1

第Ⅰ章 石綿含有窯業系建築廃材の熱処理による非石綿化
石綿含有窯業系建築廃材には、繊維強化セメント板(スレート波板,スレートボード,
けい酸カルシウム板第一種,けい酸カルシウム板第二種,パルプセメント板,スラグせ
っこう板,パーライト板),押出成形セメント板,窯業系サイディング及び住宅屋根用
化粧スレートの廃材があるが、これらの廃材のうち、スレート波板と住宅屋根用化粧ス
レートの廃材で7割近くを占めると予想される。
さらに、スレート波板と住宅屋根用化粧スレートは、
①ほとんどが屋根及び外壁に使用されており、解体時に分別を行いやすい
②ごく一部を除き、使用している石綿がクリソタイルである
③加熱処理前に行う前処理(粉砕等)が行いやすい
④スレートボード等にも応用ができる
ことから、本調査研究の実験に際しては、スレート波板と住宅屋根用化粧スレートの廃
材で実施することにした。
また、実験に用いる試料は、製造時期による石綿割合の違いやばく露期間の長さによ
る影響が考えられるため、それぞれ使用期間(施工後の経過年数)が短いものと長いも
のの2種類を用意した。
熱処理条件は、以下の2水準で実験を行った。
①熱処理の一般性を考慮して、通常の廃棄物の焼却と同レベルの 850℃とし、時間
は 15 分,30 分及び 1 時間の 3 条件とした。この処理条件におけるリサイクルの
用途として、フィラー、セメント原料等が考えられる。
②リサイクルの用途としてポルトランドセメントを想定し、本実験の熱処理条件を
1400℃・15 分とした。この条件とした理由は、ポルトランドセメントの焼成はロ
ータリーキルンを使用しているが、原材料はこのロータリーキルン内の 1400℃以
上の雰囲気に 15 分以上は滞留することである。また、一部は温度又は時間を変
更して熱処理を行った。
1. 熱処理による非石綿化実験
1.1 実験試料
(1)住宅屋根用化粧スレート
住宅屋根用化粧スレートは、2 年使用品(経過年数短)と 33 年使用品(経過年数長)
を用いた。外観を写真Ⅰ.1 に示す。厚さは約 5.5 ㎜である。これらの化学分析値及び
石綿量の推定値を表Ⅰ.1 に示す。
化学分析は、試料(住宅屋根用化粧スレート、スレート波板)を 4 ㎜以下に粗粉砕し、
1050℃で加熱した後に、蛍光X線分析(㈱島津製作所製 XRF-1700 型)によって行っ
た。
また、含有される石綿はすべてクリソタイルであり、その含有量の推定は、蛍光X
線分析で測定したMgOが、全て廃材に含まれているクリソタイルに由来するものと
仮定して求めた。
5
(2)スレート波板
JIS A 5403 に規定される石綿スレートのうち、リブ波 5 年使用品(経過年数短)及
び大波 35 年使用品(経過年数長)を用いた。外観を写真Ⅰ.1 に示す。本調査研究の
ために、施工されている状態から除去したものであり、厚さは、ともに約 6 ㎜である。
これらの化学分析値及び石綿量の推定値を表Ⅰ.1 に示す。
なお、結果的に 35 年使用品と 5 年使用品の石綿の推定含有量が同程度であったが 、
品種・メーカー等から異常な値ではないことを確認した。
住宅屋根用化粧スレート 2 年使用品
住宅屋根用化粧スレート 33 年使用品
スレート波板(リブ波)5 年使用品
写真Ⅰ.1
スレート波板(大波)35 年使用品
試料の試験前の外観
6
表Ⅰ.1 各成分の化学分析値及び石綿量の推定値(質量%)
住
住
波
波
02
33
05
35
CaO SiO2 Al2O Fe2O MgO TiO2 K2O
30.04 45.88 3.67 2.05 3.64 0.25 0.29
27.71 44.89 2.76 3.72 8.91 0.18 0.34
39.36 22.26 4.82 2.22 4.57 0.34 0.17
37.52 23.74 4.23 3.28 5.97 0.21 0.26
住 02:住宅屋根用化粧スレート 2 年使用品
住 33:住宅屋根用化粧スレート 33 年使用品
波 05:スレート波板 5 年使用品
波 35:スレート波板 35 年使用品
igloss:加熱による重量減少
P2O5
0.07
0.06
0.08
0.03
MnO
0.09
0.11
0.08
0.06
Na2O
0.14
0.22
0.06
0.18
SO3
1.09
0.55
0.89
1.53
ig.loss 石綿
15.07
8
14.07 20
26.59 10
25.21 14
(3)実験試料の番号
実験試料が多く、条件が複雑なため、表Ⅰ.2 及び表Ⅰ.3 に示す実験番号で表示した 。
表Ⅰ.2
850℃熱処理品の実験番号
試料の種類
品 種
経過年数
住宅屋根用
2年
化粧スレート
33 年
スレート波板
表Ⅰ.3
5年
35 年
15 分
住 02F-15
住 33F-15
波 05F-15
波 35F-15
熱処理時間
30 分
住 02F-30
住 33F-30
波 05F-30
波 35F-30
1時間
住 02F-60
住 33F-60
波 05F-60
波 35F-60
1400℃熱処理品の実験番号
試料の種類
廃材添加率
品 種
経過年数 熱処理時間
10%
30%
50%
住宅屋根用
2年
15 分
住 02-10
住 02-30
−
化粧スレート
33 年
15 分
住 33-10
住 33-30
−
5
年
15
分
波
0510
−
波
0550
スレート波板
35 年
15 分
波 35-10
−
波 35-50
* 住宅屋根化粧スレート 33 年で上記以外の条件は以下のとおりである。
1400℃-30 分の熱処理品:住 1400-30
1450℃-15 分の熱処理品:住 1450-15
* 第Ⅱ章では、一部を除いてn=3 で実験を行っており、上記の最後に枝番をつけた。
例:住 02-10-01
1.2 実験方法
(1)850℃熱処理
表Ⅰ.1 に示した 4 種類の試料をダイヤモンドブレードソー( 三和ダイ ヤ工販㈱製 、
G-キンバレーカッター 200φx1.5t)で約 20mm 角に切断し、容積 30ml の磁性坩堝(最大内径:
約 40 ㎜、高さ:約 30 ㎜、蓋なし)の側壁に立てかけて置いた。この坩堝を 850℃に調
整した電気炉(ネムス㈱製、B-3N-1Z10-17、炉内寸法:200x200x750 ㎜、発熱体:二珪
化モリブデン)に3個入れ、温度が 850℃に回復してからの時間を保持時間とした。
保持時間は、15 分,30 分及び 1 時間とした。所定の時間保持した後、電気炉から取り
出し、デシケータ中で室温まで冷却した後、ビニール袋に入れて密閉した。
7
この加熱処理生成物について、一般的なX線回折(㈱島津製作所 XD-610)により分
析した。X線回折の条件は、対陰極 Cu、管電圧 40kv、管電流 30mA、走査速度2°/min、
時定数1sec、発散スリット1°、散乱スリット1°、受光スリット 0.3 ㎜とした。
(2)1400℃熱処理(セメント原料としての利用)
1)実験内容
○石綿含有建築廃材の焼成前原料系に占める添加率は下記 2 水準
①廃材添加率の上限値は、普通ポルトランドセメントJIS規格(JIS R 5210)の
酸化マグネシウム 5%以下をクリアーできる添加量を想定して、住宅屋根用化粧ス
レートは 30%とし、スレート波板は添加量を 50%とした。
②一方、添加率の下限値はセメント化が可能になり、石綿含有窯業系建築廃材の全
てが既存のセメント工場に持ち込まれる場合を想定して、最大廃材添加率を次の
ように算定した。日本のセメント生産量を 6,000 万トン/年とすると、必要な原材料
は約 1.4 倍の 8,400 万トン/年である。一方、(社)日本石綿協会が推定している石綿
含有窯業系建築廃材量は、最大 170 万トン/年であり、これはセメント原材料の約
2%に相当する。石綿含有窯業系建築廃材の地区の生産・販売の偏りを最大 5 倍と
すると、セメント一工場あたりの石綿含有窯業系建築廃材の添加率は 10%以下と
推定される。
○焼成温度は基本的には1水準
一般的に、普通ポルトランドセメントの生成には 1400℃以上が必要であるので、熱
処理(焼成)温度は 1400℃とした。また、熱処理時間については、普通ポルトラン
ドセメントの生産においては、1400℃以上の雰囲気が 15 分以上あること及び予備
実験により 15 分でもセメント焼成管理の一つの目安であるフリーライム量(未反
応カルシウム量、f.CaO)が 1%以下となったことから 15 分とした。なお、参考と
して温度が高い 1450℃15 分、1400℃で時間の長い 30 分の実験も行った。以上を表
Ⅰ.4 にまとめる。
表Ⅰ.4
実験水準及び記号
住宅屋根用化粧スレート廃材
2 年経過品
スレート波板廃材
33 年経過品
5 年経過品
35 年経過品
廃材添加率 10% 廃材添加率 10% 廃材添加率 10%
廃材添加率 10%
「住-02-10」
「波-33-10」
「住-33-10」
「波-05-10」
廃材添加率 30% 廃材添加率 30% 廃材添加率 50%
廃材添加率 50%
「住-02-30」
「波-33-50」
*1:「
「住-33-30」
「波-05-50」
」内はサンプル番号を示す
*2:追加サンプルとして 1400℃30 分熱処理及び 1450℃15 分熱処理を実施した
8
2)実験手順
<粉砕、配合>
①入手 した 住宅 屋 根用 化粧 ス レー ト及 びス レ ート 波板 の廃 材を 粗 粉砕 機( 参 照写真
Ⅰ.2)で 20 ㎜以下に粉砕する。
②つづいて再度同じ粉砕機(Restsch 社製小型ジョークラッシャー
型番BBS)に
2回目の投入をして、4 ㎜以下に粉砕する(参照写真Ⅰ.3)。
③粉砕した住宅屋根用化粧スレート廃材、スレート波板廃材の蛍光X線分析により組
成把握を行う。また同時に廃材中の酸化マグネシウム量から石綿(クリソタイル)
含有率の推定を行う。なお、蛍光X線分析は事前に(社)セメント協会の蛍光X線分析
用標準試料を用いて検量線を策定したガラスビード法でおこなった(三重県科学技
術振興センター工業部の前川主任研究員にご指導頂いた)。
④また、事前に、添加する原料系(助剤)の炭酸カルシウム、アルミ、鉄、軟珪石(伊
豆特粉)を蛍光X線分析にて組成分析を行い、組成の把握を行う。
⑤上記廃材組成値、原料(助剤)組成値を基に普通ポルトランドセメント配合のため
の計算を行う(参照表Ⅰ.5)。使用した普通ポルトランドセメントのC/S、水硬率、
珪酸率、鉄率は文献を参考にして平均的なものを用いた。
⑥表3の配合表に基づき、成分調整をしてディスクボールミル(参照写真Ⅰ.4)にて
粉砕、混合を同時に行う。粉砕は市販の普通ポルトランドセメントの焼成前粒度と
同じく 90μm 以下になるまで、ふるいで確認しながら行う(参照写真Ⅰ.5)。
⑦石綿等の繊維類もあるため、均一な固溶反応が起こるように粉砕混合した後に 10%
の水道水を加え、造粒機(参照写真Ⅰ.6)にてまるめてペレット化処理をおこない、
直径が 4∼8mm 程度の球状物を得る(参照写真Ⅰ.7)。
<焼成>
⑧上記ペレットをアルミナルツボに約 30g 程度入れる(アルミナルツボの容量は 50ml)
⑨焼成をする前に余分な水分(直接焼成炉へ入れると爆裂する場合があるため)を飛
ばすためにバッチ式電気炉にて 105℃で 2 時間乾燥する。
⑩乾燥後、バッチ式高温焼成電気炉(参照写真Ⅰ.8) 炉の内寸及び奥行きは、200×
250×250mm)に、アルミナルツボ1個を 1000℃∼1100℃で投入して 1400℃になって
から 15 分間キープ後、ヒーターを OFF にし、1300℃度に下がった時点で取り出し、
室内にて急冷放置する。
<分析>
⑪焼成後アルミナルツボに接していたクリンカ(ペレットの焼成物)は除外した。処
理分科会にて焼成後のクリンカ(参照写真Ⅰ.9、粉砕した物がセメント)の蛍光X
線分析により生成物の組成の把握を行った(参照表Ⅰ.6)。同時に、一般的な粉末
X線回折(スペクトリス社製 PW3050)で石綿特有のピークがないか(参照図Ⅰ.6、
図Ⅰ.8)、また熱分析(マックサイエンス㈱社製 TG-DTA200S)を行い残存クリソタ
イル特有の結晶水の離脱がないか(参照図Ⅰ.9∼Ⅰ.10)を確認した。
⑫分析 分科 会に お いて 焼成 後 のク リン カ中 の 石綿 有無 につ いて 詳 細な 分析 を 行った
(結果は第Ⅱ章参照)。
9
<実験装置>
<試
写真Ⅰ.2:粗粉砕機:小型ジョークラッシャー
(メーカー:Retsch 社
型番:BB2)
砕品
写真Ⅰ.5:混合微粉砕品(配合済み)
型番:T-100)
▽
写真Ⅰ.6:パン型造粒機
(メーカー:アズワン社製
写真Ⅰ.3:住宅屋根用化粧スレート粗粉
▽
写真Ⅰ.4:混合微粉砕機:振動ディスクミル
(メーカー:川崎重工社
料>
写真Ⅰ.7:造粒品
型PZ−01)
▽
写真Ⅰ.8:マッフル焼成炉(バッチ式)
(メーカー:中外プロックス社
写真Ⅰ.9:焼成品(セメント化)
HT12/17)
10
3)配合計算
普通ポルトランドセメントの標準的な成分比率であるC/S=3.21、水硬率=2.16、
珪酸率=2.60、鉄率=1.65 になるように配合を計算した配合内容及び成分について表
Ⅰ.5 に記した。
なお、セメント成分の表示における、CはCaO,SはSiO 2 ,AはAl 2 O 3 ,
FはFe 2 O 3 の略である。
表Ⅰ.5
住宅屋根用化粧スレート
廃材の種類
廃材添加率
サンプル番号
配合計算
2 年経過品
10%
30%
スレート波板
33 年経過品
10%
30%
5 年経過品
10%
50%
35 年経過品
10%
50%
住
住
住
住
波
波
波
波
02-10
02-30
33-10
33-30
05-10
05-50
35-10
35-50
1400-30
1450-15
廃材
10.00
32.42
10.05
32.76
10.06
50.04
10.01
50.02
炭酸カ ルシ ウム
74.57
63.67
74.61
63.69
72.38
44.28
72.65
45.54
アルミナ
3.01
2.37
3.08
2.61
2.84
1.04
2.90
1.31
酸化鉄
1.98
1.54
1.80
0.94
1.95
1.04
1.84
0.46
軟珪石
10.44
12.78
3.60
12.61
2.68
CaO
67.41
66.37
66.90
64.73
67.34
65.17
67.14
64.28
成分
SiO2
22.51
22.06
22.35
21.58
22.48
21.64
22.41
21.22
計算値
Al2O3
5.39
5.29
5.35
5.17
5.38
5.18
5.36
5.08
(%)
Fe2O3
3.27
3.20
3.24
3.13
3.26
3.14
3.25
3.08
MgO
1.05
2.16
1.86
4.68
1.19
3.66
1.40
4.66
C/S
3.21
3.22
3.21
3.21
3.21
3.23
3.21
3.25
2.16
2.16
2.16
2.16
2.16
2.16
2.16
2.16
2.60
2.60
2.60
2.60
2.60
2.60
2.60
2.60
1.65
1.65
1.65
1.65
1.65
1.65
1.65
1.65
配合
水硬率
成分比
(モル比)
C/(S+A+F)
珪酸率
S/(A+F)
鉄率
A/F
10.46
1.3 熱処理生成物
(1)850℃熱処理
850℃熱処理後の状況を写真Ⅰ.10 に、X線回折結果を図Ⅰ.1∼Ⅰ.4 に示す。850℃
-15 分∼1 時間の加熱では、住宅用化粧スレート、スレート波板ともクリソタイルの第
1強線である 12.1°付近にピークはなく、クリソタイルは認められなかった。
11
住 02F-15
住 02F-30
住 02F-60
住 33F-15
住 33F-30
住 33F-60
波 05F-15
波 05F-30
波 05F-60
波 35F-15
波 35F-30
波 35F-60
写真Ⅰ.10
850℃熱処理品の外観
12
熱処理
15 分
熱処理
30 分
熱処理
1 時間
図Ⅰ.1
住宅屋根用化粧スレート2年経過品の 850℃熱処後のX線回折結果
13
熱処理
15 分
熱処理
30 分
熱処理
1 時間
図Ⅰ.2
住宅屋根用化粧スレート 33 年経過品の 850℃熱処後のX線回折結果
14
熱処理
15 分
熱処理
30 分
熱処理
1 時間
図Ⅰ.3
スレート波板5年経過品の 850℃熱処後のX線回折結果
15
熱処理
15 分
熱処理
30 分
熱処理
1 時間
図Ⅰ.4
スレート波板 35 年経過品の 850℃熱処後のX線回折結果
16
(2)1400℃熱処理(セメント原料としての利用)
1)蛍光X線分析結果
焼成後のクリンカの蛍光X線分析を行い、組成を把握した。表 1.6 に組成を示す。
表Ⅰ.6
住宅屋根用化粧スレート
廃材の種類
廃材添加率
サンプル番号
成分実
測値
(%)
焼成後のクリンカ組成
2 年経過品
10%
30%
スレート波板
35 年経過品
10%
30%
5 年経過品
10%
50%
35 年経過品
10%
50%
住
住
住
住
波
波
波
波
02-10
02-30
33-10
33-30
05-10
05-50
35-10
35-50
CaO
67.54
63.66
67.94
65.54
68.32
66.64
68.12
65.38
SiO2
23.73
21.61
23.02
22.53
23.25
21.27
23.22
21.22
Al2O3
5.35
5.21
5.37
5.56
5.26
5.88
5.32
5.83
Fe2O3
3.33
3.12
3.33
3.29
3.27
3.16
3.27
3.28
MgO
0.74
1.70
1.66
4.36
1.05
3.51
1.04
4.74
f.CaO
0.2
2.6
0.9
4.0
3.04
3.15
3.16
3.11
3.14
3.35
3.14
3.30
2.08
2.13
2.14
2.09
2.15
2.20
2.14
2.16
珪酸率
2.73
2.59
2.65
2.55
2.72
2.35
2.70
2.33
A/F:鉄率
1.61
1.67
1.61
1.69
1.61
1.86
1.63
1.78
C/S
(モル比)
C/(S+A+F)
成分比
水硬率
S/(A+F)
普通ポルトランドセメントの標準的な成分比率であるC/S=3.21、水硬率=2.16、
珪酸率=2.60、鉄率=1.65 と比較して、ややバラツキがあるもののほぼ狙い通りのセメ
ントクリンカが得られた。
f.CaO( フリーライム:未反応酸化カルシウム)量の測定はセメント協会推奨のエチ
レングリコール法で行い、その結果も追記した。住宅屋根用化粧スレート廃材におい
て、廃材添加率が高い場合、f.CaO 量が多くなる傾向を示した。これは住宅屋根用化
粧スレートに多く含まれる石英(結晶性シリカ成分)がセメント(カルシウムと反応)
への反応がおこりにくいため、カルシウムの消費が少なかったためと考えられる。通
常、セメントの焼成ではシリカ成分を補う際には反応しやすい軟珪砂が使われること
が多く、f.CaO 量は 1%以下に抑えられている。f.CaO 量から考えると廃材添加率は 10%
以下に抑えられるべきである。
また、MgOに着目すると、計算どおりJIS規格値の 5%を超えるものはないが、
廃材中のクリソタイル含有量に比例して焼成後のクリンカ中のMgOも多くなってい
る。
17
2)X線回折結果
焼成後のクリンカ(生成物)のX線回折(XRD)のパターンを図Ⅰ.5
∼Ⅰ.8 に示す。
XRD測定条件(共通)
target:Cu
voltage:40(kV)
current:30(mA)
Divergence slit:1(deg)
Receiving slit:0.2(mm)
scan mode:continuous
scan speed:2(deg/min)
sampling pitch:0.02(deg)
preset time:0.5(sec)
○ C3S(エーライト)
● β-C2S(ビーライト)
セメント成分
▲ C3A(アルミネート相)
△ C4AF(フェライト相)
■ f.MgO(フリーマグネシア)
□ f.CaO(フリーライム)
<焼成後XRD>
住-33-10
化粧スレート瓦
経過年数35年品
廃材添加率10%
□
住-33-30
化粧スレート瓦
経過年数35年品
廃材添加率30%
□
■
住-02-10
化粧スレート瓦
経過年数2年品
廃材添加率10%
□
●○▲
▲△
●○△
●
●○
●○
●○
20
●○
住-02-30
化粧スレート瓦
経過年数2年品
廃材添加率30%
□ ○
●
30
■
40
50
2θangle(°)
図Ⅰ.5 住宅屋根用化粧スレートの 1400℃熱処理後のX線回折結果
住宅屋根用化粧スレートについて図Ⅰ.5 に示す。蛍光X線分析の結果と同じく、廃材添加
率の高いものは結晶性シリカ成分が多いため、反応率が悪く未反応のカルシウム成分が残
る。焼成前にクリソタイル量の多いものは焼成後酸化マグネシウムの量が多くなる。上記
処理サンプル全てにC 3 SやC 2 S等のセメント成分が生成されていることがわかる。
18
クリソタイル
2θ(°)
12.10
I(%)
100
C4AF
12.20
45
<焼成後XRD拡大>
XRD測定条件(共通)
target:Cu
voltage:40(kV)
current:30(mA)
Divergence slit:1(deg)
Receiving slit:0.2(mm)
scan mode:continuous
scan speed:2(deg/min)
sampling pitch:0.02(deg)
preset time:0.5(sec)
住-33-10
化粧スレート瓦
経過年数35年品
廃材添加率10%
住-33-30
化粧スレート瓦
経過年数35年品
廃材添加率30%
住-02-10
化粧スレート瓦
経過年数2年品
廃材添加率10%
住-02-30
化粧スレート瓦
経過年数2年品
廃材添加率30%
10
11
12
13
14
15
2θangle(°)
図Ⅰ.6 住宅屋根用化粧スレートの 1400℃熱処理後のX線回折結果(クリソ
タイル第1強線付近)
一方、処理後のクリソタイルの有無についてX線回折で確認したものが図Ⅰ.6 であ
り、クリソタイルの第1強線である 12.1 ゚付近にはピークは認められず、X線回折結
果からはクリソタイルが無くなっていることが確認できた。
19
XRD測定条件(共通)
target:Cu
voltage:40(kV)
current:30(mA)
Divergence slit:1(deg)
Receiving slit:0.2(mm)
scan mode:continuous
scan speed:2(deg/min)
sampling pitch:0.02(deg)
preset time:0.5(sec)
○ C3S(エーライト)
● β-C2S(ビーライト)
セメント成分
▲ C3A(アルミネート相)
△ C4AF(フェライト相)
■ f.MgO(フリーマグネシア)
□ f.CaO(フリーライム)
<焼成後XRD>
波-35-10
スレート波板
経過年数35年品
廃材添加率10%
波-35-50
スレート波板
経過年数35年品
廃材添加率50%
■
波-05-10
スレート波板
経過年数5年品
廃材添加率10%
●○▲
●○
●○
●○
●○△
20
●○
波-05-50
スレート波板
経過年数5年品
廃材添加率50%
▲
△
○
●
30
■
40
50
2θangle(°)
図Ⅰ.7 スレート波の 1400℃熱処理後のX線回折結果
スレート波板の結果を図Ⅰ.7 に示す。スレート波板の成分はセメントに近く、シリカ分は
非晶質であるためカルシウムとの反応もスムーズに進み、f.CaO は住宅用化粧スレートに
比較すると少ない。
焼成前にクリソタイル量の多いものは焼成後酸化マグネシウムの量が多くなり、かついず
れの場合もC 3 SやC 2 S等のセメント成分が生成されており、住宅屋根用化粧スレートと
同様の結果が得られた。
20
クリソタイル
2θ(°)
12.10
I(%)
100
C4AF
12.20
45
<焼成後XRD拡大>
XRD測定条件(共通)
target:Cu
voltage:40(kV)
current:30(mA)
Divergence slit:1(deg)
Receiving slit:0.2(mm)
scan mode:continuous
scan speed:2(deg/min)
sampling pitch:0.02(deg)
preset time:0.5(sec)
波-35-10
スレート波板
経過年数35年品
廃材添加率10%
波-35-50
スレート波板
経過年数35年品
廃材添加率50%
波-05-10
スレート波板
経過年数5年品
廃材添加率10%
波-05-50
スレート波板
経過年数5年品
廃材添加率50%
10
11
12
13
14
15
2θangle(°)
図Ⅰ.8 スレート波板の 1400℃熱処理後のX線回折結果(クリソタイル第1
強線付近)
スレート波板のクリソタイルの有無についてのX線回折結果が図Ⅰ.8 であり、住宅屋根
用化粧スレートと同様、クリソタイルの第1強線である 12.1 ゚付近にはピークは認められ
なかった。
21
3)熱分析結果
図Ⅰ.9∼Ⅰ.10 に熱分析の結果を示す。400℃付近に吸熱反応を伴う質量減少が認めら
れるが、クリソタイルが熱分解により脱水する 600∼800℃では質量減少は非常に少ない。
従って、熱分析によってもクリソタイルは、明確には認められなかった。
A-1-1
住 0210-1
A-1-1
住 02-10-1
100
4
DTA (uV/mg)
TG (%)
99.8
99.6
99.4
99.2
3
2
1
0
99
0
200
400
600
800
Temperature (℃)
0
1000
200
A-2-1
800
1000
800
1000
800
1000
4
DTA (uV/mg)
99.8
TG (%)
1000
住 02-30-1
100
99.6
99.4
99.2
99
3
2
1
0
0
200
400
600
800
Temperature (℃)
1000
0
200
B-1-1
400
600
Temperature (℃)
B-1-1
住 33-10-1
住 33-10-1
100
4
DTA (uV/mg)
99.8
TG (%)
800
A-2-1
住 02-30-1
99.6
99.4
99.2
99
3
2
1
0
0
200
400
600
800
Temperature (℃)
1000
0
200
400
600
Temperature (℃)
B-2-1
B-2-1
住 33-30-1
住 33-30-1
100
4
99.8
3
DTA (uV/mg)
TG (%)
400
600
Temperature (℃)
99.6
99.4
99.2
2
1
0
99
0
200
400
600
Temperature (℃)
800
0
1000
200
400
600
Temperature (℃)
図Ⅰ.9 1400℃熱処理品(住宅屋根用化粧スレート)の熱分析結果
22
波 C-1-1
05-10-1
C-1-1
波 05-10-1
4
100
DTA (uV/mg)
TG (%)
99.8
99.6
99.4
99.2
3
2
1
0
99
0
200
400
600
Temperature (℃)
800
0
1000
200
800
1000
800
1000
800
1000
4
DTA (uV/mg)
99.8
TG (%)
1000
波 05-50-1
100
99.6
99.4
99.2
3
2
1
0
99
0
200
400
600
Temperature (℃)
800
0
1000
200
400
600
Temperature (℃)
D-1-1
D-1-1
波 3510-1
波 35-10-1
100
4
DTA (uV/mg)
99.8
TG (%)
800
C-2-1
C-2-1
波 0550-1
99.6
99.4
99.2
99
3
2
1
0
0
200
400
600
Temperature (℃)
800
1000
0
D-2-1
波 3550-1
200
400
600
Temperature (℃)
D-2-1
波 3550-1
100
5
99.8
4
DTA (uV/mg)
TG (%)
400
600
Temperature (℃)
99.6
99.4
3
2
1
99.2
0
99
0
200
400
600
Temperature (℃)
800
0
1000
200
400
600
Temperature (℃)
図Ⅰ.10 1400℃熱処理品(スレート波板)の熱分析結果
23
1.4 熱処理品の原料としての可能性評価
(1)850℃熱処理
X線回折により、850℃熱処理後に石綿が認められないことから、セメント2次製品
のフィラーとして使用できる可能性がある。
また、組成的にセメント原料として使用することが可能である。
(2)1400℃熱処理(セメント原料としての利用)
図Ⅰ.11 に示すように、普通ポルトランドセメント(宇部三菱社製)と今回作成し
たセメントサンプル(住宅屋根用化粧スレート経過年数 33 年、廃材添加率 10%、1400℃
15 分焼成品)と比較した。
若干フリーライムは多いものの、セメント成分が生成されており、セメントとして
の使用の可能性は高いものと判断した。
○ C3S(エーライト)
● β-C2S(ビーライト)
セメント成分
▲ C3 A(アルミネート相)
△ C4 AF(フェライト相)
■ f.MgO(フリーマグネシア)
□ f.CaO(フリーライム)
●○△
●○▲
●○△
□
○
●
●○△
▲△
●○▲
●○
●○
●○
●○
20
○
●
●○
●○
●○
▲△
普通ポルトランドセメント
製品
●○▲
●○
●○
●○
▲△
●○
住-33-10
化粧スレート瓦
経過年数35年品
廃材添加率10%
●○
波-35-10
スレート波板
経過年数35年品
廃材添加率10%
XRD測定条件(共通)
target:Cu
voltage:40(kV)
current:30(mA)
Divergence slit:1(deg)
Receiving slit:0.2(mm)
scan mode:continuous
scan speed:2(deg/min)
sampling pitch:0.02(deg)
preset time:0.5(sec)
○
30
40
50
2θangle(°)
図Ⅰ.11 1400 熱処理品と普通ポルトランドセメントのX線回折による比較
24
2.非石綿化技術に関する文献調査
石綿含有物の非石綿化、石綿の無害化に関する過去の技術の調査を、特許を中心に行っ
た。国内特許・実用新案については PATOLIS を使用し、外国特許・文献については委員の
情報を元にまとめた。また、国内の文献については、(社)日本石綿協会で定期的に行ってい
る文献調査結果を元にした。
2.1 国内特許
(1)検索式
下記の検索式によった。
(石綿+クリソタイル+アスベスト)*(B09B3/00
注)
+非石綿?+無害化)
注)B09B3/00:個体廃棄物の破壊あるいは個体廃棄物の有用物化もしくは無害化
(2)ヒット数
特
許:244 件
実用新案: 12 件
(3)該当特許および実用新案
ヒットした特許および実用新案の内容を確認し、本目的に合致するものとして、27 件
(すべて特許)を抽出した(表Ⅰ.7 参照)。これらの特許の抄録を参考として添付する。
2.2 国内文献
(社)日本石綿協会では、石綿に係わる文献を継続的に調査しており、その内容を検討し
た。その結果、本目的に合致する文献は 4 件であった(表Ⅰ.8 参照)。これらは、いず
れも特許出願がされており、抄録は省略した。
2.3 外国特許・文献
外国特許・文献として、9 件を調査した(表Ⅰ.9 参照)。本目的に合致するものは特
許 1 件だった。この抄録を参考として添付する。
2.4 特許・文献調査まとめ
国内外の特許・文献調査の結果、石綿含有製品を熱処理することにより、石綿を石綿
以外のものに分解し、無害化させる技術が多く紹介されていた。処理温度は、まちまち
で、他の成分を添加することにより分解温度を低下させるものが多く見られた。また、
薬剤処理、溶融等の技術も見られた。
再利用方法についても、セメントをはじめとする水硬性材料への利用の他、充填材、
骨材、陶磁器、セラミック製品、 路盤材、 透水 ブロック、肥 料等への 利用が見ら れた 。
国内の文献では、医学的内容および石綿代替化に関する文献が大半を占めており、非
石綿化技術に関するものは非常に少なく、各社とも特許出願に主眼をおいていると思わ
れる。
外国特許・文献では、溶融や薬品処理に関するものが多く見られた。
日本国内に於ける非石綿化、リサイクルに関する研究は、諸外国と比べ先行している
ように思われる。
25
26
再利用方法
特願平05- 71787(1993/03/30)
8 特開平06-279091(1994/10/04)
特許第3230887号(2001/09/14)
陶板及びその製造方法
石綿セメント製品をバインダ−及び非可塑性原料と組
み合わせて平板形状に成形し、施釉して所定の温度で 茨城県
焼成することにより石綿を無害化処理すると共に高品質 アスク
の大判陶板並びに小形薄物及び厚物陶板を得る。
溶融した後、急冷、
30%以下配合す
粉砕
る無機質板
1500℃以上で溶融
平板形状に成形、
施釉
陶板
1100∼1250℃焼成
○
△
ー
○
△
ー
ー
○
審査
状況
注)審査状況欄の記号 ○:登録 △:審査中 ×:拒絶、権利消滅 −:出願中
石綿セメント製品
バインダ−及び
非可塑性原料
無機質材の廃材
スラリ−の堆積
物、スラツジ等も
利用
無機質材の廃材を特定温度以上の高温で溶融したのち
無機質板用材料の製造方 急冷して、粉砕することにより、強度及び耐久性を損ね
法及びその配合材料を用い ることなく、より多量に再利用することができる配合材料 松下電工
た無機質版
を得る。原料スラリ−の堆積物、スラツジ等も利用でき
る。
特願2001-120605 (2001/04/19)
7
特開2002-316848 (2002/10/31)
充填材として利用
400∼1200℃で焼
成
石綿を含む被処理物質に、Si、Caおよび/またはAlを
Si、Caおよび/
石綿の処理方法およびその
エ−アンドエ
含む物質を、一定の条件を満たすように添加し混合し、
またはAlを含む
生成物
−マテリアル
得られた混合物を400∼1200℃で加熱処理する。
物質
特願2001-294550(2001/09/26)
特開2003- 94006(2003/04/02)
6
成形または造粒後
タイル、骨材等の
乾燥
建築材料
750∼1100℃焼成
例えば炭酸カルシ
ウム等を含む補助
成分を添加して、 水硬性材料
800∼1300℃の温
度で焼成処理
Ca/Siモル比を調
整
β−C2S
600∼1100℃で焼
成
湿式分離法で石綿
繊維強化セメント
を回収し、700℃∼
板
1000℃焼成
600∼1450℃焼成
水硬性粉体組成
X線回折による石
物
綿のピ−クが不在
処理法
廃スレート材粉砕
廃スレート材粉砕粉末に、粘土質原料、フリット、長石、
粉末
廃スレ−ト材利用焼成体の 珪砂を添加、混合したのち、必要とする水を加え、成形 エ−アンドエ
粘土質原料、フ
製造方法
または造粒後乾燥工程を経て焼成工程で焼結反応を行 −マテリアル
リット、長石、珪
う
砂
処理方法
装置
特願平04- 57973(1992/03/16)
5 特開平05-254917(1993/10/05)
特許第3179171号(2001/04/13)
コンクリート系廃
材、例えば住宅
等の建築用コン
クリート系外装材
や瓦等の廃材
粗粉砕処理した石綿スレ−トにカルシウム質粉末及び
石綿スレート
/又はシリカ質粉末を添加してCa/Siモル比が2.0以
石綿スレ−トの非石綿化処 上2.8以下となるように調整して、微粉砕処理した後、
エ−アンドエ カルシウム質粉
理方法
−マテリアル 末及び/又はシ
600℃以上1100℃以下で焼成、β−C2Sを主体を生
リカ質粉末
成。
特願2002-338598(2002/10/18)
3
特開2004-137139(2004/05/13)
コンクリート系廃材、例えば住宅等の建築用コンクリート
特願平2001-401557(2001/12/28)
系外装材や瓦等の廃材を主原料とし、例えば炭酸カル
コンクリート廃材を利用した
三重県,松
4 特開平2003-201156(2003/07/15)
シウム等を含む補助成分を添加して、800∼1300℃の
水硬性材料の製造方法
下電工
請(2003/01/22)
温度で焼成処理し、水硬性材料を得る。アスベスト繊維
を含む場合もある。
石綿強化セメント板を湿式微粉砕し、スラリーとし、湿式
分離法で石綿を分離回収し、これを焼成して無害化し、
エ−アンドエ 石綿強化セメント
原料に再利用する。分離した石綿を殆ど含まない残滓
−マテリアル 板
を原料に再利用した石綿含有量が0∼1重量%以下の
繊維強化セメント板を提供する。
特願平11- 82849(1999/03/26)
2
特開2000-271561(2000/10/03)
対象、配合物
アスベスト含有繊維強化セメント
板の廃棄物からアスベストを
分離する方法、分離したアス
ベストを無害化する方法、アス
ベスト無害化物を再利用した
繊維強化セメント板の製造方
法および繊維強化セメント板
出願人
水硬性粉体組成物
要約
B09B3/00:個体廃棄物の破壊あるいは個体廃棄物の有用物化もしくは無害化
石綿セメント製品の加熱処理品で、X線回折による石綿
のピ−クが不在であるようにして、石綿セメント製品廃 エ−アンドエ
石綿セメント製品
棄物を廃棄処理することなしに石綿を無害化し、更に、 −マテリアル
再利用可能な水硬性粉体組成物を得る。
タイトル
KW:(石綿+クリソタイル+アスベスト)*(B09B3/00+非石綿?+無害化)
特願平04- 96552(1992/04/16)
1 特開平05-293457(1993/11/09)
特許第3198148号(2001/06/08)
番号
表Ⅰ.7 石綿処理関連国内特許
27
出願人
700℃以上で焼成
700℃以上で焼成
700℃∼1500℃で
焼成
700℃以上で焼成
700℃以上で焼成
アスベスト含有建材廃棄物 健康に有害といわれるアスベスト含有建材と下水汚泥
アスベスト含有建
アイジー技術
と下水汚泥焼却灰を用いた 焼却灰とから、アスベストを不在化して再利用したリサイ
材
研究所
透水ブロック
クル率の高い透水ブロックを提供する。
下水汚泥焼却灰
アスベスト含有建材廃棄物 有害なアスベスト含有建材と下水汚泥焼却灰とから、ア
アスベスト含有建
アイジー技術
と下水汚泥焼却灰を用いた スベストを無害化して再利用した透水ブロックを提供す
材
研究所
透水ブロック
る。
下水汚泥焼却灰
アスベストを含有する建材廃棄物と下水汚泥焼却灰等
アスベスト含有建
の無機系廃棄物とを粉砕して混合した後、特定の温度
材廃棄物
アスベスト含有建材廃棄物
アイジー技術
範囲内で反応させて焼結させることにより、有害な建材
下水汚泥焼却灰
の無害化反応焼結体
研究所
廃棄物を有効に再利用し、有害なアスベストを含有しな
等の無機系廃棄
い反応焼結体を得る。
物
アスベストを含む無機系建材を特定温度で反応、焼却さ
アイジー技術 アスベスト含有無
せることにより、アスベストを無害化すると共に建材に含
研究所㈱
機系建材
まれるケイ素を肥料として有効にリサイクルする。
アスベストを含有する無機系建材の廃棄物を特定温度
以上で反応、焼成してアスベストを無害化してなることに アイジー技術 アスベスト含有無
より、健康に有害なアスベストを無害化し、かつ廃棄物 研究所
機系建材
を有効に再利用できるようにする
リサイクル肥料
けい酸質の肥料
セメント叉はけい酸カルシウムとアスベストとから主に構
成したクリソタイル等の無機系建材の廃棄物を溶融した
リサイクル肥料及び土壌改
アイジー技術 無機系建材の廃
後、水に入れて急冷し、固形物をポツトミル等で粉砕す
良材
研究所
棄物
る。廃棄物を有効利用し且つ有害なアスベストを不在化
して、容易にけい酸質肥料を得る。
特願2000-363734 (2000/11/29)
特開2002-167888 (2002/06/11)
特願2000-360210 (2000/11/27)
特開2002-167262 (2002/06/11)
特願2000-178059 (2000/06/14)
15
特願2001-353479 (2001/12/25)
特願2000-335071 (2000/11/01)
特開2002-145684 (2002/05/22)
13
特願2000-266929 (2000/09/04)
17
特開2002-68869 (2002/03/08)
特願2001-243342 (2001/08/10)
18
特開2003-55072 (2003/02/26)
16
14
600℃以上で焼成
アスベスト含有建材廃棄物 アスベスト含有建材廃棄物と下水汚泥焼却灰を溶融バ
アスベスト含有建
アイジー技術
と下水汚泥焼却灰とを用い インダとし、成型バインダ、骨材等を混合し、焼成した多
材廃棄物
研究所
た多孔質セラミック
孔質セラミックを提供する。
下水汚泥焼却灰
特願2000-371389(2000/12/06)
特開2002-173358(2002/06/21)
ー
ー
ー
注)審査状況欄の記号 ○:登録 △:審査中 ×:拒絶、権利消滅 −:出願中
溶融した後、急冷、
粉砕
肥料、土壌改良材 △
1500℃以下程度で
溶融
ケイ素を利用した
ケイ酸質肥料
ケイ素を利用した
ケイ酸質肥料
アスベストを含ま
ない反応焼結材
ー
ー
下水汚泥焼却灰
と骨材と成形バイン
ダからなる透水ブ
ロック
骨材と溶融バインダ
と成形バインダを用
いた透水ブロック
ー
×
△
×
審査
状況
透水ブロック
高い強度で耐候
1100∼1350℃で焼 性に優れることか
成
らレンガ・タイル、
建材や舗装材等
12
陶磁器質焼結体
で、発泡体製品。
1000∼1200℃で焼
水処理剤や建築
成
土木用セラミック
製品
SiO2、CaO、MgO
を配合し、低融化
材、粘土等の可
塑材を混合
アスベスト含有物に、SiO2、CaO、MgO、特定の低融化
オオタケセラ
剤及び可とう材を配合し、成形後加熱することにより、透 ム
輝石を主とした結晶を生成。
再利用方法
造粒
人工軽量骨材
1100∼1170℃焼成
処理法
セラミックス焼結体
処理方法
装置
特願平05-151054 (1993/05/27)
特開平06-340470 (1994/12/13)
特許第2124063号 (1996/03/27)
本権利消滅日(1999/03/27)
石綿セメント製品
粘土質原料、非
可塑性原料
対象、配合物
11
石綿セメント製品を粘土質原料及び/または非可塑性
原料と組み合わせて造粒し、所定の温度範囲で焼成し 茨城県
て石綿を無害化処理すると同時に高品質の人工軽量骨 アスク
材を得る
要約
環境に対する有害物として規制されている石綿を含む
石綿重量比40%
石綿原料焼結体とその製造 産業廃棄物を無害化することを可能とし、さらに、その アドセラミック
以上を含む産業
方法
産業廃棄物から価値ある工業製品である焼結体を製造 ス研究所
廃棄物
することも可能とする。
人工軽量骨材の製造方法
タイトル
特願平07-265893 (1995/10/13)
10 特開平09-110514 (1997/04/28)
請(2002/09/27)
拒絶査定(2002/12/24)
9 特開平06-279143(1994/10/04)
特願平05- 70486(1993/03/29)
番号
28
出願人
27
△
ケイ酸質肥料とし
てだけでなく、混
合石灰肥料として
可溶性苦土も保
証できる
ロータリー
1450℃以上で溶融
キルン
アスベストの溶融処理法
アスベストの溶融処理法
湿潤粘稠材用混
和材
ー
○
○
注)審査状況欄の記号 ○:登録 △:審査中 ×:拒絶、権利消滅 −:出願中
900∼1050℃の温
度で焼成した後粒
度調整
炭素系可
水処理汚泥の脱
燃物質の 低コスト溶融
水ケ−キと混合
高温炉床
アスベストに水処理汚泥の脱水ケ−キを混合して成形
処理し,炭素系可燃物質で形成した高温炉床に供給し
大阪瓦斯
て加熱溶融することにより,アスベストの溶融処理経費
を大幅に節減し,二次公害を防止する方法。
石綿又は石綿含
有蛇紋岩
水処理汚泥を塩
基度調整剤兼バ
高温炉床 融点を降下
インダーとして混
合
天然アスベストに対しSiO2よりもCaOの含有量が多い水
処理汚泥を塩基度調整剤兼バインダーとして混合し成
形処理したものを高温炉床にて加熱溶融することによ 大阪瓦斯
り、混合物の塩基度を下げ,融点を降下させ、安全かつ
低コストに溶融処理する。
○
△
×
×
×
審査
状況
再利用方法
酸化雰囲気中で温
窯業製品への再
度800℃以上で焼
利用
成
700℃以上で焼成
処理法
アスベスト廃棄物を主材料としてCaF2源を加え、CaF2の
路盤充填材、コン
アスベスト廃棄物の溶融処 特定割合で溶解物を溶解、凝固させてガラス質とするこ 日鉄溶接工 アスベスト廃棄物 電気抵抗 溶融及び出湯処理 クリート用バラス
理方法
CaF2源
加熱炉
を容易化
ト、人造大理石用
とにより、アスベスト廃棄物の前処理を簡略化し、溶解 業
種石
及び出湯処理を容易にする。
ロータリーキルン内で、石綿廃材をセメント原料と共に
セメント製造方法及びその
小野田セメン 石綿廃材
処理することにより、石綿廃材を無害化して有効利用す
装置
ト
セメント原料
る。
廃アスベスト材に所定の組成となるように少なくとも酸
廃アスベスト材の処理法及
神奈川県
化アルミニウムを混合し、1220℃以上の温度で焼成す
び廃アスベスト材を用いた
柴田ハリオ
る廃アスベスト材の処理法と、それを用いた窯業製品の
窯業製品の製造方法
硝子
製造方法。
処理方法
装置
アーク加
熱叉は熱
低コスト溶融
プラズマに
よる溶融
組成をMgO・
αCaO・5SiO2・
廃アスベスト材
5/3Al2O3に近似調 窯業製品
酸化アルミニウム
整
1220℃以上で焼成
廃アスベスト材
アルミニウム精練
時の副生精練灰
廃棄物とアルミニウムドロスを混合、攪拌した被処理物
をアーク加熱や熱プラズマにて溶融し、冷却固化させる 大紀アルミニ 廃棄物とアルミニ
ことにより、少ない電気エネルギーで廃棄物を溶融可能 ウム工業
ウムドロス
とし、経済性、実用性を高める。
石綿又は石綿含有蛇紋岩 石綿又は石綿含有蛇紋岩を900∼1050℃の温度で焼成
特願平2003-176719(2003/06/20)
を原料とする湿潤粘稠材用 した後粒度調整を行って得たことを特徴とする湿潤粘稠 ノザワ
特開平2004-75526(2004/03/11)
混和材
材用混和材。
特許第3085958号(2000/07/07)
26 特開平03- 30885(1991/02/08)
特願平01-164338(1989/06/27)
特願平01-197302 (1989/07/28)
25 特開平03-60789 (1991/03/15)
特許第3085959号 (2000/07/07)
特許第3120308号 (2000/10/20)
24 特開平06-170352 (1994/06/21)
特願平04-328290 (1992/12/08)
請(2002/02/05)
23 特開平09-86982 (1997/03/31)
特願平07-250257 (1995/09/28)
拒絶査定(1996/08/20)
22 特開平05-138147 (1993/06/01)
特願平03-296067 (1991/11/12)
未審査請求(2001/11/20)
21 特開平08-84969 (1996/04/02)
特願平06-222106 (1994/09/16)
拒絶査定(1997/09/09)
廃棄物の処理方法
廃アスベスト材を粗砕または粗断したものに、アルミニ
廃アスベスト材の処理法お
神奈川県
ウム精練時の副生精練灰を添加して所定組成の混合
よび廃アスベスト材を用い
柴田ハリオ
物を調製した後、この混合物を酸化雰囲気中で焼成す
た窯業製品の製造方法
硝子
ることにより、窯業製品への再利用を可能にする。
20 特開平06-134438(1994/05/17)
特願平04-291551(1992/10/29)
対象、配合物
健康に有害といわれるアスベストを含む無機系建材廃
アイジー技術 石綿含有無機系
棄物のアスベストを不在化すると共に、リサイクルした
研究所
建材廃棄物
肥料を提供する。
要約
リサイクル肥料
タイトル
特願2002-55438 (2002/03/01)
19
特開2003-252695 (2003/09/10)
番号
29
著者
所属
前川明弘他
三重県、松下電工
吹挙昌宏他
三重県、松下電工、東工大
小島昭他
群馬高専
前島貴幸
エーアンドエーマテリアル
表題
建築廃材から作製した水硬性材料の実
用化に関する研究
セメント系建材のリサイクルに関する研
究
フロン分解物によるアスベスト無害化技
術の開発
クリソタイルを含む繊維補強セメント板か
らの高活性β−C2Sの合成
1
2
3
4
表Ⅰ.8 石綿処理関連国内文献
アスベストは1000℃でもその繊維質形態を保持した。しかし,フロン分解物を添加することにより,アスベストは600℃付近で分解無害化
された。
CT 石綿;熱分解;フロン;無害化;有害物質;分解物;炭酸カルシウム;ふっ化カルシウム;温度依存性;添加物効果;融剤;フラツクス
石綿スレ−トの非石綿化処理方法では、石綿スレ−トを粗粉砕処理し、粗粉砕処理した石綿スレ−トにカルシウム質粉末及び/又はシ
リカ質粉末を添加してCa/Siモル比が2.0以上2.8以下となるように調整し、次いで微粉砕処理した後、600℃以上1100℃以下で焼成す
ることにより、β−C2Sを主成分とするセメントを生成させる。
日本化学会講演予稿集
Vol.84 No.1 P325
2004.03.11
無機マテリアル学会学術講演会要旨集
Vol.107 P20-21
2003.11.06
石綿セメント製品;建築材料;リサイクル;石綿;焼成;無害化;けい酸カルシウム
パルプ含有建築廃材とアスベスト含有建築廃材それぞれに補充成分を添加し電気炉でβ−C2Sが生成する最適条件で水硬性材料を
作製。水硬性材料の主要鉱物は,β−2CaO ・ Si02とした。さらに,中規模キルンを用いた実用化の可能性の検討した結果、1)電気炉と
同様な水硬性材料が製造可能、2)作製した水硬性材料はセメントとしての使用は困難であるが、住宅用外装材など工程に高温高圧処
理を行う製品への利用は可能、等の知見を得た。
廃物利用;廃材;パルプ;水硬性;酸化カルシウム;二酸化けい素;建築材料;リサイクル;焼成;電
三重県科学技術振興センター
工業研究部研究報告
No.28 P28-33
2004.10.04
セメント技術大会講演要旨
Vol.58 P292-293
2004.04.20
Abstract
出展
30
抄録
Bukta, Attila(Hungary)
1200-1600℃で石綿を含んでいる有害廃棄
Glass-best KFT.
物をガラスの原料として再利用するプロセス
WO 02/30584 石綿を含有する有害廃棄物のリサ Recycling of Asbestos-Containing
2002/04/18 イクル
Hazardous Wastes
9
United States
C. M. Jantzen (USA)
Depertment of Energy
Lalancette, Jean M. (Canada)
Dunnigan, Jacqu es (Canada)
Lalancette, Jean-Marc (Canada)
Cossette, Marcehl (Canada)
Delvaux, Pierre (Canada)
Habashi, Fathi (Canada)
Page, Michel (Canada)
Awadalla, Farouk (Canada)
5-重量パーセント水酸化ナトリウム、熱い、
5-重量パーセント硝酸中で繊維を溶融する
方法
Society National De
L'amiante
Universite Laval
Dunnigan, Jacques (Canada)
Lalancette, Jean-Marc (Canada)
US 5,686,365 シリカの多い繊維の分解及び安定 Method for Dissolution and Stabilization
1997/11/11 化の方法
of Silica-Rich Fibers
8
石綿ファイバーを燐塩化物で反応させる
染料により0.2∼6%でキレート環を作る
水溶性のアルカリ金属硼酸塩あるいはアル Society National De
カリ金属ケイ酸塩を添加し、加熱。
L'amiante
Society National De
L'amiante
Phosphated asbestos fibers
US 4,356,057
リン酸化された石綿繊維
1982/10/26
7
ARI Technologies, Inc.
発明者
石綿含有廃棄物に水溶性のアルカリ金属硼
Oyen Wiggs Green &
酸塩あるいはアルカリ金属ケイ酸塩を加え、
EK, Roger B. (United States)
Mutala
加熱する。
石綿およびPCBを熱分解する。
The Catholic
University of America
出展、出願人
燐酸基の重量による0.5∼5%
Process for phosphating asbestos fibers
US 4,495,223
石綿繊維のリン酸処理の方法
1985/01/22
AsbestosFibers Modified with Organic
Dyes
CA 1319470
有機染料で染めた石綿繊維
1993/06/29
5
6
Phosphated Asbestos Fibers
CA 1169230
リン酸処理された石綿繊維
1984/06/19
4
Asbestos and PCB destruction with
thermochemical conversion
Mineralogical Conversion of Asbestos
Waste
石綿とPCBの熱化学的破壊
科学者たちは、繊維をガラス化する Scientists Make Asbestos Harmless by
古い建物中の石綿をDuraMelt炉で溶融し、
ことにより石綿を無害化
Turning Fibers Into Glass - August 1994 安全なガラスとしてリサイクルする。
CA 2063386
廃棄石綿の鉱物学的変性
1999/10/12
−
1994/08
表題
3
2
1
特許番号
登録日
表Ⅰ.9 石綿処理関連外国特許・文献
3.まとめ
住宅屋根用化粧スレートとスレート波板において、施工されている中から 30 年程度経
過し たも のと 最 近の もの を 選定 し、 これ ら の廃 材を 850℃で 15 分∼1 時 間の 熱処 理と
1400℃で 15 分間の熱処理を行い、廃材に含有されている石綿の非石綿化について検討を加
えた。なお、1400℃での熱処理は、セメント原料としての利用の可能性を検討したもので
あり、廃材の原料中での添加率は、住宅屋根用化粧スレートでは 10%と 30%、スレート波
板では 10%と 50%とし、それぞれ炭酸カルシウム、アルミナ、酸化鉄およびケイ石により
成分を普通ポルトランドセメントとほぼ等しくなるよう調整した。参考として熱処理
1400℃30 分と 1450℃15 分とした実験も行なった。また、石綿の熱処理に関する特許調査
も合わせて実施した。
本調査研究の範囲で得られた結論は、以下のようである。 いずれの熱処理においても、
X線回折ではクリソタイルのピークは検出されず、一般的なX線回折結果からは非石綿化
が可能と判断された。従って、850℃熱処理においては、フィラーあるいはセメント原料と
しての利用の可能性が示唆された。また、1400℃の熱処理においては、成分調整により普
通ポルトラ ンドセ メントと 同等の 鉱物組成 であ るC 3 S,C 2 S,C 3 A,C 4 AF を含む焼
成物が確認された。なお、廃材混和率が 30%及び 50%と高い場合には、f.CaOのピー
クも大きくなっており、MgOも微量ではあるが生成していた。実用上は、これらの点に
ついての検討もさらに必要であるが、石綿を含む窯業系建築廃材を用いて、成分を調整す
ることにより、普通ポルトランドセメントの製造の可能性が示唆された。熱処理品を実際
にフィラーやポルトランドセメントとして評価することが、今後の課題である。
以上のように、熱処理により石綿の非石綿化と石綿を含む窯業系建築廃材のリサイクル
の可能性が示唆されたが、ぎ酸処理後のX線回折や顕微鏡を用いた分析結果(第Ⅱ章参照)、
安全性評価(第Ⅲ章参照)を踏まえた検討、クローズドシステムとするなどのプロセス研
究が今後進められることが望まれる。
31