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■ 2017年度 入試問題分析シート ■
東京大学
前期日程
文科
試験時間
150 分
満点(配点)
総 括
科目
120 点
国語(現代文・文科)
出題数
現代文2題、古文1題、漢文1題
難易度(昨年比)
難化
昨年並
易化
分 量(昨年比)
増加
昨年並
減少
<総 論>
第一問は、テクノロジーの進展によって、従来の人間を支えた生の枠組みの虚構性が露わになり、追い詰められた人間の
危機的状況を論じた文章。これまでの東大入試と共通するテーマであり、テキストや模試などで扱った文章の本質がきちん
と理解できていれば、応用的な読解ができたのではないか。設問数が1問減少したが、それによって各設問への深い理解を
求めたものと推測できる。第四問は、昨年に比べてやや分量が増えたが、比較的平易な文章であり、受験生にとっては取り
組みやすいものだったであろう。ただし、問題文全体の構成を踏まえて筆者の言いたいことを的確につかむ読解力の有無に
よって得点差が開いたものと思われる。いずれにせよ、設問の解法といったこと以前に、文章読解の基礎力を徹底して鍛え
ておくことが必要である。難易度は、第一問は昨年並、第四問は昨年より易化しており、全体としては易化。分量は、第一
問が昨年より増加、第四問が若干の増加で、全体として増加した。
<合格への学習対策>
東大の現代文は〈解答作業を通じて本文の全体像が明らかになる〉ように作られている。具体的に言えば、本文の論旨展
開に沿った形で各部分の趣旨を順を追って問い、第一問ではさらに、結論部分に施線した上で全体の論旨構成・要旨をふま
えた 120 字の説明を課す、という設問構成である。したがって第一に必要なのは、〈意味段落〉の区切りごとに各部分の要
旨をおさえ、部分と部分のつながりを意識しながら全体の論理構成を把握する、という形で読解練習を積むことである。本
文の要約文を書いてみることも、記述答案作成の練習になるだけでなく、読解力をつちかう訓練として有効だといえる。
設問は、傍線部を単に字句の上で言い換えただけであったり、本文中の語句を寄せ集めただけの解答では、設問の求める
説明には全く届いていない、というものがほとんどである。文章中の傍線部とは、単なる断片的な語句ではなく、筆者の思
考を伝えるための〈表現〉であることを認識し、本文全体の論旨構成の中に傍線部を位置づけてその〈言おうとするところ〉
をつかんだ上で、その理解の内容を言語化する、という意識をもって書く姿勢をもちたい。
問題分析(本文)
問題
番号
第一問
類別
(ジャンル)
評論
第四問
随筆
本文の
レベル
伊藤徹『芸術家たちの精神史』
(2015 テクノロジーがもたらす現代社会の変容について 標準
年ナカニシヤ出版刊)〈第六章 論じた文章。2004 年に同著者による類似のテーマ
「神々の永遠の争い」を生きる〉の の文章が出題されている。
〈一 神々の永遠の争い〉の一節。
幸田文「藤」(初出『學鐙』1971 年 名随筆家として知られる幸田文が、
父である幸田露 標準
7・8月号、新潮文庫『木』などに 伴の導きで自然を見る目を開かれていった思い出
収録)の一節。
をつづる文章。
出典(著者)
コメント(特徴・出題頻度など)
設問分析
問題
番号
第一問
第四問
設問
番号
(一)
(二)
(三)
(四)
設問形式
設問内容(特徴・解答上のポイントなど)
記述
記述
記述
記述
自己展開する科学技術の不気味さを説明する。
テクノロジーが人間に強いる変容について説明する。
実践的判断の恣意性を説明する。
第一段落末尾の問題提起を踏まえつつ、テクノロジーが生み出した世界に
おける人間のありようをまとめる。
例年通り基本的な漢字・語彙力を問うもの。出題数は昨年同様3つ。
(五)
漢字書き取り
(一)
(二)
(三)
(四)
記述
記述
記述
記述
父の子供に対する自然への導きについてまとめる。
姉への嫉妬が草木へ縁をもつきっかけとなったことを説明する。
父に促されて自然の営みから新鮮な感動を得たことを説明する。
藤の花の光景に父とともに満たされた体験を、全文の趣旨を踏まえつつ説
明する。
設問の
レベル
標準
標準
やや難
やや難
標準
標準
標準
標準
やや難
「本文のレベル」と「設問のレベル」は,本大学・学部を志望している受験生の入試レベルを基準に,難易度を5段階〔難・やや難・標準・
やや易・易〕で判断しています。昨年対比ではありませんので,総括の難易度(昨年比)とは連動しません。
©駿台予備学校
■ 2017年度 入試問題分析シート ■
東京大学
文科
理科
前期日程
試験時間
試験時間
150 分
100 分
満点(配点)
満点(配点)
総 括
科目
120 点
80 点
出題数
現代文
出題数
現代文
難易度(昨年比)
分 量(昨年比)
国語(古文)
2題、古文 1題、漢文
1題、古文 1題、漢文
難化
昨年並
増加
昨年並
1題
1題
易化
減少
<総 論>
本文は文理共通で、約940 字で、昨年より少し増えた程度である。恋愛感情を含んだ養父と養女との関係を語る話で、心
内文と地の文の区別が判然とせず、微妙な心理がつかみにくいところもあるが、導入の説明にしたがって丁寧に読み進めて
いけば、展開はなんとかつかめたと思われる。全体として、昨年度と比べてやや難化したという印象である。
<特記事項・トピックス>
昨年と同様物語からの出題で、『源氏物語』は文科で 1998 年に「椎本」巻が出題されて以来久しぶりの出題であった。
また、昨年と同様、和歌に関する問題が出題された。
<合格への学習対策>
基本的な語彙や文法事項を身につけた上で、文章全体の展開を考慮しながら読み解く読解力が求められる。さらに、設問
の指示に適うように解答を作成する工夫が必要である。解答欄が短いので、必要な情報を簡潔にまとめあげる表現力が求め
られる。
問題分析(本文)
問題
番号
第二問
類別
(ジャンル)
つくり物語
出典(著者)
コメント(特徴・出題頻度など)
紫式部『源氏物語』「真木柱」 『源氏物語』は、東大では近年出題が見られなかっ
巻
たが、入試では頻出の出典である。
本文の
レベル
やや難
設問分析
問題
番号
第二問
設問
番号
文科㈠
理科㈠
設問
形式
記述
文科㈡
記述
心情の説明。「げに」、反語に注意して傍線部を解釈することが前提。
文科㈢
理科㈡
記述
心情の説明。直前の「気色」の具体化がポイント。「誰が」は直後の「思
ひける」に尊敬語が用いられていないことに着目して考える。
やや難
文科㈣
記述
内容の説明。「ゐやゐやし」、補助動詞「なす」の解釈がポイント。
やや難
文科㈤
理科㈢
記述
内容の説明。「好く」の語義に注意して傍線部の意味を考え、前後の文脈
を考慮してその内容を具体化する。
やや難
設問内容(特徴・解答上のポイントなど)
現代語訳。基本的な文法事項や古文単語の知識も必要だが、前後の文脈を
視野に入れて解釈することも求められている。オは贈答歌の返歌に傍線が
引かれていることに注意する。
設問の
レベル
標準
標準
「本文のレベル」と「設問のレベル」は,本大学・学部を志望している受験生の入試レベルを基準に,難易度を5段階〔難・やや難・標準・
やや易・易〕で判断しています。昨年対比ではありませんので,総括の難易度(昨年比)とは連動しません。
©駿台予備学校
■ 2017年度 入試問題分析シート ■
東京大学
文科
理科
前期日程
試験時間
試験時間
150 分
100 分
満点(配点)
満点(配点)
総 括
科目
120 点
80 点
出題数
現代文
出題数
現代文
難易度(昨年比)
分 量(昨年比)
国語(漢文)
2題、古文 1題、漢文
1題、古文 1題、漢文
難化
昨年並
昨年並
増加
1題
1題
易化
減少
<総 論>
童話「ねずみの嫁入り」、落語「まわり猫」ともなっているポピュラーな小話で、知っている受験生も多かっただろう。話
の内容をつかむことは難しくなかったが、返り点のみの解釈問題が二問出題され、訓読できるかどうかがポイントとなった。
その他の記述については、欄の大きさに合わせて解答をまとめることが要求された。
<合格への学習対策>
基本的句形・重要語を身に付けるのは当然だが、漢字や熟語の広い語彙力を意識して養ってゆくことが必要である。また、
解答欄に合わせて簡潔かつ的確に解答をまとめるトレーニングを重ねること。問題文としては、逸話など、オーソドックス
な漢文が出題されることが多いが、漢詩が出題されることもあるので注意。また、時として書き下しが出題されることもあ
るのを忘れないこと。
問題分析(本文)
問題
番号
第三問
類別
(ジャンル)
逸話
出典(著者)
賢奕編(劉元卿)
コメント(特徴・出題頻度など)
童話や落語ともなっているポピュラーな逸話。
本文の
レベル
標準
設問分析
問題
番号
第三問
設問
番号
文科(一)
理科(一)
設問
形式
記述
文科(二)
記述
理由説明の設問。傍線部直前の反語表現「風其如牆何」の訳に注意。
標準
文科(三)
理科(二)
記述
現代語訳の設問。文科(二)と同様「如鼠何」の反語表現の訳に注意。「ど
うすることができようか、いやできない」などと冗長に訳すと解答欄をオ
ーバーする。
標準
文科(四)
理科(三)
記述
全文の主旨に関わる登場人物の主張の設問。「猫即猫耳」は猫は猫という
名でよいということ。ここでも「胡為自失本真哉」という反語表現が問わ
れている。解答欄が限られているので的確にまとめること。
やや難
設問内容(特徴・解答上のポイントなど)
現代語訳の設問。aは比較「於」と「神」の解釈がポイント。bは通常は
再読文字である「須」が動詞として働いていることに注意。cは慣用表現
「不如」の訳がポイント。繰り返される「○猫」という表現に合わせて、
「雲猫」と訳すのが望ましい。
設問の
レベル
標準
「本文のレベル」と「設問のレベル」は,本大学・学部を志望している受験生の入試レベルを基準に,難易度を5段階〔難・やや難・標準・
やや易・易〕で判断しています。昨年対比ではありませんので,総括の難易度(昨年比)とは連動しません。
©駿台予備学校