不気味な兆候 3月は先行指標に集中する時間 藤代 宏一

Market Flash
不気味な兆候 3月は先行指標に集中する時間
2017年2月28日(火)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・1月耐久財受注は前月比+1.8%と市場予想に概ね一致して2ヶ月ぶりに増加。民間航空機(+69.9%)、
国防航空機(+59.9%)の大幅な増加が押し上げに寄与。輸送用機器を除いたベースでは▲0.2%と微減だ
った。最重要項目のコア資本財受注は▲0.6%と予想外に落ち込んだが、12 月分の上方修正(+1.0%→+
1.6%)を踏まえれば、さほど弱い数値ではない。実際、3ヶ月前比年率では+8.9%に加速しており、設
千
備投資需要の復調を窺わせる結果となった。ISM新規受注の上昇傾向とも整合的である。
(10億㌦)
75
コア資本財受注
コア資本財受注・ISM
(前年比、%)
40
70
70
ISM新規受注(右)
20
60
0
50
65
60
55
-20
40
コア資本財受注
50
-40
45
30
05
07
09
11
13
15
(備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均
03
05
07
09
11
13
15
17
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均
17
・1月米中古住宅販売制約指数は前月比▲2.8%と市場予想(+0.6%)に反して大幅に減少。西部(▲
9.8%)、南部(▲5.0%)が不可解なほど弱く全体を下押し。均してみても明確に下方屈折した。もっと
も、他の住宅関連指標が概して堅調に推移していることを踏まえると、この指標の弱さはノイズによって
誇張されている可能性がある。基調判断は翌月データを待つ必要がある。
千
(百万)
6
中古住宅販売件数・販売成約指数
販売成約指数(右)
5.5
5
110
100
4.5
中古住宅販売件数
90
4
80
3.5
3
70
10
12
14
16
(備考)Thomson Reutersにより作成
・2月ユーロ圏景況感指数は+108.0 と1月から概ね横ばい。製造業(+0.8→+1.3)、サービス業(+
12.8→+13.8)、建設業(▲12.9→▲10.3)が改善した一方、小売業(+2.3→+1.9)が軟化。消費者信
頼感指数は▲6.2 と速報値に一致して1月(▲4.8)からの悪化を確認。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
ユーロ圏景況感指数
30
消費者信頼感・小売売上高
0
20
(前年比、%)
3
-5
サービス
4
小売売上高(右)
10
2
-10
0
-10
1
消費者信頼感
-15
-20
-1
-20
消費者信頼感
製造業
-30
-2
-25
-40
-3
-30
-50
07
09
11
(備考)Thomson Reutersにより作成
13
15
0
-4
10
12
14
16
(備考)Thomson Reutersにより作成 小売 太線:3ヶ月平均
17
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は小幅ながら続伸、NYダウは12日連続で最高値更新。新規の材料に乏しいなか、好調な企
業業績とUSD高一服が好感され、政策不透明感を補った。WTI原油は54.05(+0.06㌦)で引け。
・前日のG10 通貨はCADが最弱それにJPYが続き、反対にDKK、EURが小幅ながら買われた。USD/JPYは米2年
金利の上昇に足並みを揃えて上昇、112後半へと水準を切り上げた。他方、EUR/USDは日本時間から米国時
間早朝まで一貫して水準を切り上げた後、USD/JPYと同様の理由で反落。1.05後半での推移となっている。
そうしたなか新興国通貨は堅調。JPMエマージング通貨インデックスは2日ぶりに反発。
・前日の米10年金利は2.365%(+5.3bp)で引け。カプラン・ダラス連銀総裁のタカ派発言を受けて2年ゾ
ーンを中心に金利上昇。欧州債市場(10年)はコア軟調、周縁国堅調。逃避需要の後退もあってドイツ
(0.198%、+1.2bp)が金利上昇となるなか、フランス(0.877%、▲5.1bp)、イタリア(2.134%、▲
6.1bp)、スペイン(1.659%、▲3.9bp)が金利低下。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株はUSD/JPY上昇を追い風に米株高に追随。その後はもみ合いとなっている(10:30)。
・1月鉱工業生産は前月比▲0.8%と市場予想(+0.4%)に反して減産。経済産業省独自の試算値(+0.5%)
からも大幅に下振れた。もっとも、1月は中華圏の春節の影響を受け易い時期であるが故、今回の結果が
“真の弱さ”を映し出しているとは限らない。実際、過去3年は1・2月に2%を超える変動が確認され
ている。現段階において断定的な判断は禁物だが、製造業PMIが1月と2月に一段と改善していたこと
を踏まえると、今回の結果は春節に絡んだ生産スケジュールの変更が下押し要因になった可能性が高いだ
ろう。なお、出荷(▲0.4%)は2ヶ月連続で減少、在庫(±0.0%)と在庫率(+1.6%)は低下が一服。
出荷・在庫バランスはプラス領域にあるものの、その幅を縮小した。
・先行きに目を転じると、生産予測指数では2月+3.5%、3月▲5.0%と大幅な変動を伴う減産計画が示さ
れた。経済産業省独自の試算によると2月の生産は+1.1%の反発見込みでこれは既発表のPMIと整合的。
もっとも、3月には減産計画が待ち構えているため、先行きはモメンタム鈍化の可能性を意識せざるを得
ない(金融市場への影響は後述)。生産予測指数と実現率の関係に鑑みると、4四半期ぶりの減産も視野
に入れておくべきだろう。
120
鉱工業生産指数
50
出荷・在庫バランス
30
110
在庫率指数
10
100
-10
90
-30
生産指数
-50
80
10
12
14
(備考)Thomson Reutersにより作成
07
09
11
13
15
17
(備考)Thomson Reutersにより作成 出荷・在庫の前年比の差分
16
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
2
・1月小売売上高(商業動態統計)は前月比+0.5%、前年比+1.0%と概ね市場予想に一致。ガソリンが前
年比+6.7%と強く伸びたが、それを除いたベースでは+0.5%とやや減速した。名目消費額は16年1-3月
期をボトムに回復しているが、実勢は横ばいないしは微増といったところ。
(2010=100)
小売売上高(商業業態統計)
(前年比、%)
115
15
110
10
小売売上高(商業業態統計)
5
105
0
100
-5
95
-10
-15
90
00
02
04
06
08
(備考)Thomson Reutersにより作成
<#不気味な兆候
#3月PMI
10
12
14
16
00
05
10
15
(備考)Thomson Reutersにより作成 除くガソリン
#日本株>
・上述したとおり鉱工業生産指数では幾つかの不気味な兆候が認められた。1月の生産の弱さは春節による
歪みが混入しているとみられるが、3月の大幅な減産計画はそれが一時的なものであったとしても看過で
きるものではない。速報性に優れた3月PMI(特に新規受注)や企業景況感調査が顕著に落ち込むなど
減産の兆候が認められた場合は警戒レベルを引き上げるべきだろう。製造業PMIと日本株のパフォーマ
ンスは密接に連動する。こうした観点から3月はPMIなど速報データが発するシグナルを注視したい。
製造業PMI・日本株
日本 PMI生産・製造業生産
(%)
70
60
65
PMI生産
60
50
40
(前年比、%)
80
製造業PMI
40
55
40
50
0
20
55
45
60
0
-20
製造業生産
(3ヶ月前比年率、右)
TOPIX(右) -40
40
-80
-40
35
30
08
09
10
11
12
13
14
15
(備考)Thomson Reuters、Markitにより作成
45
-60
16
17
03
05
07
09
11
13
15
17
(備考)Thomson Reuters、Markitにより作成 3ヶ月平均
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
3