中国 の 農家 に 滞在 し て

寝る。このリズムは実に快適だ。茶
み、夜はやることがないので早々に
は田舎のいい空気をいっぱい吸い込
れる野菜は出てこなかった。理由は
なぜか雨ばかり。このため、粥に入
のだ。このスープを飲むと内臓に染
「農民はね、晴れたら畑で作物を採り、 たスープを飲み、病気を防いできた
もと中国人は、気候や体調に合わせ
われ、驚いたことを思い出す。もと
中国の農家に滞在して
一昨年まで3年間、毎年春になる
と訪ねていた場所がある。福建省安
農家だからといって、やたらにお茶
自然と共に生きている」と納得させ
異常気象が続く昨今の世界。これ
まで自然の摂理に従って生活してき
渓で、厦門から車で1時間ほどの山
るところである。もちろん目的は製
ェインが抜けて、眠りを深くする。
られる。
み渡る。
茶見学なのだが、ご縁を得て、そこ
われわれは茶を楽しむために常に飲
雨が降ったら、ある物を食べるんだ
の茶農家に数日、泊まらせていただ
た彼らも、変化を強いられている。
コンに向かう生活を体に強いている
るが、WiFiなどなく、常にパソ
素である。もちろん電気は通じてい
その農家には 代の老夫婦が暮ら
しており、生活は極めて伝統的で質
重な時間である。
野菜、漬物、ピーナッツなどを入れ
3度の食事もこの農家で一緒に頂
がゆ
いている。朝は白粥。有り合わせの
茶葉などなかったよ」と笑う。
「昔は作った茶はすべて人民公社
の生産隊に納めて、自分たちが飲む
まない。
彼らはそれを語ることはない。
あったかを、想像したくなくなる。
進や文化大革命が一体どんなもので
成立後に実際に農村で起こった大躍
きたんだ」と言われると、新中国の
も地瓜だったよ。これで命を繋いで
る物がなくてねえ。そんな時はいつ
て 煮 る と さ ら に 美 味 だ。「 昔 は 食 べ
する。
を覚悟で茶作りを行い、収入を確保
い茶農家は生活のため、品質の低下
を作らないことを守ったのだが、若
統に従い、雨露のかかった茶葉で茶
の秋茶は作られなかった。これも伝
と言い、ついにこの農家では鉄観音
こんなに雨が降るなんて初めてだ」
ディグア
んでいるが、茶作り労働者である農
年 以 上 茶 を 作 っ て い る が、 秋 に
者が3日もそれを見ないと、その呪
て食べるのだが、これが何とも体に
いている。そこでの滞在は、自分の
「
縛から解放され、何とも楽になる。
発展することは重要なことではあ
るが、忘れてはいけないものを犠牲
民はお客が来ない限り、ほとんど飲
いかにストレスを普段体に課してい
優しい。いかに普段、胃腸を酷使し
ちょっと涼しい時は、体を温める
てきたのかが、これまたよく分かる。 根菜類などが入ったスープを作る。
消化が抜群に良い。
母親にスープを作ってもらう」と言
ら「今日は風邪気味だから、実家の
つな
たかが体感できる。同時に、頭をど
にするのは間違っている、と叫びた
する。
昨年は珍しく秋に訪れたのだが、
い気分になる。
白 粥 な ら2 〜 3杯 お 代 わ り し て も、 これは香港に住んだ時に、香港人か
体を真にリフレッシュしてくれる貴
また、地瓜という芋、日本で言え
ばサツマイモだが、これを粥に入れ
よ」と言われると「ああ、それこそ
すが・つとむ 東京外語大中国
語科卒。金融機関で上海留学、
台湾2年、香港通算9年、北京同5
年の駐在を経験。現在は中国を
中心に東南アジアを広くカバー
し、コラムの執 筆 活 動に取り組
む。
を飲むこともない。これもまたカフ
須賀 努
の中、鉄観音茶の産地として知られ
コラムニスト・アジアンウオッチャー
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こに使っていたのかと、日頃を反省
そして何よりも、早寝早起き。朝
2017.1.30[月]
金融財政ビジネス 第 3 種郵便物認可
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