関谷川をきれいにする会 よへえ屋敷谷戸の会 代表世話人 川村 泰一さん (関谷スカイハイツ在住) 玉縄に住んでいながら、多くの人に知られていない秘密の隠れ里がある。人呼ん で「よへえ屋敷谷戸」という。郷土史を研究している、関根肇(玉縄歴史の会所属) さんに伺っても、かつてこの地には座頭屋敷とよへえ屋敷の二つがあり、石塔 2 基 も奥まった地に残されていたが、いまは誰も知るすべなく古老たちからは、よへえ 屋敷谷戸と言い伝えられてきただけという。 この谷戸の脇を流れるのが関谷川。関谷・石原谷戸などの沢水を源流に、横浜の 田谷を経て柏尾川にそそぐ小さな流れで、下水道の整備が進んでいないころは家庭 からの下水や、時には車の廃油などが浮かび、また、中古の自転車、家庭の大型ご みなどが捨てられていた。誰もが目をそむけ るような荒廃した川だった。 新風台や関谷スカイハイツなどの周辺自治 会組織から有志が参加、平成 19 年 6 月「関 谷川をきれいにする会」が活動を始めた。 「掃除をしたからといってすぐに自然が呼び 戻せるわけではありませんが、行政に頼るの pg. 1 ではなくまず自分たちが川に関心を持 ち、出来ることからやっていく」。川 村さんたちの考えは明快だった。折角 きれいにしてもいまだに犬の糞をポイ と捨てていく、心ない人に憤りを感じ たりはしても、すでに 7 年間の実績を 積み上げた。 市の下水道整備も進んだこともあり、 かつてのドブ川も清流とはいかないまで も、手足を洗えるような流れになり、ド ジョウやくろメダカ、コイなどの生息も 見て取れるようになる。シラサギ、カル ガモの親子、セキレイそれに関谷ハイツ 前ではカワセミを目撃するほどになっ た。平成 21 年には鎌倉市から河川維持管理協力団体としての委嘱を受け、「川を きれいにするための掃除用機材などを購入したり、年間 4 回の清掃活動には事欠か ない程度の補助をしてもらえるようにはなった」という。 関谷川をきれいにする会は、川そのものをきれいにしていくことが第一目標だ が、同時に、川周辺の自然環境を保持し改善・整備していくことも大事な活動内容 だ。「よへえ屋敷谷戸の会」は、川をきれいにする会のメンバーを母体に、竹林の まま放置されていたこの谷戸の整備に取り 組み始めた。 20 年ほど前までマンションや専門学校の 建設計画などもあったが、放置されたまま の状態が続き、真竹が繁茂する荒れた谷戸 になっていた。地主の好意もあって無償で pg. 2 借り受け、谷戸の自然復元に立ち上がった。関谷川がきれいになればその周辺の自 然もしっかり残していきたい。これも自然の流れだったといってよい。 鎌倉には数少ない自然湿地 東京ドームを一回り小さくした程度のスペースだが、たぬきや毛嫌いされるがハ クビシンなどの小動物、それに 数多くの野鳥たちが生息し、こ こを棲み家とする。また、鎌倉 市内では広町などとともに、数 少ない自然湿地でもある。周辺 の山水が滴りたまり関谷川に流 れ込む。「ホタルをぜひにと 思ったが、ザリガニが多くカワ ニナの生息が難しい」ことで断 念、そのかわり、田んぼを作り もち米を収穫する。年末に開く餅つき大会には、収穫したもち米を使う。 ここ数年の間に田圃のみならず、農地も広がった。大根やサトイモ、コンニャク や葉物類など、最近は会のメンバーだけでなく地域の人たちも呼んで収穫物で「芋 煮会」まで開き好評だったという。 真竹は 3 年すると一部が枯れ始める。枯れた竹を廃棄し環境が保てるように維持 管理をする。尾根近くは孟宗竹になるそうだが、山すその一部を整備してたい肥を 作るためのスペースを確保したり、また、湿度が高く日陰にもなる場所も多くある ため、シイタケやヒラタケの栽培も本格的だ。 「すべて自然栽培だし、育てるには随分と手間もかかります。その間に鳥やタヌ キたちに食べられたりもしますが、それはもともとここに居た先住者。だから彼ら pg. 3 に食べられても納得です」と、自然との共生 がこの会の拠って立つところでもある。 山すそに続く竹林の周辺は子供たちの遊び 場にもなる。近くにはかつて海軍が掘ったと いわれるトンネルと、城廻側には銃眼の跡地 が今も残る。よへえ屋敷谷戸には、その入り 口が今でも口を開ける。「私たちもなかを通 り抜けたことはありません。冷暗所なので野菜の保存などに使っている」そうだ が、言ってみれば歴史の生き証人みたいな存在でもある。 よへえ屋敷谷戸に来るには小さいとはいえ、関谷川を渡る必要がある。80 歳を過 ぎたご老人も、小学生たちも渡るので特に危険というわけでもないが、提供されて いる土地でもあるため安易に橋を作ることはできないし「むしろ歩いて川を渡るこ とに意味もある」そうで、その意味でも自然はそのまま。かつて丸木の渡しもあっ たが、今は何も手を付けていない。 12 月 21 日の日曜日、よへえ屋敷谷 戸の広場では、餅つき大会が始まった。 川を渡り集まったのは 30 人余りだが、 子供たちは行列を作って初めての餅つき に杵をふるい喜びの歓声を上げた。若い 母親たちがつき上がったお餅を一口大に ちぎり、あんこや黄粉、それにこの谷戸 で収穫した大根を絡めて参加者に振る舞 う。地域の自然をまもる。これはまた地 域社会のコミュニティ活性化の原動力にもなっているといっていい。 関谷川をきれいにする会のホーム頁 http://www.tamanawa.net/2_sekiyagawa/kaishoukai/kaishoukai.html pg. 4
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