Market Flash 利上げは盛り上がっても USD/JPYは盛り上がらない 2017年3月1日(水) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】 ・2月CB消費者信頼感指数は 114.8 と1月から 3.2pt もの改善を記録。市場予想(111.0)を大幅に上回っ た。内訳は現況(130.0→133.4)、期待(99.3→102.4)が共に改善。ガソリン価格上昇は逆風となったが、 雇用環境の改善が継続する下で消費者の楽観度合いが一段と強まった。雇用判断(雇用機会が「十分)か ら「不十分」を引いたもの)は+5.9 と景気後退後の最高を更新。最近の新規失業保険申請件数の著しい 減少と併せて考えると、労働市場の量的改善はそのテンポが足もとで再加速している可能性が高い。雇用 統計NFPは+20 万人トレンドに回帰しているとみられる。 CB消費者信頼感指数(雇用判断) CB消費者信頼感指数 140 20 現況 10 120 総合 0 100 -10 80 -20 期待 60 -30 雇用機会が「十分」との 回答から「不十分」との 回答を差し引いたもの -40 40 -50 20 07 09 11 13 15 07 09 11 13 (備考)Thomson Reutersにより作成 17 (備考)Thomson Reutersにより作成 15 17 ・2月リッチモンド連銀製造業景況指数は+17 と1月から5pt 改善。ISM換算では 57.3 と 2014 年9月以 来の高水準に回帰。この結果、5地区連銀のサーベイをISM換算したうえで合成した指数から得られた 2月ISMの予測値は 57.5 となった(1月ISM実績 56.0)。 ・12 月 S%P コアロジック CS 都市住宅価格指数は前月比+0.93%と市場予想(+0.70%)を上回った。前年 比は 5.58%へと 3.8%pt 加速。低金利が長期化する下、消費者の旺盛な住宅購入意欲を後ろ盾に住宅価格 は再び上昇基調を強めつつある。足もとのモメンタムを計測すると3ヶ月前比年率の伸びは+8.6%に伸び を高めている。 60 ISM・地区連銀サーベイ (%) 20 3ヶ月前比年率 ISM 55 S&PコアロジックCS20都市住宅価格指数 10 50 0 45 -10 前年比 地区連銀平均 -20 40 -30 35 07 09 11 13 (備考)Thomson Reutersにより作成 15 07 17 09 11 13 15 17 (備考)Thomson Reutersにより作成 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株は小幅ながら下落、NYダウは13日ぶりに反落。大規模減税への期待感が後退する下、大統 領演説への失望リスクが意識されたとみられる。WTI原油は54.01(▲0.04㌦)で引け。 ・前日のG10 通貨はGBPが最弱でNOK、AUDが続いた反面、CHF、SEKが買われた。当初は全般的に動意に乏し い展開となっていたが、米国時間午後にFED高官のタカ派発言が伝わるとUSDが買われ、USD/JPYは112後半 へと上伸、EUR/USDは1.05後半へと水準を切り下げた。FED高官の発言は、ウィリアムズ・サンフランシス コ連銀総裁が「3月FOMCで追加利上げを真剣に検討」としたほか、ダドリーNY連銀総裁が「利上げを行 う根拠は今やかなり強まっている」と、共に3月の利上げに含みを持たせた。 ・前日の米10年金利は2.390%(+2.5bp)で引け。上述のFED高官の発言を受けて2年ゾーンを中心に金利上 昇。2年金利は1.260%(+6.6bp)まで水準を切り上げ、大統領選後の最高点に到達(本稿執筆中の日本 時間午前9時点では1.29%)。欧州債市場(10年)はコア軟調、周縁国堅調。逃避需要の後退もあってド イツ(0.208%、+1.0bp)、フランス(0.890%、+1.3bp)が金利上昇となる反面、イタリア(2.286%、 ▲4.8bp)、スペイン(1.655%、▲0.4bp)が金利低下。 【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】 ・日本株は米国時間午後からのUSD/JPY上昇を受けて高寄り後、USD/JPY上昇に歩調を合わせ一段と上値を切 り上げている(10:30)。 ・法人企業統計(10-12月期)によると、設備投資(除くソフトウェア)は前年比+3.3%と市場予想(+ 0.8%)を大幅に上回った。製造業(+7.8%)が強く伸び、非製造業(+0.8%)も増加に寄与。季節調整 済前期比では+3.5%と3四半期ぶりに増加し、水準はこの1年間の下落を取り戻した。売上高は季節調整 済前期比で+1.5%と2四半期連続のプラス、経常利益は+5.2%と3四半期連続のプラスとなった。外需 復調、円安、資源価格安定といった複合的要因によって企業収益が押し上げられており、そうした下で企 業が設備投資に前向きになっているのだろう。 (兆円) 18 設備投資(除くソフトウェア) (兆円) 経常利益(法人企業統計) 25 16 20 14 15 12 10 10 5 8 6 90 95 00 05 (備考)Thomson Reutersにより作成 全産業 <#米2年金利上昇 10 #日米金利差拡大 0 15 90 95 00 05 10 (備考)Thomson Reutersにより作成 季節調整済 太線4半期平均 15 #USD/JPY横ばい> ・28日はウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁が「3月FOMCで追加利上げを真剣に検討」としたほか、 ダドリー・NY連銀総裁が「利上げを行う根拠は今やかなり強まっている」として、両氏が共に3月の利 上げに含みを持たせる発言をした。また、その前日にはカプラン・ダラス連銀総裁が、利上げに関して「早 めというのは近い将来という意味だ」と発言。これら一連のタカ派発言を受けて米債市場では2年金利の上 昇が顕著となり、その水準は大統領選後の最高点に到達。日米2年債金利差は数週間の小休止を挟み再び 拡大基調となっている。 ・しかしながら、USD/JPYの上値は重く113を回復するに留まっている。これは筆者が従来から主張している ように「米利上げ=USD/JPY上昇」という発想の危険性を浮き彫りにしているだろう。目先の利上げ確率上 昇を反映して米2年金利が上昇しても、将来的な米景気回復期待が盛り上がらない状況下でUSD(特に調達 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2 通貨)は上昇しにくい。足もとで、米2-10年スプレッドが低下基調にあり、最近のUSD/JPYを最も綺麗に説 明していることがそれを物語っている。米金利のイールドカーブ全体が持ち上がるような状況が到来しな い限りにおいて、利上げはUSD/JPY上昇に直結しないと思われる。 米 2年金利 (%) 10年金利 USD/JPY・日米2年債金利差 (USD/JPY) (%) 120 1.6 日米2年債金利差 (右) 米10年金利 2.5 115 1.4 2 1.2 米2年金利 105 1 1 100 0.5 16/10 USD/JPY 110 1.5 16/11 16/12 17/01 17/02 17/03 0.8 16/10 (備考)Thomson Reutersにより作成 16/11 16/12 17/01 17/02 17/03 (備考)Thomson Reutersにより作成 USD/JPY・米2-10年スプレッド (USD/JPY) (%) 120 1.4 USD/JPY 115 1.2 110 米2-10年スプレッド (右) 1 105 100 16/10 0.8 16/11 16/12 17/01 17/02 17/03 (備考)Thomson Reutersにより作成 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 3
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