知らない世界に飛びこんで

三年
知らない世界に飛びこんで
元郷中学校
加藤
桃子
「どう、加藤さん？やってみない？」
私はある日の放課後、英語を担当している先生にそ
う声をかけられた。英語の弁論大会に出場してみない
かと、いきなり聞かれたのだ。しばらくパニックにな
った私は、その場でかたまってしまった。
その一言で、私は知らない世界に飛びこむことにな
った。そして、この夏は私にとって、忘れられない夏
になった。
こうして、私は九月二六日に行われた第六十六回川
口市中学校英語弁論暗唱大会に出場するため、約二ヵ
月間練習することになった。
私は英語が好きだ。でも、「得意」な教科ではない。
特別成績がいいわけでもない。それなのに、なぜ私が
選ばれたのだろうか。
でも、他の先生に「桃ちゃんなら大丈夫だよ。」
と言われると、自分に期待されている感じがわかった。
それが喜びとやる気に変わった。
「やります！」
そこから全てが始まった。
知らない世界に飛びこむのは、不安がないとはいえ
ない。初めてのことばかりで、今、自分が何をすべき
かを考えることが多くなった。ゼロのスタートから、
どこまで行けるか、自分自身との勝負となる夏が幕を
あけた。
まずは、文章の作成から始まった。紙に書く、書く、
書く。まずは、日本語で。
その文章を英語に直し、暗記の作業に突入した。と、
ここで先生から、お盆のうちに全ての文章を覚えてく
るように言われた。約三十行近い文を覚えるのは、私
にとって、とても大きな壁となった。それでも、私は
何とか覚えることに成功した。
ジェスチャーも少しずつ入れることが出来るように
なり、九月に入った。教室、ベランダ、ホール、体育
館、体育館裏、放送室、職員室。いろいろな場所で練
習した。先生の前で、後輩の前で、同じクラスのみん
なの前で、全校生徒の前で。約五分という、短くて長
いこの時間で、私は話した。話し続けた。それが舞台
の上で、知らない人の前で話すことにつながった。
迎えた大会本番。私の前の人達は、上手だった。発
音がきれい、大きな声が聞こえやすい、話す題材がい
い。その中で、私は話せることに緊張しながらも、わ
くわくし、誇りに思った。
本番の五分の時間は、あっという間だった。自然に
私は話せたと思う。楽しかった。終わる時は、もっと
この場所に立っていたい、と思った。
終わって、自分の席についた時、気付いたら泣いて
いた。止めよう、止めようと思うほど、それは私のハ
ンカチをぬらした。
待ち望んだ閉会式。私は三位入賞をすることができ
た。驚いた。でも、とても嬉しくて、また、涙が出た。
私はこの大会で「将来の夢」について語った。外国
語関係の仕事に就くことだ。具体的にはまだ決まって
いない。でも、近々見つける予定でいる。
しかし、どの仕事に就いても、夢のためには、たく
さん勉強をしなくてはならない。これを機にがんばろ
うと思った。
今、私はたくさんの人に感謝したいと思う。約二ヵ
月は、私にとって中学生活の中で忘れられない貴重な
経験となった。
苦しくても、あきらめない強さを知ることができた。
このチャンスをくださった先生方、支えてくれた家族、
はげましてくれた友達、本当にありがとう。

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