18 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 Otolaryngology-Head and Neck Surgery ● 教室(診療科) の特色 ● 当科では、耳鼻咽喉科領域の疾患に対して幅広く対応し、しかも高度な医療を提供できるよう努力しています。外科手術は、耳科、鼻科、頭頸部 腫瘍手術を中心に年間約1,000件を手がけています。さらに内科的なアレルギー性鼻炎、めまい、難聴などについても専門的な診断・治療を行っ ています。具体的には、耳疾患(中耳炎、難聴、耳鳴など)、神経疾患(難聴、めまい、顔面神経麻痺など)、鼻疾患(副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、嗅覚障 害など)、口腔・咽頭疾患(扁桃炎、いびきなど)、喉頭疾患(声帯ポリープ、反回神経麻痺など)、頭頸部腫瘍疾患(口腔・咽頭・喉頭癌、甲状腺腫瘍、唾 液腺腫瘍、 頸部リンパ節腫脹など) を対象としています。 河田 了(かわた りょう)教授(科長) ■専門分野 頭頸部癌の診断と治療、耳下腺腫瘍の診断と治療 ■職歴 昭和59年3月 大阪医科大学卒業 昭和59年5月 京都府立医科大学附属病院研修医 平成 元年3月 京都府立医科大学大学院修了(医学博士) 平成05年9月 米国UCLA留学 平成08年7月 京都府立医科大学耳鼻咽喉科講師 平成09年7月 京都第一赤十字病院耳鼻咽喉科副部長 平成11年9月 大阪医科大学耳鼻咽喉科講師 平成12年7月 大阪医科大学耳鼻咽喉科助教授 平成22年2月 大阪医科大学耳鼻咽喉科教授 ■専門医資格 日本耳鼻咽喉科学会専門医/日本気管食道科学会専門医/日本がん治療認定医機構暫定教育医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医/日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医 ■研究課題 頭頸部癌の転移活性、耳下腺癌の悪性度 ● 教室(診療科) の概要・特徴● ❶当科では他科に先駆けてFAX予約を導入するなど、従来から病診あるいは病病連携に力を入れています。紹介患者様に対して特に迅速に 対応できるよう、さらにはできる限り情報提供ができるように努力しています。また、診断・治療後の症例では積極的に逆紹介を行ってい ます。 ❷より高度な医療を提供するために、専門外来制をとっています。初診の患者様はまず新患担当医が診察を行い、そのあと各専門外来に回 っていただくシステムです。具体的には専門外来で入院の治療方針を決定し、入院中の手術を始めとした治療は専門外来の責任者が指導 医になります。 さらに退院後も必要な限り専門外来でフォローしています。 ❸より安全で確実な医療を実現するため、何重ものチェックがはたらくシステムを構築しています。すなわち、専門外来での方針決定、入院 前検討会、入院時診察、 術後症例検討会、教授および准教授回診をすべての入院症例に対して実施しています。 ❹多くの関連病院を有しており、教室と関連病院が密に連携することによって、 より充実した研修ができるようにしています。 ❺研究では、基礎教室、他大学、研究機関とも連携をとり、活発に行っています。具体的テーマとしては、頭頸部腫瘍の転移活性の研究、鼻・副 鼻腔炎の免疫・アレルギーに関する研究、 内耳の電気生理学的研究などが主なものです。 ● 教室(診療科) 指導医・上級医● 専門医 氏名 (職 掌) 萩森伸一(准教授) 日本耳鼻咽喉科学会 専門医 寺田哲也(講 師) 他助教5名 日本耳鼻咽喉科学会 専門医、日本アレルギー学会指導医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 専門分野 耳科学・聴覚医学 鼻科学・免疫アレルギー学 18 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 ■連 絡 先 : 大阪医科大学耳鼻咽喉科学教室 TEL:072-683-1221/e-mail:[email protected] ■ホームページ : http://www.osaka-med.ac.jp/deps/oto2/ 初期臨床研修プログラムの特徴 耳鼻咽喉科疾患に対する知識と検査、および診療手技を身につけることを目的としてプログラムを作成しています。研修医一人一人の希 望にマッチできるように、将来、耳鼻咽喉科医としてスペシャリスト(専門医)を目指す研修医にも、ジェネラリストとして他科を目指す研修 医にも、プライマリ・ケアを始めとした様々な基本診療能力をより効率的、実践的に身に付けられるよう指導しています。初期臨床研修期間 中、最大で11ヶ月まで選択が可能で、 後期研修(レジデント) プログラム開始時から直ちに耳鼻咽喉科診療業務に当たることができます。 研修内容と到達目標 研修病院群 一般目標 大阪府済生会中津病院 外来診療では、耳鼻咽喉科医として耳鼻咽喉科領域の一般的な疾 洛和会音羽病院 患の診断・治療ができることを目標とする。病棟診療では耳鼻咽喉 市立枚方市民病院 科・頭頸部領域の一般的疾患について一通り経験できるようにす 大阪府済生会吹田病院 る。研修終了後、耳鼻咽喉科を専門家として選択する場合は、終了後 の専門研修を鑑み、 連続性のあるプログラムとする。 評価方法 目標の到達度に従って、指導医、責任者、主治医チームの責任者か 行動目標 ら評価を受ける。評価内容は診療スキル、医師間・患者・コメディカ ❶病歴を聴取し、 カルテ作成をする。 ❷額帯鏡やファイバースコープを用いた診察を習得してもらい耳 内所見、 鼻内所見、 咽喉頭所見がとれるようになる。 ルに対する対応能力、症例検討などの発表、担当した患者リストの 内容等によって評価される。 ❸眼振所見がとれるようになる。 ❹聴力検査や平衡機能検査などの基本的検査の結果が理解できる。 ❺耳鼻咽喉科領域の画像検査の読影ができる。 ❻耳鼻咽喉科基本処置を習得する。 ❼耳鼻咽喉科手術に助手として参加する。 カンファレンス風景 第110回 日本耳鼻咽喉科学会 総会・学術講演会 週間スケジュール 午 前 午 後 月曜日 外来、 手術 手術、 術後回診 火曜日 術後症例検討会、 外来 医長回診、 入院前検討会、医局会 水曜日 外来 専門外来、 病棟 木曜日 科長回診、 手術 手術、 術後回診 金曜日 外来 専門外来、 病棟 土曜日 外来 後期研修 (レジデント) プログラムの特徴 耳鼻咽喉科全般にわたる知識と臨床能力及び技術を習得することを目的とし、耳鼻咽喉科領域のすべての分野(耳科学、鼻科学、口腔咽頭 科学、喉頭科学、頭頸部腫瘍学、平衡神経科学)の診療においても習熟した医師の育成を目的としています。当科では、耳鼻咽喉科全般にわた って多数の手術症例(平成24年 累計944件、頭頸部腫瘍412件、喉頭気管疾患47件、口腔咽頭疾患62件、鼻疾患184件、耳疾患232件)を 有し、 しかも各分野で高い専門知識、 技量を持つ指導医がいるためそれぞれの分野で高度な手術を習得することが可能です。 また知識や技術の向上のためには、論理的思考が必要であり、研究を立案・遂行できる臨床医を育成するために論文作成や学会発表を積極 的に取り組ませています。プログラム終了後に日本耳鼻咽喉科学会認定専門医の資格を得られるように指導していきます。日本耳鼻咽喉科 学会が定める認定専門医となるための期間は、 初期臨床研修終了後、 4年間を必要としています。 研修内容と到達目標 <入局後1∼2年目における研修方法> 一般目標 初期臨床研修での研修内容や到達度、そして本人の希望などを加 味して、一人一人に必要十分な知識・手技が習得できるように配慮 されている。 行動目標 ❶初期研修の内容を継続する。 ❷急性疾患 (急性中耳炎、 急性扁桃炎) 、鼻出血、 突発性難聴、 顔面 神経麻痺、 めまい症などの処置、 管理ができる。 ❸耳鼻咽喉科特有の処置 (鼓膜切開術、 扁桃周囲膿瘍の切開排膿術など) ができる。 ❹頚部エコーを用いた頚部腫瘤の診断、 エコーガイド下針生検が できる。 ❺手術の助手、 術後患者の管理ができる。 ❻悪性腫瘍患者の全身管理ができる。 ❼論文作成、 学会発表を積極的に経験する。 先輩レジデントのコメント 綾仁 悠介 平成23年大阪医科大学卒 「幅広い疾患を診療する、 やりがいのある仕事」 私は大阪医大で卒後臨床研修を行った 後、レジデントとして大阪医大耳鼻咽喉 科・頭頸部外科に入局しました。耳鼻科に 興味を持ったきっかけは、学生時代に頭頸 部手術をみて、圧倒されたことでした。そこから耳鼻科の取り扱う 分野の幅広さに魅力を感じ、入局にいたリました。入局した現在も、 日々新しい刺激をうけ、様々な知識を身につけることが必要と思 い、 勉強をしている状態です。 耳鼻咽喉科・頭頸部外科、そして当教室の特徴を紹介したいと思 います。 ●耳鼻咽喉科・頭頸部外科の特徴 耳鼻科の診察室にはユニットがあり、様々な器具が並んでいてそ れを、一つ一つ使用できないといけません。じっと検査値を見て考 えをめぐらせたりするよりも、実際に手や体を動かし、患者さんに 触れての診察が多いです。患者さんの異常がすぐにわかり、その場 で処置をすることもしばしばあります。 患者層や扱う疾患は非常に幅広いです。患者さんは赤ちゃんから お年寄りまで、女性も男性もすべてが対象となります。疾患は風邪 から癌まで、内科系も外科系も診ることができます。内科領域は難 聴、顔面神経麻痺、めまい、アレルギー疾患、感染症など多彩です。一 方、外科領域も多岐にわたります。耳鼻科の手術は微細な部分を扱 う場合が多いので、繊細で丁寧な所が特徴です。顕微鏡下での中耳 手術、喉頭手術、内視鏡下での副鼻腔手術、再建術を伴う頭頸部手術 など、マイクロサージェリーからダイナミックな手術まで、外来小 手術から長時間手術まで、 こちらも多彩です。 耳鼻科疾患は診断、治療までをすべて自分の科で行い、自分の科 で完結する患者さんと接する機会が多く、信頼関係を築きやすい環 境の中で医療を行えることも大変魅力的です。 ●当教室の特徴 入院診療は班に分かれていて、指導医に相談しやすい体制になっ ています。手術も件数・種類ともに豊富にあるので、手術が好きな人 にはお勧めです。 研究発表、 論文執筆の手助けも厚いです。 医局の雰囲気としては、親切で面倒見がよい先生が多く、人数も 少なめな事もあってかとてもアットホームな感じです。女性医師が 多い事も特徴です。性別・出身大学関係なく和気藹藹としているの で、どんな方でも垣根を感じることなく働けると思います。また 日々の時間はメリハリがついており、趣味、家族サービスなど自分 の時間の使い方ができます。 耳鼻科は卒後研修の必修診療科ではないので関わる機会が少な く、学生さん・研修医の皆さんにとっては実際にどんな事をしてい るのか掴みにくいかと思います。耳鼻科を専攻したいと考えている 方はもちろん大阪医科大学での研修を勧めますし、専攻する予定の ない方でも耳鼻科はcommon diseaseを扱う機会が多く、内科領 域や小児科領域と重複する疾患も存在し、今後の診療の参考になろ うかと思います。ぜひ見学、研修にいらしてください。お待ちしてお ります。 主たる関連病院 大阪府済生会中津病院/洛和会音羽病院/市立枚方市民病院/大 阪府済生会吹田病院/北摂総合病院/大阪府済生会茨木病院/京 都民医連中央病院/協立病院/第一東和会病院/医療センターひ かり診療所/藍野病院/富田町病院/高槻病院/みどりヶ丘病院 /守口敬任会病院/洛西ニュータウン病院/長吉総合病院/星田 南病院/多根総合病院/大阪暁明館病院 参加学会等 日本耳鼻咽喉科学会/日本耳科学会/日本聴覚医学会/日本めま い平衡医学会/日本鼻科学会/日本気管食道科学会/日本頭頸部 外科学会/日本頭頸部癌学会/日本音声言語医学会/耳鼻咽喉科 臨床学会/日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会/日本口腔咽頭科 学会/日本喉頭科学会/日本嚥下医学会/日本甲状腺外科学会/ 日本癌治療学会/日本アレルギー学会 取得できる認定医、 専門医 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、 日本気管食道科学会専門医 日本がん治療認定医、 日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医 日本アレルギー学会専門医 18 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 大学院における教育・研究活動 したキメラ蛋白(Cat Allergyの主要抗原であるFel d1 とヒト 教育・研究指導方針 基礎研究は原則として、本学基礎医学教室、他大学、研究所等と連 携をとりながら研究を行っている。臨床科としての発想に基づい て、その方法論を基礎研究者から直接学び、臨床に還元できる基礎 研究を目標としている。また基礎研究活動のなかで、論理的思考を 培うことは、 必ずや臨床に役立つものと考えている。 IgGのFc部位を結合させたキメラ蛋白:gamma-Fel d1)を用い、 アナフィラキシー反応を誘起しない免疫療法の可能性を検討して きた。 Fel d1特異的IgE抗体を用いて感作したマスト細胞にFel d1抗 原を加えるとFceRIレセプターを介してシグナル伝達が誘起され 脱顆粒反応が起こる。それに反して、キメラ蛋白を加えると、Fel d1抗原部分がマスト細胞上のFel d1特異的IgE抗体に結合すると 現在の研究テーマとその概要ならびに展望 同時にIgGのFc部位がFcgRIIbレセプターに結合し、シグナル伝達 ❶河田 了、東野 正明、西角 章 /頭頸部癌に関する研究 ラ蛋白中には抗原蛋白が含まれているにも関わらずマスト細胞の 以前から、アラキドン酸代謝のkey enzymeであるシクロキシ 脱顆粒を誘起しないことを種々の実験により確かめた。 ゲナーゼ(COX)が癌の増殖、転移に関わっていることが言われて このキメラ蛋白は、高容量投与してもアナフィラキシー反応を誘 いる。そこで頭頸部癌におけるアラキドン酸代謝について、生化学 起しない新しい安全な抗原特異的免疫療法として期待しうる。 の抑制が起こり脱顆粒反応は生じないと考えられる。つまり、キメ 的、免疫組織学的さらに分子生物学的アプローチを用いて、特に転 移との関連に注目している。ヒト癌組織を用いた研究では、アラキ ドン酸代謝産物もなかで、COXおよびPGE2に着目し、COX-2と PGE合成酵素が癌の増殖転移に関わっていることを見い出した。 しかもCOX-2とPGE合成酵素は発現する部位が類似しており、 COX-2、PGE合成酵素、PGE2は一つの系として連関しているこ とが示唆された。将来的にCOX-2、PGE合成酵素阻害剤が癌の化 学予防としての可能性が期待できる。 ❸萩森 伸一、乾 崇樹、櫟原 崇宏、森 禎章 /内耳電気生理学的研究 蝸牛内リンパ腔は+80 mV程度の蝸牛内直流電位(EP)を有し ている。この電位の正の部分は血管条で発生していると報告されて おり、これが有毛細胞での受容器電位の発生に重要な役割を果たし ていると考えられているが、その発生メカニズムには不明な点が多 く残されている。EPは無呼吸負荷および高濃度のfurosemideの 全身投与により急激に低下し、同時に内リンパ腔のCa2+濃度が上 昇することが知られている。我々はEPとCa2+の関係に注目し、電 ❷寺田 哲也、鈴木 学、櫟原 新平、鈴木 倫雄 /免疫アレルギー研究 気生理学的および免疫組織化学的手法を用いて、EPの発生および 基礎実験から臨床試験を経て人間に役立つ治療法に繋がる病態 維持のメカニズムについての検討を行ってきた。その結果、無呼吸 解析を目標としている。ヒトのアレルギー性鼻炎を治療する際の疑 負荷時やfurosemide投与によるEP低下には、L型Ca2+チャネル 問点、問題点を解決するためには何が必要かを考え、そのヒントと やTRPCチャネルといった、種々のCa2+透過性チャネルの開孔に なりうる研究を心がけている。 よる辺縁細胞内Ca2+濃度上昇が関与していると考えられた。今後 高親和性IgEレセプターであるFceRIと低親和性のIgGレセプタ これらの知見をさらに発展させることで、感音難聴の治療に貢献で ーであるFcgRIIbを共結合することにより、肥満細胞や好塩基球の きる可能性があるものと考える。 脱顆粒反応が抑制されることが知られている。遺伝子工学的に作製 懇親会 集合写真
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