20170122_ST_前田智美 - 産経ニュース

2017.1.22 11:00
【大学の女子力】コミュニケーション力磨く臨床実習 大阪河崎リハビリテーション大(1)リハビリ
テーション学部4年、前田智美さん(22)
大阪河崎リハビリテーション大学4年の前田智美さん(22)は昨年9月、卒業研究の一環で学内アンケートに取り組ん
だ。テーマは「方向感覚」。「初めての道で迷うか」「東西南北がわかるか」など20項目を質問し、学生122人が回
答。医学的データも加えて男女の脳機能の違いを分析した。
この結果、空間の認知能力は元来男性の方が優れているが、そこをつかさどる右脳がダメージを受けた場合、女性の
方が改善しやすいことがわかった。リハビリテーション学部で言語聴覚学を専攻し、言語聴覚士を目指す前田さんは
「この研究を将来、臨床の場で生かしていきたい」と語る。
機能訓練のトレーニングを行う前田
智美さん
◎ ◎
大学のカリキュラムで役立ったのが臨床実習だ。これまで向き合った患者は延べ100人以上に上る。言語聴覚士は話し
たり、聴いたりするのが不自由な人の言語・聴覚能力の回復を図り、食べ物を飲み込みやすくする訓練も担う。対象の年齢層は幼児からお年寄りまで幅
広い。
前田さんが担当したのは脳梗塞で失語症になった70代の女性。普段は明るい性格なのに、絵を描いたカードを見せて物の名称を言ってもらう機能訓練
では全く言葉が出てこない。「訓練自体、彼女の負担になっているのでは」と自問しながら作業を続けたが、「苦しそうな表情がいまも忘れられない」
と打ち明ける。
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この体験から「自分が緊張したら、患者さんまで焦ってしまう」と実感。訓練前は必ず笑顔で「最近調子はどうですか」「今日の朝ご飯は?」といっ
た身近な会話を心がける。もともと人と話すのが苦手だった前田さんだが、臨床実習のおかげでコミュニケーション力が身についたという。指導教官の
亀井一郎学長は「パワフルで行動力も抜群。これからの活躍に期待したい」とエールを送る。
「話したり、食べたりするのは人間にとって一番大切なこと。生きる自信にもつながるはず。患者さんの『ありがとう』の言葉が自分のやりがいを支
えてくれています」。前田さんの目が輝いた。
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