚濁の心配が少な 100 放射照度(%) 3. 省スペース化 高圧水銀ランプ (オゾンあり) 50 く環境にやさしい。 又臭気による作業環境への影響 も少ない。 これらの特徴から、 紫外線硬化 (UV) 技術 0 200 は、 印刷・電子部品・機能性材料・半導体等の多くの 300 400 波長[nm] 500 分野で使用されている。 紫外線硬化技術 型に大別される。 それぞれに求められる光は異なるために、最適な光 を選択する必要がある。 また、 被照射物材料によっても様々な要求があること から、最適な光(UV) とシステム(ランプハウス)を選 択する必要がある。 メタルハライドランプ 100 放射照度 (%) 紫外線硬化樹脂はラジカル重合型とカチオン重合 50 0 200 32 投 稿 300 400 波長[nm] 500 光技術情報誌「ライトエッジ」No.34(2011年3月発行) ウシオ電機のUV 硬化システム ロゲン化物が封入されたもので、 200nm∼450nm ま がある場合は、 発光管に使用されている石英ガラスに での広範囲にわたる紫外線を放射する。 高圧U Vランプ 少量の不純物を混ぜ、 低波長域の発光を抑えることも と比較し、365nm 付近の出力が高いことが特徴であ 可能である。 一般的にオゾンレスタイプと呼ばれ、 高圧 る。 また、 高入力タイプ (最大280W/㎝) のランプも製作 水銀灯で使用される。 が可能である。 2.低温化 低波長域(230nm 以下) では、 酸素と紫外線(UV) の 光化学反応によりオゾンが生成される。使用される樹 機能材フィルム等では、 材料の特徴から、 より低温処 脂や材料の特徴に合わせてオゾンの生成を抑える必要 理が必要な場合がある。 ■ 二重クーリング構造説明図 灯 具 Dual Cooling Mechanism Lamp housing コールドミラー Cold mirror UVランプ UV lamp DeepUVカットフィルタ UV Deep UV cut filter フィルタ冷却風(幅射熱カット) Filter cooling air(for cutting radiant heat) 熱線吸収フィルタ(長波長カット) Thermal ray absorption filter(for cutting long wavelengths) ワーク面 Workpiece surface ■ 光フィードバックシステム構成図 Optical Feedback System ランプ出力 Lamp output UV電源装置 灯 具 UV power supply unit Lamp housing UVランプ UV lamp UV 光フィードバック信号 UV feedback signal 光ファイバ コールドフィルタ Optical fiber Cold filter シーケンサ Sequencer 光変換素子 Photo-converter element 受光アンプ Detector amplifier ワーク Workpiece 投 稿 33 光技術情報誌「ライトエッジ」No.34(2011年3月発行) 電子ジャーナル10月号 (電子ジャーナル) 2010年10月 プへの投入電力を自動調整し、 照度を一定に保つこと 紫外線硬化 (UV) に必要な波長域の発散ロスは可能な ができる。 限り抑え、 かつ被照射物への熱伝導を抑えるために不 要な波長を徹底的にカットする二重クーリングシステ 4. 使用環境への対応 ムがある。 応用分野の広がりにより、 クリーンルーム等での使用 3.安定性 が必要な場合がある。 従来の紫外線 (UV) 硬化システム は、 設置室内から吸気し、 クリーンエアーを消費しつつ 生産品質安定を目的として、 常時一定の照度で照射 し、 ラインスピードを変えることなく同光量を照射した 排気温度が高いという問題があった。 その様な場合は、 い場合は、 光フィードバックシステムを使用する。 紫外 循環冷却システムにより、 冷却風の大部分を再利用し 線ランプは使用時間により照射強度が減少する特徴を 排風量を大幅に減少させるシステムを選択する必要が 有するが、 フィードバックシステムでは、 必要な設定照 ある。 度を入力することで、 定照度での照射が可能である。 常 この様に、樹脂や材料種、 その使用目的、環境によっ 時紫外線 (UV) 照度を自動的にモニタし、 その照度を信 て、 光(波長) ・温度・定照度・クリーン化を考慮して、 最 号に変換し、 ランプ電源にフィードバック制御してラン 適なシステムを構築する必要がある。 ■ 循環冷却システム Circulation Cooling System クリーンルーム Clean room ラジエータ ユニット Radiator unit 制御盤 Control panel ブロア Blower フィルタ Filter ランプハウス Lamp housing ※冷却水が必要となります。 ※Requires cooling water. 4m3/ min. 最新動向−ウシオの新型水冷システム ナノ材料の産業化・より一層の環境対応・生産性向上 要求等により、 紫外線 (UV) 硬化システムを採用する産 業・用途はますます広がりを見せ、 これまで以上の高照 度・低温・環境追従化が求められている。 これらの要求 を満たすために、 ウシオ電機では新型水冷システムを 開発した。 34 投 稿 光技術情報誌「ライトエッジ」No.34(2011年3月発行) ウシオ電機のUV 硬化システム 従来システムとの比較 分 類 高照度 比較項目 空冷ランプ 間接水冷ランプ 新型水冷ランプ 300(メタハラ) 240(Hg) 最大ランプ入力(w/cm) 280 220 ピーク照度 (240W/cm高圧Hgランプでの比較) 1400 1000 3500 6000(メタハラ) (mW/cm ) 2 低温化 IR放射 処理時間 多い 長い 少ない 長い 少ない 短い コンパクト化 灯具サイズ(mm) 170×785×275 200×900×300 145×822×245 その他 クリーンルーム対応 点灯立上り(sec) 騒音 △ 180 × ○ 180 ○ ○ 30 ○ −光 低波長域からの発光を強化することにより開始材との整合 をアップさせた。 −照度 高発光効率化により高照度を達成し、 高速ラインへの追従 または従来ラインでのランプ灯数減を実現し、 生産性を大 幅に向上させた。 また、 高照度化により硬化促進効果からの 必要光量減も可能である。 −低温 高照度化により照射時間が短縮され、 より低温処理が可能 になった。 −環境対応 1.極細管にすることにより、 ランプハウスシステムを小型 化 (従来比85%) することに成功した。 2.水冷式のためにランプハウス排気機構を廃止し、 より高 クリーン化に対応した。 3.ランプ立ち上がり時間を短縮したことにより、 生産に寄 与しないダウンタイムの大幅減を実現した。 おわりに 紫外線硬化システムは印刷用途を 中心に、 35年程前から実用化がはじ まった。 従来には無い新型材料や産業によ り、その必要性はますます拡大して いる。生産性向上・省スペース化・高 品質化・環境対応の要求が高まるこ とが予想され、要求を満たす【光】 と 【システム】 の開発が重要である。 投 稿 15 3 9
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