新潟県の郷土食に関する研究 (第7報)* - 新潟県地域共同リポジトリ

一105一
新潟県の郷土食に関する研究(第7報)*
佐渡の飯,餅,だんごについて(その1)ダンゴ,マキ類(1)
本間伸夫,渋谷歌子,石原和夫,佐藤恵美子
(1980年1月16日 受理)
Foods
and
Dngo
Nobuo
Honma,
Meals
and
Utako
in
Niigata
Maki
in
Shibuya,
Prefecture
Sado
Kazuo
(VII)
Island
Ishihara,
(1)
Emiko
Sato
一 緒 言
先に調査報告1’2’3)した如く,佐渡の郷土食は,新潟県内でもかなり特異的であり,変化セご富んでい
る。これは長い歴史と独得の風土から生まれ育ったものと考えられる。
この佐渡の郷土食のうち,特にご飯類,餅,ダソゴ及びマキ類を取り上げ,行事との関連,いわ
れ,製造の実態,材料,方法などを調査した。本報においては,ダソゴ及びマキ類について調査した
もののうち,その種類,分希,製造の状況などについての結果を報告する。
調 査 方 法
1)調 査 事項
既報1’2’3)の結果に,文献4’5’6’7)を参考として第3表に示した20種のだんご及びまき類を取り上げ,
アソケート調査カード(第1表)に示す項目について調査を行った。
2)調 査 方 法
調査は,聞き取り(一般市民を対象として本学々生による)及び調査カードの郵送による依頼(一
般市民,本学卒業生)により当った。調査時期は昭和54年5月∼8月。調査対象について,職業,地
域などの指定はしなかった。
3) 調査地域の区分と調査家庭の分布
佐渡は一一つの島であるが,その歴史,風土から明確な地域性が認められる。調査結果をまとめるに
*前報は文献3》
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県立新潟女子短期大学研究紀要 第17集 1980
一106一
新潟県の郷土食に関する研究(第7報)
第2表佐渡の地域区分
一107一
当って,文献8’9)を参考として,第2表,第1
図に示す如く区分した。
地域区分
所 属 市 町村
国仲・両津
両津市(旧岩首村を除く),新穂村,
金井町,畑野町(旧松ケ崎村を除く),
また調査家庭の分布を第1図に示した。全調
佐和田町,真野1町
査戸数は30戸。家庭の職業は農業のみ7,農業
A 地 区
その他13,漁業のみ1,漁業その他1,その他
B 相川地区 相川町
C 前浜地区
両津市岩首,畑野町松ケ崎,赤泊村,
のみ8戸であった。
羽茂町,小木町
国仲・両津
13
調査家庭
地区境界
現市町村境界
旧市町村境界
11
第1図 佐渡の地域区分と調査家庭の分布
一108一
県立新潟女子短期大学研究紀要 第17集 1980
結果及び考察
調査結果を第3,4,5表に整理して示した。No.1∼20のダソゴ・マキ類の他に・各調査家庭で
つけ加えたものをその他としてまとめて示した。
1> 名称及び作り方についての知識
第3表の1’(%)はダソゴ・マキ類おのおのの知名度ともいうぺきものであり,9「(%)は更に
作り方まで知っているかどうかを示すものである。100H’/1’の高い方がより深く理解している事に
なる。
知名度が最も高いのは枕ダソゴであり,作り方も最も良く知られている。この枕ダソゴは死者の枕
もとに供えるものとして全国的に作られているが佐渡においてもかなり普遍的に作られていると考え
られる。知名度は次いで,黍ダンゴ,タイゴロウ,蕎麦粉ダソゴ,オコシガタ,ヤセウマ,黒米ダソ
ゴ,シソコウが高い。
逆に知られていないのが針千本ダソゴ4’5)であり, ミヤゲダソゴもまた知名度が大変低い。類似ま
たは同一のものでありながら名称が異なるために,それぞれの知名度が低くなる場合も考えられる。
ゴロダィ7,デンシャクマキはその例に該当する。マキ類としてゴロダイフ,ゴPマキ,タイゴロ
ウ,デソシャクマキを合わせると知名度は沁6.7%,ヤセウマ類としてクジラダンゴ,ヤセウマ,シ
ソコウを合わせたものは,250%e*にもなる。
作摯方までの知識の程度を示す亙’殖は,魏ダンゴカミはやり最も高く,次いで,オコシガタ,タイ
ゴロゥ,ヤセゥマ,シγコウであった。これらのleO R 71’もまた89.3∼憩Gと高い数値である。こ
乳に対して知名度は筒いぶ件夢労までは知らないという入の多いのが,蕎麦粉ダソゴ,黒米ダソゴ,
黍ダソゴであ診,憩醗ワrも?2. ?・−75・ eと低くなっている。かなウよく法漂されつつあるものと,
忘れ去ら乳よきとしているものの違い溝,この憩奪ガ/1’値に現われていると考えら乳る。その極端
な劉ぶ.心麦ハナタ露タソゴ.メ薄ス努ソゴ,ゴ犀ダイフ,デソシやクマキであb,急速挺忘れ去ら
蕊つつあるのではない塾と危摂の念を抱かさ轟る。
2) 姦家襲勇過去鼓督窺在
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亨濯タ,ヤ竜蜜マ.亨》ノ=r>,そ轟麺遼えタyゴ溝鏡蓬において良く舞ら轟ている。
過表老鏡窪を麹鞍すると,全蓼ともて線そ轟程藏多してい熱・。しかし過去と舞在で隷その麹容渉
著墨しく変奮している。墾ξ亨褻ξ嬉でみると.蓮端江藏少ミノているデソシヤタマキ.メ謬スタンゴ,
蕪麦講罫ンぎ.蕪牽鎮∼ゴ,欽雪タyゴでdi V忘k去らkまうとして㍉・るp逆紀滋無もて矩るの亀多
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寧後達繭頭く,一部漆地域で蓮.堂¥コ章熱ヤセ養マ勇鋼宅で綜巌く、e・“Rシ露タむ毅塞となeて㍉・る{そ覇之
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一109一
新潟県の郷土食に関する研究(第7報)
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第17集
県立新潟女子短期大学研究紀要
P10一
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新潟県の郷土食に関する研究(第7報)
一11ヱー
事,仏事のためのものである事から,現在においてはこれら行纂を派手に行う習慣となったための2
点が考えられる。
その他知名度が高い,オコシガタ,タイゴロウ,ゴロマキを含め,ヤセウマ,シソコウも現在にお
いてもよく作られており,佐渡島民の食生活において,依然として重要な役割を果しているものと考
えられる。
3)ダンゴ・マキ類を作る目的,行事及びそれらの「いわれ」
結果を第4表に示した。新潟県内においては,ダンゴ・マキ類の大部分は行事食として作られる事
が多い1)。この点については佐渡においても例外ではない。
各ダンゴ・マキ類と行事との関係はかなり明確であり,少くとも同一家庭では,一種類のものが性
格を異にした行事のために作られる蘂は多くない。逆に云えば,一軒の家庭で一行事のために作られ
るダソゴ・マキ類の種類は少なく,多くの場合一種類である。
ひな祭りにはオコシガタとシンコウが大部分の家庭で作られる。第2図で考察する如く,この場合
のシソコウはオコシガタの別名であると云って良いので,ほとんど全部がオコシガタである。
端午の節句は完全にマキ類のみである。
ねはん会(2月15日)も特徴があり,ヤセウマとシ7一コウのみといって良い。この場合のシソコウ
は第2図で考察する如く,ヤセウマの別称であるので,ほとんど全部がヤセウマとなる。C地区では
ねはん会にダンゴ・マキ類を作る習俗は見当らない。
彼岸・お盆は迎えダソゴ(送りダソゴ,腰掛けダンゴ,ミヤゲダソゴ)のみである。
死人の枕もと,葬式には全島的に枕ダンゴである。法事・仏事は多様の性格があるので,ダンゴ・
マキ類もまた多種多様である。その中でも,C地区のクジラダンゴは独得である。
祭り・祝い事も多様であるので,ダンゴ・マキ類もまた多種多様であり,中でもアヤメダンゴは独
得である。
おやつ,代用食・節米のためには雑穀及び不良米のダンゴが多い。第3表の結果によれば,これら
のダンゴは著るしい減少の傾向にある。
4)ダンゴ・マキ類の異称,別名
文献記載のものと合わせて,第5表にまとめて示した。
マキ類はいくつかの種類があるとともに,異称,別名が多い。第5表の結果をみると,お互いに名
称が入り混っていて混乱している。マキ(又はゴロマキ)はネセマキであってアンを入れないもので
あり,これに対して,タイゴロウはアンが入ったものであ4)るが通常の解釈と考えられる。しかし続
報11)のデータによれば,ゴロマキの100%にアンが入っているのは良いとして,タィゴロウもその77.8
%がアン入りである。この事から,名称も内容も一定していない事がわかる。
シイナなどの不良米を用いるメカスダンゴや黒米ダソゴは総称的にシイナダソゴの名前を持ってい
るものと考えられる。
最も問題となるのは,オコシガタ,クジラダンゴ,ヤセウマ(ヤセゴマ),シンコウ(シンコダソ
県立新潟女子短期大学研究紀要 第17集 1980
一112一
第5表ダンゴ・マキ類の異称,別名
1
ダソゴ・マキ類
お こ し が た
ゴ ロ ダ イ フ
ク ジラだんご
ゴ ロ マ キ
ウき
ま
く
ゴや
し
イん
タで
口
針千本だんご
ま
−凸9臼肉δ4FOρ0ワ● R︾ 0リ ハU 1
あやめだんご
竅@ せ う
あぶり団子4),極楽団子4)
おしがた4)5)6),おこしまんじゅう4)
ナシガタ(A2)*
タイゴロウ(A1),ゴロマキ(A 1)
ごろだゆう4)
やせごま5)
タイゴロウ(A1),ネセマキ(C1)
まき4),ごろだゆう4),ねせまき4)
太兵ゴロウ(C1),ゴロマキ(A 1)
デソゴロマキ4)
連雀まきs)
{錦多鐵矯饗%蟄&)}
やせごまり,シソコ4)
ォび団子4)
モぶきだんご
11
小麦はなたかだんご
12
14
めかすだんご
まくらだんご
そばこだんご
15
クロゴメグソゴ
13
文献記載のもの
本調査に現われたもの
16みやげだんご
17おちつきだんご
シイナダンゴ(A2)
クロゴメダソゴ1°)
枕だんご1°)
シイナダソゴ(A2),メカスダンゴ(A 1)
ナクリダソゴ(A1)
オヅツキダソゴ(A1)
おっつき団子4)
18 き びだ ん ご
ナクリダソゴ(A1),コシカケダソゴ(C1)
19むかえだんご {誕諺そ訟会1茅霧資歪含ナ)
20 し ん こ う
}ヤセゴマ4’・ヤセウマ4)
*A:国仲,B:相川, C:前浜,数値は例数。
押し型ダンゴ
金 太 郎 飴 的 ダ ン ゴ
鴨=(シンコウねはん会法事・仏事)…
一一
@オコシガタ
例数
A4
@ (ひな祭1,)
E亙ヨー
リ捻)
[壷三}一
i法事・仏事)
クジラグンゴ ー一一一一一一一一一一一一一
(法事・仏事)
A9,
一{三互ヨ (ひな祭り)
冒=昌 オコシガタ
a1,
@ (ひな祭り)
一一一一一一一一一一一一一一一一
@オコシガタ
b1
C3
@ (ひな祭り)
_一 _ _o一儒一臼一 一 一一 一一 一
オコシガタ
iひな祭り)
[:コ・主として用いられる名称 ():作る主な行事
第2図オコシガタ,シンコウ,ヤセウマ.クジラダンゴの関係
C6
新潟県の郷土食に関する研究(第7報)
一113一
ゴ)の関係である・綱査の結果からすると・これら姥はお互い酩称鍾なり合っている。・c.,
このままでは4者は同一のものとなってしまう・しかし繍・・)にある働方から解析すると,この4
者は押し型を用いるものと金太郎働勺作り方をするものの2纐となる.シンコウにこの2通りの作
り方のものが含まれている事がわカ・ったの℃シンコウ胴一名称でありながら, il・i!し型ダソゴと金
太郎飴的ダンゴの瀦臆味している・第5表と繍・・)の作り方から総合して,シソコウを中心とし
た・ヤセウマ・オコシガタの関係聯2図の如くにまとめる事ができる.なおクジラダソゴは主とし
て前浜地区で作られるもので・ヤセウマの賄である.但し作るための行事を黙している。
迎えダ7=’s腰掛けダン≠送りダンゴ等の関係Cま櫨及び彼岸の行事嚇間的経過とeemeして細
かい区別があるものと考えられる。
5)地域性について
地域性をみるために洛如について鱗婚せられ燗査家庭の分布を地図上に求めた.賊と
の関籾合いの簸を示す指標として名称及び作り方の熾腿んだ.撫としては,a家蝋でも
良いが,傾向が同じ上に数が少なくなるので,上記の知識を選び図に示した。
ダンゴ’マ顯のうち・枕ダンゴ・迎解ソゴ,綴ダン瀕馳殿醐待できなV、ので除き,
マキ鰍第3図)及びお互いに髄のあるオコシガタ,;v…ウマ,クジラダ凋シンコウ(負94,
5図)についてその分布を求めた。
マ噸ではタイゴ・ウ澱も広く講されているが湘川町高千地区ではこの名称が知られてな
く・ゴ゜マキのみである・ゴ・マキ職少ないがA,B,C3地欧分布しゴ。ダイフ,デンシャ
クマキはA地区にのみ分布している。
第3図マキ類についての知識(名称,作り方を知っているを各1点とする)
一一 114一
県立新潟女子短期大学研究紀要 第17集 1980
ナコシガタ,ヤセウマ,クジラダソゴ,シンコウについてみると,幾つかの特徴が認められる。ク
ジラダンゴはほとんどC地区に分布してA地区にない。逆にシンコウはA,B地区にのみあって, C
第4図オコシガタ,ヤセウマ,クジラダンゴについての知識
(名称,作り方を知っているを各1点とする)
第5図 シンコウについての知識(名称,作り方を知っているを各1点とする)
*作り方から判断したもので、不明確なものは除いてある。
新潟県の郷土食に閲する研究(第7報)
一115一
地区にあっても両津市岩首地区のみに認められる。この岩首地区はA地区に入れる方が妥当であった
とも考えられる。
オコシガタ(オシガタ)は相川町高千地区を除いて広く分布しているが,この高千地区にはシソコ
ウの名称を持つオコシガタが分布している。この事から,押し型を使うダンゴは全島的に分布してい
る事になる。
金太郎飴的ダンゴであるヤセウマは,相川町二見地区,両津市岩首地区を除いて広く分布してい
る。この両地区にはヤセウマ的シンコウも分布していない。しかし,クジラダソゴはヤセウマの別称
・であるので,この金太郎飴的ダンゴはほぼ全島に分布しているものと考えられる。
シンコウは前述の如く,主としてA,B地区に分布している。シンコウは異称,別名の項で考察し
た如く,オコシガタ的とヤセウマ的に分けられる。前者の方が優鈷であるものの,その分布に著るし
い差は認められない。何故この様に別のダンゴが同じ名称で呼ばれるのか興味が持たれる。この点更
に検討を必要とする*。
行事の立場から,ダンゴ・マキ類と地域性を検討すると幾つp・の特徴が認められる。
ひな祭りは全島で行われており,主としてオコシガタとシソコウが作られる。シンコウは押し型を
▲
齢
●オコシガタ ▲ヤセウマ▲シンコウ○クジラダンゴ
第6図 ひな祭りとねはん会に作るダンゴ類
*シンコウはシンコ・シンコダンゴの別名がある如く,新粉(ウルチ米粉)を用いるダンゴき総称的な名前とも
とれるが・続報11)に示す如く・大多数の場合・ウルチ米とモチ米の粉を混ぜて作られているので,この考えも
適切ではない。
県立新潟女子短期大学研究紀要 第17集 ユ980
一116一
用いるオコシガタ的シンコウである。オコシガタはC地区で主であり,A, B地区では従である。
A,B地区ではシソコウが主である(第6図)。
ダソゴ・マキ類を作ってねはん会を行う事は主としてA地区で行われ,特にC地区では認められな
い。ヤセウマとヤセウマ的シソコウがこの行事のために作られるが,前者が優勢である(第6図)。
葬式を含めて法事・仏事に作るダンゴ・マキ類にも地域性が認められる (第7図)。C地区でのみ
作られると云ってよいクジラダソゴはこうした行事にのみ供される。A地区ではねはん会に作れるヤ
セウマはC地区ではねはん会はなく,替りに法事・仏事に供されている。一般にC地区は法事・仏事
がかなり丁寧に行われている事を窺い知る瑛ができる。
▲▲
●▲
●枕ダンゴ 」L黒米ダンゴ
▲クジラダンゴ
●ヤセウマ▲オ・シガタA ・Pt・米ダンゴ
▲クジラダ・ゴ○シン・ウ■吹雪ダンゴ
第7図 死人の枕もと・葬式と法事・仏事に作るダンゴ類
以上のデータから,佐渡3地区の特徴と共通な畜実を整理すると次の如くになる。
i)マキ類は全島で作られ,そのほとんどが端午の節句のためである。
’ii)お盆,彼岸には迎えダンゴなどを作る婁も全島共通。
iii)死者の枕もとに枕ダンゴが供えられる事も全島共通。
iv)A地区……ひな祭りはオコシガタとオコシガタ的シソコウ,法蕪・仏事にはナコシガタを作る。
ねはん会主としてヤセウマ。
v)B地区……ひな祭りはシソコウが多い。
vi)C地区……ひな祭りはナコシガタ。葬式,法事・仏珊こはこの地区のみといってよいクジラダソ
新潟県の郷土食に関する研究(第7報)
一一一 117 一一
ゴが供される。ヤセウマも法蕪・仏事のために作られる。シンコウはほとんどない。
と
ま
め
県下の郷土食に関する研究として,佐渡のダソゴ・マキ類について,島民がどの程度知っている
か・どの程度作っているか・どの様な目的で作るのかなどについて調査し,その結果をまとめた。
まとめるに当って,佐渡を国仲・両津地区,相川地区,前浜地区の3地区に分けて考察した。この
地域区分は,ダソゴ・マキ類についてもかなり良くあてはまり,ほぼ妥当であった。
予め示した20種のダソゴ・マキ類についての知識(名称,作り方)は,枕ダンゴ,オコシガタ,タ
イゴロウ,ヤセウマ,シンコウ等について高い。メカスダソゴ,ソバコダソゴ,黒米ダソゴ,キビダ
ンゴなどは名前は知っているが,作り方は知らない場合が多く,忘れ去られようとしている。文献に
ある針千本ダンゴは知名度0であった。
名前と作り方が良く知られている枕ダソゴ,タイゴロウ,ナコシガタ,ヤセウマ,シソコウなどは
現在においても良く作られている。これに対して,不良米や雑穀ダソゴの自家製は過去に比して,現
在では極端に減少している。
これらのダンゴ・マキ類は異称,別名が多いが,芝ンコウはその作り方から,ヤセウマ的のもの
と,オコシガタ的のものの2通りがある蟻を認めた。またアンが入ったものがタイゴロウ,入らない
ものがゴthマキという区別も必ずしも明確なものではない。
行事との関係をみると,端午の節句はマキ類,ひな祭りはオコシガタ,ねはん会はヤセウマ,彼岸
・お盆には迎えダンゴ,死人の枕もとには枕ダンゴなどを供した。
地域性について検討すると,前浜地区のみといって良いクジラダンゴ,国仲地区と相川地区のみに
あるシソコウ・ねはん会にダンゴやマキを作らない前浜地区などと,各地区ダソゴ・マキ類について
も興味ある違いを示す事が認められた。
本報告を終るに当り,本調査に御回答を寄せられた方々,調査に協力して頂いた佐渡出身の本学卒
業生及び在学生に深謝致します。
文 献
1)本間伸夫,渋谷歌子,目黒香代,佐藤恵美子,石原和夫:県立新潟女子短大研究紀要,No. 16,117(1979)
2)渋谷歌子,本間伸夫,佐藤恵美子,石原和夫:県立新潟女子短大研究紀要,No. 16,143(1979)
3) 渋谷歌子,本間伸夫,佐藤恵美子,石原和夫:県立新潟女子短大研究紀要,No. 16,153(1979)
4) 山本誠之助:佐渡のたべもの,食品衛生協会佐渡支部,相川(1973)
5) 柳田国男:分類食物習俗語彙,角川善店,東京(1974)
6)新潟県大百科事典,新潟日報事業社,新潟(1977)
7)新潟県民百科事典,野島出版,三条(1977)
8) 佐渡郡・両津市教育研究会:概観佐渡,概観佐渡刊行委員会,金井町(1964)
9) 藤岡謙二郎:佐渡の歴史地理,古今轡院,東京(1971)
10) 浜ロー夫:佐渡の味,野島出版,三条,(7979)
11) 本間伸夫,渋谷歌子:県立新潟女子短大研究紀要,No. 17,119(1980)