2014. 11 2004. http://www.akchem.com -海外化学業界および技術動向に関する情報- 〈11 月度の注目テーマ〉 10 月にドイツでプラスチック加工見本市 FAKUMA 2014 が開催され、約 1,700 社が出展しま した。その中から、エンプラに関連する注目すべき製品や技術などを取り上げます。 1:プラスチック加工見本市 FAKUMA 2014 でみられたエンプラ製品や加工技術 展示では、自動車部品用の高耐熱性樹脂、LED 照明用部材、非ハロゲン難燃樹脂などが注目さ れました。出展企業と主な展示製品は以下の通りです。 [Bayer MaterialScience 社(独) ] ・自動車用 LED 照明部材(レンズ、拡散板、導光エレメント、反射板、熱伝導性ハウジング など) 、材料は主に PC 樹脂 ・自動車内装部品の装飾技術(DirectCoating/DirectSkinning (DC/DS) technology) :PC 樹脂 のような硬質樹脂の射出成形と、その表面へソフトな感触のポリウレタン層形成(反応射出成 形)を 1 工程で行う技術で、層の厚さは DC が 0.1~1mm、DS は 1~4mm [DSM 社(蘭)] ・耐熱性 250℃の PA 樹脂(PA46 樹脂 Stanyl®と PA6 樹脂 Akulon®)、用途はエアインテー クマニホルド、ダクト、チャージエアクーラーなど ・Stanyl® PA46 樹脂の熱伝導グレード、用途は LED ダウンライトの放熱材 ・熱可塑性樹脂(PA 樹脂)のコンポジットで作られた自動車用圧縮天然ガス燃料タンク [デユポン社(米) ] ・再生可能資源由来の長鎖 PA 樹脂 Zytel®で作られた硬質の加圧空気用配管システム ・Zytel® PA612 樹脂と GF 強化 Zytel® PA66 樹脂で作られた自動車クーラントパイプ ・耐熱性非ハロゲン難燃 PA66 樹脂 Zytel® FR95G25V0NH、用途は電子部品 ・耐熱性非ハロゲン難燃 PET 樹脂 Rynite®、用途は電子部品 [Teknor Apex 社(米)] ・リサイクルされた PA 樹脂を含むコンパウンド Recyclon® 400(PA6)と同 500(PA66)の 各シリーズ、特長はコストと性能のバランス [GRAFE Advanced Polymers 社(独) ] ・明るい色も可能な ABS などの着色導電性コンパウンド 本件についてのお問い合わせは、(株)旭リサーチセンターhttp://www.asahi-kasei.co.jp/arc/までお願い申し上げます。 1 http://www.akchem.com 2014. 11 2004. [Bieglo 社(独) ] ・熱硬化性ポリイミド樹脂 Meldin® 7000、連続使用可能温度 300℃以上、用途は航空機や自 動車の部品、射出成形機のホットランナーノズルなど ・POM、ABS、PA 各樹脂の耐熱コンパウンド [Bada 社(独)] ・Badamid® PPA(ポリフタルアミド) 、特長は低吸水率、連続使用可能温度 150℃以上、寸 法安定性など、用途は金属代替 ・部分芳香族の PA 樹脂 Badamit® T70 GF60 HH、荷重撓み温度 270℃ ・PA66 樹脂 Badamid® A70 GF60HDT、荷重撓み温度 250℃ 【中国・ASEAN・インド・南米など新興経済国関係】 2:ドイツの自動車部品メーカーBenecke-Kaliko 社、中国で第 2 工場建設 ドイツの自動車部品メーカーBenecke-Kaliko 社は、中国の江蘇省常州市に、同社として中国 で 2 番目の工場の建設を予定しています。計画では、投資額 4,000 万ユーロ、従業員数 250 人、 生産開始は 2015 年末で、VOC 排出が少ない非アレルギー性シート材料などを生産の予定です。 3:香港のプラスチック技術セミナーで、IKV と Engel 社が自動車軽量化技術などを講演 9 月に香港プラスチックメーカー協会の後援で開催されたプラスチック技術セミナーで、アー ヘン工科大学プラスチック加工研究所(IKV)(独)と成形機の Engel 社(オーストリア)が、 自動車軽量化に関連する下記の射出成形技術などについて講演しました。 ・射出成形と金属ダイキャスティングの組合せで、1 工程でハイブリッド材料部品を成形 ・金型内での金属溶射法:アーク放電で溶かした金属を圧縮空気で金型内の所定の場所に吹き 付けたのち樹脂を射出、部分的に金属層をもつ成形品が得られる ・厚肉光学レンズの成形:3 回の射出による多層射出成形で全体の冷却時間を短縮 ・カプロラクタムの「in situ 重合」による PA6 樹脂の成形 4:中国の乳幼児用食品容器に関する安全基準、業界が自主的に制定の意向 中国では乳幼児用食品容器に関する安全基準はありませんが、中国玩具と子供用製品協会 (CTJPA)は、業界が先行して自主基準を作成すると発表しました。業界の大手企業は既に独自の 安全基準を持ち、それを満たすために材料の PP 樹脂などは国産ではなく輸入品を使用している といわれています。業界自主基準の内容は 2015 年春に発表される予定です。 本件についてのお問い合わせは、(株)旭リサーチセンターhttp://www.asahi-kasei.co.jp/arc/までお願い申し上げます。 2 http://www.akchem.com 2014. 11 2004. 5:Bayer MaterialScience 社、中国での PC 樹脂生産量累計 100 万トンを達成 Bayer MaterialScience(BMS)社(独)が中国で生産した PC 樹脂が 100 万トンに達し、そ の祝賀会が上海で開かれました。同社の製法は、溶媒を使用せずに多段階の連続縮合重合を行う 溶融ポリカーボネートプロセスで、他の製造技術と比べてエネルギー消費が 20%少なく、水使用 量が 60%少ないといわれています。 6:Gerresheimer 社、中国にプラスチック医療用具の開発センターを開設 医療用具の Gerresheimer 社(独)は、中国の広東省東莞市にプラスチック医療用具の開発セ ンターを開設しました。同社は 2006 年から同地で工場を操業し、吸入器やインシュリンペンな どのドラッグデリバリーシステムを生産しています。開発センター開設の狙いは、中国で顧客と 密接に協力して製品開発をするためとしています。 7:自動車部品の SRG 社、中国の湖北省に射出成形、メッキなどの新工場を建設 自動車部品メーカーSRG 社(米)は、中国の自動車生産拠点の 1 つといわれる湖北省に、同社 として中国で 2 番目の工場を建設しており、射出成形、メッキ、塗装などの設備を設置する予定 です。同工場は 2016 年初めに運転開始の予定で、約 350 人を雇用し、近隣には中国の自動車メ ーカー東風汽車公司があります。 8:中国の地下鉄車両内装に PC 樹脂シートを採用 鉄道車両などを製造する中国南鉄道車両社は、江蘇省蘇州市の新しい地下鉄 1 号線の車両内装 に Bayer 社(独)の PC 樹脂シートを採用しました。採用の理由は軽量でかつ強靭であり、乗客 の安全確保、運行時の燃費向上、排出ガス削減に有効なことなどとなっています。 9:台湾のプラスチック加工機械の輸出、今年夏以降回復、要因は iPhone 6 発売など 台湾のプラスチック・ゴム機械産業の輸出額は、今年上半期は前年同期比 2%減の 5 億 9,960 米万ドルでしたが、8 月まで(8 か月間)の実績は前年同期比 2.3%増の 8 億 3,130 万米ドルでし た。今年は最終的に前年比 5%以上の成長が期待されています。好転の要因として iPhone 6 関連 の受注増加や、サムスンからの受注増加などが挙げられています。同国は独、伊、日に次いで 4 番目のプラスチック・ゴム機械の輸出国で、製品の約 80%を輸出しています。 10:インドの射出成形機市場に回復の兆し、海外メーカーが増強投資を発表 インドの射出成形機市場は、2013 年から 2014 年初めにかけて停滞していましたが、2014 年 2 本件についてのお問い合わせは、(株)旭リサーチセンターhttp://www.asahi-kasei.co.jp/arc/までお願い申し上げます。 3 http://www.akchem.com 2014. 11 2004. 月後半から回復の兆しが見え、海外の大手加工機メーカーはインドでの拡大投資を発表していま す。Milacron 社(米)は 3,000 万ドルの増強投資を、Haitian 社(中)は射出成形機 Zhafir の 組立生産計画を、また東芝機械(株)は生産能力増強をそれぞれ発表しています。 11:BASF 社、インドのグジャラート州にポリウレタン生産設備を開設 BASF 社(独)はインドのグジャラート州 Dahej に、熱可塑性ポリウレタン、極小セル発泡ポ リウレタンなどを生産する設備を開設しました。投資額は 1 億 9,000 万ドル、従業員は 200 人、 製品の用途は家電、履物、自動車、建築、家具などです。 【欧米・中東関係】 12:厚さ 25mm のレンズを 3 回のオーバーモールドで成形、実質的サイクル時間は 6 秒 射出成形機メーカーArburg 社(独)は、自社主催イベントで、2 つの射出ユニットをもつ電動 成形機を用いて、肉厚 25mm のレンズを 3 段階のオーバーモールドで成形する方法を公開しまし た。レンズ材料は PC 樹脂で、金型は 8 ステーションの回転式金型が用いられました。同社によ ればこのような厚肉レンズの成形時間は、通常の 1 回の射出成形法では 10 分、従来の多層成形 法では 180 秒ですが、今回の方法ではすべての成形工程が同時に進行するので、実質的に 6 秒サ イクルになるとしています。 13:世界のエンプラ市場、2013 年は 535 億ドル、今後 8%/年で成長 市場調査の Markets and Markets 社(米)がエンプラ市場に関するレポートを発表しました。 エンプラ(ABS、PA、PC、POM、PPE など)の世界市場は 2013 年 535 億ドルで、今後年率 8%で成長し、2018 年には約 790 億ドルに達すると推定しています。2013 年の地域別シェアは 中国が約 31%を占め、今後アジア・太平洋地域を中心に市場が成長すると予測しています。 14:コンポジットの学会と展示会 JEC Europe 2014 で表彰された製品や技術 今年 3 月にパリでコンポジットの学会と展示会 JEC Europe 2014 が開催され、革新的な技術 や製品が表彰されました。その一部を下記に紹介します。 ・自動車部門:ポルシェ 918 のアンダーボディ部品、CF 強化コンポジットで空力性能向上 ・鉄道部門:ホッパー車両(粒状貨物ばら積み用)のコンポジット化、金属製より重量が 35-40% 減、積載容積 20%増。ロシア企業とオランダ企業の共同開発で 1,500 台を生産予定 ・航空機部門:ジェットエンジンのファン・ブレード間のギャップを覆うアニュラスフィラー、 本件についてのお問い合わせは、(株)旭リサーチセンターhttp://www.asahi-kasei.co.jp/arc/までお願い申し上げます。 4 http://www.akchem.com 2014. 11 2004. コンポジット採用による軽量化で燃費が向上し排出ガスを削減 ・航空機客室内装部門:熱可塑性樹脂とチタンのコンポジットからなるエコノミークラス用 3 列 シート、1 座席あたりの重量が 4kg 減り、燃料消費量を 1 年に 30 万~50 万ドル削減 15:ポルシェ車の LED ブレーキライトに PMMA 樹脂の厚肉部品を採用 ポルシェ社(独)のコンパクト SUV「Macan」の LED ブレーキライトに、PMMA 樹脂の厚 肉部品「light-strip」 (光帯状体)が採用されました。この光学系モジュールは Hella 社(独)が 開発し、PMMA の厚肉部品は 2 段階の射出成形で作られました。 16:SABIC 社、航空機内装用に 2 種類の PC 樹脂シートを上市 SABIC 社(サウジアラビア)は、航空機内装用に 2 種類の PC 樹脂シート、LexanTM XHR2000 と LexanTM Light F6L300 を上市しました。共に燃焼時の発熱、炎、煤煙濃度、毒性などに関す る規格に対応し、XHR2000 は光透過率 80%で、仕切りパネル、窓、計器ディスプレイなどに用 いられ、Light F6L300 はシートフレーム用で、従来の PVC/PMMA ブレンドシートに比べて重 量を 40%削減でき、190 座席の航空機で重量を約 121.6kg 削減できるとされています。 17:生体適応性抗菌剤を用いた ABS や PA66 などのコンパウンド 抗菌性プラスチックの Parx Plastics 社(蘭)は、生体適応性抗菌剤を用いたコンパウンド SanipolymersTM を上市しています。同社は、抗菌剤の成分を有毒な化学物質や重金属ではなく、 食品や人体に存在する微量元素といっています。SanipolymersTM には、SANI-ABSTM(ABS)、 SANI-CARBONATETM(PC) 、SANI-ILONTM(PA66)などがあります。 18:ABS 樹脂と PA 樹脂などの相溶化材、Polyscope 社が上市 Polyscope 社(蘭)は、高分子量のスチレン・無水マレイン酸共重合体からなる相溶化材 XERAN® を上市しました。XERAN®は PC と ABS(あるいは ASA) 、PA と ABS、PBT と ABS (あるいは ASA)の各樹脂の組合せで相溶化材として働き、ブレンド樹脂の耐衝撃性改善に有効 とされています。 19:DSM 社、米ジョージア州で PA6 樹脂のフィルムグレード生産 DSM 社(蘭)は、以前計画を発表した米国での PA 樹脂製造設備建設の場所を、ジョージア州 オーガスタと発表しました。その設備では、食品軟包装材用などの PA6 樹脂 Akulon®のフィル ム用高粘度グレードが製造される予定で、2016 年半ばの稼働とされています。同社は、同国イン 本件についてのお問い合わせは、(株)旭リサーチセンターhttp://www.asahi-kasei.co.jp/arc/までお願い申し上げます。 5 http://www.akchem.com 2014. 11 2004. ディアナ州で PA 樹脂などのエンプラのコンパウンドを生産しています。 20:Ineos 社、アクリロニトリル・メチルアクリレート共重合樹脂の製造プラントを閉鎖 Ineos 社(スイス)は、アクリロニトリル・メチルアクリレート共重合樹脂事業(製品名 Barex®) のプラント閉鎖を発表しました。同樹脂のフィルムはバリア性を有し、主な用途はソーセージ用 包装資材などでした。同社は同樹脂の世界最大のメーカーで、2013 年 5 月に三井化学(株)の 同樹脂事業を買収しています。Ineos 社の同事業に関わる従業員は 50 人といわれています。 21:織物強化コンポジットの製造において低粘度の原料を使用、繊維への含浸を改善 自動車部品などの金属代替材料として注目されている織物強化樹脂コンポジットの製造におい て、課題の 1 つは高粘度の溶融樹脂を繊維に含浸させるのが難しいこととされています。BMW 社(独)とフォルクスワーゲン(VW)社(独)は、PA6 樹脂の原料であるカプロラクタムなど の低粘度の液体原料を使って、この課題の克服を試みています。VW 社はこの方法で B ピラーを 試作したといわれています。 22:Shuman Plastics 社、新しいパージ用コンパウンドを上市 Shuman Plastics 社(米)は新しいパージ用コンパウンド Dyna-Purge® D2 を上市しました。 D2 は各種の成形やコンパウンディングの設備に使用でき、研摩系や化学系のパージ材より効果 的で、より速く洗浄できるので設備の停止時間が少ないといわれています。 23: IHS 社、2019 年までの汎用エンプラの世界市場成長率予測を発表 調査やコンサルタントの IHS 社(米)は、10 月にシカゴで開催されたプラスチックサミット において、汎用エンプラ(PA6、PA66、PC、ABS)の世界市場成長予測を発表しました。各樹 脂の今後 5 年間の成長率は 3.4~5.4%です。多くの樹脂において中国や中東で新規設備投資の動 きがあり、設備過剰が続くとしています。米国では ABS の輸入が増加する見込みです。 24:新車特有の臭気対策として、ヘッドライナーに TiO2 コーティング Johnson Controls 社(JCI) (米)は、新車特有の臭気の成分である揮発性有機化合物(VOC) を減らすために、二酸化チタン(TiO2)を分散させた溶液をヘッドライナー(天井内張り)にス プレーしてコーティングする方法を検討しました。TiO2 の触媒作用による VOC の減少速度は、 相対湿度の影響を受け、湿度 27%で最大になるとの結果を得ています。このプロジェクトは JCI の中で継続中とされていますが、JCI は今年初めにヘッドライナー事業を売却しました。 本件についてのお問い合わせは、(株)旭リサーチセンターhttp://www.asahi-kasei.co.jp/arc/までお願い申し上げます。 6 http://www.akchem.com 2014. 11 2004. 25: Invista 社の透明 PA 樹脂、狙いは PC 樹脂や高価な透明 PA 樹脂の代替 Invista 社(米)は、透明 PA 樹脂の上市に向けて試験生産を行っています。同樹脂は耐薬品 性や耐油性が優れており、高価ではないので、PC 樹脂や高価な透明 PA 樹脂の一部の用途を代替 できるといわれています。 *詳しい内容については、各情報源を参照ください。 <情報源> 1:Kunststoffe international, 9 月号 p.51-52 European Plastics News, 10 月号 p.32-33 Plastic Technology, 10 月号 p.84 2、3:Plastics News.com/China, 10 月 10 日 4、5:Plastics News.com/China, 10 月 21 日 6、7:Plastics News.com/China, 10 月 24 日 8:European Plastics News, 10 月号 p.34 9:Plastics News.com/China, 10 月 17 日 10、11:Plastics News.com/China, 10 月 10 日 12:Kunststoffe international, 9 月号 p.51-52 13:European Plastics News, 10 月号 p.15 14:European Plastics News, 10 月号 p.32-33 15:European Plastics News, 10 月号 p.34 International Plastics News for Asia, 10 月号 p.45-47 16:European Plastics News, 10 月号 p.35 17、18:European Plastics News, 10 月号 p.40 19、20:European Plastics News, 10 月 30 日 ネット情報 20:HIS Chemical Week, 11 月 3 日 p.4 21:Plastic Technology, 10 月号 p.12-14 22:Plastic Technology, 10 月号 p.84 23:Plastics News.com/China, 10 月 14 日 24:Plastics News.com/China, 10 月 17 日 25:Plastics News.com/China, 10 月 24 日 本件についてのお問い合わせは、(株)旭リサーチセンターhttp://www.asahi-kasei.co.jp/arc/までお願い申し上げます。 7
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